
以前に紹介した毎日新聞社発行の「カメラこだわり読本」…
これはライカ一色になってしまう95年版の前年の94年版…
30年近く前、全盛期、いや前世紀のムック本です。
見てのとおり、「こだわりのカメラ」の中にデジタルカメラは一つも出てきません。
デジカメ自体は市場に存在していても、その後、フイルムカメラに完全に取って代わっちゃうなんて、誰も想像すらしていなかった証ですね。
94年版の白眉は、何と言っても赤瀬川源平さんと坂崎幸之助さんによる「カメラ持ち込み対談」…
赤瀬川さんは、ライカ同盟のメンバーにしてライカブームの火付け役、「老人力」の著者としても作家・芸術家さん…
坂崎さんとは言うまでもなく「アルフィー」の坂崎さんのことです。
「これだけ揃えてほしい」と頼まれて機材を調達するのではなく、自己所有のカメラを持ち寄って語り合ったと。
取材のための小道具に一切お金がかからないと言うのは、編集側としては好都合です。
この中で登場するやり取りの中に、カメラに限らず、クルマも含めて趣味に共通する興味深いやり取りがあります。
坂「…中古でキヤノンのFTbを一眼レフでは。そのまま次はAE-1プログラムにしまして…うずき出したのが、けっこうモノを集める趣味というか、好きなんですね、やっぱり。」
赤「まあ、男の子はみんな大体そうですね。」
坂「…ギターもそう…なんですけど、けっこう周りから攻めていくんですよ。本読んだりとかして。」
坂「…ギターとか楽器もそうなんですけど、新しいものってだんだん興味なくなってきちゃうんですよ。ついていけない部分もあるじゃないですか。いろんな機能が多すぎたり、つくりが安っぽかったりして…」
赤「僕も、ニコンEMというのは前から欲しくって、現役じゃなくなってから買ったんですよね。そのうちにボツボツ処分するかなと思っていたら、チョートク(田中長徳)さんの本で、EMはいいカメラで、メーカーとしてもこれはもうからなかったというのを読むと、やっぱりもうちょっと引き寄せて(笑)」
坂「僕はイタリアのアルミの本当に安っぽいカメラ持っていたことがあるんです。そしたらチョートクさん、そういうのが欲しくなっちゃって、次の日、そんなの2、3個買ったとか。影響されちゃったよ、なんていっていましたけど。」
赤「中古とか、クラッシックカメラは、ありますね。人の目によって開かれちゃうんです、こっちの目がまた。」
坂「あれ、いけないですね。(笑)それまでなんとも思っていなかったカメラが急に輝いてきて。」
…と、こんな前振りがあって、それぞれ持ち寄ったカメラの話題で止めどもなく続くと。
これって、カメラに限らず、クルマでもオーディオでも、趣味性の強い遊びって皆こんなもんですよね。
本当のプロのレーシングドライバーやフォトグラファーにしてみれば、そんなことには関心がなくて、速く走れるための、決定的なチャンスをしっかり捉えるための「性能・機能」こそが全てなのでしょうけれど…
んでも、実際には、そう言う人なんてそんなにいないのであって、圧倒的に大勢いる、緩~く走らせて楽しく集っている人や、作品はしょーもないものばかりなのにカメラやレンズばかり揃えて喜んでいる人によって業界も支えられているのだと(笑)
んで、思ったのは、ネットが普及する前のこの頃って、情報の量は格段に少なくても、雑誌やお店や同好の集まりで得られる情報の価値は格段に大きく、誰にでも平等だったのではないか…
ライカM3が欲しければ、オイラも芸能人もプリンスだって銀座のカメラ屋に行ったと。
この当時、どうやって楽しんでいたのか、詳しいことはすっかり忘れちゃったけど、当時、銀座のカメラ店でハッセルブラッドを買う行為は、今、メ○カリで同じものをポチッとやる行為の何倍、いや何十倍もの興奮とワクワクと喜び、そして後悔があったのではないかなぁと。
う~ん、利便性と楽しみの質は比例しないんですね(笑)
Posted at 2022/02/12 23:32:01 | |
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