
初めて見ました。アルピナB3-GT3。
過去これまで、お金の掛かった高価なデモカーやお友達のお車に「乗せて~♪」と無神経アタックを炸裂していた私が、遠慮して押し黙ってしまったくらいのオーラ。
待ち合わせしたパーキングでジロジロとチェック。
なんじゃこれ?
カーボン製のGTウィング?ええの?・・・ノーマルなの!?。
あっ、ごっついマフラー!何これ?え?ノーマル!?
わっ、カナードは後付着けたの?え?これもノーマル?
っていうか、この車高・・・タイヤハウスとギリッの設えは、このままサーキット走行を前提としたセットだけど・・・やっぱりノーマル!?
・・・うーん。
スタディで、お金とノウハウをかけて走りに完璧に振った車の仕上がりのよう。
これがアルピナが作ったの!?
凄すぎですね。過去乗せてもらった多数のアルピナさんを振り返ると、どう考えてもイメージが出来ない。このセットで、あのアルピナの脚と乗り心地を再現しているとは思えない。タイヤサイズとサスのストロークを推察すると、そこにはこれまでのアルピナさんとは全く違う、走りへの本気度が伺えますが・・・実際の走りはどんなの?と走りへの興味はつきません。
ワィンディングで乗せてもらえる事に。やったー!
車の試乗は、街中の低速の方がメリットやデメリットなど、推測しやすいのですが、この走りやすい気持ちいいステージだと、逆に掴みにくい・・・が、そんな事気にしてられないくらい気持ちは高揚しました。
あれ?ATなの?どうしてMTにしなかったの?と聞くと
MT設定がないとの事。
そして、台数が世界で99台で、日本に40台程度入っているうちの貴重な1台。
・・・ひぇーーー。
さて
3人乗車しての試乗開始です。オーナーはミニクラブマンの試乗で、後ろから追走。
まずは、下りのワィンディングに向けて、駐車場からの移動での微妙な凸凹のインフォメーション。
痺れる脚と車体の補強剛性とタイヤの大きさ、すんごい味付けを実感。
これは、まさに、E60M5、M6、E46M3、E92M3を、本物のショップがノウハウとお金を贅沢にかけてバリバリのサーキット仕様にしたあの感じです。スピードレンジ上げるとどのような挙動かも瞬時で察せられました。
しかし・・・軽い。
闇雲にチューンしてセットすると、上記の車でもバタバタ感、つまり重さを直に感じます。それはそのまま、速度を上げると比例したようにバタバタ感は残り、かなりナーバスなセットとなります。
でかいタイヤに強いバネと硬いだけの脚周り。運転は面白いけど、天候とステージを著しく限定する懐の浅いセット。
さすがレース屋のアルピナさん!
「どや!?これが本物やで」といわれている感じです。十勝で乗ったレーシングマシンのS耐M3と剛性比較できないと思いましたが、いやいや、室内ゲージ巻いて無いのに、これなに?と言うくらいの剛性感。市販の後付で固めた車と違い、ボディから手を入れている感じがします。
コースに出る前に、うっとりしてしまいました。と、同時に、走りようがないのも判ってしまい困惑まじりでコースイン。走りようが無い、というのは、性能を堪能する楽しみを感じられるコースレンジではないので、例えば「F1の試乗をピットロードのみで走る」の感覚です(なんじゃそりゃ笑)
下りのコース。本当にやる事がありません。素晴らしすぎます。
これまでの市販のアルピナさんは、ドライビングプレジャーの快感を感じられるスピードレンジの設定を低いところから感じられるように、また、腕の見せ所を発揮できるように、積極的にロールさせるセットを見せていました。ロールと言っても、日本車のように車体から捩れるような感じではなく、脚だけが動くのです。
アルピナホイルの重さの訳は、比較的ストロークする脚のセットとする事により、車体側を積極的に動かそうと言う狙いで、ロールをワザとさせることにより、比較的少ないステアの舵角で、グイグイと曲げていけるセットになっていて、運転の懐の深さを独自に表しています。BMWの魅力の「リアで曲げる」を上手く、セットをすることによって、体現できる素晴らしい車ツクリです。
軽やかに走るB3-GT3
コースのスピードレンジだと、もうほんとうにやることが無いです。唯一、楽しんだのは、後ろを追走するオーナーのミニクラブマンを、クイックなステアなので、苦手そうな巻き巻きコーナーでワザと離しちゃった事ですね。えっへへへ(笑)そんな時も、GT3の室内は、まったりして緊張感の無いまま走り抜けていきます。ほんとうに凄いですね。運転手はやることがありません。
で、途中の駐車場でUターン。
今度は登り。後ろから追走するのは、M3Bを試乗しているA野さん。
一箇所だけ、巻き巻きコーナーの登りで、左のフロントタイヤを、ほんのちょっと使っちゃっただけで、絶大なる安心感と高揚感を味わって試乗は終了。
レース屋のアルピナがメーカーとして作ったレーシングカー。
見た目に普通のクーペなのに、とんでもない性能を隠し持った獰猛な鷹のよう。
空力と車体補強のノウハウはかなりのモノと睨んでいます。何よりも、アルピナがこのようなスペシャルカーを世の中に出した意義と意味を感じられずにはいられません。
ショップさんが、後付でパーツを着けて出来上がったものとは同じではありません。例えば、ショック。
通常の後付モノなら、5千キロでOHのリクエストが付くでしょう。メーカーとしては、そんなリクエストを顧客に課しませんよね。メーカーが通常に出しているショックと同じような経年変化と耐年数を出さないと意義も意味もありません。新車から3年は乗りっぱなしを想定して作っていると考えると、いったい見えないところで、どのくらいコストとノウハウを突っ込んでいるのか・・・たまげます。
高度のレベルで作り上げているGT3の凄さがわかります。
例えばリアのブレーキのセットが秀逸です。下りでもリアがちゃんと付いてくるんです。脚を固めただけのセットだと、リアの沈み込みを計算できずに、前後固くして、車体も締め上げて誤魔化します。ただ硬いだけの脚を付けるだけ・・・なんて
そんなレベルで作っていないGT3は、推測するに、ホワイトボディからレース屋のノウハウを使って、イヂル事により補強と逃がしのバランスを上手くシャーシに活かしているかと。ドンガラにして固めたボディではありません。もっと懐が深く広いです。それは、スポット増しかもしれないし、軽く高価な素材かも知れないし、ワッシャーを1枚足すような事かも知れませんが、後付パーツを付けて、バリバリのサーキット仕様にした車を乗っている人は、この車を軽く流すだけで、その懐の深さとレベルの違いを感じられるかと思います。
物理の法則を、電子機器で誤魔化しているデジタルカーではなく、レースの現場で培ったノウハウを、重量配置、補強ポイントなどなど、アナログの考えで仕上げているのが感じられます。
下りのリアの追随もそうですが、登りのフロントのトランクションも秀逸。
追走していたA野さんとも話しましたが、表面的なカナードやウィングだけではなく、アンダーの整流の整えが抜群に効果を発揮していて、より路面に吸い付いた走りをあらわしているかも。もう本当に車任せでもグイグイと気持ちよく走られるのも空力と脚周りのセット、そしてボディの作りの結果。
ただ単に脚周りが凄いのではなく、トータルでボディ設計から優れているのが、B3-GT3でした。市販車として、またレースフィールドの匂いがする車として、ギリギリまで妥協を削って作られた宝石のような車でした。アルピナがレース屋なんだよ、と強烈にアピールしています。
ただ、不思議なのは何故MTも作らなかったのか、試乗終わってからもずーっと疑問に思ってました。
公式アナウンスとは別に、本音としては、そこには元レース屋として、ステイタスの地位にあるメーカーとして2つの顔からくる苦渋の選択だったんだろうなーと解釈するようになりました。