
CARBOY1998年10月号
プライベートチューニングレポートより。
Japanese Hot Roder誕生! 逆ハンZ31にVG30DETTを合体だ
フェアレディZ 愛知県・P/N○ビチューン友の会会長
構想1秒!
作業1年!!
この度、DATSUN Z31・300ZXに現行Z32のVG30DETTを載せることに成功しました。Z31もまだまだイケるということをレポートしたいと思います。
以前はS30に3.1ℓのL型やRB25DETなどを載せて峠を走ってました。ところがけんしょう炎になってしまい、重ステに乗れなくなってしまったのです。そのため、パワステ&エアコン付きのZ31にしました。でも、ただの(?)Z31では芸がないので逆ハンの前期型ブリスターフェンダー仕様に決定。Z32エンジンに載せ替えることを前提にしているのは言うまでもありません。
エンジンスワップ自体はこれで3度目のことになります。これまでに「S30Z+RB25DET」と「R31スカイライン+SR20DET」を経験しています。ハーネスごとそっくり移植し、ノーマルコンピュータでコントロールしてきました。
さて、このZ31にVGを載せるに当たり、いくつかクリアしなければならないことがあります。それは、パワステ、エアコンを付ける、あくまでツインターボのまま、街中で普通に乗れる、峠を気持ち良くドリフトできるといったことです。これらがクリアできなければ、S30を売ってまで手に入れる意味がありません。しかし、パワステとエアコンにこだわったがために、結果的に1年という長い期間を要してしまったのですが……。
まず、Z32ターボの事故車(エンジンの動くヤツ)を見付けなければなりません。しかし、意外とZ32ツインターボのMT車は少ないようで、結局AT車を購入しました。本当はMT車が欲しかったのですが、ないならしょうがない。でも、このために後々ミッション選択で悩むとは、まったく予期していませんでした。
買ってきた事故車からエンジンやAT、CPU、ハーネスとセンサーなどを壊さないように取り外します。また、5万kmほど走っていたので、OHを兼ねてエンジンにも手を入れることにしました。メニューはというと、ピストン&コンロッドの軽量化と重量合わせ、燃焼室加工(グループAのGT-R同様)、ポート拡大&研磨、バルブ鏡面加工、ヘッド面研といったところです。
更に、タービンをT3Gツインにしてインジェクターを追加、HKSのEVC、VPC、AICでコントロールします。これらに併せて、ピストンリングも新品に、ガスケットも1.2mmのメタルへと交換です。
さて、ここからが問題のミッション編です。今回いちばん頭を悩ませてくれました。というのも、Z32のセルは普通のクルマと違いミッションの横に、しかも後ろ向きに付いているのです。タービンをかわすためにこうなっているのでしょう。従ってZ31のMTは使えません。しかもATを買ってきているのでMTを探さなければなりません。
しかし、Z32のMTは解体屋さんにもない状態です。散々駆けずり回った挙げ句やっと見付けました、Z32のMT車!
ところがMTだけ買う約束をしておいたにもかかわらず、何とクルマごと他の人に売ってしまったというじゃないですか!
やむなくMTやファイナルの部品番号を調べ、見比べることにしました(表を参照してください)。すると、R33GTS-tとZ32のMTの型が似ていることを発見。たまたま、S30+RB25DETを製作したときの余り物(?)R33のMTが家にあったので、Z32の整備書と較べてみたところ、どう見ても同じように見えます。
そこで、Z32MTのベルハウジング、ベアリング、ガスケットを日産で購入し、R33のギヤボックスをはめたところ、これがドンピシャリ。次はプロペラシャフトですが、Z31のボルグワーナーMTに合うペラシャフトがありません。R33、Z32ともにスプラインが違います(ちなみにFS5W71Cとも違う)。R33かZ32のペラシャフトを使うしか手がなさそう。
結果的には私が選んだのは、Z32エンジン+R33MT&プロペラシャフト+R200デフという組み合わせでした。ただし、プロペラシャフトは2分割のフロント側だけを使用し、デフとの間にアダプターを入れてやる必要があります。このアダプターは、知り合いのYASHIROエンジニアリングの八城さんに製作をお願いしました。長さ165mmで両端をボルトでジョイントできるようにしてもらいました。
デフは、私のZ31に付いていたR200のLSDなし、ファイナル3.5では峠での気持ち良さは得られないとの判断から、4.1か4.3の物がいいはず。組み合わせるMTはR33用で、このファイナルは4.1なので、それに合わせることにしました。この方がスピードメーターも狂わないでしょうし……。
そこで、4.1のR200デフは、と色々調べたら……ありました。それはR31のRB20E。このデフはすぐに見付かり5000円で購入。組み合わせるLSDはストックしてあったZR-Ⅱ用をプレートのみニスモの強化に入れ替えて“バキバキSPL”として使うことにしました。
しかし、このままでは付きません。LSDを組んだR200はドライブシャフトがノーマルと左右逆になるのです。ですから、シャフトのフランジ部のブーツをめくって左右を入れ替えてやらないと、ドライブシャフトとデフが合体しないのです。ここは注意が必要ですよ。
小加工が必要なポイントはまだあります。先ほど少し触れたセルです。上記の組み合わせでいくと、フロアに思いっ切り当たってしまいます。そこで、当たる部分をハンマーでたたいて逃げを作らなくてはなりません。たたいた後はシャシーブラックを塗るのを忘れずに!私のクルマは左ハンなので助手席側をへこませましたが、右ハンだと運転席側になります。室内を見ると運転席の床が出っ張っていて少し変かも?
狭いエンジンルームに
悪戦苦闘の連続
エンジン、MT、デフなどをすっかりと降ろしたところで、Z32のハーネスをDATSUNに移植します。あくまでもキレイに、要らない配線は捨てることにしました。ちなみに捨てたのは、ハイキャス、フルオートエアコン、AT用CPU、オートクルーズ、ABS、BOSEコンポ、ライトやワイパー類のボディ側の各配線です。また、このとき余る部分は切り詰め、足らないところは必要なだけ伸ばしてやると、ムダなくキレイに仕上がります。
配線ができたらエンジンを仮にボディに載せてマウントを合わせると……見事に合いません。更にオイルパンはメンバーに当たっているし、エアコンはクロスメンバーと干渉しています。また、右側のタービンのアウトレットもフロアと接触しています。先が思いやられる……。
ところで私は会社員(電気工事関係)ですので、平日の帰宅後と休日くらいしか作業ができません。その上、休日も遊びで忙しく、何だかんだで1年もかかってしまいました。まあ、普段の足&通勤用にR31スカイラインワゴンを持っていたので、「早く作らなければ」という焦りがなく、のんびり構えていたせいもありますが……。
話を戻しましょう。まずオイルパンですが、試しにVG30ETの物を付けてみようとしましたが、残念ながらダメでした。仕方なく、VG30DETTの物を加工することにします。加工個所は図を見てください。オイルパンをカットするので、このままではオイル容量が不足してしまいます。これはオイルクーラーを2個追加して対処しました。
エアコンと干渉するクロスメンバーは、当たらない所へ移動し溶接し直しました。フロアに当たってしまうアウトレットは、パイプを切断し、これも溶接してつなぎます。また、左側のアウトレットもステアリングシャフトに当たっていたので、削ってしまいました。
当初の予定どおりパワステも付けたのですがZ31のポンプはVG30DETTには付きません。いろいろなポンプ……RB25、SR20、CA18と試してみましたがどれもダメ。結局Z32の物を加工しました。Z32用はハイキャス付きだったので、その部分をバラして取り払い、パワステの方だけ生かして使用します。
クラッチは、中古で買ったOSツインを装着します。しかし、そのまま取り付けたのではクラッチが重くなるので、R32GT-R用のクラッチブースターをAssyで移植しておきました。この手はS30ZにOSトリプルなんて組み合わせにも使えますよ。ついでにクラッチレリーズシリンダーやゴム類も交換。これでボディとエンジンやMTがドッキングできます。
しかし、まだ補機類のセットが待っています。ラジエターホースは形がまったく違うので、300ZR用に替えないと合いませんでした。更に、機械式ファンはスペースの都合上、ラジエターの前後に各一つずつ付けました。
エアコンも付けなければこのクルマにした意味がなくなってしまいます。そこで、コンプレッサーとボディ側をつなぐホースは、色々なクルマから外した物を当ててみたりしました。が、結局は300ZR用の物を基本に、切った張ったでどうにか付けてしまいました。
ここでいちばん困ったのがインタークーラーです。スペースからいって、どうやっても2個付けられそうにないのです。パイプだけでも計4本フロント側に出さなければいけないのですから。しかし、ここで一つの考えが浮かびました。“峠を走るのがメイン→スーパーレスポンス仕様→インタークーラーレス”、決まりました。ツインターボのツインスロットル……考えただけでもものすごいレスポンスマシンになりそうです。
次なる問題はマフラー。メイン径を幾つにするか悩みましたが、峠を走るのでトルク重視の60φデュアルに決定。1個のタービンに1本のマフラーとしました。60φのパイプは買っておいたので、インテークパイプも60φで作ってあります。
触媒は……大人ですから(?)、外見だけはきちんとして、中身を抜いて付けておきます。またエンジンの振動対策にジャバラもフランジも購入しました。サイレンサーは安いバイク用っぽい物をチョイス。1個8000円でした。
作業の方は、クルマの下に潜って溶接していたので、かなりつらいものでした。しかも、最低地上高を確保するためにできるだけ回り込んだ形状とします。
こうなってくると、エンジンをかけたくなる衝動を抑えることができなくなります。バッテリーもトランクに移設(エンジンルームに入らなくなった)。オイルと水を入れ、準備を進めます。リザーバータンクはノーマルが付かなかったので、バイク用(VFR400)を代用しました。燃料ポンプも、イグニッションONで作動するように加工。また、このときのためにと買っておいたオートメーターやブースト計、排気温度計なども仮にセットしておきます。
いよいよ実行です。CPUを外しキーをひねります。無事セルは回りました。配線は間違っていませんでした。さすがスワップ3台目のプライベーター、としばし自己満足に浸ります。油圧が上がるまでセルを回し続け、上がったところでCPUをつなぎ、再度キーをひねります。
ところが、初爆はあるものの、どうしてもエンジンはかかってくれません。点火時期を調整、プラグを確認、整備書とニラメッコ……、色々とやってみた結果、パワートランジスタの端子がさびていて、接触不良を起こしていたのが原因でした。ここを磨いてキーON!思い切りデカい音と共にエンジンがかかりました。
私のやってきたことは間違ってなかった、と実感できる瞬間です。Zが車庫の肥やしにならずに済んだという安心感もありますね。
仮に組んでいたパーツをきちんと付け直し、併せてボディの方も仕上げにかかります。軽量化のためボンネットをFRPに、リヤガラスはアクリルに変更。ロールケージも組みたかったのですが、“小僧”っぽくなってしまうので“大人”を演出したい私はあえて付けませんでした(実はこれまでロールケージを組んだクルマ3台を乗り継いでいるのですが……)。内装もすべて付けておきます。
また、パワーアップに伴い、ブレーキも強化しました。フロントはR33のローターとキャリパーをおごってやります。足まわりも見直し、テクニカルな峠というステージに合わせ、リヤをビルシュタイン+8kg/mmのスプリングに交換。これまでと違い、速さより気持ち良く流せればOKというふうにクルマの作り方を変えました。年を取ったのでしょうか?
と、そんな話はこのくらいにして、クルマの方は慣らしを終わらせ、いよいよ峠デビュー!ブーストを最低(0.7kg/㎠)にしても、2速で滑りっ放しでドリフトできます。かなりトルク型のエンジン特性です。強化したLSDのおかげもあるのでしょうが、横を向いても前に進んでいる気がします。
しかし、加速が鈍いのが少し気になります。まあ、3.1ℓのS30Zに乗っていたせいもあるのでしょうが、160km/hくらい出ていた直線で、130km/hしか出ません。ファイナルを4.1でなく4.3にすれば良かったと、少し後悔しています。4.3のファイナルもストックがあるので、ヒマなときにでもと考えています。それでも、ノーマルのZ31とは比較にならないくらい速いことは体感できました。何せ同じ直線で90km/hくらいしか出ませんでしたから。
また例の“インタークーラーレス”ですが、VPCでの制御でアイドリングもバッチリ、中間での息つきもなくスムーズに吹けています。水温も一定で1時間くらいの渋滞も問題ありません。ただ、オイルが漏れていたのはショックでした。とはいえ、FISCO往復でもレベルゲージでしか確認できない程度なので、このまま乗ることにしました。これもファイナルと併せて今後の課題としましょう。
一見VG同士なので簡単にスワップできそうですが、予想以上に加工が必要でした。これならかえってRB26をZR-Ⅱの部品を使って載せた方が簡単ですね。
CB歴10年の私としては、やっぱりCBの真髄はエンジンスワップ!と勝手に思っています。
From CARBOY
★今月は巻頭特集に合わせてスワップネタです。それはいいとして、VGが搭載されてからのZというと、狭いエンジンルームの代表車種になるくらい作業性が悪い。で、どうせやるならハーネスごとも大正解。ただし他車種でこの手を使う場合、エアフロなどの電圧が違っていることもあるので、事前の確認を忘れずに!