前者であることを祈ります
20年〜30年前、日本車とドイツ車とを比較して、エンジン技術ではほぼ日本車はドイツ車に追いついたと言われたものです。
ホンダのVTECの例を上げるまでもなく、出力でみれば当時、日本車のレベルはドイツ車と肩を並べる水準まできていたと言って大きな間違いではないと思います。
ところが、シャーシ性能では、まだはるかにドイツ車の方が高性能であると言われていました。
日産が展開した901運動とは、1990年までに世界一のシャーシを作り上げるというものでした。
どうして、国産車のシャーシ性能がドイツ車に劣っていたのでしょうか?それまでの国産車に大きく欠けていたのは「チューニング」という作業でした。車というものは、車体にエンジンをのっけて、サスペンションとタイヤを取り付けて完成するというものではありません。
試作車をテストコースで走らせて、データを取りながら車体剛性、サスペンションのジオメトリー、スプリングの固さ。これら、無限とも思える組み合わせの中から最適なものを選び出す作業がチューニングなのですが、日本車はこの部分にお金をかけていなかったのです。エアコンの吹き出し口がモーターで左右にスイングしたり、シャンデリアのような豪華な室内灯がついていたり、そういった素人に分かりやすい良さを追求することはあっても、走りの本質を極めることはしてこなかったのです。
そんな時、日産がデビューさせたのがR32スカイラインです。これは当時FRのメートル原器といわれたポルシェ944をターゲットに執念を込めて開発したマシーンで、同じ頃にデビューしたベンツCクラスのシャーシよりも高性能という評価もあったと記憶しています。
やっと日本車がドイツ車のシッポに手をかけた瞬間でした。ところが、同時期にトヨタが発売したマークⅡがバカ売れし、スカイラインは専門家や車好きが極めて高い評価をしたにも関わらず、大半の日本人は見た目の豪華さに釣られてマークⅡの方を選んだのです。(シャーシ性能は比べるべくもなかったのですが)
R32は販売的には失敗作でした。この時、R32がその性能の高さと同じ位に高い販売を成し遂げることが出来れていれば、日産がルノーの軍門に下る事はなかったのではないか(あるいは、もう少し頑張れたのではないか)と思います。
コストカットは見かけの豪華さではなく、走りを支える根幹部分の弱体化をまねく危険があります。どのメーカーも「良い車」より「売れる」車を作りたく思うでしょうから。そして大半の日本人は走りの本質を見極める目が鈍く、豪華に見える車を選ぶ傾向があるように思います。
大切なのは、私たち消費者が賢くなることだ思います。コストカットで車が安くかえるのは結構な事だと思います。しかし、同時に、いいものにはそれだけのコストがかかっているということを知るべきだと思います。
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自動車全般 | クルマ
Posted at
2010/06/20 22:42:01