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大日本縦横無尽浪漫放浪記　～月間三千キロ走行の猛者による手記～

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2010年05月10日 イイね！

渥美半島日帰り旅

渥美半島日帰り旅
渥美半島というのは面白い形をしているなと常々思っている。
三河湾を抱きかかえるようにして、太平洋の荒波から守ってくれる母性的なイメージがする。一方で半島南岸は太平洋の荒波をもろに受ける地域でもあり、力強い男性的なイメージもする。

私自身、愛知県は数十回と訪れているが、渥美半島に足を伸ばしたことがなかった。
地図で見る限り、工場地帯も多くなにやら単調な感じにも思えたからである。
しかし、百聞は一見に如かず。実際の渥美半島の様相は私の想像の領域を遥かに超える、実に魅力的な半島であった。

半島を横断する主要路線は平地部にのどかな畑地が広がる風情で、小高くて緑の濃い山を見ながら、のんびりと道路は太平楽にまっすぐ続いている。ときおり、ごくごくゆるい勾配やカーブを織り交ぜながらも。
海岸沿いに道路を設けようという意思はどうやら皆無のようで、正しく生活道路としての機能も考えられているのかなと思ったりした。
関東地方でいえば、千葉の上総の内陸部辺りを走っている感覚。
時間が進む感覚が緩やかだ。
サーフィンのメッカとして有名な土地もあるし、若々しい活気にも満ち溢れている場所もあるが、半島のほとんどは、のどかな畑作地帯が続いているという印象を強く持った。


半島先端部に伊良湖岬がある。海という青々しいものを陸地として考えてみると、この伊良湖岬は交通としての要衝であることがわかる。知多半島・鳥羽にも近く、さらには名古屋港からの物流も当然、伊良湖の近くを通ることになる。そのせいか、船舶の往来がひっきりなしで、海上は大賑わいであった。

著名な民俗学者柳田國男が伊良湖岬を散策中に漂流している椰子の実を見つけたという。この椰子の実はどこから流れ着いたのか。
島崎藤村「椰子の実」の詩が有名だが、この詩は柳田の経験を基にして作詩されたという。

「名も知らぬ　遠き島より　流れ寄る　椰子の実一つ（以下歌詞続く）」

という詩である。
実際に石垣島から毎年丹念に椰子の実を当流し、黒潮の流れに身を任せるまま伊良湖岬に椰子の実がたどり着くようにという試みがされていて、数年前に実際に渥美半島にその椰子の実が漂着したというのだから、柳田が遥かに思った黒潮の道というのを、地元観光協会が見事に実証して、はっきりとした輪郭をつけたともいえるだろう。ただし、椰子の実を黒潮の流れに放流してから、渥美半島の地に実際に椰子の実が流れ着くのには十年以上の歳月を費やした。とてつもない熱意である。

日が橙色に染まるまえに田原市街に着いた。
市街部程近くに蔵王山という小高い山があることを発見し、試しに登坂してみた。
頂からは渥美半島の地勢が一望に把握できる。三河湾や太平洋、さらには三河の山々まで臨む事ができる。ときに富士山が見えるときもあるという。
三河湾に沈まんとする夕日は本当に美しく、それだけでも田原の地の自然の恵まれ方が途方も無く良いということが了解できる。


渥美半島の面白さは、のどかな里山風景があったり、広漠な平地に大きな畑作地があったり、工業地帯があり、船舶が停泊していたりと、原初的な牧歌的な自然風景と人間によって手を加えられた近代産業資本とが渾然一体となって存立している点にあると思う。
半島のねっこに豊橋という大きな街を控えている関係もあるだろうが、蔵王山の頂にいると、少なくとも埋立地の角ばった土地というのは想像しにくいし、ふもとを降りて、しばらく進むと道幅の広い工業地帯の道路が展開されており、今度は蔵王山のような樹叢豊かな自然を想像するのが難しい。
おもしろおかしき場所である。

そのおもしろおかしき場所の光景を数枚、写真に収めてきた（一枚はスケッチ）。
拝見されたし→「渥美半島日帰り旅」


Posted at 2010/05/10 11:58:31 | コメント(1) | トラックバック(0) | 日帰り旅 | 旅行/地域

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