
去る2014年3月16日の新舞子サンデーにて一三@S13さんの通勤車に乗せてもらった。カローラと並べてみると、当時はポピュラーだった白い4ドア大衆車が二台・・・・・素敵。
EF型シビックの思い出といえば、小学生の頃に母親の友達夫婦がシャトルに乗っていた。紺色の黒バンパーでドアミラーが室内から操作する手動式。5速MTが最高にかっこよかった。そのオーナーは長野で家具職人をやっていて、長身で髭を生やしててメガネをかけていて何だかかっこいいおじさんだった。
思い出はさておき、シビックをカローラと並べるとフードが相当に低められていることが分かる。wiki先生曰く「ヒラメをイメージした」と言われるスタイリングは当時のホンダらしいスタイリングになっている。フードがうんと低く、ルーフは高く取っている。ドアの縦方向の寸法とドア縦柱の長さ比が1程度のビックキャビン。クオーターピラーも思い切って立てられているのでヘッドクリアランスはよさそう。
フードの低さは相当なものだが、ダブルウィッシュボーンサスのおかげで臓物を低く抑え、ヒンジをカウルルーバーに食い込ませている。現代なら歩行者保護を理由にNGが出そうな気がする。とにかくEFシビックは相当にカウルが低い。自分のカローラと比較すると、まずラジエータの位置が高く、フードヒンジもカウルルーバーの下に潜り込んでいる。ガリューさんのABプレリュードと比べてもまだ低いので、ホンダはABプレリュードからEFシビックまでの5年間で相当フードを低くすることに心血を注いだようだ。
そういうプロポーションなので現代の車とはずいぶんと違って見える。
一方キャビンはグッとルーフが高い。ベルトラインはフードの傾向を拾って低め。キャビンは思い切ってルーフが高いのでちょっとチョロQルックだが、不思議と寸詰まり間が無いところが巧みだ。ラゲッジドアの後端をスポイラー風につまんで車体を長く見せているところも伸びやかで良い。
当時のコンサバ車の代表たるカローラと比べるとプロポーションが個性的で若々しく見える。カローラはシビックと比べると、中々のおじさん臭さを誇る。特にこのシビックは後期型でセダンのみコンサバなFrマスクに変更されているにも関わらずカローラよりもずっと若々しい。
ところでカローラとシビックでは車体の構造が異なっている。カローラはルーフとサイドストラクチャをロウ付けによって接合しているが、シビックは現代流儀のモヒカン構造を採用している。モヒカン構造については、過去にハイエースとキャラバンの記事を書いたので、そちらも参照して欲しい。
モヒカン構造のほうが早く合理的に車を組み立てることができる。ドリチャンのような突起も作らなくて済むためすっきりした構造になる。なかなか興味深かったのが、シビックのドアは全周光モールが設定されている。カローラも窓の周囲はSUSやメッキで輝いている。現在でも高級車は窓枠をキラキラ光らせて高級感をアピールしているが、当時はカローラ、シビッククラスでもそれが当たり前であった。カローラは雨どいとして設定されているドリップチャンネルにモールを設定してドアフレーム側を光らせているが、シビックはドリチャンモールが無い。このため、ドアフレームにモールをインテグレートさせて光らせる努力をしている。やっていることが、現代のカムリやアコードクラスの力の入れようだ。
ドアを開けて乗り込んで見ると、当時のホンダらしく「ぺたん」と座るパッケージングだ。低めのヒップポジションにトレイ型で低く抑えられたインパネ、見晴らしの良いカウルがとてつもない開放感を演出している。現代の車では味わえない気持ちよさがある。広さとしては十分あり、見た目のスマートさからは想像できないキャビンの広さがある。
ぺたんと座るため、脚を投げ出さないとパッケージングが成立しない。Fr席は辻褄が合うが、Rr席となるとレッグスペースに十分な余裕が無いため、膝を立てる姿勢になる。Rrシート座面は角度が水平基調なので膝裏のサポートは若干不足気味。(最近だと日産リーフの後席に乗ればこの感覚が味わえる)
さて、メーターは一般的な4眼式だが、レッドゾーンが7000rpmから始まるタコメータはスポーティ。また、AT車にはシフトインジケータが用意されているが、これも直感的な縦型が採用されており、90年代のスタンダードを先取りしている。現代と違ってマルチインフォメーションディスプレイが無いため、メーターの場所取り合戦は今ほど過酷ではない。タコメータの下には半ドア警告灯が非常に分かりやすく配置されていた。一般的な半ドア警告灯と比べると配線の数が多くなりそうだが、あえて採用されており親切。ちょっとびっくりするのはメータ照明の明るさを調整するレオスタットがアナログメーターであるにも関わらず設定されていること。オプティトロンメーターというわけでもなく、必要性は少ないが非常に凝っている。
エンジンを始動して軽く試乗させていただいた。ツインキャブ仕様のD15B型1500ccSOHCエンジンを5速MTで走らせる。当時のカタログ値は105ps/6500rpmと高回転型スペック。AE91カローラもEFI-Sを採用したSE-Limited Gで105psを達成しているので、当時の上級エンジンとしては一つのベンチマークになる出力のようだ。
走り出してすぐにわかるのは、数ミリの操作についてくる俊敏でコントローラブルな特性だ。私もかつてはvivioでキャブ車に乗ってきたが、EFIのカローラや
直噴+電スロのDS3などで感覚が鈍っていると、キャブのシュアな反応は強烈なドライビングプレジャーに繋がる。燃費性能、エミッション性能などキャブを存続させるにはあまりにも厳しい昨今、久しぶりにキャブ車に乗るとその俊敏さに驚く。(特に、一三@S13さんの個体が調子良すぎるのかもしれない)
スペックからは高回転型のホンダエンジンを想像させたものの、思いっきり中低速型の素晴らしくトルクのある乗り味。2速、3速とシフトアップさせると途端に制限速度に到達する。自分のカローラ比べるとエンジンの回り方がスムースでしゃくりが皆無。
運転感覚としては低いヒップポイント、低いカウル、低いインパネがカローラと比べると非常に開放感がある。ベルトラインも胴長短足の私には肩よりも下にあることで独特の感覚をもたらす。やはり、低く低く、を突き詰めれば相当な個性になるのだ。現代の乗用車は歩行者保護要件や、運転席からワイパーが見えてはいけない、という意味不明な内規のせいでトーチカのような閉塞感を与える車が多い中、シビックの運転席から見える景色は80年代ホンダ車らしいものだ。(90年代中期のRVブームの際はこのパッケージングが非難の的となってしまったが)
このように低いプロポーションをとるためにはサスペンションの配置に工夫が必要だ。EFシビックは4輪ダブルウィッシュボーンサスという飛び道具を採用。更にストロークを少なめにしてタイヤの動きを少なめに保ち、独特のプロポーションを実現しているのだ。先に述べたフードヒンジの配置もさることながら、車両全体の至る所で企画通りのプロポーションを実現しようと技術者たちが汗を流した痕跡が伺える。
自動車専用道路を走行した。エンジンの振動も少なく、トルク感あふれるエンジンは自分のカローラよりも優れていると感じる。シャシー性能はある程度の経時変化があるのか多少のうねりがある路面ではステアリングの修正が必要になるシーンがある。最近のように道路事情が良くなって来ていると問題は無い。
住宅地の狭い路地を走らせると、死角が少なく低速トルクが強いエンジンが一気に輝きだす。対向車との擦れ違い、急な坂道発進や右左折で非常に扱いやすい。
本当にコンパクトで軽快で俊敏だ。
ドライブを終えてカローラをはじめとする同世代の車たちと並べて停めた。本当にうっとりするような光景だった。
自分もカローラには長く乗っているが、比べてみるとシビックとカローラは全然違う車であった。グレードが違うので、狙いの性能が異なるものの、カローラGTよりもシビック35Xの方がスポーティな部分、シビック35XよりもカローラGTの方が落ち着いた部分もあり個性を感じる。
また、シビックは25年ほど前の車だが、軽快な乗り味は現代の1500ccに負けていない。現代の車も安全性やリサイクル性、静粛性や燃費性能では優れるものの、ドライビングプレジャー、取り回しのよさという点ではまだまだシビックを超えられていないのではないかと思う。電子制御スロットル、CVT、EPS、歩行者保護対応、スモールオーバーラップ対応、ルーフクラッシュ対応等々、車の走りが悪くなる要素は幾らでもあるが、いつかは最新のモデルでシビックのような軽快感を味わってみたい。
最後に一三@S13様、ありがとうございました。
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感想文_ホンダ | 日記
Posted at
2014/03/29 08:25:12