●普通車だけど競合は軽自動車
前編はこちら
国道沿いに三菱のディーラーが。
少し日が暮れかけていたが応対してくれた営業マンに
試乗させてもらえるように依頼した。
現れたのは三菱の
デリカD:2。
スズキのOEM供給で三菱ブランドを名乗るコンパクトミニバンだ。
かつてミニバンと言えばスライドシートに3列シートを備えたものが
一般的であったが、近年は2列でもスライドドアを備えて
ミニバンを名乗る車も増えてきているが、
このデリカD:2もそのうちの一台である。
ベースとなったソリオはかつてはワゴンRワイド、ワゴンR+と
呼ばれていたワゴンRの派生車種であったが、スイフトのプラットフォームを使い
本格的なコンパクトミニバンとして再出発したのが現行ソリオである。
CMに若年アイドルをうまく使い広告にも力を入れている。
今時のコンパクトミニバンであるが、ソリオは
巧みな商品企画の上で作られている。
まずボディサイズは
3710×1620×1765というコンパクトなもの、
特に全長が4mを大きく割っており、車幅も5ナンバー枠まで8cmも余裕がある。
このサイズ感覚はスイフトよりも小さく、ミラージュと同等の大きさだ。
ウェイクは3395×1475×1835であるから、
ソリオは30cmほど長く、15cmほど幅広で、7センチ低い。
確実に軽自動車よりは大きなサイズである。
だが、室内の感覚は意外と軽と変わらないものだ。
幅は普通車だけあって広々しているが運転席から見える風景は
軽と劇的に違うかと言われると、最近の軽が優秀すぎて差は大きくない。
●乗ると分かる軽との違い
試乗車は最上級のS DJEである。
ソリオとD:2はグレード体系が少々異なるが、
最上級グレードは同じような仕様だ。
友人が試乗した後、私も運転させてもらった。
運転席に座った印象は、
横方向の広さが軽との違いだと明確に分かる。
インテリアデザインはまぁまぁ普通だが決して安っぽさを感じない。
何しろ軽を検討していた友人からすればいたって普通の質感を持つ。
(助手席に保冷蔵機能付き収納があるのが面白い)
走らせた印象だが、1200ccのデュアルジェットエンジンは
91ps/6000rpm、12.0kgfm/4400rpmというスペックを持つ。
高圧縮比を実現できるデュアルジェットエンジンに
アイドルストップ(AS&G)を組み合わせて
25.4km/Lの低燃費を実現。
参考までに
旧型のワゴンRソリオの場合10・15モード燃費が
18km/Lという実力なので、近年のカタログ値の進化は著しい。
ターボとは言え、660cccの排気量故に
回転数で力を稼がなければならない軽自動車と比べると、
充分な低速トルクがあり、カタログ値の比較なら燃費も
ウェイクのターボは23.8km/Lであり、同等と言える。
ボディサイズの小ささゆえか車重は
スイフト+60kg程度で収まっており、軽さが良いのかもれない。
あくまでも軽との比較で考えると、デリカD:2は信号待ちからの発進、
加速、幹線道路での加速はどれをとっても
軽自動車に勝てる動力性能だ。
私が試乗した感じでも普段使いなら十分だし、
遠出もギリギリOKかなというレベル。
ただし、
普通車の中では非力な部類に入る事は否めない。
車に興味がない友人の場合、エンジン回転数が低い領域でも
しっかりトルクが出る1200ccエンジンの余裕度は大きく違うと感じたようだ。
また、車幅やホイールベースの違いから来る安定感を大きく感じて
運転がしやすいと言っていた。
サラッと運転した感じで
友人はデリカD:2を大層気に入ったようだ。
当初の条件の「軽」ではない。
しかし、運転のしやすいサイズと軽よりは安定感のある
走りの良さでこれは軽でなくても良い、と納得した。
夫婦はあまり車に慣れていないので、
運転に不安のある彼らが運転しやすい車が欲しい、
小さい方が好ましいから軽、というイメージで
軽を希望していたとの事だった。
また、自転車が2台積める、という部分だが
ソリオはローディングハイトが高く、
ウェイクのように自転車を2台積む事は出来ない。
これに関してもウェイクの積載イメージを見て
「これは使わないよな」と早々に諦めてしまった。
現在ならFMCしたシエンタが自転車を2台積んで、
充分余裕があるというアピールをしている為
シエンタになったのかもしれないが、
少し車体が大きく、軽と言っている人には薦められなかっただろう。
今回のように軽を検討した後でデリカD:2を見ると、
軽との明確な差が浮かび上がる。
仮に友人がいきなりデリカD:2に乗ると
その有り難味が分からないかもしれないが、
ウェイクやNBOXに試乗した後でデリカD:2に乗ると
その巧みなサイズ感や動力性能の余裕が
「痒い所に手が届く」気遣いに感じられてくる。
それでいて試乗車の場合、
価格は188.6万円、
ベースのソリオS-DJEの場合184.5万円という価格は
ウェイク(174.9万円)やNBOXカスタム(167万円)の様に
軽の最上級グレードに近接したエリアに設定されている。
●デリカD:2かソリオか・・・・・
一週間後、改めて友人と会うために帰省し、
私の実家で麦茶を飲みながら作戦会議を立てた。
幸い、デリカD:2、ソリオのカタログ、
用品カタログ、見積もりを入手済であるため、
あらかじめ購入する車種を決めておき、
その後、具体的な購入条件についての作戦を立てることにした。
友人はデザインが気に入り、
ソリオ・バンディットDJEを選択した。
デリカD:2は
用品のグリルを選べば三菱っぽいデザインになり、
差別化が可能になるのだが3.3万円は少々高い。
ただでさえ車両本体価格が同グレード比較で3~6万円程度高い。
値引きで勝負しない限り三菱は不利になるが、
OEMで価格に小さくない差を付けるスズキは中々手厳しい。
いずれにせよ、友人はバンディットを選択した。
そうなると、スズキ(ソリオ) VS 三菱(デリカD:2)の競合には持ち込めない。
どちらにせよ、私も毎回帰省するわけには行かないので
短期決戦にすべく、スズキソリオバンディットDJEの詳細な仕様を決めて
商談一回で決めることにした。
●バンディットの仕様選択
バンディットはソリオの「カスタム系」グレードだ。
ただ、ひたすら
「悪そな奴は大体友達、悪そな奴と大体同じ」的な
レベルにたどり着いていないことが不幸中の幸い。
グレードは減税になるDJEと標準でそれぞれにFFと4WDがある。
今回はFFのDJEを選択。
次にボディカラーだが、個人的にはコメットグリーン推しだったが、
ここは
友人の妻の「パールホワイト」の強いリクエストによりパールホワイトとなる。
あとはRH側パワースライドドアを選択するか否かで仕様が決まるが、
今回は選択しなかった。
私の実家のステップワゴンも、車庫の右側が壁の為
あまりパワースライドドアの出番がないこともアドバイスした。
LH側に関しては標準装備されている。
これにて
車両本体価格は188万7840円となる。
次に用品の選択となる。
フロアマットはバンディット専用のグリッター(2.8万円)のものではなく
ソリオ共通の最も安いスタウト(1.8万円)を選択。
普段使いのNV性能を考えてトノカバー(1.2万円)、
自転車を積む貯為に荷室フック(0.7万円)、
空調性能を気にしてUV+IRカットフィルム(2.8万円)、
必須のETC(2.5万円)を選択。
ナビは走行中TVなんて見ないので
ワンセグの最も安いモデル(10.3万円)を選択。
運転に不慣れなことからバックモニター(4万円)、
更に新車買うならボディコート(3.8万円)も欲しい。
最終的に27.5万円分の用品を選んだ。
(メンテしなさそうなので別途、3.8万円のメンテナンスパックも選択)
あれ、バイザーは?という方も居るだろうが、
個人的にバイザーは風切り音が大きくなる上、
車両のデザインを損なう為お勧めしなかった。
自分のDS3でも困ったことがない。
車両本体価格+用品で216.4万円となった。
諸費用は19万円程度を見込んでいる。
合計は
235.4万円になった。
1200ccのコンパクトカーでこの価格は高い、
とお思いになるかもしれないが、
今時これくらいの価格になってしまう。
車も随分高くなったものだ。
今回検討したウェイクもNBOXも、ターボグレードに
ちょっと用品を装着すれば軽く200万円を超えて
220万円~230万円クラスの支払額に至る。
新車購入時のバイブルにしている某自家用車誌では
値引き目標は25万円であることを確認済み。
商談と交渉の大まかな筋書きを相談し、
友人と合意した上で最寄のスズキディーラーに電話をかけた。
●試乗+商談
いよいよディーラー到着。
改めてスズキディーラーでソリオバンディットを見せてもらう。
試乗車はJスタイルという特別仕様で少しエグいデコレーションがある。
サイズ感は軽と変わらないが余裕はある。
荷室もローディングハイトは高いが、
助手席が畳めてシートアレンジは豊富と言える。
これなら
車中泊は出来そう。
試乗を進められたので試乗させてもらう。
デリカD:2でも試乗したので、大体の性格は分かる。
地元である事を生かして
狭い路地やきつい上り坂を中心に試乗した。
私も便乗して運転させてもらったが、
動力性能はギリギリ。
軽と比べると多少余裕があるくらい。
ただし、
全体的に静かで低速トルクがある。
敢えて中学時代に通学の為に歩いた様な
住宅街の狭隘な路地を走らせたが、コンパクトで本当に運転しやすい。
これなら
軽自動車を想定していた二人にも大丈夫なはずだ。
友人も、これなら運転しやすいし大丈夫だ、とバンディットに心が決まったようだ。
具体的な仕様を営業マンに伝え、見積もりを作成してもらった。
本体10万+用品5万の15万引で総額220万。
短期決戦故に早々にこちらの事情を説明した。
当初、軽を買うつもりで、複数のディーラーで試乗・商談したこと。
普通車だがバンディットを検討の候補に加えたこと。
実際に試乗してバンディットが大いに気に入って是非購入したいこと。
ただし、予算ははっきり言って軽レベルしか用意できていないこと、
その他、軽陣営の動向を説明すると、担当の営業マンは
「書類を作り直してきます」とサッと奥へ消えた。
緊急作戦会議が始まった。
ウェイクが頑張って205万円程度、
N BOXが190万円程度。
バンディットの場合、某自家用車誌の
目標値引き額が25万円であるから、
総支払額215万円を切ったら納得することに決めた。
OKラインを明確にしておかないと納得して買い物が出来ないからだ。
しばらくの後、営業マンが帰ってきた。
「大変難しいご要望を受けられるように、色々考えました」
「最初にこちらからのお願いになりますが、
5月度登録に間に合わせると言う条件でのお見積もりです」
「お客様のご要望に合うバンディットの在庫がありました」
「少々、車庫証明などの関係で急がせてしまう場面もあるかと思います」
とのこと。
友人は合意した。
提示された見積書は、
車両本体から19.5732万円引、用品から10万円引。
更に車庫証明費用サービス。
総額204.74万円。
最後に、友人経由で紹介制度を利用する旨を伝えた。
これで1.5万円のキャッシュバックが有る。
某自家用車誌の目標額以上の値引き額を
勝ち取ることが出来た為、友人は当然判子を捺した。
注文書を書き終えた後、
「遅れましたが、、、」と頂いた名刺は店長の肩書きが。
どうりで「上司に相談します」と言わないわけだ。
注文時に衝突軽減ブレーキの機能の説明と免責事項等の
長ったらしい説明が延々と続いた。
判子を捺したらお終い、と思っていたらここからが非常に長く、
スズキを出る頃にはぐったり疲れ果てていた。
●まとめ
ウェイクから始まった友人の車選びは
最終的に普通車の
ソリオバンディットに決定した。
たまたま在庫があったり、月末の商談という有利な条件が
重なったとは言え、久々にいい買い物が出来た。
もし、友人が新車にこだわらなければ自社登録を狙ったところだが、
新車にしてはまぁまぁではないかと思う。
初めての車選びのプロセスとしても、
参考書を買い、普通以上に試乗をした上で
自分が欲しい車のイメージを明確にした車選びだったので
ムーヴもウェイクも、N BOXのNA+ターボも、ekスペースも、
デリカD:2もソリオバンディットも
見た上で決めているため、迷いがなかった。
7月現在、友人は納車されたばかりのソリオバンディットを楽しんでいる様で
一緒に車選びをさせてもらった身としてもそれが嬉しく感じる。
車離れ世代が周囲に多いが、車を買い、
その楽しさに気づいてもらえるような一助になれば幸いだ。
これからも、カーマニアの一人として身近な車に興味のない人から
新車購入の相談を受ければ全身全霊をかけて車選びを手伝いたいと思う。