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2020年03月13日

2005年式ボルボXC70感想文

2005年式ボルボXC70感想文 格安中古車ハンターのN兄さんがまた新しい車を手に入れた。2005年モデルのボルボXC70、しかも22万km超えだ。



実用的でタフで大柄なステーションワゴンとして日本でも人気のあった240シリーズの後継モデル850がMCで名称がV70に変わり、1999年にFMCされているが、XC70はV70をベースに内外装をSUVチックに化粧直ししただけでなく、珍しい2.5L直列5気筒の低圧ターボエンジンが奢られV70に遊び心をプラスしたスペシャルティな位置づけのステーションワゴンである。

ステーションワゴンとSUVのクロスオーバーのような成り立ちは、スバルが1995年にレガシイグランドワゴン(ランカスター)で先鞭をつけており、アウディも1999年からオールロードクワトロがデビューしている。カムリグラシアをベースにリフトアップしたハリアーのように一気に乗用ベースのSUVまで追従できなかったブランドやあえて非クロカンのニッチ市場を狙うブランドなどがステーションワゴン以上クロカン未満のモデルを擁していた。



SB系と呼ばれるXC70は2001年から2007年まで生産されており、ステーションワゴンの人気があった日本でも良く見かけたものだ。2020年、まさか私にXC70にじっくり向き合う機会が与えられるとは思いもしなかったが、一週間ほどレンタルしてプレミアムステーションワゴンのある暮らしを満喫した。

●XC70基本スペック
WEB情報から転載+α

標準車両本体価格(東京地区)
578.0万円

駆動方式
4WD(四輪駆動)

車両型式
CBA-SB5254AWL

トランスミッション
アイシン製5AT

全長×全幅×全高
4760×1860×1560mm

ホイールベース
2765mm

最低地上高
215mm

車両重量
1740kg

乗車定員
7名

エンジン
直列5気筒DOHC ターボ

総排気量
2521cc

最高出力
209ps(154kw)/5000rpm

最大トルク
32.6kg・m(320N・m)/4500rpm

燃費(10.15モード)
9.0km/L

最小回転半径
5.7m

タイヤ
215/65R16

ブレーキ(前)/(後)
ディスク式 /ディスク式

サスペンション(前)/(後)
ストラット式 /マルチリンク式

●エクステリア
4760×1860×1560mmという堂々としたボディサイズは、全高以外はハリアーより少し大きいくらいのサイズだ。当時は大変デカく感じたものだが、今ならそこまでの拒否反応は起きないかも知れない。ただ、コンパクトカー専門で乗り継いできた私には今でも十分でかい。



全長が長いため、第一印象は優雅で伸びやかだ。低くワイドなフロントノーズと安心感を与えるドア断面の上にはキャビンが乗っかるデザインはキャビンが小さくスポーティな印象を受ける。ここまではV70と共通なのだが、XC70は最低地上高が215mmと高い。これは私の初代RAV4と同じ数値であり、現代のSUVではセダン相当の数値に留められたSUVもある中では本格的な数値だ。街中で出くわす歩道の乗り上げや踏み切り通過で肝を冷やす機会は皆無だろうし、都市に多いゲリラ豪雨でもある程度の余裕度を持つことが出来る。V70に対しては専用のバンパー、ホイールアーチモールと、
サイドマッドガードとスキッドプレート(お飾りのモール)が着く。シルバーに塗られてアンダーガードをイメージしたスキッドプレート以外は真っ黒な素地色で統一され、ラジエーターグリルも格子が少々大きくなってタフな力強さを想像させるように差別化されている。XC70は素地色が材着でブラウンになっており、素地の黒が強くなりすぎないように配慮されていて洒落ている。



XC70は価格が600万円に近いラグジュアリーカーでありながら、プレミアムを主張せずに控えめですらある。キラキラしたモールやら凝ったパターンのホイールやらそういう加飾装備が目立たず基本的にシンプルなのだ。灯火類もLED登場前ということもあり、バルブ球が使われており現代の目で見れば地味な印象だ。

ところが、XC70を近くでじっくり見てみると例えばウインドシールドガラスとルーフの段差が限りなく0になっている。



或いはサイドドアベルトモール部分の水切りは一般的な形状とは異なりガラス面とモールの隙間が0に近く、寸法的に攻めている。ベルトモールと水切りを一体化し、モール先端を水切りと隙間を埋めることに活用しているのである。



一般的な車のベルトラインモールとは全然違う個性的な形状は元々シンプルなプレスドアの見栄えを邪魔しないスッキリ感の維持に寄与するだけでなく風切り音に効果がありそうな内容であり、内容的にはさりげなくプレミアムだ。

サイドビュー全般としても現代の車としては低くベルトラインも低いので全長の長さが更なるプロポーションの良化に役立っている。個人的にXC60のスタイリングは好みに近く、ずーっと見ていられる。モールやらデカールやらが追加されても、そもそもの比率のよさを加飾要素が邪魔しないからだ。

高い車だからと俗っぽくしなかった点が年式が経っても旧くならないポイントだったのかもしれない。(商品としては思いっきりSUVブームに便乗していたのに面白い)

●内装
ドアを開けて内装をチェックした。本革のたっぷりしたサイズのシート、ソフトなインパネ、本革とウッドが組み合わされた3スポークステアリング、ドアトリムやシートに施されたジグザグのステッチがキャッチーだ。インサイドハンドルもアルミ製でマテリアルは確かに高級と言える。



センターコンソールにはXC70専用の助手席用アルミ製グリップが備わっている。触ると冷たい感触があり本物感とクロカンらしいワクワク感があるが、全体的には至極真っ当というか至って普通のデザインだ。



当時は中国資本が入り、スカンジナビアンデザインにボルボらしさを見出した現代のようなこれ見よがしな部分が無く、質実剛健でタフそうでマテリアルは良いものを使っていると言う良い方向にまとまっている。

運転席に座るとドラえもんのスモールライトによって自分が縮んだのかと思うほど大きいシートに圧倒される。



黒い本革で座面が長く、太ももも短い短足の私には座れなくなるギリギリ許容レベルだった。反対に胴長の私でもシートバックの高さに余裕があり、
ヘッドレストの調整が不要なほどだ。大柄な人が多いスウェーデンらしいシートだと感心した。しかも22万kmも走っているのに全くヘタリを感じさせない座り心地は諸手を挙げて賞賛したい。(RAV4やカローラではすぐ腰が痛くなるが ボルボを運転していて腰が痛いと感じたことは無かった)

マニュアルのチルテレを操作し、パワーシートを調整してドラポジを採るとアクセルペダルが少々内側に寄っている点が気になった。右足一個分の余裕があり右足のフットレストがあるかのようだ。一方フットレストは形状はあるものの幅が狭い上、ウレタン製なので足を載せると頼りなく凹んでしまうシロモノだった。まぁATなのでペダルレイアウトが悪くても然程困ることは無いが、こんなにボディサイズがあるのに寸法が取れていないと言うのは少し残念だ。

ドラポジを決めてシートベルトを締めた。小柄な私はシートを前に出すのだがベルトの取り出し性が良好だ。流石に3点式シートベルトを発明したボルボだけにシートベルトが凄い。エンジンをかけた後、テンションリデューサが備わっており軽い力で装着出来るだけでなく、通常センターピラー下にあるラップベルトの固定点がXC70はシートに取り付けられているからだ。これにより乗員の体格に関わらずシートベルトの装着性が良好に保たれている。



例えば初代RAV4の様に一般的な車で体格の小さな人がシートを前にスライドした場合、センターピラーにあるベルトを取るためには大きく手を伸ばす必要がある。XC70ならシートの位置がどこにあってもラップベルト側はシートと共に動くから装着性に優れるのだ。

デメリットとして3ドアの様にウォークイン機構がある場合は、ベルトが邪魔になり乗降しづらくなるだけでなく、シートベルト単品の性能試験でシート本体の強度が一層求められる点がある。シートベルトの試験は巨大ウインチで改造したベルトを引いてボディが破壊しないか、或いはシートベルト構成品に損傷がないかを見る。私の1989年式カローラの場合はアンカーから出たベルトはフロントフロアに締結されたバックルを経由してセンターピラーのラップアウターに至る。また私の1996年式RAV4の様にバックルがシート付になる場合はフロアで受けていた荷重がシートに入るため、強度が必要になる。XC70のようにラップアウターまでシート付になると更に入力が増えるため、当然シートレールの強度が問われる。一般的にセンターピラーは安全対策で十分な強度があるため、心配は無いが入力が増えるシートは補強せざるを得ないので重くなる。設計的に最も軽く出来るのはカローラのようにボディ部品のみで受ける構造なのだが、
パッケージング的な制約や装着性からシートに強度を持たせるクルマが増えてきている。(CX-30やLS500hも上記構造を採用)

Rrシートにも座った。高級車らしくセンターピラー付けの空調吹き出し口が備わるが、それ以外は相変わらず質実剛健という言葉が似合う。



リクライニング機構は無いものの極めて健康的な姿勢で座れ、尻が前にずれるだの脚が真っ直ぐ納まらないなどと言う心配は一切無用。当たり前に座れて当たり前にシートベルトが締められる。膝前スペースもさすがに余裕があってセダンベースでも広い。快適の為に設計されて、快適の為にコストがかけられている。



また、この個体にはオプションの組み込み式チャイルドシートと3列目ジャンプシートが備わっていた。前者は後席の座面を操作すると座面が持ち上がり
小柄な子供でも大人用の3点式シートベルトが使用できるという優れもので1996年のカムリグラシアや1997年の初代プリウスでも採用されていた。



そして3列目シートはかつてのステーションワゴンのお約束装備ともいえる後ろ向きタイプのシートが折りたたみ式で現れるというものだ。試しに引き起こして座ってみたが、頭がつかえてマトモに座れない。説明書によると身長140cm以下が推奨されるとの事で緊急用に留まる。(2代目カローラスパシオの3列目よりはマシと言う程度だろう。)

内装で指摘したいのはカップホルダーの使いにくさである。緑の照明が入るなど少々華やかだが底が浅くボトルがキチンと保持できなかった。



特に後席用に設定されたCTRコンソール用のカップホルダーは加速時にペットボトルが倒れてしまい実用的ではなかった。



加えて、触感向上のためのゴム塗装がベトベトし始めている点はマイナスポイントだが、N兄さんが購入してきた金額と22万kmという走行距離を前にすると仕方が無い部分かもしれない。みんカラ情報ではべた付きは塗装を完全に剥いでしまえばサヨナラできるらしい。

●自宅から市街地経由で郊外のIKEAを目指す
自宅駐車場に佇むXC70は本当にでかい。駐車スペースの全長をフルに使い切るようなレベルだ。全長4760mmのXC70の隣に全長4020mmのデミオが並ぶとその大きさに息を呑む。XC70の後席にある組み込み式チャイルドシートを使わず、普段RAV4で使用しているチャイルドシートを装着。3歳の子供を乗せていざ出発。助手席の妻は「木と革の内装がお洒落」と高評価だ。



自宅付近の住宅地の角を曲がるだけでその大柄さに気づかされる。最小回転半径5.7mという数値は普段乗っている車から較べると1mくらい大きい感覚だが、現行型RAV4の上級グレードと同値だ。



XC70の場合、ヒップポイントが低く、車体が長いのでオーバーハングの先まで神経を向けなければならず、扱い易いとは言えないものの、私の技量でも何とか扱える上限だ。

一般道を走る際、旧来の狭い道路では特に車幅を持て余す。ミラーがしっかりボディの四隅を映してくれているが、満員電車のベンチシートに座るかの如く常に左右が気になる。路肩の木の枝が気になってステアリングを切ればセンターラインを超えそうになり対向車の存在が気にかかる。



住宅地から信号の無い田舎道に出る際、アクセルを踏み込むとルーズなトルコンのせいかE/G回転2000rpm近傍で留まりながら強めに加速していく。余裕のあるエンジンを積んでいるし、食いつきの良いトルコンなのかと思い込んでいたが、しっかり滑らせてショックレスな加速が持ち味の様だ。余り繊細なアクセル操作に対しては応答してくれないので加速するときはトルコンとエンジン任せなのだが、必要十分以上に速いしイージードライブと言えばその通りだ。



道路の幅が広くなり、車線数が増えて交通状況が良くなってくるとXC70のイージーライド性が輝きを増してくる。信号ダッシュでは意識しなくても周囲をリードする加速が得られるし、多少荒れた路面でもキャビンに角のあるショックは進入しない。



サイドウォールが分厚いタイヤ、しっかりしたボディ、大きなシートが各々良い仕事をしているのだろう。素晴らしい音質のオーディオ(バックナンバーのアルバム)や他愛の無い妻との会話を楽しみながら優雅な移動が楽しめる。ただし、ブレーキは初期の利きが甘く、欧州車としては肩透かしを食らった。社外品のパッド(ダストが出ないタイプ)の影響だと思われる。



ボディサイズの大きさゆえに存在感があるのか、車線変更をする際も周囲が入れてくれる印象があり、人の感覚は現金なものだと思いつつ、市街地ではむしろ割り込まれにくく、割り込み易いXC70は走り易いとすら感じた。



寄り道をしながら郊外にあるIKEAに辿り着いた。せっかくスウェーデンを代表するボルボに乗っているのだから、スウェーデンを代表するIKEAに行く他ないと考えたからだ。



(日本で有名なスウェーデンブランドは他にファストファッションのH&M、輸入住宅のスウェーデンハウスなどがある。ちなみにムーミンやマリメッコ、ノキアはフィンランドだ。)

もちろん音楽に疎い私がABBAの他に唯一知っているカーディガンズを聴きながらである。



夜遅めの時間にした理由は店舗の駐車場渋滞が苛烈だからだ。読みが当たって楽々車を止めてレストランへ。先にスウェーデン・ミートボール(8個)を食べてスウェーデン気分に浸った後で主目的である組立式の棚を探しに倉庫へ行き品物をピックアップした。



車寄せにXC70を駐車し、荷物を積み込んだ。妻のデミオで炊飯器と電子レンジを購入したときは大変な思いをしたが、XC70はRrシートを倒す事無く嵩張る組立式家具が搭載できた。



これには同行していた妻も「すごい」の一言。なんだか自分が褒められたようないい気分になりIKEAを後にした。

●家族を乗せて160km離れた実家へ帰省
新幹線停車駅で東京在住の父を拾い奈良へ帰省した。ETCを抜けてアクセルを深く踏み込むと「グオーン」という心地よい音がキャビンに響く。背中にGを感じながらアクセルを踏み続け、6000rpm手前でシフトアップを繰り返せばあっという間に制限速度の100km/hに達する。



2.5L直列5気筒DOHCターボエンジンの最高出力209ps(154kw)/5000rpm、最大トルク32.6kg・m(320N・m)/4500rpmという性能は1740kgのボディを確実に引っ張るが、ターボと言えどもトルクが急峻に立ち上がらず、NAのようにリニアに伸びる味付けになっている。



100km/h時の回転数はちょっと高めの2200rpm。現代の類似する車格だと1500rpm程度でもおかしくないが、XC70の場合高回転をうまく使いレスポンスの良さが楽しめた。そもそも回転が上がっても音質が良いので静粛性に対してマイナスにならないし、そもそも騒音が良く遮断されていた。



一番左の車線をのんびり走っているとXC70の一番気持ちいい領域に入ることが出来る。市街地ではルーズと評したATだが、高速道路の速度粋ではロックアップクラッチが繋がる為、右足との接続感が急激に良化する。アクセルオフでもMTの様に減速できるほどドライバビリティが良かった。エンジンの動力性能が十分あるので目を三角にして追越し車線をぶっ飛んでいく実力も持っているものの、私は制限速度内のんびりドライブを楽しんだ。

そこで気づいたのは横風が強い高速道路でも安定している点だ。わざわざ車高を上げているが、そのことによる不安感は全く無く、幅広い車体、長いホイールベースと車重が良い影響を与えている。市街地走行では引け目に感じていたディメンションの大きさは全て高速道路で圧倒的にな強みに変換されていった。

高速燃費はディスプレイ読みで12km/L程度であった。加減速の少ない高速道路を一定の回転数で定常走行すれば車重の重さによるネガが出にくいシチュエーションと言える。



ちょっと驚いたのがNV性能の高さゆえ、オーディオの音量を上げなくても下道で合わせた音量で十分音楽が楽しめたことだ。RAV4だったら30%くらい音量を上げないと聞こえないのだがこういう基礎的な性能もプレミアムカーならでは。ここでクルーズコントロールのスイッチを入れた。40kmh~200km/hという幅広いレンジで使えるもののまだレーダークルコンではないので、車間距離は自ら保つ必要がある。元々高速道路の移動はXC70は得意とするところでそもそも疲れないため、高速道路で悠々とクルージングできればそれでも十分運転支援になる。

名阪国道に入るとXC70の良さがさらに際立つ。RAV4やデミオで走ればボコボコのアスファルトや橋の継ぎ目で強い衝撃がキャビンに伝わるが、XC70は豊かなストロークを活用して快適そのもの。乗り心地の良さは市街地から高速まで一貫して良い。

トレーラーがハザードランプを点灯させながら20km/h程度で登る坂道がある。周囲の車は速度を維持する為に変速して登るような場面だが、XC70は少しアクセルを踏み足すだけで悠々と流れをリードして登っていく様子は実に痛快だった。とっさの追い越しなどの限られたシチュエーション以外は比較的低回転で静々と走っているのが似合う。



結局2時間半以上運転して実家へ辿りついた。長時間の移動でも家族全員の疲労が少なく、私の腰も全く痛くならなかったのは大型シートの恩恵か。(ちなみにLS500hでも3時間ほど乗ると腰が痛くなった)



●ワインディング感想
帰省からの帰りは私が若き頃から腕を磨いていた80号線を使って愛知を目指した。ヘアピンカーブの連続区間をXC70はグイグイ登っていくがスローなステアリングゆえステアリング操作が忙しい。アクセルを踏めば力強く加速するものの、ピックアップが緩慢なので複雑な線形のコースを繊細にスロットル操作する走り方には合っていないと気づいた。そんな非名阪をのんびり走っていると、昭和二年竣工の五月橋に辿り着いた。



奈良県初の鉄橋とされる五月橋は戦時中の鉄の供出も免れ、風雨に耐え、維持され永らく活用されてきた。この橋の隣には新しい橋が建設中で、いずれ新しい橋が竣工した暁には旧い橋は撤去されるだろうと友人から聞いた。維持管理も大変で新しい橋を作る予算もついたのだから、撤去した方が良い。変に残して何かあったときに責任が取れない。と考える人が居てもおかしくは無い。外野と中の人では事情が異なるだろうから。でも何らかの形で残すことは出来ないのかなと寂しく感じた。



昭和二年当時は大正三年生まれの亡き祖父がまだ少年だった。そんなときに既に国道25号線が存在し、こんなに立派な鉄橋があったということは凄いし、昭和二年に出来た橋を令和二年になっても渡れることにロマンを感じ、静かな感動を覚えた。先人たちの偉業を讃えたい

(2020年末、橋は撤去されていました。合掌)

ちょっと寄り道を楽しみながら山の中を走ると、緑の景色にパールホワイトのXC70が良く映えて気持ちよくなってくる。荒れた路面や舗装が壊れた路面でも気にする事無く走破できる最低地上高と豊かなサスストロークが役に立つ。
ちょっとしたアウトドア感を味わうにはXC70は最適だ。



後日、XC70に似合わない事は承知でいつものテストコースへ。長い上り坂でアクセルを深く踏み込むと3000rpmを目安にシフトアップを重ねていく。あっという間に高い速度域に達するが、14年生スタッドレスタイヤとラックのガタが怪しいステアリングとこの先のコーナーの事を考えて早々にブレーキペダルに足を乗せた。若干スポンジーなタッチかつ、パッドが社外のダスト対策品の為、欧州車らしい脳みそがずれる様な制動Gは味わえないが、しっかり踏み込めば車重1750kgの巨体の運動エネルギーは熱に変換される。



ステアリングの手ごたえを確かめながらコーナーを曲がり、出口に向かってスロットルを踏み込むと、心地よい5気筒サウンドが車内に響く。わざわざ床まできっちり踏めればレッドゾーン手前まできっちり加速するが、ATとのマッチングを考えると早めのシフトアップでも十分楽しめる。

ドドーっと加速して早めの減速、コーナーを曲がりきって次のコーナーへ突き進む。途中、路面の凹凸が大きい箇所があるが、豊かなサスストロークとロングホイールベースなどが相まって普段なら強烈なショックがくるはずの路面をマンホールを踏んだくらいの程度のショックで通過した。

高級車として求められる「一定の速さ」が与えられ、そのパワーを受け止められるシャシーを持っているが、あくまでも「たしなむレベル」に留まる。ステアリングはスローなセッティングだし、サスもクロスカントリーゆえ悪路走破性も満たさなければならず、身のこなしに重さを感じるのも事実。例えば普段は飛ばさないが、必要に迫られ仕方なく速く走らなければならない時、XC70は大きく破綻する事無くワインディングを攻めていける。これは、フードの剛性を使って操安性能向上に寄与するツインフードロックやガッチリしたサスタワーバーなどで鍛えられた基礎体力があるからだろう。




この個体は、オーナー曰くラックのガタの影響で中舵角で維持しようとすると「カクッカクッ」と強めのトルク変動が手に伝わってきて気持ち悪いので、極力一定に操舵し、また一定で戻すような運転をすれば上記の癖を多少回避できた。

山道が楽しい車の場合「もう一本、もう一本」と走りたくなってしまうが、XC70の場合、実力は高くとも一回走れば十分という結果になった。

●まとめ
平日は仕事が忙しく負荷が高い状況であったが、XC70の持つゆったりとした雰囲気と小さいことは気にしない大らかな味わいのある走りに救われた気がする。

お借りしていた一週間でXC70が持つ魅力の一端に触れることが出来た。90年代のステーションワゴンブームの主役はスバルレガシィだったのは誰もが認めるところだが、その向こうには御神体としてのボルボがいた。90年代中期にはトヨタハリアーに端を発するモノコック構造のプレミアムSUVが現れたことで急激にSUVが数を増やす中でXC70は少々急ごしらえで慌てて作った様なイメージもあった。



そんな中であってもXC70はSUV的な遊び心を表現してながらも、きっちりと高級ステーションワゴンとしての実力が感じられた。仕事で疲れた夜に駐車場で私を待っていてくれるXC70。乗り込んで金庫の扉のように重いドアを閉めると、下界から切り離されたXC70の世界が待っている。帰宅する道中、何も考えたくないなという時にXC70は何も考えなくても安楽に自宅に辿り着ける。無論自動運転というわけではなく、自分で運転する。狭い住宅地でなければ許容レベルで運転し易く、ルーズなATがそれなりに走ってくれ、荒れた路面もいなしてくれるので随分と楽をさせてもらった。

休日のお買い物や帰省の際も同乗者にも余計なストレスを与える事無く早く快適に目的地へ連れて行ってくれた。高速道路では、いたずらにE/Gを回す事無くスムースに加速してくれるし、上り坂に入っても少しアクセルを踏み足すだけで十二分に走ってくれた。もちろんその際の荷物も何の制約も無く、全てを飲み込んでくれる包容力にも助けられた。



既に15年前の車と言えども細かい要素は一般的な現行車を凌駕しており、技術的な見所も少なくないのに、全て黒子に徹している。XC70は能ある大柄な鷹なのである。ただし、能ある鷹はそれなりの対価を要求する。

私は一週間で1112.2km走って127Lのハイオクガソリンを給油した。つまりトータルで8.75km/Lという燃費になる。1700kgを越える車重と直列5気筒ターボエンジンの走りを考えれば真っ当な数値だし、何よりもカタログ値の9.0km/Lにほぼ匹敵していてカタログ値に対して嘘が無い立派な結果なのだ。



しかしリッチではない私はXC70の優雅な走りに感動する一方で、心を殺し、白目をむきながらハイオク満タン給油していたのだ。新車で578万円のXC70を手に入れること自体が一般人には簡単ではないが、例え格安でXC70の中古車を手入れたとしてもそれなりの所得が無いとXC70と共に優雅な時間を過ごせない。

それでもXC70に乗ってのんびり高速道路を走らせているとあたかも自分が落ち着きのある大人になったような錯覚がしてきてむずがゆくも少し気分が良いのだ。そして車を降り、重厚なドア閉まり音を聞くと「父さん母さん、僕も立派になったでしょう?」と。SUV全盛な中でもスタイリッシュで室内も広く、動的性能も優れたこんなヴォルヴォに乗るワタクシカコイイ―なんて錯覚を覚える。

私はこの文章を書いている今も車は出来るだけ小さい方が良いと信じているが、そんな私でも「大きい車には大きい車の世界があるんだな」「こういう車を買って刺激・ストレスフリーな生活も良いな」などと私を惑わせてくれたのはXC70の魅力であり実力なのだろう。昨今の新型車がこぞってエモーショナルばかり訴求し、「エモーショナル疲れ」している私にはこんな風に地味でありながら心安らぐプレミアム性にこそ上品さと格の違いを感じた。



新しい世界を見せてくれたN兄さんに感謝。

●追記
カーディガンズのPVでこんなの見つけました。

そう、酷い扱いですが旧型コロナ。
ブログ一覧 | 感想文_ボルボ | クルマ
Posted at 2020/03/13 01:19:32

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この記事へのコメント

2020年3月13日 20:06
今晩は~。
私も「全世界エモーショナルの洪水」には疲れております…。
そういうクルマ達は陳腐化するのも早いし…あっ、買い替えを促進するためには仕方ないか(爆)
エグさを競ってみたり、使えそうで使い勝手の悪いSUVとか、帯タスな新車が多いです…。
ま、新車に拘らなくても、過去の名作は中古車で手に入れれば良いんですけどね。
イマドキニューカーに負けないよう、今週末も愛車を磨くことにします(笑)

コメントへの返答
2020年3月13日 23:53
こんばんは。
コメント有難うございます。
エモーショナル。決してダメと言うわけではありませんがみんながエモーショナルである必要も無く癒し系キャラも欲しくなるところです。エグイ中でエグイ個性を際立たせようとするとお化け屋敷みたいな車になってしまいます。

私はほぼ中古車オンリーの車歴ですが過去の名作を新車で購入してくれた初代オーナーは尊敬ですね。

XC70は年式を感じさせないキレイさでした。程度が悪いRAV4もキレイにしなくては。

プロフィール

「積雪地域にて。現代のクルマとはいえ10年経つとサビが発生しますね。反対側はドア表面も赤錆出てました。」
何シテル?   08/18 16:02
ノイマイヤーと申します。 車に乗せると機嫌が良いと言われる赤ちゃんでした。 親と買い物に行く度にゲーセンでSEGAのアウトランをやらせろと駄々をこねる幼...
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