
開催は既に終わっていますがトヨタ博物館お蔵出し展という企画展に行ってきたので記録に残したい。
~公式紹介文~
トヨタ博物館では、クルマ館の常設展示車両140台のほかに400台あまりの歴史的に貴重な車両を収蔵しています。今回は「お蔵出し展」と銘打ち、泣く泣く常設展示を見送っている収蔵車400台の中からレアな13台を展示いたします。
60年前に日本や欧州の道を庶民の足として走り回った大衆車、1960-1970年代の日米欧の伝説的なスポーツカー、1964年の東京オリンピックで選手の移動をサポートしたコミューターバス、日本車でありながら日本には導入されなかった海外市場専用車など5つのテーマに分けて紹介します。展示のたびに大人気となるクルマはもちろん、今回初めてご覧いただく希少車もあるのではないでしょうか。活躍した時代も場所も異なる様々なクルマたちをお届けいたします。
そもそもトヨタ博物館は400台余りも歴史的な自動車達を保有しており、さらに幅広いジャンルのモデルを満遍なくコレクションしているということは尊敬に値する。これも新車をたくさん作ってたくさん売って得た収益が原資になっている。企業としての利潤の追求だけでなく社会貢献、特に自動車文化の醸成に一役買っていることは間違いな事実だし、昨今のトレンドで無く1989年から連綿と続けられてきた点も素晴らしい。
その気になれば今のラインナップをまるごと入れ替えても見応えのある「裏トヨタ博物館」が作れちゃうんじゃ無いかとも思われる。
●1950-60年代の日本と欧州の大衆車

↑偶然なのか信号機の並びと一緒
DAF 600(1959年・オランダ)

↑この繊細なエンブレムにはDAFと書かれている。
Commanditaire Vennootschap Hub van Doorne's Machinefabriek
(フップ・ファン・ドールネの機械工場合資会社)を意味する。

↑展示車は1959年式で590cc水平対向2気筒E/Gを搭載。

↑最大の特徴はベルト式CVT(ヴァリオマチック)。画期的だが明らかにスペース効率には劣っていた。
トラバント 601 ユニバーサル(1965年・東ドイツ)

↑紙でできたボディと称されることの多い大衆車。
実際はFRPボディだったが、末期は困窮の余り本当に紙も入っていたという。

↑展示車はステーションワゴンタイプのユニバーサル。
メッキの代わりに車体色で塗装されて装飾も最低限。

↑シート上部の幾何学模様がお洒落

↑ステアリングは何故か燃えたような跡が。
ピンボケながらコラムシフトが見える。

↑コーナー部だけ着いている謎のドアバイザー
三菱 コルト1000F(1968年・日本)

↑ファストバックスタイルを採用し、4ストE/Gを搭載したコルト1000Fは
岡山県の水島製作所で開発・生産された

↑履いているタイヤはBSスカイウェイ

↑Rrタイヤが隠れる姿は後の三菱車(トレディア)が思い出された。
●日米欧、憧れのスポーツカー3選
シボレー コルベット スティングレイ(1963年・アメリカ)

↑低く長いノーズ、短いキャビンは古典的スポーツカーのプロポーション

↑2代目コルベット初期型の特徴は分割されたRrガラス

↑RHD化も容易な左右対称レイアウト。
メーターの意匠に統一感があって良い。

↑フェンダーの峰が美しい

↑回転式のリトラクタブルヘッドライト
日産 スカイラインGT-R(1970年・日本)

↑余りにも有名なハコスカGT-R(ガラスが透明だから本物www)
今でもたくさん走っているが、オリジナルの姿が残る本個体は貴重。

↑オーディオや追加メーターに前オーナーの個性が宿る

↑今よりもエンブレム類がしっかりしていて所有欲をくすぐる

↑美しいサーフィンラインを邪魔しないフューエルリッド

↑タイヤはヨコハマの復刻版

↑これもロングノーズショートデッキが古典的で格好いい

↑必要なのでオーバーフェンダー・リアスポイラー。
加飾とは異なる格好良さがある
ロータス エランS4(1972年・イギリス)

↑ユーノス・ロードスターの先生。とにかくプロポーションが良い。

↑E/G負圧で駆動するリトラクタブルヘッドライトだったはず。ゆっくり優しく開く

↑このインテリアは1960年代スタイル。木目で高級感あり
●日本では見られない日本車
トヨタ バンデランテ(2001年・ブラジル)

↑ただのランクルに見えるんですが異様な角形ヘッドライト
ブラジルで現地生産されていたバンデランテ(開拓者)

↑バンデランテは1962年からブラジルで生産されてきた。
国産化比率を高めるためブラジル・ベンツ製E/Gを搭載していた

↑1968年に国産化率100%を達成、
FMCされて40系ベースとなり2001年まで10万台余りが生産された。
ブラジルトヨタにはトヨタ創業期の700tクランクプレス機が
海を渡って稼働していたという。
トヨタ ハイラックス VIGO(2005年・タイ)

↑海外市場専用車を海外のみで国際分業する
IMV(Innovative International Multipurpose Vehicle)プロジェクトの成果

↑デカールが80年代っぽくて格好いい。

↑インタークーラーもアピール。意匠されてる!

↑耐候性が高い硬質樹脂の内装は2004年というより
1990年代後半のトヨタRV車という感じ

↑テールゲートはTOYOTA模様が欲しい(多分設定あり)
トヨタ アイゴ(2006年・チェコ)

↑CO
2規制強化に対応してBセグ級の商品強化に対応するため、
PSA(現ストランティス)との協業でBセグ以下の参入を行った。

↑欧州ベーシックカーらしい簡素な室内(セミトリム)

↑好き者が泣いて喜ぶリモコンドアミラー(電動とは言っていない)

↑機能的な硬質樹脂ながらツートンのモダンなインテリア。
専用オーディオ(盗難防止)が当時風

↑それでいてコンチネンタルタイヤ

↑サイドシル下部が張り出して整流効果+飛び石対策を兼ねるのが欧州流(乗降性と背反)
●昭和のコミューターバス
トヨタ ライトバス(1963年・日本)

↑ダイナ派生車だったライトバス。爽やかな水色と白色のツートンカラー

↑荒川板金工業(のちのアラコ→トヨタ車体)製のボディが架装されている

↑大きな面積の鋼板を繋ぐ為、リベット留め工法が使われている。(溶接は難しい)

↑リベットも意匠上のアクセントにしているところがカワイイ

↑本個体はトヨタ車体有志によって3台のドナーから復活させた一台。

↑トヨタ2000GTに流用されたRrコンビランプレンズは余りにも有名

↑応力集中する角部にはパッチの設定あり。ここから切れるんだろう
●トヨタ博物館が収蔵する二輪車
三菱 十字号 自転車(1947年・日本)

↑トヨタ博物館が自転車を持っている事も驚きだ。
微かな記憶だと本個体は旧「新館」に展示してあったような・・・
↑三菱重工が民生事業参入の考えて、零戦の素材を使って作った自転車だ

↑設計は本庄季郎氏。(アニメ風立ちぬにも出てくる方)
直線的なフレームが美しく、ダイヤモンド型と較べて乗降性良さそう。
簡素なプレス成型を多用し、接合は溶接では無くリベット留め。
クラフトマンシップを感じる。
三菱 シルバーピジョン(1949年・日本)

↑三菱重工が同じく民生事業に参入した一台。

↑シルバーピジョンは平和の象徴鳩に由来する。
手書き感あふれる三菱マークが微笑ましい

↑国内市場で善戦していたが、4輪参入のため生産中止となった。
ホンダ スーパーカブ CA100型(1962年・日本)

↑CUBとは猛獣の子供という意味。小型でパワフルなイメージから命名。
カブは補助エンジンキットだったが、これを継承するオートバイにスーパーカブと命名

↑展示車は輸出仕様車で楽しげな赤白ツートンカラーである。
ならず者の相棒というイメージだったオートバイの否定的イメージを明るい宣伝広告によって払拭し、
のちにビーチボーイズの楽曲まで作られる程の人気を得た
~おわりに~
お蔵出し展はトヨタ博物館のコレクションの手厚さに驚くだけでなく、内容的にも楽しめた。企画展の装飾も実際の収蔵庫をイメージしている上に照明も薄暗く、こっそりと収蔵庫を除いているような楽しい感覚に浸れるのも嬉しいものだ。
いつもなら、全台では無いが360度見えるようになっていたり、じっくりとディテールに浸れる展示車もあったのだが、所狭しと置かれていてじっくり見られないのが少し寂しくもあり、同時に一台でも来館者に見てもらいたい!という作り手の意気込みとも感じられた。
展示を見終えて出ようとすると、白黒のパネルが目に飛び込んでくるが今回展示されていなかった収蔵車たちのスパイショット?である。
前期型ヒラメのセリカ(特にノッチバック)はモダンな80年代デザインで好きなのだが、渋すぎるビスタGTにはびっくり仰天した。
いつの日か「企画展 トヨタツインカム搭載車展」があれば展示していただきたい。