2020年から本格的にアジサイの育種をはじめ、その様子を定期的にここに載せてきましたが、最近はアジサイ以外の植物も少しだけですが育種に乗り出しています。アジサイもまだ特筆すべき成果が出ているわけではありませんが、これまでの経験を活かし、もう少し育種の幅を広げようと思っています。アジサイの場合はアジサイのみでやっている方も多いですが、中には様々な植物を手掛けている人たちもいます。有名なところでは、育種仙人とも言われ植物の潜在的に持っている形質を引き出す松永一氏や、今では当たり前に売られているサフィニアを生み出した坂嵜潮氏、育種に人生をかけているのではというくらい育種好きが伝わってくる川越ROKA氏などがそれに当たるのではないかと思います。御三方とも面識はありませんが、育種家としては個人的には神の領域の方々だと思っています。特にパンジー・ビオラで有名な川越氏は、自分の育種した系統の種子を出し惜しみすることなく提供するなど、育種の楽しさも広げようとしている点などは凄いと感心しています。もちろん育種は趣味でない限り商業的にも成り立たなければやっていけないので、パテントをとって利益を考えるのは当然のことですし、権利や自分の系統を外に出さないという選択も正しい選択肢です。今後、自分がどんな花を生み出せるかはわからないですが、成果が出たらそのあたりもどうするかは考えたいと思います。今考えたところで、それは捕らぬ狸の何とかになってしまいますので。ただ、一つ言えるのは、育種家であれば、今までにない新しいものを生み出したいという目標は同じではないかと思います。
ということで、まだまだ育種家を名乗るには恐れ多いレベルではありますが、オリジナルアジサイ2022の現状を記載していきます。
まず2022年は58パターンの交配をおこない、10パターンの組み合わせが発芽、現在13系統を育成中です。どれも期待値の高い系統ばかりではありますが、その中でも特に期待しているのが22-02ME、22-06AL、22-07KS、22-08KEです。ただF1でどこまで思い通りの形になるかが問題です。アジサイの場合、F2まで追うとなると、最低でも4~5年は見ないといけません。気が遠くなる話ですが、育種には根気がつきものです。
ではここからは育種中のオリジナルアジサイ2022の途中経過を紹介します。まずはじめに紹介するのが22-01ANです。播種時期は9月上旬と一番早かったのですが、何故か発芽が遅く、その後の成長もややゆっくりだったため、サイズはまだそんなには大きくありません。花粉親、種子親ともに花色はかなり濃い色で、葉色もかなり濃い品種ですが、F1世代もやや葉色が濃いものが多く見てとれます。去年の経験上、葉色の濃い実生は、成長がやや遅い傾向があるようなので、じっくり肥培しながら育成していきたいと思います。
続いて22-02MEです。種子親が太めの白覆輪、花粉親が色付きの覆輪の組合せ交配になります。両親ともにかなり交配が重ねられた品種なので、F1はもしかすると花のバラつきが大きいかもしれません。うまく両親の良いところを引き継いでくれたらかなり面白いものができると思うのですが、そううまくはいかないのがアジサイの育種です。
そしてこちらが22-03MHです。上の22-02MEとは花粉親が違う半兄半弟の関係になります。こちらも白覆輪と色付き覆輪の組合せです。そしてこちらは花粉親が若干ヤマアジサイの雰囲気がある品種となっています。そのためか、F1の代でも葉の産毛が多く、他とは少し違う雰囲気が感じられます。ただその反面、直射日光にやや弱いようで、大きく育った1本以外は直射日光でやられてしまいました。しかし弱い個体はどんどん淘汰され、強健なものを残すというのを大前提としているので、これはこれでOKです。弱い個体はいずれうどん粉病などの病気で淘汰されるため、それであれば早い段階で淘汰された方が全体のことを考えると良いという判断です。
続いては22-04MHです。上の22-03MHと後ろのアルファベットは同じですが、こちらも花粉親が違います。こちらは白覆輪と単色八重咲き品種との交配になります。八重咲き品種はなかなか花粉を採取できないものが多いのですが、わずかながらに採取できた花粉を使い交配させたものになります。若干成長曲線が緩やかですが、春以降の成長に期待してじっくり育成していきたいと思います。
それから22-06ALです。22-05MSもあるのですが、22-05MSは発芽率が悪く、現時点で1本しか残っていないのでここでは割愛します。ただ、両親の組合せは悪くはなく、面白い花が期待できそうなので、大事に育てていこうと思います。そして22-06ALですが、こちらは銅葉(カラス葉)系統同士の交配になります。銅葉系統を交配に使うと経験上、座止(アボーション)個体と呼ばれる発育不全になる実生が多く発生すると感じていますが、やはりこの交配でもそれが見られます。特に本葉の時点で銅葉が出ると高い確率で座止個体になる気がします。発芽率は悪くはなかったのですが、銅葉の性質が見られて順調に育っているものを選別して鉢上げしたら数が少なくなってしまいましたが、貴重な選抜組を大事に育てていきたいと思います。
次に紹介するのが22-07KSです。こちらの実生の花粉親は若干ヤマアジサイの雰囲気を残す品種です。種間雑種もF1世代だと雑種強勢の性質で強健になったりするようですが、おそらく花粉親が種間雑種のF1とかF2くらいだと思うので、この22-07KSは種間雑種としてはF3とかF4世代で、雑種強勢というほどの強さはないと思います。それでも両親ともに丈夫な品種ではあるので、余裕で屋外越冬はできるレベルの丈夫さにはなっているかなと思います。また、この実生の親もどちらも観賞価値の高い品種なので、それぞれの良いところが出てくれたらと思います。
そしてこちらは22-08KEです。どちらの交配親も非常に観賞価値の高い品種ですが、花粉親の品種が耐病性や耐寒性にやや難があります。種子親の方は強健種なので、丈夫さは種子親から引き継いでもらえたらと思っているところなのですが、現時点では成長曲線も一番良い系統で、何となく丈夫そうな雰囲気があります。交配親、現時点での成長度合いを考慮するとオリジナルアジサイ2022の中では一番期待のかかる系統です。このまま順調にいけば2025年には花が確認できるのではないかと思います。
最後に紹介するのが22-13MHです。22-09KOというのもあるのですが、今回は割愛し、10~12番系統は発芽しなかったため、次の系統番号が22-13MHということになります。こちらはオリジナルアジサイ2022で唯一のガク系×ヤマ系の種間雑種になります。2021年は何パターンか種間雑種を試したのですが、2022年はこの1系統のみになります。ただ、採れた種がそんなに多くなく、結局発芽したのも4つのみ、成長具合を見ても最後に残るのは1本か2本かなといったところです。ただ2022年の種間雑種はこの1系統のみですので、何とか花まで確認できるようには育てたいと思います。
上記の他にも特殊な処理をした実験系統があと3系統あるのですが、そちらは長くなってしまうので今回は割愛します。
さて、冒頭に記載した育種の幅を広げる話ですが、アジサイの育種は結果が出るまでに時間がかかるというデメリットがあるため、アジサイの育種をやりつつ、1年で結果がわかりF2も短期間で見ることのできる一年草の育種も少しだけやってみようかなと考え中で、現在少しずつ知識を吸収している最中です。また、アジサイの育種も2023年はさらに幅を広げるため、これまでに試していないような交配もおこなっていけたらと考えています。いつか育種家としてベンチマークにされるくらいの花を生み出せたらという目標をもってどんどん育種に励みたいと思います。最強のアマチュア育種家を目指して今年も独創的な交配に挑みます。
Posted at 2023/02/10 22:11:36 | |
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