
スイフト試乗記後編です。
さて、早速走りだしてみましょう。まずタイアをひと転がし、歩道との段差を越えた瞬間に実感できる、足回りのしなやかさ。タイアは185/55R16という立派なサイズのBSトゥランザが装着されていますが、低速域でもドタバタすることなく、キチンと履きこなしている点にまず驚き。唯一、気になる点と言えば、16インチ装着車は最小回転半径が5.2mとかなり大きめになってしまう事。可変ステアギアレシオのおかげでステアリング操作は忙しくありませんが、最初のうちはこの小回りの効かなさは慣れが必要でしょう。
エンジンは1.2Lで、シャシー性能を考えると完全にパワー不足ではありますが、そこはスポーツに期待…というところか。もっとも、同コンパクトクラスでは標準的な動力性能であり、それだけシャシーにゆとりを感じさせる…ということ。改善されたのはCVT。以前のスイフトが1.3LATから1.2LCVTへと変更を受けた際、アクセル操作に対して回転が極端に上がり下がりして、いまいちリニアさに欠ける印象がありましたが、新型はそういった部分はなし。この新しい副変速機付のCVTの幅広い減速比のおかげで、実に自然なフィーリングとなっています。XSに装備されるパドルシフト、または今時大変嬉しい5速MTをチョイスすれば、アンダーパワーをカバーしつつノーマルモデルでも十分に楽しめそうです。
さて、今回スイフトは、様々な部分がレベルアップしながらも、軽量化にも重点が置かれ、ほぼ全モデルで1トンを切っています。ここで同じコンセプトで思い出すのが、マツダのデミオ。およそ100kgの大胆な軽量化が行われ、コンパクト本来の軽快感や俊敏さを取り戻してそれが大きな魅力になっています。しかしながら、2代目デミオが持っていた、しっかりとしたボディ、スタビリティの高さや乗り心地の快適さなどはある程度トレードオフされていたという事実も見受けられました。
スイフトが凄いのは、そういった「軽量化による弊害」が一切感じられない点。もちろん先代との軽量化分差は大きく違いますが、1トンを僅かに切る点は現行モデルでは同じ。しかしながら軽快感とスタビリティの高さの両立、クラスを感じさせない安心感を感じさせるのが、今回のスイフトの一番気にいったポイント。これは今までの国産車ではあまり体感できなかったものです。現行デミオの飛び抜けた機敏さだけを見ればスイフトよりも楽しさは上…かもしれませんが、総合的な実用車としての実力はスイフトの勝ち。パッソなどとは比べ物になりません。直接的に大きく影響を喰らいそうなデミオは、マイナーチェンジでの熟成に期待、というところでしょう。
実際にはシティユースでの試乗に限られたので、是非とも機会があれば何かの形で借り出して、様々なステージで改めてテストしたいと思います。もしこれにアイドリングストップが装着されて、スイフトスポーツが170~180万円くらいで登場したら…日本車にもまだまだ希望が持てそうです。
さて最後に。プチバイヤースガイドを。買うならまずお勧めは124万円のベースモデルXG。これで装備的にはなんら不足なし。アルミではありませんが、15インチなら小回り性能もアップしてパワーとのバランスもより良好となるでしょう。むしろ、ベースモデルとは名ばかりの充実度なので、マニュアルエアコンでエンジンプッシュスタートもいらないので、もっと安価なグレードがあってもいいくらいです。
試乗したXLは売れ筋の中間グレード、XGから約7万円アップで、16インチタイア+アルミホイール、本革巻ステアリング、ドアミラーウィンカーなどが装着されてお買い得感は確かにあります。MTが欲しい場合はこのグレードが最高となりますが、しかしもしCVTモデルでもいいというならば、XLよりももう1つ上のXSを猛烈プッシュ。
価格はXGから約23万円、XLから約16万円高くなりますが、XSはまずESPとサイドエアバッグが標準装備。これでもうこの差額分は埋まったと言ってもいいでしょう。これに加えて、リアディスクブレーキ、クルーズコントロール、7速パドルシフト、フロントアームレスト、フォグランプなど、この内容で147万円は間違いなくお買い得。ちなみに、トヨタのパッソ1.0XにサイドエアバッグとVSCを装着した場合、およそ120万円強。先日登場したフィットではハイブリッドの最上級モデルにしかVSA+サイドエアバッグは標準ではなく、これだと210万円。ちなみにポロ1.2TSIコンフォートラインは213万円。街乗りコンパクトにそこまでの装備はいらない!と言われればそれまでですが、150万円以内の国産車のチョイスでは間違いなくこのスイフトは「世界的ライバルと比べても恥ずかしくない」立派な1台だと言えるでしょう。
もっとも、絶賛だけではなく、できればXGやXLにもESPの設定が欲しかった(現状ではオプションでも装着不可。実質的に現状ではMTとESPの両立はできない)ですし、せっかくスプラッシュはリア中央のヘッドレストと3点式ベルトがあるのに、スイフトには設定なし。こう書きならべると、どこぞの自動車評論家みたいな事になってきてしまいますが、スイフトが高い志を持っていると感じたからこその、さらなる要望として書き記しておきます。
そしてもっと現実的な方に目を向けると、例えばボディカラーの設定がこのクラスでは少なめな6色しかなかったり、またこれは根本的な問題点となりますが、スズキのディーラーというのは、特に田舎の方に行けばびっくりするくらいのショボさであるということ。この点で言えば、「カフェプロジェクト」と銘打って、ここ数年女性ユーザーを取り組むためにディーラーを整備してきたダイハツと比べて大きなハンディとなりそうです。別にレクサスのようにしろとまでは言いませんが、実際にMRワゴンがモコになり、パレットがルークスになり、スズキの軽が日産ブランドとして販売され元祖モデル以上の人気になるというのは、ディーラー整備網の弱さも間違いなく要因の1つとなっています。いくら力作でいいクルマを作っても、最初から購入リストに並ばなければ意味がありません。自分のようなクルマバカならばディーラーのボロさどうこうは気にせずクルマ自体の性能で判断しますが、特に若い女性ユーザーならばそうともいかないでしょう。パッソみたいなクルマが売れてしまうのは、ある意味でそういったターゲットユーザーをしっかり狙い撃ちできるトヨタの強みでもあります。
以上、少しスイフトとは別の方向の話となってしまいましたが、実際乗れば確かに評判通りの素晴らしい仕上がり。とりあえず現状で周りの同クラスと比較すると、唯一最近マイナーチェンジしたフィットのズバ抜けた総合力の高さの牙城は、さすがにこのスイフトでは崩せそうにありませんが、もうすぐ登場予定の新型ヴィッツや、パッソ、マーチ、デミオあたりは、相当焦りを感じた方がいいかもしれません。今このクラスは二極化が進んでいますが、パッソやマーチのような路線を「中途半端」に突き進んでいると、必ずしや韓国中国車にやられる時が来てしまうでしょうから…。
さて、次回は、そんなスイフトとは悪い意味で対照的?な評価の多い、日産の新型マーチの試乗インプレッションをお届け予定。こちらは運よくアイドリングストップ装着車を丸1日お借りして、いつもの様々なステージをもつコースで、じっくりと試す事ができました。スイフトでは評判通りの良さを実感しましたが、マーチは評判通りの辛口評価?となるかどうか…。ネガティブな印象で走り始めましたが、評価のほどは想像していたよりもあらぬ方向へ…!? 次回の試乗記もお楽しみください。
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スズキ | 日記
Posted at
2010/10/17 22:19:21