前回のロードスターの試乗記は、PVのほうを見る限りかなり好評だったようで、大変有難い限りです。ありがとうございます。
これからもどんどんお友達の方の数やMyファンが増えていくと嬉しいなぁ…と、妄想しております(笑)。
さて、MPVにお乗りのやまと23Tさんから、その前回のロードスター試乗記にて「同行したコペンの印象は?」とのコメントを頂きました。この時同行していたコペンと合作でインプレッションを書いていたのですが、たまたまロードスターだけをフューチャーする形になって、いささか不自然な流れに^^;
そこで今回の機会に、ロードスターと一緒に同行したコペンについてのインプレッションをお届けします。
FFとFR、660ccの軽ターボと2LNA…スペックだけで見ると全く比較対象にならないこの2台。
しかしながら「オープンカーであること」「2シーターであること」「マニュアルミッションであること」、そして何より「運転していて、思わず笑顔になってしまうこと」に関しては、もう紛れもなく「ライバル」な関係にある数少ない日本車2台と言えます。
正直言って、ワインディングでは抜群に楽しいけども高速ではちょっと直進性に難がある(苦笑)コペン、長距離移動はさすがにちょっと疲れるところもありますが、登場してからはや8年、この小ささと価格から得られる楽しさは、ロードスターと比較して「性能」で負けても、「楽しさ」では大差はつきません。
もっとも、いまやこのコペンもコミコミで200万円級…セカンドカーとしてお手軽に…簡単に手を出せる存在ではないとも言えますが、いやいやそこは「いまだに100万円以上の中古車がゴロゴロあふれている」というこの驚異的なリセールバリューの高さを考えると…とってもお得な買い物、かもしれません。(笑)
ちなみにこのコペン、大阪の交野市にある「カミタケモータース」さんでお借りしたレンタカー。コペンの、しかもATに加えてMTもレンタカーを試せるということで、関西でも結構有名なお店です。会員に結構な頻度で配信されるクーポンを上手く利用すれば、MTのオープンカーが時には4000円くらいで丸1日楽しめちゃう時も…!?
おまけにこの今回借りたパールホワイトのMTコペンは、MOMOステアリングにHIDにシートヒーターまで付いた豪華仕様。そもそもまずATだけでなくMTのレンタカーも用意してあるだけでも、クルマ好きにとっては大変貴重で有難い存在なので、以前から何度もお世話になっています。笑
…そして、最近ネタ不足が深刻な状況ではありますが(苦笑)、前回のマーチ以来ようやく近日、「話題の最新型車」をたっぷりとテストする機会を設ける事ができました。またその時はこの場でレポートしたいと思っています。
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かつて90年代初頭、ABC3兄弟と言われた軽スポーツ黄金期がありました。AはマツダオートザムAZ-1、Bはホンダビート、Cはスズキのカプチーノ。この時ダイハツは独自の軽スポーツカーを持っておらず、苦し紛れにリーザスパイダーを出してお茶を濁していただけ。…そして時は経て21世紀に突入した2002年、ダイハツはライバル不在の中、メタルトップの超コンパクトオープンスポーツを登場させました。それがこのコペンです。
かたやガルウィングミッドシップ、かたやオープンNAミッドシップ、かたや4輪ダブルウィッシュボーンサスのFRオープン、それらと比べればFFベースのこのコペンは見かけ倒しと思われても仕方ないかもしれませんが、4気筒ターボエンジンに電動ルーフ、角部クオリティの高さから見ても軽を感じさせるのはサイズだけ…月産500台が限界ながら、販売当初の人気の高さは相当なものでした。驚異的とも言えるリセールバリューを持つオバケ的存在である事を見ても、8年たった今でもその魅力はまだまだ健在と言っていいでしょう。
まずコペンの大きな魅力の1つは、古さを全く感じさせないそのスタイリング。いかんせんちょっと可愛すぎる感も少しありますが、ボディカラーのチョイス次第で老若男女それぞれどんな世代にもよく似合うクルマです。また5コートの塗装のクオリティの高さやライト・マフラーなどのデザイン処理能力の巧さなど、軽自動車という限られたディメンジョンの中でよくぞこれだけの存在感を醸しだす事ができたな、と改めて感心させられてしまいました。デビュー以来ほとんどデザインに関する部分に手が加えられていないのも、その完成度の高さを物語っていると言えるでしょう。
インテリアのほうは、国産車中もっともタイトな空間を持つ1台?ステアリングはテレスコ・チルトで調整幅は結構あるものの、178cmの自分にはポジション的にはギリギリ。シートのサイズ的には十分なものの、座面ももう少し落として、ヘッドスペースとステアリングの位置関係を調整したいところですが、これはシート交換などで対策はできそうです。またスペース的な問題も、「スポーツカーらしいタイト感」と置き換えてしまえば、不満にはなりません。屋根を開け放ってしまえば、開放感もグッと増します。
エアコンの吹き出し口がNBロードスターからのお下がりパーツなのは有名な話。質感はさすがに7年の月日を感じさせる部分があるのは致し方ないところでしょうか。テスト車に装着されていたMOMO製のステアリングはこの車にはぜひマストで装着しておきたいアイテム。ルーフの開閉は、左右2か所のロックを手動で外し、サイドブレーキ下のスイッチにて操作。コストのためルーフ開閉をモーター1つで行っているため、やや動作音が耳につきますが、さほど大きな問題ではないでしょう。それよりも、クローズド時のガタガタと耳ざわりなルーフの干渉音のほうが問題。これは時折ディーラーなどでルーフの調整などのメンテナンスが必須と言えます。
またその副産物的なメリットとして挙げられるのは、ルーフクローズド時のラゲッジスペース。FFベースの利点で、通常ではかなり大きめの広さが確保されています。またトランクフードもオートクロージャー付。ルーフが格納されると大部分が占領されてしまいますが、それでも上手く荷物を滑りこませたり、キャリアを装着したりなど、様々な工夫で実用性は確保できそうです。
さて、早速走りだしてみましょう。一緒に連れ出したロードスターと比べてしまうとさすがに見劣りしてしまいますが、FF車にしてはシフトフィールもなかなか。1速に入れてクラッチミートし発進してみると、ギア比のクロス具合がよく分かります。1速はほぼ発進のみで、そこからすぐさま2速、3速とシフトアップ…50km/hは完全に5速の守備範囲。100km/h時の回転数は5速で4000rpm近く回ってしまうので、この車には是非とも6速が欲しいところです。
(ちなみに後日、4速ATのコペンもテストする機会があったのですが、なんとギアが1つ少ないにも関わらず、100km/h時のエンジン回転数は4速で3800回転ほど。おかげで高速巡航はATモデルのほうが幾分楽でした。マニュアルモードのあるこのATとコペンとのマッチングはなかなか良く、スポーティな走りをしても十分対応可。気軽にATモデルでコペンを楽しむのも大いにアリなチョイスだと感じました。)
エンジンは今となっては少数派となった660ccの4気筒ターボ。パンチ力では3気筒に劣るものの、4気筒ならではのスムーズなフィーリングはしっかりと感じられます。スタートのセル音以外は、安っぽさが微塵もないサウンドも◎。ターボの過給は2000回転からかかり、それ以下だとさすがに線の細さが感じられますが、先述のクロスレシオの5速MTのギアレシオのおかげですぐさまトルクバンドにのり、加速感に全く不足は感じられません。レブリミットは8500回転とかなり高め。実質上6000rpm以上はただエンジンが回っているだけの様子ですが、こういった非日常的な雰囲気はスポーツカーには大切な事です。
このコペンの特徴は、オープンとクローズドで大きくステアバランスが変化するということ。もちろんボディ剛性の変化という事もありますが、800kg台という軽量なボディなので、重いルーフがどの場所にあるかは、思っている以上に大きくクルマの挙動に影響します。ボディのしっかりさを感じられるのはもちろんクローズド状態。オープン状態ではさすがにボディシェイクする感じは否めず、バックミラーの視界がワナワナと震えてしまいます。しかしながらクローズド状態だとどうしても重心の高さを感じてしまい、またリア荷重が抜け気味となるため、直進性やS字などの切り返しでのヨーの発生が前後軸でのズレるような挙動を見せ、ちょっとヒヤッとさせられてしまいます。この違和感はオープン状態にするとだいぶ緩和されるので、おそらくトランクにルーフが収まると前後バランスが整うのでしょう。個人的にはボディ剛性面ではハンディがあるものの、このコペンはオープン状態でのほうがハンドリングの面ではバランスよく思えました。
タイアは165/50R15。ブレーキはリアがドラムなのが少し残念で、タイヤのキャパシティに対してブレーキのプアさが少し残念。絶対的な効きはもちろんの事、踏み始めのフィーリングや剛性感など、ここはパッドやホースなどに手を入れて少し改善したいポイント。テスト車のサスペンションはノーマル仕様。決して乗り心地は快適なほうではありませんが、個人的にはもう少し締め上げてもいいのでフラットさやダンピングの良さを強めたいところです。ダンパーがタンク別体式となるスポーツサス仕様や、特別仕様のビルシュタイン仕様などではもう少し印象が良くなる事でしょう。
欧州仕様にはNAの1.3Lモデルが用意されていたり、TMSで1.5Lを搭載したコペンZZというコンセプトモデルも登場したりしましたが、「過給化による排気量のコンパクト化」がトレンドの現在からすると、このコペンのエンジンの大きさは今の風潮に合っているのかもしれません。ただ相当クロスなギア比や加速性を意識したターボのセッティングにより、燃費面では正直言ってあまり褒められたものではありません。今回のテストでも、かなりワインディングで積極的に走り回った事もあって、燃費データは11km/Lちょっと。一緒に連れ出したロードスターと大差ない事も考えれば、もう少し伸びて欲しいというのが正直なところ。
しかし、このコンパクトさと機敏さは、狭い日本のワインディングでは大きな武器。上手くターボの過給を落とさないように積極的にギアチェンジとアクセルワークに気を配り、タックインを生かしてキビキビ走るのはまさに痛快。絶対的なパワーが64psという事もあり、積極的にアクセル全開ができたり、それによるトラクション不足などの弊害もさほど感じないというのも、コペンが身近なレベルで手足のようにキビキビと扱える楽しさにつながっていると言えるでしょう。理屈だけでなく、実際ちょっと気合いを入れれば相当なペースで駆け回る事も可能です。いまやエントリースポーツカーが皆無とも言える昨今、改めて注目すべきであろう小さな巨人。まさに日本を代表する1台として世界に誇れるのがこのコペンだと言えるでしょう。
前回のTMSでは、OFC-1という名で後継モデルの提案がありましたが、最近は全くの音沙汰なし。しかしダイハツは決してこの貴重な火を消してはいけません。次期モデルの開発が厳しいのであれば、しぶとく細かい改良を加えて、ぜひとも末長く生産し続けてほしいと思います。