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2011年11月05日 イイね!

【試乗記】 ダイハツミライース ロングラン試乗!

【試乗記】 ダイハツミライース ロングラン試乗!

さて前回告知していた通り、今回ご紹介するのはミライース。個人的にも大注目の1台であり、この早いタイミングで卸したての新車による500kmのロングラン燃費テストを実行する機会に恵まれました。今回はそのレポートをお届けしたいと思います。





ボディカラーはホワイト、グレードは上から2番目のX。最上級モデルのGは、VSCやアルミホイールなど装備充実していますが、価格も112万円とそれなりに高くなってしまいますし、1つ下のLはXよりちょうど10万円安いものの、その分インテリアのクオリティも下がり、キーレスエントリーや電動格納ミラーなどの装備がなくなるのもちょっと痛いところ。この100万円をギリギリ切るXが最もバランスが良く、また今後も売れ筋グレードになるでしょう。



というわけでまずはスタイリングから。第一印象は「シンプル」。前回のTMSで出典された2ドアで割り切ったコンセプトモデルのほうが、よりチャレンジングで、より「クルマ好きにウケる」ものだったかもしれませんが、今回は冷静に「現実の消費者・ユーザー」の意見を取り込み、その層に売れるよう狙い定めた車両コンセプトとデザイン。これはこれで「商品」となってしまった事にクルマ好きは興ざめしてしまったかもしれませんが、今回このダイハツの現実的決断・判断を、僕は支持したいと思います。事実、先々代ミラでも直噴エンジンを搭載した燃費追求グレード(MTのみ)だったり、先代ミラでもアイドルストップ仕様を設定したりと、それなりに探究していた事が伺えましたが、お世辞にもヒットとしたとは言い難いものがあります。エコカーと言えども、その効果は、「普及してこそ」意味がある。実際、このクルマに対して色々文言を重ねるクルマ好きユーザーは、直接このイースを買うユーザー層か?…と聞かれれば、必ずしもそうではない。冷静かつ現実を直視したマーケティングを行い、今回イースをこのような形でまとめて販売にこぎつけたダイハツの判断、僕は全面的に賛成です。



っと、話が逸れてしまいました。強い個性などもなく、どんな人にも受け入れられやすい形でまとめられたミライース。コスト制約もあって、造形的にもとてもシンプル。しかしながらそんな中でも評価したいのは、まず女性的な雰囲気があまりない…言い換えると、男性でも比較的抵抗なく乗れるデザインであるという事。パステル系のカラーが多めに設定されてはいますが、それでも先代のミラ、エッセ、アルトなどに比べても、抵抗感は確実に少ない見た目だと思います。事実、初期受注のユーザー傾向を見ていると、男性ユーザーの比率がかなり多くてメーカー自身が驚いたんだとか。

もう1つは、軽のエコカーでありながら貧弱な印象を抱かせず、あわよくばそこそこスポーティにさえ感じられる事。これは全体的に空力を意識したと思われるシャープな造形と、抑え目の車高、大径の14インチタイアの装着などが影響していると思われます。もちろん個人差もありますし、「これのどこがやねん!」とのツッコミを受けるかもしれませんが、新車で100万以下の軽自動車でここまで上手くまとめあげたのはもっと褒められていい部分でしょう。少なくともマーチやパッソなどよりも、男性の抵抗感が少ないのでは?と思わせてくれます。リアからの見た目キリッとシャープ。省電力なLEDテールは、見た目の視認性もよく安っぽさ感の排除にも一役買っています。



グリップ式のドアハンドルを握り、室内へ。ほぼ90度に開くドアはダイハツ車共通の美点。インテリアのクオリティは「並」。いや、価格を考えれば必要十分!なのですが、実は現行ミラあたりなんかは恐ろしくよく出来ているので、これはあくまでダイハツの軽クオリティからすれば「並」ということで。もちろん単体で見れば、これで全く不足はありません。エコアシスト照明付きの自発光式デジタルメーターは見た目の質感も高く、視認性も◎。一体形成でコストを抑えながら、上下の色を使い分けて質感を高めたインパネはアイデア賞モノ。これがL以下の単色だと商用イメージがイッキに強くなるところですが、いやー実によく考えられた設計です。ステアリングのエンブレムやシフトノブのメッキ処理はX以上に装備。細かいところで見れば、運転席・助手席両方ともにバニティミラーが装着されているのも特徴です。



ただ、割り切っている部分は徹底的。配線を短縮化したためか、給油口のフタを開けるレバーはサイドブレーキ下に配置(ただ、これがなかなか使いやすい)。純正オーディオのスイッチはまるで炊飯器のような雰囲気。まさに家電。音質調整等もなく超シンプル。まぁこれはこの価格でCDオーディオが標準装着されている事自体が既に凄い事かもしれませんが…。



室内で決定的に問題に感じたのが、シートポジション。最上級モデルのGでしかシートリフターとチルトステアリングが装備されないため、このX以下ではシートスライドとリクライニングしかできず。しかもポジションが女性に合わせたと思われる設定で、178cmの自分にはさすがに窮屈な姿勢を強いられる事となりました。ここはせめてシートリフターだけでも欲しいところ…。救いだったのは、サポート性は皆無なものの、シート自体のサイズが結構たっぷりとしており、シートバック・ヘッドレストの高さも十分足りるものだったこと。この部分ではマーチやパッソよりマシな仕上がりでした。



後席に目を移すと、ちょっと驚くくらいの広いスペース。質感や装備内容は久々に「軽」らしい仕上がりでしたが、ここは軽枠を感じさせないスケール感。ただ、シートは前席以上にペランペラン。販売当初から物議を醸し出しているヘッドレスト非装着もそうですが、思いっきり割り切っています。ただこれも、実際の軽の使われ方に合わせた設定なのでしょう。気持ちいいくらいの実情主義。じゃぁそれなら、こんな広さいらないのでは?その分もっと全長を短縮して、軽量化して、なんなら3ドアでもよかったんじゃ…と考えてしまうのは、クルマ好きの悪い癖(笑)。この発想をなぞると、結局は先述したTMSのコンセプトモデルに戻ってしまって、いくら燃費が良くて安くて画期的な素晴らしいクルマでも、ツインやR1の後を追う不人気車の運命まっしぐらとなっていたことでしょう。ここがキチンと「売れる商品」を作る上での割り切りマーケティング。クルマ好きがつい忘れがちなポイントでもあります。

さて、紹介も終わりまして、走り出す事にしましょう。エンジンスタートさせて走り始めると、随分と賑やかなノイズの数々。エンジン、CVT、ロードノイズ…久々に軽らしい室内の雰囲気。ただ加速時は絶対的にウルサイものの、速度一定で回転が落ち着くと、静粛性はそこそこのレベルまで良くなります。またCVTのセッティングや電動パワステのステアフィールなど、高級感があるわけでも特徴があるわけでもありませんが、ごくごく違和感なくナチュラルにセットアップされている点は褒められる部分。絶対的なパワーが限られているのでアクセルを踏む量も多くなってきますが、無理に燃費セッティングさせたようなかったるさがほとんど感じられなかったのは◎。普通車と比べればその差は歴然ではありますが、オートマのNA軽の中では群を抜いてキビキビ走ってくれます。



イースが凄いのは、速度が上がってきてもその印象がそのまま感じられる事。80km/h、100km/hはもちろんのこと、それ以上の速度域でもアクセルにゆとりをもちながら巡航可能、あわよくばスピードメーターを使い切りそうな勢いまで加速が持続する…これには本当に驚かされました。理由はミラよりも60kgも軽量化された車重と、Cd値0.31の優れた空力性能。また徹底的なフリクションの削減なども影響しているのでしょう。加速はそれなりの軽レベルですが、高速域での速度維持の楽さは明らかに軽NAレベルより1つ頭飛びぬけてよかった印象。記憶する限り軽でここまで空力性能に気を配ったクルマは他にありません。ただでさえ限られたパワー枠の中。「軽さ」と「空力」はこれほどまでに効果てきめんなんだという事に改めて気付かされました。

足回りは、基本ソフトなセッティング。しかし街乗り領域でピョコピョコ落ち着かない挙動を示すのは、高い指定空気圧のせいによるもの。その値はなんと2.6!燃費対策でしょうが、気になる方はリア側を少し落とし気味にすれば幾分よくなるかと思います。速度が乗ってくれば挙動はフラットに。しかしその質感はあくまで並で、文章で表わすならば、これが軽!?という感じではなく、これぞ軽!という感じでしょうか。1つ褒められる部分と言えば、軽量化されつつボディ剛性が予想以上にしっかりしたものであった事。

タイアサイズは155/65R14。この軽サイズでこの車重で燃費重視なら、13…もしくは12インチくらいまで割り切る事も考えられたでしょうが、そこは走りも犠牲にしないバランスを取るため、開発陣の方が大径14インチサイズにこだわったのだとか。純正でハンコックまで採用していたダイハツでしたが、今回のイースはヨコハマブルーアースを純正採用。エコタイアど真ん中ですが、グリップ感はこの車格を考えれば十分満足。14インチ採用が効いています。



フットワークに関しては、まぁこのイースでワインディングを攻めるなんてのは常軌を逸脱している行為…かもしれませんが、せっかくなのでいつもの通りテストを実行(笑)。この部分に関しては、他のダイハツ車と同じような傾向。そこそこにステア操作に対する反応は良く、しかしそこからちょっとビックリするくらいにカクンと深くロールして、グリップレベルの限界よりも先にドライバーに恐怖心を与える事で妥協点を見出す…意外に粘りは見せてくれますが、基本アンダーセッティングでよほどの事がないリアが出る事はありません。まぁそんな領域では、サポート性ほぼゼロのシートのおかげで、ステアリングにしがみつきたくなるくらいに車内で身体が暴れてしまいますが(苦笑)

もちろんこれが長年街乗り軽のセットアップを続けてきたダイハツの落とし所であり、それはそれで「これでもいいか」と思わせる説得力のあるものなのですが、それでもやっぱり「いざ」という時の事を考えて、個人的にはもう少しロールを抑えたいところ。車高が低くて軽量であっても、やっぱりスタビライザーは装着するべきでしょう。ダイハツはターボモデルしかスタビを装着しません。他のスタビ無しのダイハツ車は、知る限りみんなこの動き。ムーヴOEMのスバルステラがNA含めて全車にスタビを装着する理由も分かる気がします。別にロールが少ない=スポーティなんて事は思っていませんが、それでも14インチタイアのグリップレベルとのバランスを考えても、もう少しロールを抑える設定を望みたいところ。今の設定なら何も13インチでもっとグリップを落とすセットアップでもよかったはず。せっかくの14インチが活かせてないのはちょっと残念。



さて、最後に燃費報告。ちなみに全グレードに標準装着のアイドルストップは、ある一定条件が揃うと、まぁーとにかくよく止まってくれました。ワイパーやライトなどを使用していない条件がつくものの、停車「前」にエンジンを停めて滑走してくれる制御のおかげで、しっかりとメリハリのある運転をすれば、スタート時のタイムラグも十分に許容できる範囲。ノロノロ運転なんかでは、少し止まり過ぎ?と思う時もありましたが、せっかくついてるなら積極的にエンジンストップさせたほうが理に叶っているといえるでしょう。嫌ならキャンセルボタンを押せば良し。2日間、市街地走行は250kmほどでしたが、その中でアイドルストップ時間は1時間20分!バッテリーのサイズが標準的だったのも◎。

というわけで区間ごとに計測した大まかな燃費結果は、雨+夜+渋滞+エアコンONという最悪に近い条件で17~18km/L、高速道路ハイペース走行で20km/L前後、巡航ペースで25km/L前後、そしてこのイースが最も燃費効率が良さそうな時速60km程度のバイパスや郊外などでの流れの良い道路での巡航ペースでは、27~28km/Lという数字も十分に現実的。

トータル500km、一般道市街地半々、途中ワインディングや高速での全開走行を含めて、最終的な燃費は23.2km/Lという結果に。燃料タンクは30Lですが、600km巡航は楽勝でしょう。季節的に条件に恵まれていたとはいえ、アクセルを床まで踏み込む機会は普通車より圧倒的に多かったのにこの数値…正直驚きました。今まで自分が行ってきたテスト結果と照らし合わせると、デミオスカイアクティブはもちろんのこと、トータルで考えてもフィットHVを上回りそうです。

さて、いつもの如く試乗レポートを書いてきましたが、本来はこうやってゴリゴリなクルマ好き(笑)がうだうだとクルマについて細かく考えていくような…イースはそんなクルマではないのかもしれません。事実、趣味性はゼロ。ただし、これはこれですっごくよくてアリだな…と感じたのは事実。クルマ好きの琴線には響かなくとも、今後自動車はどうあるべきかと考えたときに、このイースの志の高さにはちょっと感服してしまいました。はっきり言って、今年の個人的ベストカーオブザイヤーをあげていい。それくらいに思っています。いやー、いいクルマでした。



…ただ、やはりオタク心?からすれば、もうひとひねり欲しい。でもこれは、あくまでイースシリーズの第1弾なわけです。ぜひともこの最新低燃費コンセプトは維持しつつ、もう少し上の価格帯…ちょっぴりプレミアムな軽、そう、「ソニカイース」なんて出してくれたら、とても面白そう。そして加えて贅沢ではありますが、いつか大ヒットして儲けが出た暁には、ダイハツの技術者魂を、クルマ好き方向に炸裂させた…次期2代目コペン「コペンイース」の登場を是非期待しつつ、今回の試乗レポートの最後とさせてもらいます。
Posted at 2011/11/05 20:17:56 | コメント(5) | トラックバック(0) | ダイハツ | 日記
2010年11月21日 イイね!

〔過去試乗記〕 ダイハツコペン(5MT)

〔過去試乗記〕 ダイハツコペン(5MT)前回のロードスターの試乗記は、PVのほうを見る限りかなり好評だったようで、大変有難い限りです。ありがとうございます。

これからもどんどんお友達の方の数やMyファンが増えていくと嬉しいなぁ…と、妄想しております(笑)。


さて、MPVにお乗りのやまと23Tさんから、その前回のロードスター試乗記にて「同行したコペンの印象は?」とのコメントを頂きました。この時同行していたコペンと合作でインプレッションを書いていたのですが、たまたまロードスターだけをフューチャーする形になって、いささか不自然な流れに^^;

そこで今回の機会に、ロードスターと一緒に同行したコペンについてのインプレッションをお届けします。


FFとFR、660ccの軽ターボと2LNA…スペックだけで見ると全く比較対象にならないこの2台。


しかしながら「オープンカーであること」「2シーターであること」「マニュアルミッションであること」、そして何より「運転していて、思わず笑顔になってしまうこと」に関しては、もう紛れもなく「ライバル」な関係にある数少ない日本車2台と言えます。

正直言って、ワインディングでは抜群に楽しいけども高速ではちょっと直進性に難がある(苦笑)コペン、長距離移動はさすがにちょっと疲れるところもありますが、登場してからはや8年、この小ささと価格から得られる楽しさは、ロードスターと比較して「性能」で負けても、「楽しさ」では大差はつきません。

もっとも、いまやこのコペンもコミコミで200万円級…セカンドカーとしてお手軽に…簡単に手を出せる存在ではないとも言えますが、いやいやそこは「いまだに100万円以上の中古車がゴロゴロあふれている」というこの驚異的なリセールバリューの高さを考えると…とってもお得な買い物、かもしれません。(笑)


ちなみにこのコペン、大阪の交野市にある「カミタケモータース」さんでお借りしたレンタカー。コペンの、しかもATに加えてMTもレンタカーを試せるということで、関西でも結構有名なお店です。会員に結構な頻度で配信されるクーポンを上手く利用すれば、MTのオープンカーが時には4000円くらいで丸1日楽しめちゃう時も…!?

おまけにこの今回借りたパールホワイトのMTコペンは、MOMOステアリングにHIDにシートヒーターまで付いた豪華仕様。そもそもまずATだけでなくMTのレンタカーも用意してあるだけでも、クルマ好きにとっては大変貴重で有難い存在なので、以前から何度もお世話になっています。笑

…そして、最近ネタ不足が深刻な状況ではありますが(苦笑)、前回のマーチ以来ようやく近日、「話題の最新型車」をたっぷりとテストする機会を設ける事ができました。またその時はこの場でレポートしたいと思っています。




・・・・・・・・・・




かつて90年代初頭、ABC3兄弟と言われた軽スポーツ黄金期がありました。AはマツダオートザムAZ-1、Bはホンダビート、Cはスズキのカプチーノ。この時ダイハツは独自の軽スポーツカーを持っておらず、苦し紛れにリーザスパイダーを出してお茶を濁していただけ。…そして時は経て21世紀に突入した2002年、ダイハツはライバル不在の中、メタルトップの超コンパクトオープンスポーツを登場させました。それがこのコペンです。



かたやガルウィングミッドシップ、かたやオープンNAミッドシップ、かたや4輪ダブルウィッシュボーンサスのFRオープン、それらと比べればFFベースのこのコペンは見かけ倒しと思われても仕方ないかもしれませんが、4気筒ターボエンジンに電動ルーフ、角部クオリティの高さから見ても軽を感じさせるのはサイズだけ…月産500台が限界ながら、販売当初の人気の高さは相当なものでした。驚異的とも言えるリセールバリューを持つオバケ的存在である事を見ても、8年たった今でもその魅力はまだまだ健在と言っていいでしょう。



まずコペンの大きな魅力の1つは、古さを全く感じさせないそのスタイリング。いかんせんちょっと可愛すぎる感も少しありますが、ボディカラーのチョイス次第で老若男女それぞれどんな世代にもよく似合うクルマです。また5コートの塗装のクオリティの高さやライト・マフラーなどのデザイン処理能力の巧さなど、軽自動車という限られたディメンジョンの中でよくぞこれだけの存在感を醸しだす事ができたな、と改めて感心させられてしまいました。デビュー以来ほとんどデザインに関する部分に手が加えられていないのも、その完成度の高さを物語っていると言えるでしょう。



インテリアのほうは、国産車中もっともタイトな空間を持つ1台?ステアリングはテレスコ・チルトで調整幅は結構あるものの、178cmの自分にはポジション的にはギリギリ。シートのサイズ的には十分なものの、座面ももう少し落として、ヘッドスペースとステアリングの位置関係を調整したいところですが、これはシート交換などで対策はできそうです。またスペース的な問題も、「スポーツカーらしいタイト感」と置き換えてしまえば、不満にはなりません。屋根を開け放ってしまえば、開放感もグッと増します。

エアコンの吹き出し口がNBロードスターからのお下がりパーツなのは有名な話。質感はさすがに7年の月日を感じさせる部分があるのは致し方ないところでしょうか。テスト車に装着されていたMOMO製のステアリングはこの車にはぜひマストで装着しておきたいアイテム。ルーフの開閉は、左右2か所のロックを手動で外し、サイドブレーキ下のスイッチにて操作。コストのためルーフ開閉をモーター1つで行っているため、やや動作音が耳につきますが、さほど大きな問題ではないでしょう。それよりも、クローズド時のガタガタと耳ざわりなルーフの干渉音のほうが問題。これは時折ディーラーなどでルーフの調整などのメンテナンスが必須と言えます。



またその副産物的なメリットとして挙げられるのは、ルーフクローズド時のラゲッジスペース。FFベースの利点で、通常ではかなり大きめの広さが確保されています。またトランクフードもオートクロージャー付。ルーフが格納されると大部分が占領されてしまいますが、それでも上手く荷物を滑りこませたり、キャリアを装着したりなど、様々な工夫で実用性は確保できそうです。

さて、早速走りだしてみましょう。一緒に連れ出したロードスターと比べてしまうとさすがに見劣りしてしまいますが、FF車にしてはシフトフィールもなかなか。1速に入れてクラッチミートし発進してみると、ギア比のクロス具合がよく分かります。1速はほぼ発進のみで、そこからすぐさま2速、3速とシフトアップ…50km/hは完全に5速の守備範囲。100km/h時の回転数は5速で4000rpm近く回ってしまうので、この車には是非とも6速が欲しいところです。


(ちなみに後日、4速ATのコペンもテストする機会があったのですが、なんとギアが1つ少ないにも関わらず、100km/h時のエンジン回転数は4速で3800回転ほど。おかげで高速巡航はATモデルのほうが幾分楽でした。マニュアルモードのあるこのATとコペンとのマッチングはなかなか良く、スポーティな走りをしても十分対応可。気軽にATモデルでコペンを楽しむのも大いにアリなチョイスだと感じました。)



エンジンは今となっては少数派となった660ccの4気筒ターボ。パンチ力では3気筒に劣るものの、4気筒ならではのスムーズなフィーリングはしっかりと感じられます。スタートのセル音以外は、安っぽさが微塵もないサウンドも◎。ターボの過給は2000回転からかかり、それ以下だとさすがに線の細さが感じられますが、先述のクロスレシオの5速MTのギアレシオのおかげですぐさまトルクバンドにのり、加速感に全く不足は感じられません。レブリミットは8500回転とかなり高め。実質上6000rpm以上はただエンジンが回っているだけの様子ですが、こういった非日常的な雰囲気はスポーツカーには大切な事です。

このコペンの特徴は、オープンとクローズドで大きくステアバランスが変化するということ。もちろんボディ剛性の変化という事もありますが、800kg台という軽量なボディなので、重いルーフがどの場所にあるかは、思っている以上に大きくクルマの挙動に影響します。ボディのしっかりさを感じられるのはもちろんクローズド状態。オープン状態ではさすがにボディシェイクする感じは否めず、バックミラーの視界がワナワナと震えてしまいます。しかしながらクローズド状態だとどうしても重心の高さを感じてしまい、またリア荷重が抜け気味となるため、直進性やS字などの切り返しでのヨーの発生が前後軸でのズレるような挙動を見せ、ちょっとヒヤッとさせられてしまいます。この違和感はオープン状態にするとだいぶ緩和されるので、おそらくトランクにルーフが収まると前後バランスが整うのでしょう。個人的にはボディ剛性面ではハンディがあるものの、このコペンはオープン状態でのほうがハンドリングの面ではバランスよく思えました。



タイアは165/50R15。ブレーキはリアがドラムなのが少し残念で、タイヤのキャパシティに対してブレーキのプアさが少し残念。絶対的な効きはもちろんの事、踏み始めのフィーリングや剛性感など、ここはパッドやホースなどに手を入れて少し改善したいポイント。テスト車のサスペンションはノーマル仕様。決して乗り心地は快適なほうではありませんが、個人的にはもう少し締め上げてもいいのでフラットさやダンピングの良さを強めたいところです。ダンパーがタンク別体式となるスポーツサス仕様や、特別仕様のビルシュタイン仕様などではもう少し印象が良くなる事でしょう。

欧州仕様にはNAの1.3Lモデルが用意されていたり、TMSで1.5Lを搭載したコペンZZというコンセプトモデルも登場したりしましたが、「過給化による排気量のコンパクト化」がトレンドの現在からすると、このコペンのエンジンの大きさは今の風潮に合っているのかもしれません。ただ相当クロスなギア比や加速性を意識したターボのセッティングにより、燃費面では正直言ってあまり褒められたものではありません。今回のテストでも、かなりワインディングで積極的に走り回った事もあって、燃費データは11km/Lちょっと。一緒に連れ出したロードスターと大差ない事も考えれば、もう少し伸びて欲しいというのが正直なところ。



しかし、このコンパクトさと機敏さは、狭い日本のワインディングでは大きな武器。上手くターボの過給を落とさないように積極的にギアチェンジとアクセルワークに気を配り、タックインを生かしてキビキビ走るのはまさに痛快。絶対的なパワーが64psという事もあり、積極的にアクセル全開ができたり、それによるトラクション不足などの弊害もさほど感じないというのも、コペンが身近なレベルで手足のようにキビキビと扱える楽しさにつながっていると言えるでしょう。理屈だけでなく、実際ちょっと気合いを入れれば相当なペースで駆け回る事も可能です。いまやエントリースポーツカーが皆無とも言える昨今、改めて注目すべきであろう小さな巨人。まさに日本を代表する1台として世界に誇れるのがこのコペンだと言えるでしょう。


前回のTMSでは、OFC-1という名で後継モデルの提案がありましたが、最近は全くの音沙汰なし。しかしダイハツは決してこの貴重な火を消してはいけません。次期モデルの開発が厳しいのであれば、しぶとく細かい改良を加えて、ぜひとも末長く生産し続けてほしいと思います。
Posted at 2010/11/21 21:35:23 | コメント(3) | トラックバック(0) | ダイハツ | 日記

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「明日は恒例のメディア対抗ロードスター4時間耐久レース。今年も64号車の監督やります。前日準備は洗車機の中のような豪雨。さて明日は??(^_^;)」
何シテル?   08/31 19:12
幼い頃から、車が大好きでした。 その気持ち変わらず、今も純粋に、自分なりに日々世の中に新しく生まれるクルマ、そのクルマを取り巻く事情や環境、ドライビン...
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