先週から、大学の学園祭に、就職活動本格化に、といっそう多忙になり、また更新が滞ってしまいました(汗)
今回は再び過去試乗記から、最近523iやツーリング、そしてMスポーツの追加など、徐々にラインナップを広げるBMW5シリーズの試乗記をお届けします。街中ですれ違う時に「おっ」っと思わせてくれる現行5シリーズのデザインは、ぶっとび傾向が強かった昨今のBMWのデザイントレンドがようやく落ち着いた方向に戻ってきており、個人的には非常に好印象。今回お届けするのは535iですが、本文中にもあるように、初期ロット特有と思われる欠点も散見する結果となりました。また改めて機会があれば、NAエンジンの523や528、また先日追加されたMスポーツも味わってみたいと思います。
ここ最近のBMWの勢いが止まりません。戦略的な価格帯で登場したX1を始めとして、1シリーズや3シリーズはエンジンを一新して燃費性能を大幅改善。また120iクーペや325iクーペなどのラインナップ充実、X5も次世代ターボエンジンへとスイッチするなど、実に話題性豊富。そんなBMWの中核を担う5シリーズが3月にフルモデルチェンジ。そこで今回はその5シリーズの試乗レポートをお届けします。
今回のテスト車両は中核モデルの「535i」。価格は835万円也。
随分とアグレッシブなデザインだった先代「E60」型に比べて、今回の「F01」型は幾分落ち着いた印象。これを大人しくなりすぎて新鮮味に欠けると見るか、少々やり過ぎ傾向だった昨今のBMWの流れが少し以前のスタンスに戻ってきたと好印象を得るか、は少し意見が分かれそうです。個人的にとしては後者。7シリーズにしろ、Z4にしろ、5シリーズにしろ、一時期の「いったいBMWはどうなっちゃうの?」と心配になってしまう破天荒っぷりでしたが、デザイナー陣の変更でようやく落ち着きを取り戻してきたようです。
しかしそのように一見コンサバな印象に受け取られがちながら、サイドのキャラクターラインの深く鋭い造形など、実車をいざ目の当たりにしてみると、かなりのアグレッシブなスタイリングの持ち主であると実感させられます。また地味な点ながら、今回のF01型でようやくワイパーが右ハンドル対応のものに。もちろん、いまの今まで左ハンドル用のままだった方がおかしかったとも言えますが…。
ボディサイズは、プラットフォームも7シリーズと共用する事からも分かる通り、今回この新型でもさらに歯止めが効かず。全長は4.9m台へと突入し、全幅も1860mm。しかしそのサイズアップ分は主に衝突安全性とスタイリングに使われているようで、過激なディティールを持ちつつ案外プロポーションとしてはボクシーだった先代E60型と比較すると、室内空間はむしろ少しタイト気味になったように感じられます。
今回の新型のハイライトの1つがインテリア。最大のライバルであるメルセデスEクラスともっとも差を感じるのがここであり、質感に関しては5シリーズの圧勝。改善(一部退歩?)の結果、iDriveの使い勝手に関してはまだまだなところもありますが、10インチを超えるモニターの視認性の良さとグラフィックのキレイさはピカイチ。今回から電子化されたパーキングスイッチの使い勝手もよく、メーターの見やすさもグッと良くなりました。唯一惜しいのは、7シリーズに乗った時にも感じた、そのタッチ・質感・見栄え・実用性いずれも「?」マークがつくシフトノブ付近のデザインと操作ロジック。この電動シェーバーのような見た目と、動かす度に安っぽい印象を抱かせるシフトフィーリングは、1000万円級の高級車云々以前の問題として、改善の余地アリ。
さて、プッシュボタンでエンジンをスタートさせて、いざ試乗開始。シートやステアリングの調整幅が大きく、ピタッとポジションが決まってやる気にさせてくれるBMWの美点はこの5シリーズでももちろん健在。今回この535iに搭載されるのは、定評のある3.0Lのツインターボ…とは異なる、新たなユニット。ツインターボではなくツインスクロールのシングルターボへと変更を受けて、変わりにBMWお得意のバブルトロニックが新たに採用されています。この新世代ユニットを「ツインパワーターボ」と呼ぶあたり、一見イメージダウンにも映りかねない印象を巧みにかわすBMWのネーミングの勝利…といったところでしょうか。しかしながら性能的には全く同一、トルク発生回転数がむしろわずかに下がっており、コスト的にも燃費的にもかなり以前より有利なのでしょう。(ちなみに先日の改良で、335iもこのエンジンへと変更を受けました。)これに組み合わされるのは最新の8速AT。タイアは245/45R18のダンロップのランフラットが装着されていました。
さて発進し始めると、まず気付くのは低速域でのリアがうにょうにょっと回り込むような違和感。これは「インテグレイテッド・アクティブ・ステアリング」と呼ばれる後輪操舵によるもの。60km/h未満で逆位相してくれるおかげで、Uターンなどでは思った以上にクルマが回ってくれます。ただ気をつけたいのは、この逆位相はあくまで前進時のみに働く事。バックの際にはこの小回り性能の恩恵には預かれないのでご注意を。
その動きに比べれば、可変ギアレシオを持つアクティブステアリングの違和感も随分と改善されて自然なフィーリングとなりました。また今回この5シリーズは電動パワステが採用されていますが、言われれば気付かないレベルの完成度と評していいでしょう。変にわざとドイツ車的雰囲気を醸し出そうとしているとしか思えない、ゴムっぽく硬質で重いだけの操舵セッティングになりがちだった昨今のBMWとは一線を課す、ナチュラルでスッキリとしたステアフィーリングは○。
極低速域でのレスポンスに少し違和感を覚えるものの、アクセルを踏み込んでいった際のパワフルさは文句なし。このターボエンジンは低速から頼もしいトルクを発生し、ほぼ3000回転までであらゆるステージで事足りる性能を発揮してくれます。その加速時の印象をさらに良くしてくれるのが、8速ATの素晴らしい完成度。シフトアップ、ダウン、その際のレスポンスの良さとつながりのスムーズさ…今現在のトルコンATの最高とも思えるこの出来を味わえば、DCTなんて不必要とさえ思わせてくれます。
ただ低速が充実している分、高回転でのスムーズさや吹けに若干不満を感じてしまうのは、贅沢な悩みというべきか。もちろん絶対的レベルで言えば全く問題にならないのでしょうが、「BMWのシルキー6」を味わった事のある方なら、文句なしにパワフルなんだけど、少し雑味の残る回転フィールにどことなく物足りなさを…そんな印象を抱くかもしれません。燃費的にもパワー的にも十分なだけならば、あえて長く重い直6にこだわらなくてもいいのですから。そう思った方には、あえてのNAの3.0Lを搭載する「528i」のほうがお勧めかもしれません。
そしてその印象を強くさせるもう1つの理由が、乗り心地。ランフラットの改善により以前よりも随分と直接的な入力は抑えられ硬さはあまり感じないのですが、高速域でもどこか常に足回りの動きがヒョコヒョコして落ち着きが感じられず、言うならば乗り心地の良い「スィートスポット」が極端に狭い印象なのです。もっともこれは初期ロットの個体差かもしれませんが、足の設定をノーマルにしてもスポーツにしても、その印象は変わる事はありませんでした。メルセデスEクラスに対して、逆の意味で一番差を感じるのはこの部分。同時に、55扁平17インチを履く528iに少し期待を持ちたいところです。
もっともドライバーだけの視点で絞るなら、速度を上げてコーナーを1つ抜けるごとに、クルマがグッと小さく引き締まるように感じられる「BMWマジック」は健在。前後重量配分の良さに、立ち上がり時の抜群のトラクション。相変わらず「駆け抜ける歓び」の演出の上手さと気持ちよさ、思わず帰り道を遠回りしたくなってしまうような心境を抱かせてしまう点は、メルセデスにはない部分と言えるでしょう。
少しネガティブな点もチラホラ見受けられてしましたが、そういった観点からもう1つ付け加えるなら、試乗中絶えずインパネまわりから共振音が発生しており、こういった点からもこのモデルや個体差、走行距離、ロットなどに影響があったかもしれません。文句なしにパワフル、燃費も良好、しかしそれだけでは少しどこか味気ない…そう感じた方には、ひょっとするとエコカー減税対象ともなる528iが意外に今回5シリーズではベストマッチ?しかしこういった要求は、BMWというブランドが抱かせる期待のハードルの高さ故の結論。スタイリングや走りの絶対的ポテンシャルは相当なものだと感じるだけに、これからの熟成と改良に期待をもちつつ、レポートを終えたいと思います。
Posted at 2010/11/08 00:16:03 | |
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BMW | 日記