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九郎田一馬のブログ一覧

2015年06月16日 イイね!

【試乗体験記】ポルシェ マカンターボ 

【試乗体験記】ポルシェ マカンターボ 
久しぶりの試乗レポートです。

新居への引っ越しもひと段落、ようやくこうしてみんカラをボチボチ更新できそうな環境が整ってきました。ボチボチとですが、1か月に1台は何か車をピックアップしてこうして試乗レポートをアップできればと考えています。相変わらずのダラダラ長文レポートですが、昨今読みやすさとページビューを稼ぐためにコラムの短文化と簡略化が進む中、こういう文字ばっかりなものもあってもいいかな…というわけで、引き続きお付き合いください。

久々復活第1弾のレポートは、これまたスペシャルなポルシェのマカンに触れる機会がありましたので、こちらを取り上げます。。最近都内でも続々と目撃するようになってきました。売れてますね。

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 今イケイケどんどん状態なポルシェを見ると、かつて90年代初頭に深刻な経営危機が囁かれていたなんて、信じられないかもしれない。928、944、968…等々新たなFRスポーツカーの提案をするも、絶対的な存在ともいえるRRの911のブランドイメージを超える事ができずにセールスは苦戦。世界中の自動車の指標の1つとも言える地位にありながら、その輝かしさあまりにポルシェ自身がその存在に苦しむという、今振り返れば皮肉的なお家事情が当時のポルシェのラインアップから透けて見える。(重ねて言えば、ちょうどその頃にメインであった964型911のユーズドカー市場相場が昨今急激に高騰の気配を見せているのも、不思議な巡り合わせか…。)



 しかしその事情は、95年に登場するポルシェボクスターの登場から一変する。ニッポンの誇るべき名車初代NAロードスターの存在が与えた衝撃が大きな1つのきっかけである事に疑いようはありませんが、“911より確実に手頃な”でも“ホンモノのポルシェ(914ではない!)”であるオープンMR2シータースポーツの登場は、間違いなく世界中のクルマ好きの心をくすぐった。それは今思えば水冷化911…つまりは996へのドラスティックな変身劇の序章に過ぎなかったわけではありますが、996初期当初に訊かれたポルシェ大衆化批判の声も今やどこへやら。ポルシェは世界有数のブランドイメージと抜群の収益構造をもつ自動車製造業へと変貌を遂げたのです。



 おっと忘れてはいけない、ボクスターが20世紀末のポルシェを窮地から救い出した後、その後21世紀にさらなる躍進の原動力になったクルマ…それがカイエン。全く新しい形のスポーツカーと銘打って登場させたこのポルシェ初となる5ドアSUV。ポルシェ911のオーナーは当然複数台所有が当たり前、では“その中で使用頻度の高い、本当に必要とされているクルマは何か?”という点に着眼したマーケティング力と(カイエンが出た当初、ポルシェの方が今までうちのクルマを本当に必要不可欠としているお客様なんていなかった、でも今回はマイファーストカーとして自信をもってご提供できるクルマを用意できた…なんて事を言っていたのが非常に印象的だった記憶が朧げにあります)、VWとの思惑が合致しコンポーネントの共用化が最大限図られつつも、紛れもなくポルシェ!を感じさせるその走りを実現させたエンジニアリング力。



 そしてその結果、目論み通り世界中で瞬く間に大ヒット。2015年となった今、ジャガーにマセラッティにランボルギーニまで追随の構え。あのポルシェが日和ったな…なんて声が一部エンスージニアトから聞こえつつも、カイエンで儲けた分で911やボクスターたち“王道のスポーツカー”を着実に、また飛躍的に進化させる事で、マニアック主義スポーツカー大好きユーザーら外野の声は有無を言わさず商品力をもってして封じ込める。なんという素晴らしい好循環でしょう。でもポルシェといえども、カイエンのエンジンはV6、V8。そこは本家さえできなかったボクサーエンジン搭載のSUVを、これまた最近超優良経営・収益体質で報道されるスバルがその儲けをドドンとつぎ込んで、アウトバックの3.6L6気筒にターボなんかつけちゃったりして、はたまたトライベッカを今こそ復活させて、ボクサーターボのAWDスポーツSUVとして大和魂全開で真っ向ポルシェと勝負だ!…っていうのは冗談で、すみません話が逸れました。



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 そんなポルシェの次なる一手…それが今回紹介するマカン。北米メインに捉えたカイエンよりひと回り小柄で引き締まったサイズ、スタイリングはさらに優雅に。出る前からすでにヒット作確実の匂いをプンプン漂わせているのが、この弟分のマカン。今回、そのマカンの現時点最上級グレードであるマカンターボに幸運にも接する機会があったのでレポートとしてお届けしたい。ん?現時点?そりゃぁもうどんどん後から出るでしょう、マカンターボ“S”とかマカンターボ“GTS”とかマカンターボ“GTSハイブリッド”とかマカンターボ“GTSハイブリッドアニバーサリーエディション”とか…(以下省略

冗談はさておき、結論から先に述べてしまうと、“これは全く新しい形をしたポルシェのスポーツカーです”なんていう宣伝文句を、今回はこれはまんざら嘘でも誇張でもないかもしれんぞ…と真に受けてしまう、そんな実力の片鱗を味わう事になるのでした。そう、マカンの真の価値を知る為には、直近20年のポルシェの歴史を紐解き考察を加えた上で接する方がより早く、より深くその魅力に迫りやすい。というわけで、毎度肝心のレポートに入るまでの前置きが長いのは、今回ご了承願えれば幸いです。

 さて、そのマカンを簡単におさらい。ベースはアウディのQ5。素となる「マカン」は4気筒ターボエンジンも共通となりますが、V6ターボエンジンは基本的にポルシェのもの。また4WDシステムはグレードに限らずアウディのクワトロシステムとは別物となっています。グレードは「マカン」「マカンS」「マカンターボ」。今回登場するマカンターボですが、ターボの名はつくものの実は現時点全てマカンはターボエンジン。2L4気筒のマカン、3LV6のマカンSは340ps、3.6LV6ターボは400ps。全車7速PDKでマカンターボとマカンSの価格差はおおよそ国産コンパクトカー1台分!?…ですがここにもマジックがあり、マカンSに欲しいと思わせるオプションは実はターボで標準装備だったりして、積み上げていくと…これならいっそターボにしとこうか…と思わせてしまうポルシェのグレード設定の巧みさ。

 因みにこのマカンターボにも漏れなくたくさんのオプションがついており、このなんてことなさそうなシルバーメタは16万、エアサスとPTV+はそれぞれ27万、ベージュのレザーインテリアも27万、超カッコいいヒータ付カーボンステアリングは10万円、迫力の21インチアルミは52万…っと、あっという間に三ケタ万円の世界。ホイールのセンターキャップのポルシェマークを白黒からカラーにするだけで3万円、なんだか金銭感覚が早くも麻痺状態です…。



 さて、まずは周辺をジロジロ歩きながら細部をチェック。フロントマスクは獰猛…でありながら、どこかハムスター?モルモット?を思わせるちょっとかわいい動物的フェイスでもあります。全長でこそ4.7m以下でレヴォーグとほとんと同じくらいですが、全幅は1900㎜を楽々オーバー。カイエンより小さいとはいえ、都内の狭い道でスイスイというわけにはいきません。それでも写真や単体で見るとキュッとしまってコンパクトに見えるのは、その抑えられた全高と寝かされたピラー類、ふくよかなフェンダーラインのおかげでしょうか。特にこの超巨大(!)で、かつ前後異形(!!)なF 265/40R21 R 295/35/R21 のタイヤ・ホイールを履くこの個体はさらにその印象が強くなります。逆に19インチ程度では足元が物足りなくなる?しかしまぁ怖くて路肩に寄せられない、コンビニへの段差を乗り越えたくない、そもそも1本交換賃いくら?と庶民はいらぬ心配ばかりしています。ボクジューハチインチクライデジュウブンデス。



 というわけでスタイリングに多くボディサイズを割いているわけで、居住性は実はその見た目ほど広くない。後席は日常には必要十分程度、ラゲッジスペースも仕立て抜群、エアサスでリアの車高調整できるスイッチまで装着されていますが、寝かされたDピラーの影響で嵩張る大きな荷物は要注意。リアデザインはナンバーをバンパーに下してどことなくポルシェ991…というよりはむしろメルセデスAMG GT…っぽい印象。しかしどこでバックドア開けるんだ?と思ったら、あらま綺麗にリアワイパーの根本にスイッチがビルトイン。素晴らしい。



 ドアをあけてシートへ。この個体はあえてコンフォート気味のシートになっていたようで、実際はもっとサポート性のある締まったシートがデフォルトのよう。ターボにはそちらのほうが相応しい…?



メーターはポルシェっぽさ全開のセンタータコメータ、左側にスピード、右側にはインフォメーションモニタ。ここでは燃費や前後駆動配分、タイヤの空気圧までリアルタイムでモニタリングが可能。スポーツクロノ装着車なのでストップウォッチも装着されますが、いったいいつ使うのか…?なんて考えてしまうのは野暮というもので。こういった雰囲気作りが重要です。



 シフトノブまわりにはズラッと並ぶ多数のスイッチ類。他メーカがコマンドコントローラーを装着してできるだけスイッチ類を集約させようとする事をポルシェは全く考えていない?のか、キチンと1つ1つのスイッチに機能をもたせるのが流儀。見た目はどこか戦闘機のようで確かにカッコよく、シンプルにしようとしてより難雑なインターフェイスに陥ったりするよりはまだいいですが、走行関係のスイッチもここにズラっと並べてあり、スポーツモードへの切り替えやサスペンションの減衰設定など、まずブラインドタッチで走行中変更するのは至難の業、危険。いざ咄嗟にファイティングポーズを取りたいのに、いったん車を停めて直視しながら…なんて滑稽な事ではあんまりです。ここはそろそろ安全性も考えた上で、何か新しいもっとユーザー目線になったインターフェイスの一考が必要でしょう。因みに、オプションをほとんどつけない素のマカンなどは、このシフトまわり周辺のスイッチがほとんどダミーになっており、大変寂しい想いをすることになります。

 インターフェイスといえば、この918を彷彿とさせるかっこいいステアリングにいわゆるコンベンショナルなパドルシフトが装着されるのは○。ポルシェのデフォルトのステアスイッチの使い勝手の悪さは、1度体験した人なら分かるはず。ぜひ今後もこちらへの統一を進めて頂きたいところです。シートポジションはポルシェの例に漏れず自由度が高いのは◎。低めのポジションでスポーツカーっぽい姿勢を取る事も可能ですが、マカンはカイエンと同じくアクセルペダルがオルガンではなく吊り下げ式の為、ややアップライトなポジションを取った方がしっくりきました。



 国内仕様で非常に残念なのがナビの搭載位置。他のポルシェに漏れずクラリオン製が装着されていますが、とにかく取ってつけた感を露骨に感じさせるその低すぎる装着位置。その上に小物入れを用意するという、?なレイアウト。因みに本国仕様のエンターテイメントシステムは、当然ながら納得できる位置に綺麗にビルトインされています。口うるさい国内ユーザーに合わせた国内製ナビをすべてにつけるインポーターの努力は買いたいところですが、実際に“本来相応しい位置”に納車後即座に入れ替えをしているオーナーさんが多いのを見ると、ぜひ再考をお願いしたいところです。



 エンジンを始動すると、最初はフォォン!と乾いたなかなか獰猛なサウンドを響かせてくれます。が、アイドリングが落ち着けばとっても静か。実はこの印象はインプレッション終了まで変わる事なく、例えば全開加速やここ一発!という時には、もっと獰猛なサウンドを響かせてもいいのでは?という思いもなくはない…あくまでジェントルに、さりげなく速い。もちろん誤解のないように言えば、その加速感は2tの車重を感じさせない強烈さで、ローンチコントロールを使わずともトラクションは抜群、7速PDKは2速レッド6800rpmで90㎞/h強というギア比のクロスな割り振りは完全にスポーツカーのそれ。



 また、シフトアップダウンの乾いた俊敏さと、傾斜のある極低速時というDCTがもっとも苦手とする状況でもしっとりと滑らかにアクセルワークに対しコントロールできるPDKの性能両立レベルの高さはまさに舌を巻くレベル。この部分ははっきりとQ5のSトロニックより一枚上手。また、米国での牽引能力性能も求められるが故に8速トルコンATのティプトロを採用するカイエンでは味わう事のできない、さらに濃厚な最新ポルシェの味わいをマカンは色濃く体感する事ができます。もちろん、巡航状態になればN状態となってコースティングを行い、停まれば律儀にすぐさまアイドリングストップ。ヒルホールド機能がついている事もあり、エンジンONの指標コマンドが「ブレーキを離す」事ではなく「アクセルを踏む」事によって反応するため、国産のアイドルストップ車の優秀な制御から比べるとややもたつきを感じる事もありますが、これは慣れで解決できる範囲かと思います。



…しかしながら、今回マカンターボに乗って1番驚いた事は、その2t+400psを全くもて余す事なく、いわば完全に掌握してキチンと引き出せる能力を備えているそのシャシー性能の素晴らしさ。OPである21インチタイヤによる効能も当然あるでしょうか、キンと空気を張りつめたようなボディの剛性感と、恐ろしいほどに堅牢さを感じるサスペンションまわりのカッチリとしたインフォメーション…そしてエアサスとも相まって、全く不快感のないフラットな乗り心地。車高の調整や脚の硬さをコンフォート、ノーマル、スポーツ、スポーツ+…と、走行モード選択だけでなく脚のみ色々と調整して試してみましたが、唯一車高上げ+コンフォートシャシーで踏んだ場合にややダンピングがフワッとした印象があったくらいで、はっきり言って合法的な一般路+ワインディングレベルではコンフォートでも十分に安定していてスポーティで、逆に一番ハードなスポーツ+にしても街乗りの乗り心地はこれでも全く不快感はなし。

 ブレーキの耐フェード性や、オプションのPTVプラスを試すような領域で走らなかったので、個人的には車高ローモード+コンフォートシャシーが最終的に1番お気に入り。これなら街乗りでの極上乗り心地+高速域での見事なフラットライド感が存分に味わえます。あとは低速時に少し電動っぽさを感じるステアフィールが、動き出しからさらに濃密なものになれば…なんて注文をつけるのは、ちょっと贅沢すぎるかもしれません。



 ポルシェが今日まで911を始めとするスポーツカーとして世界的な名声を得た理由は、その素晴らしい性能は言うまでもなく、それをデイリーユースでも扱える高い実用性の両立のもと築き上げてきたから…と私は考えています。911にリアシートをまだ残している事、2シーターながら前後にラゲッジスペースがあり望外な積載能力をもつケイマンとボクスター…。それを考えれば、このマカンが達成したこの境地はまさに異端でもなくポルシェが追い求める性能の両立を新しい形で具現化したもの。しかもそれはライバルを寄せ付けない、圧倒的ともいえる次元の違いで。かつて15年ほど前、自動車に異種格闘技やトライアスロンのようなあらゆる季節や状況を伴う多種目競技があれば、世界一なのはスバルのフォレスター…なんて言われていた記憶がありますが、今なら間違いなくこのマカンが世界一。まさにこれこそが現代のスーパーカーであり、ポルシェが新しいスポーツカーの形…という主張を苦笑いどころか満面の笑みで頷けてしまう、いとも簡単に価値観や固定概念を変えられてしまう素敵な体験でした。
Posted at 2015/06/16 23:51:36 | コメント(3) | ポルシェ | 日記

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