ご無沙汰の更新となりました。
社会人となった2カ月、研修で毎朝5時台に起きる日々です。公私ともに色々な事がありとても多忙でありますが、毎日刺激に満ちていて全てが勉強となって自分の成長へと繋がっているように感じます。あと1カ月ほど研修が続き、7月からは語学研修で渡米予定。自分の英語力のなさをどこまで挽回できるものか…^^; そしていよいよ、愛車選びも本格化。と言いつつ、日本に戻ってくるのは秋ごろ。有難いことに多忙でお金を使う暇もなく、貧乏学生していた頃とは違いせっせと貯金に励む日々であります(笑
さて、今回は報告そびれておりました「学生生活最後の贅沢」との事で乗っていた1台、シビックタイプRユーロの試乗レポートをお届けします。
思えばジュネーヴショーで初めてこのFN型のシビックコンセプトが登場した時…その未来的なスタイリングに実に感動したものです。久々にホンダらしさを感じるクルマが登場した!と。実際に中身はフィットと共通、すなわちセンタータンクレイアウトでリアサスペンションはトレーディングアームで独立式でないという実態でしたが、しかしそれ以上に残念だったのが、このハッチバックのシビックが何故か日本では販売されない現実でした。先代の大コケはおもに「弟分であるフィットの出来が良過ぎた、売れ過ぎた」のが理由である事は明白でしたが、それはそれは当時落胆した事を覚えています。
FD型のセダンはもはやシビックというのは名前だけであり、実際は大きくなり過ぎたアコードの受け皿となるようなモデル。FD2シビックタイプRはその圧倒的なパフォーマンスを含めて一部クルマ好きには熱烈に支持されましたが、そのベースモデルはと言うと…ハイブリッドもインサイトやフィットHVの影に隠れ、結局はひっそりと生産を終える事となりました。世界的に見ても、1車種の中でHVもあり、NA高回転型エンジンを搭載するスポーツモデルもあるという、かなり希有なモデルでしたが、やはり三角窓のあるミニバンのような4ドアセダンというそのプロポーションには理解に苦しみました。実力の高さは十二分に理解しつつ、FD2が最後までどうしても好きになれなかった個人的理由の1つでもあります。
そして時は巡って2009年…ユーロ高の問題で散々延期し(いまとなっては1ユーロ100円切り…時代の流れとは恐ろしいものです)ついに念願の上陸。UK生産のタイプRが「ユーロ」の文字を追加して日本に2010台限定で上陸。翌年には細部とボディーカラーの設定変更も含めてさらに1500台を追加。が、すでに登場から4年以上が経過。デビュー当時の熱は冷め、また赤バッヂに相応しい戦闘能力が備わっているかというところにも「?」が付き、噂ではかなりの台数が「未登録車」として売れ残っているとか…中古市場でもFD2より新しいにも関わらず値崩れ気味で、現在では新車のスイフトスポーツを買う予算と変わらなくなってきているとか、いないとか。
というわけで、振り返ってみると少し物悲しくもなりましたが、個人的にはずっと惚れ続け望み続けてきた欧州シビックが導入されるという事実だけで、当時はそれはそれは嬉しかった記憶があります。むしろグレードなんてタイプRでなくても別にいい。フツーのエンジンを積んだ5ドアでも全然いい、とさえ思っていましたから。で、今回その欧州シビックに念願叶ってロングランテストをする機会に恵まれたのですが、その予感は後々当たる事になろうとは…。
さて、テスト車両は1回目に導入された09年モデルで、ボディカラーはお馴染みチャンピオンシップホワイト。他のボディカラーではホイールはシルバーですが、この色だけはホイールもホワイトに塗られます。それだけに、ただでさえダストが多いブレーキによるホイールの汚れがこの色だとさらに強調されてしまうのは、ご愛嬌…^^;
スタイリングですが、すでに現在は新しいモデルへと切り替わり旧型になっているものの、その斬新さや先進的、個性的なイメージは今でも十分に通用するものではないでしょうか。シビックらしさ、については過去どんなモデルでも革新的なイメージに挑戦し続けていたシビックだけに個々のモデルへの思い入れの違いによって評価が分かれるかもしれませんが、こと「ホンダらしさ」に関しては、やはりこの先代欧州シビックはそれがいまでもビンビンと伝わってくるように思います。特徴的なドアノブを引いて室内へと乗り込むと、同じように内装も負けず劣らず超個性的。この頃のホンダ車はミニバンからセダンから、すべて内装がぶっ飛んでいて、ちょっとやり過ぎ?のイメージが拭えませんでしたが、ことこのクルマに限って言えば、エクステリアとインテリアのイメージが上手くマッチしていた…とも言えそう?ガンダムチックさ全開といえば、それまでですが(笑)
そして乗り込んだ際に気付くのが、そのアイポイントの高さでしょう。スポーツカーとはちょっと言い難いそのアップライトなポジションは、フィットベースであるがゆえの宿命。ここがスポーティな雰囲気を削ぐ事になりますが、ことポジション自体はしっかりとベストな位置を取る事ができ、またRECAROから自社製へと変わったバケットシートも、メーカー純正品としては異例なくらいにホールド感も◎。超個性的だったEP型のインパネMTも(これはこれで操作性は凄くよかった)一般的な位置へと変更されています。
また、フィットベースの副産物的なものといえば、そのユーティリティ性能の高さ。リアシートはプラス2ではなく、完全に日常ユースでフル乗車OKであり、またその状態でのラゲッジスペースは驚くほど広く、シートアレンジもフィット譲り。スポーツカーにそんなもの必要ない!と言われればそれまでですが、ヨーロッパ基準で見れば、実用性を犠牲にしてはホットハッチと呼べません。4ドアFD2と並び、EPもEKもそれが歴代シビックの良いところでもあります。
さて、紹介もそこそこに、早速走り出してみましょう。キー+プッシュボタンという2段階のスタート儀式をちょっと煩わしく思いながら、エンジンON。ショートストロークでカッチリ決まるMTで1速をチョイスしクラッチミート、オルガン式アクセルペダルをゆっくりと踏み込んでいきます。
エンジン性能的には明らかに高回転型、ですが2Lという排気量も手伝って、スタート時のナーバスさはほとんど感じさせず、極低回転でも十分にトルクが発生し扱いにくい印象は全くありません。国内仕様のRと比べると、225psに対してこちらは-24psの201ps。トルクも同じく少なく、6速MTのギア比は共通なものの、車重もプラス+30kg。よーいドン!の加速では、到底セダンRには敵いません。
では、欧州Rの優位点は?それはそのフィーリングにアリ。歴代タイプRでは初めてとなる(ユーロRでは実績アリ)バランサーシャフトが組まれたK20Aユニットは、ただでさえスムーズに吹けるホンダVTECエンジンのフィーリングを、さらに洗練・熟成させたような仕上がり。低回転~中回転、そして5500回転付近からハイカムへと切り替わり6000、7000…そして最後の8000まで淀みなく澄みきったまま素晴らしいサウンドを響かせて突き抜ける…まさに、極上。パンチ力だけでいえば確かに若干削がれている気もしますが、絶対的に見ればこれでも十分すぎるほどパワフルで、頭打ち感は一切なし。VTECの良さをそのままにプレミアム性さえ持たせたようなこのエンジンフィールは、はっきり言ってこれだけで「欲しい!」と思わせてくれる魅力を兼ね揃えています。少し難癖をつけるなら、セダンと同じく、やはり上下分割メーターの視認性には大いに疑問。とりわけ欧州Rは中央にインフォメーションがあるためにタコメーターの見にくさはかなりのもの。上側スピードメーターのレヴカウンターはレーシーなイメージでカッコいいのですが、やはりちょっと凝り過ぎ…S2000もそうでしたが、もっとシンプルな形の方がよっぽどいい…それこそ、NSXや旧世代Rにように、とも思います。
とは言いつつ、これよりパワフルなエンジンをもつクルマは世界中たくさんありますが、はっきり言って300万円以下でここまで感動的なエンジンフィールを味わせてくれるクルマは、そうそうありません。サーキットを走りタイムと競争するならば迷わずよりパワフルなセダンRのユニットですが、一般ユースでそのフィーリングの素晴らしさを思う存分味わいたいなら、こちらの欧州Rのユニットが相応しいでしょう。
また、その美味しい高回転部分をしっかりと逃さず味わえるように設定されたクロスレシオの6速MTのギア比設定も絶品。ただ、セダンRとギア比共通のため、6速であっても「巡航」ではなく「加速性重視」。よって100km/h時のエンジン回転数は6速トップでも3000回転を大きく超えてしまうのは致し方ないところか。もっとも、静粛性的にはこれくらい回していてもなんら問題はありません。加えて、テスト中の高速巡航モードで燃費も約13km/Lを記録。
もう1つ…足回り。こちらも、ガッチガチでサーキットでは抜群だけど、街中やワインディングでは飛んで跳ねてとても踏めたもんじゃない硬さ+セミスリックとでも言った方がいいようなポテンザRE070を履くセダンRに対し、よりグランドツアラー的要素を重視した足設定+ウェット性能も重視したバランス型のポテンザRE050を履く欧州R。結果は確かに比較すれば遥かにしなやかでありストロークもキチンとして、ピョコピョコするような動きはない…というのは、あくまで「比較論」。絶対的なレベルで言えば、こちらもバネレートはかなり高く、ザックス製ダンパーの減衰立ち上がりの良さに助けられつつ、40扁平を履くために路面からの直接的な入力では「ガツン!」ときます。フラットな路面での落ち着きはちょうどいいくらいですが、「タイプRユーロは乗り心地が良いよ」というのは、あくまでも「絶対論」ではなく「比較論」という事を認識しておいた方が良さそうです。
さて、そのまま足の違いを考えつつワインディングへ。僅かながらでも快適性を重視した設定の足ですが、こういった場面で流すならばむしろ欧州Rの方が設定としてはマッチしている印象。ただ…赤バッヂらしくペースを上げていくと、どんどんと弱点が露呈していってしまう現実が徐々に露わに。
例えば、舵角が少ない状態でもクリアできるRの小さめのコーナーではなかなかの旋回性能を見せてくれるのですが、もう少し回り込むようなコーナーで操舵角が大きくなってくると、ノーズの反応が鈍くタイアのグリップだけに頼ったような姿勢になりがち。アペックス通過後は良く効くLSDのおかげで脱出時のトラクション性能はなかなかなのですが、それだけに余計コーナー侵入時の姿勢作りの時の重苦しさが助長されます。そしてS字などの切り返しでは、前後のタイアグリップの発生に僅かなズレが生じるような、アシが前後でバラバラに動き、ボディがねじれ引っ張られてしまうような感覚が少し感じられました。言うならば、リアタイアがキチンと使えていないような動き。もっともFFであるが故にそこまで求めるのは少し酷なのですが、皮肉な殊に、そもそもそれを知り尽くした上で「FFでもやればここまでできる!」と私たちに衝撃を与え驚かせてくれたのは、ほかならぬホンダのFF赤バッヂ車でした。
さて、そろそろ最終的な結論に近づきますが、このクルマの最大の魅力であり、そして同時に欠点である…それは「タイプR」であるという事、そこに尽きます。もしRでなく「ユーロR」「タイプS」であったならここまで要求レベルは高くなる事なかったでしょう。スポーティさと日常ユースを巧みに組み合わせたセッティングにも、パワーを犠牲にしてよりフィーリングを研ぎ澄ましたエンジンにも、納得がいきます。しかしながら、ホンダはこれに赤バッヂを与えて、そのグレードを「R発祥の地」日本へと導入してしまった…つまりは、本当に根からのホンダファンには重く遅く値段が高い欧州Rより日本Rに支持が集まり、周囲からは赤バッヂであるがゆえ、そのレーシーなイメージやキャラクターに敬遠されてしまった…ブランドの安売り、とまでは言いませんが、そこがこのクルマのキャラクターをイマイチはっきりと鮮明にできなかった理由、そして最大は「時すでに遅し」であった…。
と、ここまでは客観的評価。個人的感情を持ち出すならば、サーキットじゃなくてワインディングベスト、グランドツーリング性も重視したタイプRはまさに自分の求めていたキャラクターであり、世間の評判とは剥離しつつも、このタイプRユーロのRは「レーシング(Racing)」ではなく「リアル(Real)」である…っと勝手に結論付けて自分を納得させることに。もっともそれ以外に、かなり重めの操舵力でありますが電動パワステの嫌味が少なくインフォメーション性に富んだステアフィールや、巡航回転が高めでありながら、一般道+高速+ワインディングで600km走って燃費が11.2km/Lとなかなか優秀であった事、VSAが標準、FFでは最上類だと思えるシフトフィールなどなど、タイプRどうこうシビックどうこうホンダどうこうはとりあえず横にして、クルマ自体として気に入るポイントがたくさんありました。そして何より、やはりスタイリングが好み。この理由が大きいところ。このユニットをまんまIMAを取り除いたCR-Zに移植したのが出てくれば、再び悩み始めますが…(笑)現時点としては所詮フィットタイプR、などとかなり歴代Rモデルの中でもトホホな扱いになりそうな雰囲気ですが、個人的にはどーぞどーぞ。もっと評判下がって、中古人気もあまり盛り上がらず、相場が下がってくれればこれ以上嬉しい事はありません(笑)
と思いつつ、今回のシビックタイプRユーロと同じく、次回も本気に「購入前提」のレポートをお届け予定。
真冬のお台場で朝から並んで乗ってレポートした86プロトタイプ試乗からはや半年…ついに公道を走り始めたトヨタ86、そして今回早速500km超のロングランテストを実行する事ができました。
一般道、高速、ワインディング…実際の道を走り込んで、見えてくるものは?ライバル車比較はBRZ…といきたかったのですが、あいにく車両が確保できず。となるとここはこの車しかない…ということで、改めてマツダロードスターもテストをして、比較してみたいと思います。果たして、年内に手に入れる車はどれになるのか?個人的な私情も挟みつつ、次回またレポートしたいと思います。