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九郎田一馬のブログ一覧

2011年11月11日 イイね!

【試乗記】 ルノーウインド

【試乗記】 ルノーウインド
さて、今回試乗レポートでお届けするクルマは、ちょっとスペシャルなこの1台。今夏から日本に導入された、ルノーウインドのインプレッションをお届けします。




今回は日産レンタカーの3時間レンタル無料キャンペーンを利用して、けど3時間では全然足りないので(笑)ちょっと追加料金をお支払いして、秋の晴天の中150kmほど走ってきました。いつものロングランよりは短いものの、高速・ワインディング・街乗り…できるだけ様々なコンディションで試す事に。

さぁ、せっかくの機会なので、走りの印象は後ほどにして、ウインドの紹介をたっぷりといきましょう。動き出す前の段階から、このクルマは語るところがたくさんあります(笑)



このクルマのハイライトとして、とにかくまずはこのデザイン。下半身は普通のコンパクトカー、でも上半身はフェラーリ458スパイダー!?っというのは少し大げさですが、ずんぐりむっくりなプロポーションなのにこの楽しげな雰囲気、さすがおフランスのクルマ。でも実は、このウインドのデザイナーさんは日本人だったり。個性的で街中でも異彩を放ち、好きな方にはたまらないでしょう。個人的には、20年遅れてフランスからやってきたCR-Xデルソル、をどうしても連想してしまいますが…(笑) ちなみにお値段、255万円。輸入車と考えると安い!と思うか。…はたまた同セグと比べると高い?と感じるか。

ボディーカラーはグリ アルティカMと呼ばれるシルバーですが、どこか少しブルーも入っているような、とても素敵な色。写真だとそう見えなくもないですが、メディア向け広報車でよく見かけるブルー マジョレルではありません。



ベースとなったのはルノートゥインゴ。ただ、見渡す限りエクステリアで共通パーツはゼロ。ということで駆動方式はもちろんFF。このあたりは先ほどのデルソルに加えて、日本導入はされなかったオペルの2代目ティグラなんかを思い出させます。ちなみに開発はモータースポーツ専門であるルノースポールが担当。ルノースポールと言えば個人的には、フロントウインドなしのルノースポールスピダーを思い出します。ひょっとしてウインドにもいずれこんな仕様が…ってことは、まぁあり得ませんね(笑)。



ボディサイズは全長3835×全幅1690×全高1380mm。実際に対面すると、写真で見るよりかなりコンパクトに感じる、というのが第一印象。国内に導入されるのは、これまたトゥインゴのゴルディーニ ルノースポールと呼ばれるスポーツモデルと共通の1.6Lエンジン+5MTの組み合わせ。そして左ハンドル。



ちなみにイギリス用に右ハンドルの設定はあるものの、本国フランスでもMTオンリーの設定だとか。トルコンATやCVTはともかく、ロボダイズト式の2ペダルの設定もなし。見た目の可愛い雰囲気と違ってかなりのオトコ仕様。日本で左ハンドル+MTというのは売上的には絶望的な組み合わせなものの、クルマ好き的にはミーハー外車好きユーザーが寄り付かなくて好都合、かもしれません。とりあえずこの形でも、日本導入を決めたインポーターの英断に拍手。



特徴的なドアノブを「指にひっかけて」室内へ。エクステリアに比べれば、インテリアは比較的地味。グレーの単色で華やかさや高級感はありません。質感はこれくらいでもいいので、さらにヴィヴィッドな内装色の設定を望みたいところ。唯一スポーティさを主張するのが、文字盤が黄色のタコメーター。しかしこの3眼式のメーターは結構奥まった位置にあり、視認性はイマイチ。写真もライトONの状態でこれ。



ステアリングはセンターパッドがどデカくてちょっとダサいものの、グリップは太めで握りやすさは○。これだけデカいにも関わらずホーンを鳴らそうとしてもウンともスンとも言わず。実はホーンボタンは左側のウインカーレバーの先端に装着されています。エアコン・オーディオの操作表示は分かりやすく、そして何よりもステアリングコラムの右下の装着されている、ルノーご自慢のサテライトスイッチがものすごく使いやすい。ただオーディオ交換などは考えない方がいいでしょう。ナビ装着も同じく。今回の車両のように、ポン付け可能なPNDナビで済ませるのが一番。ただこの位置だとちょうどハザードボタンと干渉しますが、そこは我慢(笑)。何よりも今回サテライトスイッチの利便性の高さにびっくりしました。汎用ナビでも復活できるアタッチメントが登場する理由も頷けます。



さて、ルノーウインド最大の売り、屋根をオープンにしてみましょう。まずは頭上のレバーを90度回転させてロック解除、シフトレバーの前、ウインドー開閉ボタンに挟まれた真ん中のノブを押すと…リアトランクフードがガバッと開き、ルーフ後端を軸にしてクルッと180度回転して、フードの中にすっぽりと収納。フード閉。時間にしておよそ10秒ちょい。

折りたたみのメタルトップよりもはるかに簡易的、むしろタルガトップに近いのかもしれませんが、実用オープンとしてはこれでも十分。とっても気楽に、簡単に、素早く、そして周囲へのアピール度も満点の目立ちっぷり(笑)。モーターの作動音がとても小さくて静かな事も◎。



唯一、まるでトランスフォームするようにルーフとトランクフードがそびえ立つので、高さだけにはご注意を。ガレージでいざオープン!っとしようとして、上にガンっ!と当たってボディを痛めてしまうかもしれません。事実この車両は4000kmほど走行していましたが、フードの端には痛々しい傷がすでに…(汗)

ウエストラインも高く、この開閉方式ではリアガラスもそのまま残ってしまうので、オープンカーなのに解放感よりも包まれ感の方が大きいのは少し意見が分かれるところかもしれません。ただ個人的には、一番オープンカーの雰囲気に重要なフロントのウインドスクリーンが、結構寝ているものの、長さが頭上まで迫ってくるわけでもなく、比較的低い位置で短く切れているので、これでもオープンエアの満足感はそこそこ得られる…むしろ風の巻き込みの少なくて、なかなかこれはこれで実用オープンとして結構いいバランスなのでは?と感じました。爽快感は十分です。



ただ、良い部分だけではなくもちろん弊害も。完全5ナンバーサイズで手軽にリッチなオープンカーの雰囲気を味わえるウインドですが、視界に関して言えばこれが一級スポーツカー並みになってしまうのがウインドの欠点。特に後方視界の悪さは相当なレベル。見た目的にはかっこいいものの、装着されているリアスポイラーが後方の見切りの悪さをさらに助長します。バックでの車庫入れなどは相当に慎重になった方がいいでしょう。また斜め後方の見切りも悪く、そして最後に極めつけ、サイドミラーの横方向ガラス面積の小ささも視界の悪さに拍車をかけます。この部分に関してだけ言えば、それこそ本当に458スパイダー並みかもしれません…(笑)



もう1つ。ルーフが収納されている状態だと、トランクフードの開閉がとっても重くなるのも欠点として挙げておきます。新車状態でこれなら、後に経年変化でダンパーが抜けてくると…ちょっと恐怖です。ただ、ラゲッジスペース自体はかなり広くて十分に実用的。オープン・クローズドに限らずスペースが変わらないというのも嬉しいところ。奥にルノースポール開発を匂わせるリアタワーバーが装着されていますが、よほど大きな荷物をギュウギュウに詰め込まない限りは干渉しないので、実用性が損なわれることはまずないでしょう。



さて車両の紹介はこのあたりにして、いよいよ運転席へ。23歳の若造クルマオタク、左ハンドル+MTの組み合わせは初めてではないのですが、かなーり久しぶりなのでちょっと緊張。先述した視界の悪さはどうにもなりませんが、いざ運転し始めるとすぐに慣れてリラックスして走りに集中することができました。動き出しで右側にシートベルトを探したり、ドア側にシフトノブを探したりは何度かしましたが…(笑)。ただウインカーとワイパーは、右ハンドルで左ウインカーだと、しっかりと意識持ってないといけないんですが、左ハンドルの輸入車ならごく自然に慣れるんですよね。不思議です。

さて動き出す際に、まず困ったのがシートポジション。ベースが普通のコンパクトカーなので仕方ないのですが、着座位置はもう少し下げたいところ。女性ユーザー層も当然フランスでは考えているでしょうから、ちょっと自分(178cm)は想定としては大きいのかも。まぁそれはいいとして、やはりステアリングには是非テレスコ調整が欲しい。チルトのみで、しかもステアリング角度が結構寝ているので、どうしてもステアリングを抱え込むような印象になってしまいがち。ステアとシフトに合わせると足が窮屈、クラッチミートしやすい足位置に合わせるとステアリングとシフト(特に5速位置)が遠い…という悪循環に悩まされ、なかなかベストな位置が決まりませんでした。まぁあくまで「スポーツカー」ではなく「スポーティな雰囲気を楽しむカー」なので贅沢は言えませんが…。

しかし、このあたりの項目。国産車ならそれこそジャーナリストさんたちにボロクソに近い形で批判されるのに、ウインドの試乗レポートではこれに関しての記載は、いろんな媒体でも一部除いてほとんどなし。細かい事気にしないで楽しい雰囲気ならそれでいいじゃーん!ってことなのでしょうか?はっきり言って欧州のクルマになると途端に評価が甘く盲目になりがちな評論家さんたちが今でも目に余るほど多過ぎる…っと、脱線してきたので話をウインドに戻しましょう(笑)。



なぜシートポジションに文句が出たかというと、そのシート自体の出来がもう素晴らしかったから。たっぷりとしたサイズで窮屈な印象を抱かせず、しかしながら座面含めてサポート性は抜群。体重を受ける面圧の分散が見事で、惜しいといえばオープンカー必須のシートヒーターが設定されていないくらい。これでポジションさえ合えば…

さて、エンジンスタート。シフトレバーを1速に入れて動き出します。シフトフィールはコクコクと節度感があってなかなかいいのですが、ちょっと前後方向のストロークが長い&横方向(2→3、5→4など)の動きが渋い事が気になりました。後者は個体差かもしれません。クラッチは軽く、またミートポイントがかなり手前。ちょっと踏み込めばすぐ切れる、という感じで、いったん慣れてしまえばとても扱いやすいものでした。



ペダル配置は、左ハンドルの利点で全く違和感なし。どうもイタフラ系はまだ右ハンドルにするとこの部分には違和感が残る傾向なので。クラッチ横の足置きスペースも十分。そしてご覧のように、いかにもヒール&トゥしやすいですよー的配置(笑)。ただ、アルミのペダルがよく滑るのには参りました。特に雨の日には要注意。靴との相性もしっかり確認する必要がありそうです。

トゥインゴのゴルディーニ ルノースポールの共通の134psを発生させる1.6LDOHCエンジン。でも車重が1190kgと少し重めなので絶対的な動力性能は並。HVでも過給機付きでもない、山型トルクカーブを描く古典的NAのキャラクター。けど、むしろ今では新鮮味を感じるくらい。しかもちょうどレッド付近が最高出力発生ポイントなので、上まで回しても頭打ち感がないのも清々しい印象です。もちろん、そんな頑張って上まで回さなくても、ちょうど2500回転あたりから「クォーン」と気持ちいい音を奏でてくれるので、街乗り領域でも気持ちよさはしっかり味わえます。過度に排気音で聞かせるんじゃなく、いかにもエンジン音聞こえます!という素朴さも好印象。低速域の粘りも相当によく、アイドルミートは楽勝。渋滞中でもさほど苦にならず。それこそ、教習車のコンフォートよりよっぽど乗りやすい(笑)。



おそらく、多くの人が気になるのは高速域での走りでしょう。動力性能はもちろん十分、しかし如何せんギア比がかなりのクロス傾向。1速で50km/h、2速で90km/h…と、ワインディングを楽しむなら美味しい配分なのですが、5速でも高速80km/hですでに3000rpm、ちょっとペースを上げて巡航…というものならあっという間に4000rpm。さすがにちょっと回りすぎでせわしない印象。事実、この速度域なら5速ホールドでも追い越しラクラク。けど、常に急かされているような気がしないでもありません。もっと排気量が小さく、パワーが少ないのならこの設定でも分かりますが、動力性能とのバランスを考えても、そしてクルマのキャラクターを考えるとやっぱり巡航用の6速が欲しいところです。

すべての速度域を通して素晴らしいのがステアフィール。電動とは思えない初期操舵時のナチュラルで確かなと手ごたえとインフォメーション性の高さ。トゥインゴよりは若干スローな設定になっているものの、それでもワインディングで流す程度なら十分にクイックに反応してくれます。高速時でのステアリングの据わりも文句なし。操舵力も、軽すぎず重すぎずで、まさにベスト。

足の設定はストロークがとってもたっぷりとられており、4輪のロードホールディングの良さ、接地性変化の少なさはお見事。初期入力のいなしの良さは圧巻で、路面の細かなアンジュレーションくらいはすべて足さばきだけで遮断してくれます。このあたりはフランス車の真骨頂。こういう項目ではプジョールノーシトロエンは本当に不思議に思うくらいに上手い。

しかし、それが故に、このウインドの場合は、足がヒタっと地面に接地をし続けようとしてくれる分、特にリアのピッチ方向の動きが少し大きめ…特にブレーキング時で前荷重になっている時に、若干フワッとするのが少し気になりました。ワインディングでは、例えばRが一定の1つのコーナーを旋回する分には、ロールの進行スピードも適切で絶品なコーナリングを見せてくれるのですが、S字など切り返しで荷重が大きく左右に移動するようなシチュレーションだと、フロント軸が旋回体制に入ってから、少しワンテンポ待ってリアが追い付いてくるような、そんな動きが少し見られました。



おそらくこの問題は、セットアップされたタイアに原因がありそう。装着されているのは、195/45R16という立派なサイズのBSポテンザRE050A。このタイアのグリップ力と、サスペンションの設定…ここが少しアンマッチのように思えました。つまりはサスの伸び縮み方向の容量はたっぷりとしていて、グリップ力がとても高いタイアを履いていて、路面とタイアはビタっと接地。その入力の反応にリアサスの横剛性が足りない…追い付けていない。ルーフを閉じると、まだ少しは良い方向になるのですが…。ちょっとタイアだけが路面にしがみついて頑張りすぎてしまっている印象。このタイアに合わせるならもう少し足を固めた方が…というのはお門違いで、ちょっと45扁平のポテンザがこのウインドのキャラクターに対しては少し立派すぎるんじゃないか?ちょっとタイアが勝ち過ぎているような印象を受けました。もちろんその違和感とふわつきにさえ慣れれば、びっくりするくらい速く、ワインディングを駆け抜ける事が可能なのですが。もちろん、そんな飛ばすクルマでもないのでここまでの性能は正直いらない(笑)

また、乗り心地に関しても、初期の小さな入力での足さばきは本当にお見事なのですが、入力が大きくなってくると、サスのストローク自体はたっぷりとしていて、足もよく動いているのに、途端にドタバタとバネ下から突き上げるような硬さに見舞われます。これはルーフの開閉状態に関わらず同じ印象でした。

これらから推測して、今現状のタイアに合わせたセットアップなら、屋根はできるだけ開けずに(タルガといえども、やはりオープンにするとボディの剛性感は確実に変化を感じ取れます)、もう少し足を固めて…というのがベストの方向かと思いますが、いくらルノースポールと言えども、それではこのウインドのキャラクターとアンマッチ。それを考え足を柔らかめにしたのなら、それに合わせてタイアの銘柄もセットアップしなおしてバランスを取らねば!



個人的には、舵に対する反応やグリップレベルを現状より少し犠牲にしても、それでも十分に軽快さは味わえると思うので、このしなやかな足に合わせて55扁平15インチくらいにインチダウン。また銘柄も少しコンフォート系にして、フットワークと乗り心地をもう少し快適性寄りにして、乗り味をセットアップしたら面白いんじゃないかな?と思いました。その方が、オープン状態で走った時にクルマ全体のバランスはよくなりそうです。

ルノースポール開発ということで、走りは実にしっかりしていて、速い。しかしそのためのセットアップが、ウインドの性格に合っているかといわれると…?タイアのチョイス、エンジンの味付け、ギア比、乗り心地、…少しそれぞれが良いとこ取りをしようとして、ちょっとバランスが崩れているような印象を受けました。これがウインド「GT」であるなら分かりますが……



ちょっと辛口気味になってしまいましたが、それはもうちょっとのほほんと気楽に穏やかに楽しめる手軽なオープンカーとして、このウインドを楽しみたいからと思ったから。ここまでのパワーはいらない…もっと遅くていい。16インチなんていらない…限界も低くていい。ホットハッチ要素がどこか抜け切れてない。もちろん、今のままのセットアップで、ゆっくり楽しめばそれでいいんでしょうが、気持ちいいエンジンと、クロスしたMTと、ポテンザを履いてたら、どうしても飛ばしたくなるのがクルマ好きの性…(笑)
ウインドがとてもいいコンセプトをもっているからこそ、その雰囲気の走りのリズムのアンマッチ感が気になったので、今回あえて提案気味なレポートとしてまとめてみました。

と、いろいろグダグダ言いつつ、とっても楽しめた6時間150kmのドライブ。参考程度に、高速+ワインディング7割、市街地3割で走った燃費は13km/hほど。公表のモード燃費とほぼ同等でした。6速MTになればもう少し良くなる?

…っと、ここで気づいたのですが、実は本国仕様には、この1.6LNAだけでなく、この下にエントリーモデルとして、トゥインゴGT用の100psを発生する1.2Lターボ仕様もあるんだとか。なんだ、これでいいじゃないか(笑)



というわけで、こんな楽しい機会を設けてくれたルノージャポンと日産レンタカーに全力で拍手!ありがとうございました。そのついでに、本国100ps仕様の1.2Lターボ、足回りは現状と同じでタイアだけ15インチの大人しいやつにして、加えてできればやっぱり右ハンドルで、お値段-20万円の235万円!こんなパターンのウインドもどうですかね?ルノージャポンさんご検討ください。(笑)
Posted at 2011/11/11 23:06:04 | コメント(4) | トラックバック(0) | ルノー | 日記
2011年11月05日 イイね!

【試乗記】 ダイハツミライース ロングラン試乗!

【試乗記】 ダイハツミライース ロングラン試乗!

さて前回告知していた通り、今回ご紹介するのはミライース。個人的にも大注目の1台であり、この早いタイミングで卸したての新車による500kmのロングラン燃費テストを実行する機会に恵まれました。今回はそのレポートをお届けしたいと思います。





ボディカラーはホワイト、グレードは上から2番目のX。最上級モデルのGは、VSCやアルミホイールなど装備充実していますが、価格も112万円とそれなりに高くなってしまいますし、1つ下のLはXよりちょうど10万円安いものの、その分インテリアのクオリティも下がり、キーレスエントリーや電動格納ミラーなどの装備がなくなるのもちょっと痛いところ。この100万円をギリギリ切るXが最もバランスが良く、また今後も売れ筋グレードになるでしょう。



というわけでまずはスタイリングから。第一印象は「シンプル」。前回のTMSで出典された2ドアで割り切ったコンセプトモデルのほうが、よりチャレンジングで、より「クルマ好きにウケる」ものだったかもしれませんが、今回は冷静に「現実の消費者・ユーザー」の意見を取り込み、その層に売れるよう狙い定めた車両コンセプトとデザイン。これはこれで「商品」となってしまった事にクルマ好きは興ざめしてしまったかもしれませんが、今回このダイハツの現実的決断・判断を、僕は支持したいと思います。事実、先々代ミラでも直噴エンジンを搭載した燃費追求グレード(MTのみ)だったり、先代ミラでもアイドルストップ仕様を設定したりと、それなりに探究していた事が伺えましたが、お世辞にもヒットとしたとは言い難いものがあります。エコカーと言えども、その効果は、「普及してこそ」意味がある。実際、このクルマに対して色々文言を重ねるクルマ好きユーザーは、直接このイースを買うユーザー層か?…と聞かれれば、必ずしもそうではない。冷静かつ現実を直視したマーケティングを行い、今回イースをこのような形でまとめて販売にこぎつけたダイハツの判断、僕は全面的に賛成です。



っと、話が逸れてしまいました。強い個性などもなく、どんな人にも受け入れられやすい形でまとめられたミライース。コスト制約もあって、造形的にもとてもシンプル。しかしながらそんな中でも評価したいのは、まず女性的な雰囲気があまりない…言い換えると、男性でも比較的抵抗なく乗れるデザインであるという事。パステル系のカラーが多めに設定されてはいますが、それでも先代のミラ、エッセ、アルトなどに比べても、抵抗感は確実に少ない見た目だと思います。事実、初期受注のユーザー傾向を見ていると、男性ユーザーの比率がかなり多くてメーカー自身が驚いたんだとか。

もう1つは、軽のエコカーでありながら貧弱な印象を抱かせず、あわよくばそこそこスポーティにさえ感じられる事。これは全体的に空力を意識したと思われるシャープな造形と、抑え目の車高、大径の14インチタイアの装着などが影響していると思われます。もちろん個人差もありますし、「これのどこがやねん!」とのツッコミを受けるかもしれませんが、新車で100万以下の軽自動車でここまで上手くまとめあげたのはもっと褒められていい部分でしょう。少なくともマーチやパッソなどよりも、男性の抵抗感が少ないのでは?と思わせてくれます。リアからの見た目キリッとシャープ。省電力なLEDテールは、見た目の視認性もよく安っぽさ感の排除にも一役買っています。



グリップ式のドアハンドルを握り、室内へ。ほぼ90度に開くドアはダイハツ車共通の美点。インテリアのクオリティは「並」。いや、価格を考えれば必要十分!なのですが、実は現行ミラあたりなんかは恐ろしくよく出来ているので、これはあくまでダイハツの軽クオリティからすれば「並」ということで。もちろん単体で見れば、これで全く不足はありません。エコアシスト照明付きの自発光式デジタルメーターは見た目の質感も高く、視認性も◎。一体形成でコストを抑えながら、上下の色を使い分けて質感を高めたインパネはアイデア賞モノ。これがL以下の単色だと商用イメージがイッキに強くなるところですが、いやー実によく考えられた設計です。ステアリングのエンブレムやシフトノブのメッキ処理はX以上に装備。細かいところで見れば、運転席・助手席両方ともにバニティミラーが装着されているのも特徴です。



ただ、割り切っている部分は徹底的。配線を短縮化したためか、給油口のフタを開けるレバーはサイドブレーキ下に配置(ただ、これがなかなか使いやすい)。純正オーディオのスイッチはまるで炊飯器のような雰囲気。まさに家電。音質調整等もなく超シンプル。まぁこれはこの価格でCDオーディオが標準装着されている事自体が既に凄い事かもしれませんが…。



室内で決定的に問題に感じたのが、シートポジション。最上級モデルのGでしかシートリフターとチルトステアリングが装備されないため、このX以下ではシートスライドとリクライニングしかできず。しかもポジションが女性に合わせたと思われる設定で、178cmの自分にはさすがに窮屈な姿勢を強いられる事となりました。ここはせめてシートリフターだけでも欲しいところ…。救いだったのは、サポート性は皆無なものの、シート自体のサイズが結構たっぷりとしており、シートバック・ヘッドレストの高さも十分足りるものだったこと。この部分ではマーチやパッソよりマシな仕上がりでした。



後席に目を移すと、ちょっと驚くくらいの広いスペース。質感や装備内容は久々に「軽」らしい仕上がりでしたが、ここは軽枠を感じさせないスケール感。ただ、シートは前席以上にペランペラン。販売当初から物議を醸し出しているヘッドレスト非装着もそうですが、思いっきり割り切っています。ただこれも、実際の軽の使われ方に合わせた設定なのでしょう。気持ちいいくらいの実情主義。じゃぁそれなら、こんな広さいらないのでは?その分もっと全長を短縮して、軽量化して、なんなら3ドアでもよかったんじゃ…と考えてしまうのは、クルマ好きの悪い癖(笑)。この発想をなぞると、結局は先述したTMSのコンセプトモデルに戻ってしまって、いくら燃費が良くて安くて画期的な素晴らしいクルマでも、ツインやR1の後を追う不人気車の運命まっしぐらとなっていたことでしょう。ここがキチンと「売れる商品」を作る上での割り切りマーケティング。クルマ好きがつい忘れがちなポイントでもあります。

さて、紹介も終わりまして、走り出す事にしましょう。エンジンスタートさせて走り始めると、随分と賑やかなノイズの数々。エンジン、CVT、ロードノイズ…久々に軽らしい室内の雰囲気。ただ加速時は絶対的にウルサイものの、速度一定で回転が落ち着くと、静粛性はそこそこのレベルまで良くなります。またCVTのセッティングや電動パワステのステアフィールなど、高級感があるわけでも特徴があるわけでもありませんが、ごくごく違和感なくナチュラルにセットアップされている点は褒められる部分。絶対的なパワーが限られているのでアクセルを踏む量も多くなってきますが、無理に燃費セッティングさせたようなかったるさがほとんど感じられなかったのは◎。普通車と比べればその差は歴然ではありますが、オートマのNA軽の中では群を抜いてキビキビ走ってくれます。



イースが凄いのは、速度が上がってきてもその印象がそのまま感じられる事。80km/h、100km/hはもちろんのこと、それ以上の速度域でもアクセルにゆとりをもちながら巡航可能、あわよくばスピードメーターを使い切りそうな勢いまで加速が持続する…これには本当に驚かされました。理由はミラよりも60kgも軽量化された車重と、Cd値0.31の優れた空力性能。また徹底的なフリクションの削減なども影響しているのでしょう。加速はそれなりの軽レベルですが、高速域での速度維持の楽さは明らかに軽NAレベルより1つ頭飛びぬけてよかった印象。記憶する限り軽でここまで空力性能に気を配ったクルマは他にありません。ただでさえ限られたパワー枠の中。「軽さ」と「空力」はこれほどまでに効果てきめんなんだという事に改めて気付かされました。

足回りは、基本ソフトなセッティング。しかし街乗り領域でピョコピョコ落ち着かない挙動を示すのは、高い指定空気圧のせいによるもの。その値はなんと2.6!燃費対策でしょうが、気になる方はリア側を少し落とし気味にすれば幾分よくなるかと思います。速度が乗ってくれば挙動はフラットに。しかしその質感はあくまで並で、文章で表わすならば、これが軽!?という感じではなく、これぞ軽!という感じでしょうか。1つ褒められる部分と言えば、軽量化されつつボディ剛性が予想以上にしっかりしたものであった事。

タイアサイズは155/65R14。この軽サイズでこの車重で燃費重視なら、13…もしくは12インチくらいまで割り切る事も考えられたでしょうが、そこは走りも犠牲にしないバランスを取るため、開発陣の方が大径14インチサイズにこだわったのだとか。純正でハンコックまで採用していたダイハツでしたが、今回のイースはヨコハマブルーアースを純正採用。エコタイアど真ん中ですが、グリップ感はこの車格を考えれば十分満足。14インチ採用が効いています。



フットワークに関しては、まぁこのイースでワインディングを攻めるなんてのは常軌を逸脱している行為…かもしれませんが、せっかくなのでいつもの通りテストを実行(笑)。この部分に関しては、他のダイハツ車と同じような傾向。そこそこにステア操作に対する反応は良く、しかしそこからちょっとビックリするくらいにカクンと深くロールして、グリップレベルの限界よりも先にドライバーに恐怖心を与える事で妥協点を見出す…意外に粘りは見せてくれますが、基本アンダーセッティングでよほどの事がないリアが出る事はありません。まぁそんな領域では、サポート性ほぼゼロのシートのおかげで、ステアリングにしがみつきたくなるくらいに車内で身体が暴れてしまいますが(苦笑)

もちろんこれが長年街乗り軽のセットアップを続けてきたダイハツの落とし所であり、それはそれで「これでもいいか」と思わせる説得力のあるものなのですが、それでもやっぱり「いざ」という時の事を考えて、個人的にはもう少しロールを抑えたいところ。車高が低くて軽量であっても、やっぱりスタビライザーは装着するべきでしょう。ダイハツはターボモデルしかスタビを装着しません。他のスタビ無しのダイハツ車は、知る限りみんなこの動き。ムーヴOEMのスバルステラがNA含めて全車にスタビを装着する理由も分かる気がします。別にロールが少ない=スポーティなんて事は思っていませんが、それでも14インチタイアのグリップレベルとのバランスを考えても、もう少しロールを抑える設定を望みたいところ。今の設定なら何も13インチでもっとグリップを落とすセットアップでもよかったはず。せっかくの14インチが活かせてないのはちょっと残念。



さて、最後に燃費報告。ちなみに全グレードに標準装着のアイドルストップは、ある一定条件が揃うと、まぁーとにかくよく止まってくれました。ワイパーやライトなどを使用していない条件がつくものの、停車「前」にエンジンを停めて滑走してくれる制御のおかげで、しっかりとメリハリのある運転をすれば、スタート時のタイムラグも十分に許容できる範囲。ノロノロ運転なんかでは、少し止まり過ぎ?と思う時もありましたが、せっかくついてるなら積極的にエンジンストップさせたほうが理に叶っているといえるでしょう。嫌ならキャンセルボタンを押せば良し。2日間、市街地走行は250kmほどでしたが、その中でアイドルストップ時間は1時間20分!バッテリーのサイズが標準的だったのも◎。

というわけで区間ごとに計測した大まかな燃費結果は、雨+夜+渋滞+エアコンONという最悪に近い条件で17~18km/L、高速道路ハイペース走行で20km/L前後、巡航ペースで25km/L前後、そしてこのイースが最も燃費効率が良さそうな時速60km程度のバイパスや郊外などでの流れの良い道路での巡航ペースでは、27~28km/Lという数字も十分に現実的。

トータル500km、一般道市街地半々、途中ワインディングや高速での全開走行を含めて、最終的な燃費は23.2km/Lという結果に。燃料タンクは30Lですが、600km巡航は楽勝でしょう。季節的に条件に恵まれていたとはいえ、アクセルを床まで踏み込む機会は普通車より圧倒的に多かったのにこの数値…正直驚きました。今まで自分が行ってきたテスト結果と照らし合わせると、デミオスカイアクティブはもちろんのこと、トータルで考えてもフィットHVを上回りそうです。

さて、いつもの如く試乗レポートを書いてきましたが、本来はこうやってゴリゴリなクルマ好き(笑)がうだうだとクルマについて細かく考えていくような…イースはそんなクルマではないのかもしれません。事実、趣味性はゼロ。ただし、これはこれですっごくよくてアリだな…と感じたのは事実。クルマ好きの琴線には響かなくとも、今後自動車はどうあるべきかと考えたときに、このイースの志の高さにはちょっと感服してしまいました。はっきり言って、今年の個人的ベストカーオブザイヤーをあげていい。それくらいに思っています。いやー、いいクルマでした。



…ただ、やはりオタク心?からすれば、もうひとひねり欲しい。でもこれは、あくまでイースシリーズの第1弾なわけです。ぜひともこの最新低燃費コンセプトは維持しつつ、もう少し上の価格帯…ちょっぴりプレミアムな軽、そう、「ソニカイース」なんて出してくれたら、とても面白そう。そして加えて贅沢ではありますが、いつか大ヒットして儲けが出た暁には、ダイハツの技術者魂を、クルマ好き方向に炸裂させた…次期2代目コペン「コペンイース」の登場を是非期待しつつ、今回の試乗レポートの最後とさせてもらいます。
Posted at 2011/11/05 20:17:56 | コメント(5) | トラックバック(0) | ダイハツ | 日記

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