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九郎田一馬のブログ一覧

2011年10月07日 イイね!

〔試乗記〕マツダRX-8 TYPE-G(6AT)

〔試乗記〕マツダRX-8 TYPE-G(6AT)


ありがとう、そして、さようなら…





03年の久々のNAロータリー復活。
以来4シータースポーツカーとして、そして世界唯一のロータリースポーツカーとして、孤高の存在だったマツダのRX-8の生産が来年6月で終了。足かけ9年…年々厳しくなる燃費基準と排ガス規制、そんな中マツダは本当によく頑張ってくれたと思います。

文句なんて、言えません。ちゃんと実際にエイトを購入したユーザーなら、その権利はあるでしょう。僕はRX-8のオーナーではないので、マツダのロータリースポーツに1円もお金を払っていません。なのになくなるのが決まってから色々言う…それは許されないでしょう。だったら買えよ、というわけですから。無くなった大きな原因の1つは、やっぱり売れなかったから。これは疑いようのない事実の1つであります。RX-8ユーザー以外で、マツダにロータリーを応援する気持ちだけでお金は払って貢献していない、車好き1人1人の責任でもあります。



ただ、この喪失感…本当に大切なものは、失った時に初めてその価値に気付く。この言葉が本当に痛切に実感できます。最後を飾るスピリットR……高嶺の花過ぎて無理だと分かっていますが、喉から手が出るほど欲しい。今率直な気持ちです。


そこで今回は、RX-8の試乗記をお届けします。もちろん時期は今ではなく、去年の2010年の夏頃に試乗したインプレッション記事です。今回は修正を加えて、こちらのみんカラの方にアップしたいと思います。まだ当時は「嫌な予感」しかしていなかったので、今現在よりもより率直な気持ちでエイトに接する事ができていると思います。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



さて、今回試乗レポートをお届けするのは、唯一のロータリースポーツである「RX-8」。テスト車両は販売から5年経過した際に行われたビックMCを経た現行型、そのベースモデルである「TYPE-G」の6速ATモデルです。

まずスタイリングは、今年ではや7年を経過したとはまだ思えない、斬新なプロポーションは健在。思えば登場した直後、一部メーカーで明らかにこのエイトのデザインを意識したコンセプトカーが次々と登場した事が思い出されます。ただ、先述した08年でのマイナーチェンジによって、やや「厚化粧」気味になったエクステリアは、初期からのデザインに慣れ親しんでいる人にとってはやや抵抗のあるものかもしれません。もっとも、初期段階で仕上がっているデザインのクルマが、マイナーチェンジをすると崩れてしまうというのはよくあるパターンではありますが…。



インテリアもそのマイナーチェンジによって大幅に変更が加えられています。DIN方式のインパネに、ロードスターと共通のステアリング。タコメーターには水温に合わせてレッドゾーンが変化する可変タイプを採用。そして見た目に表れない、エンジン、足回りの変更も多々……ここで改めて振り返ってみると、フルチェンジに近いと言ってもいいほど、実に様々な改良が2年前のマイナーチェンジで行われた事が伺えます。ロードスターのMCも含め、マツダの堅実なクルマ作りの姿勢が表れている部分と言えます。



さて前置きが長くなりましたが、さっそく運転席に乗り込んでエンジンスタート。その際に感じるのは、ドアの閉まり方やその時の音、そしてインテリアやエンジンスタートの時に感じる、質感の向上っぷり。ここでまた余談ですが、RX-8が出た当初はまだ自分は高校生であり、当時通学で使用していた最寄り駅近くのマツダで、制服姿のまま、登場直後の白いTYPE―Sの6速MTをまじまじと見つめていると、営業マンの方がキーを持ってあらわれて、運転席に座りエンジンまでかけさせてくれた思い出があるのですが、その時よりも確実に各部のフィニッシュであり、1つ1つの動作の質感の向上が感じられます。もっとも、初期モノと、マイナーチェンジ後の現在のモデルの間に長い長い年月が経っていれば当然の事かもしれませんが…。

ロータリー独自の「ポロポロポロ…」というアイドリング時の振動をステアリングから感じつつ、Dレンジに入れてゆっくりと動き出します。よく言われる「ロータリーは低速時のトルクの細さが…」という点については、トルコンATによるスリップ感の助長もあり、あまり顕著には感じられません。これも、後期から全エンジン6ポート化され、メタリングポンプ数の増加や機械式→電磁式への変更などの細かい改良を重ね、涙ぐましいエンジニアの努力の賜物なのでしょう。なお後期のAT仕様はリミット7500rpmの215ps、MTはリミット9000rpmの235psとなっています。



発進直後はスムーズなものの、そこから2~4000回転付近のアクセルに対する反応の鈍さは、やはりレシプロには敵いません。しかし4000を超えたあたり…そこからレッドの7500回転まで、全くよどみなくスムーズに、パルスが弾けるようなフィーリング、そしてその時に奏でるNAロータリーの実に気持ちいいサウンド。ロータリーの燃費が悪いというのは、エンジンの特性上の問題はもちろんあるでしょうが、この高回転まで回した時の気持ち良さにドライバーがガマンできずにスロットルをあけてしまう…そんな要因も絡んでいるのでしょう。そういう自分も、見通しのいい道路で前が空けば、ついつい1速でレッド7500まで……この呪縛にすっかりハマってしまいました。



それを手助けしてくれるのが、クロスした6速AT。全開加速時には上手くトルクの痩せた部分までドロップせずに、またトルコン式とは思えないレスポンスでシフトアップしてくれます。ここであえて「シフトアップ」と記したのは、やはりダウン時にはワンテンポ遅れてショックと共にシフトダウンする、トルコンATのネガが見えた為。加速時には全くハンディは見せませんが、ダウン時にはやはり最近流行りのブリッピング機能が欲しいところ。もっとも、ベストなのは2ペダルのDCTでしょうが…。しかし乗っていると、さぞかし初期の4速ATモデルに乗るユーザーは、フラストレーションが溜まっていた事でしょう。

しかし、乗りながらフト気づいてしまいます。アクセルを踏み込んだ際の気持ち良さは、ATでありつつもやはり最高に気持ちいい。…しかし、うん、やはり…。そう、気持ち良くはあっても、思ったより速くない……ここをどう感じるかで、このクルマの評価は大きく分かれてしまう。RX-8が果たして、スポーツカーか否か。



以前ここでコペンやCR-Zの比較対象にロードスターを引っ張り出してきましたが、その時に乗ったMTモデルはもちろんのこと、ひょっとしたら力感はATにも少し劣っているくらいかも…車重の差を考慮したとしても、今回乗った215ps仕様のNAロータリーに乗った偽らざる感想です。

もちろん、235ps仕様の6速MTなら少し印象が違ったかも…とも思えますが、こちらも少し以前のベストモータリングで取りあげられた際に、筑波サーキットでS2000はもちろんのこと、レガシィB4やクラウンにまで遅れをとるという(結果がクラウンアスリートの勝利という大番狂わせでしたが)、これが「数値上」でのRX-8のポテンシャルの現実ということになります。



おそらくこれが、「ロータリースポーツ」であるRX-8の運命を決めてしまったのかもしれません。「想像よりも速くない…」否、「スポーツカーとして見ればはっきり遅い」という事実。個人的にはそれが決定的に悪いとは思いませんが、「スポーツカーは速いだけじゃないんダヨ」という事を示すロードスターよりも、遅い、現行マツダのフラッグシップスポーツという現実は、やはりいささか物悲しいものがあります。

しかしこの気持ちいいフィーリングだけどパワー感がないエンジンとは違い、シャシーの懐の深さは圧倒的。まず動き出しから感じるのがその乗り心地の良さ。テスト者は225/50R17サイズのダンロップを装着していましたが、タイヤの当たりの硬さは全くと言っていいほど感じず、また速度を上げていくほどフラット感が向上していくこの足の良さは、高速グランドツアラーとして使っても全く不満がでないでしょう。乗り味だけでいえば、それこそアテンザよりも快適な分類に入るかもしれません。



そんなしなやかなサスセッティングを持ち合わせつつ、ワインディングに持ち込めば、とにかく俊敏かつ軽快な印象を抱かせてくれます。これぞロータリーの真骨頂か?軽量かつコンパクトなおかげで持ちあわせた前後重量配分の良さとフロント慣性の少なさ。ブレーキは構造だけ見れば決してスポーツカーらしいとは思えない一般的なシングルポッドながら、ブレーキング時の4輪がヒタッとと沈み込み、抜群の制動力を披露してくれるので、どんどんブレーキで詰めていける楽しさはまさにスポーツカーの真髄。FRらしい鼻先の軽さと路面変化を的確に伝えてくれるステアフィール、少しオーバースピードで侵入しテールが流れ始めても、もともとのロングホイールベースのディメンジョンのおかげで、自分のような素人でもスッと立ち直らせられる懐の深さ…

先ほどのパワー感の欠如と相まって、完全にシャシー性能がエンジンパワーを超えた領域にあるこの感覚は、逆に言えば今の現行NCロードスターで少し失われつつある「ほどほどの扱える性能」「人馬一体」を、RX-8でより具現化しているのかも…そう思えば、先ほどの物悲しさも個人の杞憂の範囲で済みそうです。

さて、高速でのGT性能やワインディングで気持ちよく走り回った分の代償は…ということで、気になる燃費チェック。今回約200km走行し、33L弱のハイオク消費。満タン法で燃費を計算すると、6km/Lをなんとか超える数値でした。後半は元気よくアクセルを踏んで楽しんだ事を考えると、ロータリーならば望外に良い数値…なのかもしれませんが、昨今HVでない純粋なレシプロエンジン車の劇的な燃費改善を考えれば、少し厳しいものが感じられるのは事実。「スポーツカーに燃費なんて!」「性能を考えれば他車種と比較してそれほど悪くない!」かもしれませんが、やはりロータリーが今後生き残るためには、さらなる抜本的改良が必要である事を切に感じさせられます。



と、ここまでいろいろ書きつつ、燃費に関しても、それがこのロータリーのフィーリングを味わうための代償で我慢…というところまでは納得。しかし、最後にもう1つだけ。今年の猛暑は近年にない強烈なものでしたが、この夏にRX-8の室内でドライビングを楽しむ事は「酷」の一言…実は今回一番厳しく感じられたのが、夏場の車内温度の上昇に関して。

できるだけ良好な重量配分を実現するためにギリギリまでフロントミッドに近づけられたエンジン、ミッション、それらの熱が全て遮断し切れずにセンターコンソールを通じて車内へ伝わってくるのは、35度を超える猛暑の中ではさすがに厳しいものがありました。もちろんエアコン自体は大変良く効くわけですが、体に直接触れる部分が常に熱い「カイロ状態」ではそれも無意味。少しでも走りを楽しむべくエアコンを切ったのなら…それこそまさに車内サウナ我慢大会となります。もちろん、スポーツカーにそんな事邪道だ!と言われれば元も子もありませんが、ふと振り返るとそこには大人がもう3人移動できるスペースと、快適な乗り心地があるのです。なにも走りだけで我慢を強いるならば、4人乗りもフリースタイルドアも必要ない。ここが、RX-8の抱える矛盾点を一番確実にあらわしているのではないでしょうか。

テスト後、このRX-8の良い点悪い点について自分自身冷静に振り返ってみました。ロータリーでしか味わえないフィーリング、とくに下りのワインディングを7~8割で流すように走っている時の気持ちよさと言ったら、自分も22にして様々なクルマを試す機会を与えてもらっていますが、間違いなくその時の記憶はこれからもトップランクとして自分の中に刻まれると言ってもいい爽快さでした。そしてなおかつ大人4人と荷物を積んで、快適にロングドライブを楽しめる。これほど素晴らしい性能を持ち合わせているクルマは他に例を見ません。

しかしながら、欠点を見ていくと……。燃費、パワー感の欠如、車内温度の遮断性の悪さ、維持費……RX-8の最大のアピールポイントはロータリーエンジン搭載車であるということ、それが最も優れた長所であるのと同時に、唯一かつ最大と言っていい欠点である……これが今回RX-8をテストした正直な感想です。得るものがあれば失うものがある、のは当然ですが、やはり「ロータリー」と「4人乗りスポーツカー」というコンセプトの両立は、登場7年たっても以前両者に大きなズレが残ったままとなっています。誰もが夢見たコンセプトかもしれませんが、エコカー減税旋風吹き荒れる中での8月の販売台数は、わずが40台程度…50台以下、1日全国で2台売れればいいほうというこのセールスが、それをさらに裏付けているのかもしれません。このクルマがナビ付でも楽々300万円以下で買えるというコストパフォーマンスの高さは、ロードスターの比ではありません。



やはり、FDでこそREは輝き受け入れられ、エイトのコンセプトがもしレシプロエンジンで実現できていたら…、この大きく時代が移り変わろうとしている今、この孤高のロータリースポーツを試して、べらぼうに楽しいのになぜか素直に喜べない自己矛盾に苛まれて仕方がありません。

そこで期待したいのは、13Bに取って変わる後継機と目される「16X」の存在。今徐々に「衝撃」が広がりつつあるSKY-G、SKY-Dのように、革新的技術で内燃機関の可能性をさらに感じさせてくれる、16Xならぬ「SKY-R」の存在はあるのでしょうか。マツダの社運を掛けたロータリー47士、オイルショックを乗り越えSAの登場、そして787Bのルマン制覇…世界に誇れる日本の自動車産業の中でも、これほどストーリー性にあふれたユニットはそう存在しません。今このエイトのユーザーも、色々な不満点がありつつも、唯一無二の存在かつ、これらの過去のストーリーに心酔してロータリーを応援している気持ちの方もいるはずです。今クルマの走りに一番真面目に取り組んでいるマツダ。次世代ロータリーユニットを搭載した魅力的なスポーツカーが登場すれば、きっと自分もオーナーへの憧れを現実にしようと動き出そうと思ってエールを送りつつ、今回のレポートとさせてもらいます。

きっと、その時は、やってくる。そう信じています。


Posted at 2011/10/07 23:35:32 | コメント(2) | トラックバック(0) | マツダ | 日記
2011年08月27日 イイね!

【試乗記】デミオスカイアクティブ、徹底ロングランテスト!前編

【試乗記】デミオスカイアクティブ、徹底ロングランテスト!前編さて、前回スカイアクティブデミオの試乗速報をお届けしましたが、数十分の試乗ではその真意まではなかなか判断することはできません。注目の1台なだけに、もっと走り込みたい…そんな希望が想像以上に早く叶い、早速1台借り出して、高速・一般道・ワインディングとあらゆるステージを試すロングランテストを実行することができました。


今回は燃費計測を含めて、約850km走行したデミオ13-SKYACTIVのレポートをお届けします。









テスト車両はシルバーの13-SKYACTIV。走行わずか130kmのド新車。この地味な色だと営業車っぽさ全開ですが、彫刻的で抑揚の効いたボディラインは、こういった色の方が際立つかもしれません。事実、デミオはブルーやグリーンなどの目立つボディカラーもありますが、シルバーも色合いの違う3色をそれぞれ用意していたりします。



マイナーチェンジで変更されたのはバンパー・グリルだけですが、空力の事も考えつつ実に洗練されたデザイン。表情が豊かになって、とてもデミオにマッチングしています。フェイスリフトで顔が崩れず完成度が上がる珍しい好例ですね。

スカイアクティブの専用パーツは、ヘッドライトのブルーのアクセントと、LEDテールランプ。LEDは写真のように2列になって光ります。ただテールデザインはベースモデルと全く同じにする必要もなかったのでは…?



140万円のベースモデルなので、見た目ではドアミラーウィンカーやプライバシーガラスはなし。リアのヘッドレストはシート一体型。またまた安っぽい…(苦笑)  残念ながらベースモデルなのでシートリフターもなし。前回のレポートや、カービューでの岡崎さんのレポートでもありましたが、これらの装備たちがわずか+5万円で装着されるセットオプションのパッケージ1は絶対に付けるべき。

次にシートですが、こちらはスカイアクティブ専用のシート。新素材のネットなどが採用されているのですが、ちょっと張りが強くて身体とのフィット感やサポート性はイマイチ。また、ベースモデルとは違い、相当背もたれを起き気味にしてもどことなく遠いヘッドレストも気になりました。黒一色というのも、オシャレなカームホワイトの内装からすれば相当地味。

しかし最初の印象はあまりよくなかったものの、重量分散はよく出来ており、ロングドライブでの腰の疲労感は最小限で、その点ではなかなかの実力派でした。完全に新車状態だったので、ある程度クッションが馴染んでくるとちょうど良くなるのかもしれません。

ドライビングポジションは極端にアップライトな印象を抱かせず、比較的低めの着座位置で雰囲気はスポーティ。しかしながら窮屈な印象を抱かせず視界良好なのは、前席付近でグッと下がるウエストラインと大きめのドアミラーのおかげ。このあたりの空間設計の上手さはデミオの美点の1つ。ただ、唯一ステアリングにテレスコ調整が未装着なのが惜しいところ。



インテリアは質感の低さを解消するべく、ピアノブラックのパネルやメッキのリングやモールを追加して頑張っている…のではありますが、元々のチープさを払拭するまでには至らず。ぜひともスカイアクティブにも、単調な黒ではなく、もう少し明るい内装色がほしいところです。

ハザードランプを目立つ色に変更するなど、地道な改良は○。あとそれに加えて、サイドブレーキ周辺の収納性や利便性の高さは、目立たないもののかなり褒めたいポイント。財布、携帯がすっきりサッと置け、紙パックのドリンクもしっかり固定できるなど、よく考えられています。本棚ラック風のグローブボックスもアイデア賞モノ。


リアシートは正直言って割り切り感が顕著。中央席ヘッドレスト&3点ベルト装着可能になったのは歓迎ですが同クラスで一番後席3人掛けをしたくない1台と言えるでしょう。ただ改めて気づいたのは、デミオの積載能力の高さ。シートを倒しても大きめの段差が残りますが、ラゲッジスペースの広さはなかなかのもの。新型が出た当初は、先代モデルがこの項目でかなり優秀だったため狭さが目に付きましたが、新型スイフトの使い物にならない狭さから比べれば、格段に広い(笑)

意外な事に、懸命に軽量化に力が注がれたデミオながら、テンパータイヤはこのスカイアクティブも標準。これをレスにすれば1トンジャストも達成できたかもしれませんが…。


さて、ボンネットを開けてみましょう。



まず目に飛び込んでくるのは鮮やかなブルーのエンジンカバー。このあたり普段目に見えない部分のコストカットはヴィッツやマーチ、はたまたポロあたりも凄い割り切り用ですが目玉が「エンジン」なだけに、見た目のアピールには事欠かしません。

そして気づかされるのが、エンジン自体のデカさ。ベースモデルに比べて明らかにぎゅうぎゅう詰めな印象。スカイアクティブにHIDが装着できない理由がよくわかります。このデミオのエンジンスペースにスカイアクティブをぶち込むには、開発陣の方々には相当な苦労があったことでしょう。

そしてもう1つ。これまた相当にでっかいバッテリー。2個→1個になったのはi-stopの劇的進歩ではありますし、アイドリングストップ車のバッテリーは皆このくらいの大きさはあります。

ただ、装着位置が比較的上部になることもあり、見た目からも明らかにフロントの重心位置を上げていそうで重量バランス的にもちょっとこれは…

エコカーとはいえ、そこはズームズームのマツダ。ロードスターみたいにトランク移設すれば…なんてクルマ馬鹿の戯言で無茶なリクエストを言いたくなる…と思いきや、なんと1度は実際に検討した結果、コストアップの兼ね合いから泣く泣く諦めたんだとか。さすがマツダ、といったエピソードでしょうか(笑)


さて、早速走り出してみましょう。一般道での印象は以前書いた通り。ドアを閉めた瞬間の音から分かるボディのしっかり感の向上。歩道の段差を越えるだけでも乗り味の質感が大いに向上していることが分かります。走り出せば、スカイアクティブ専用の遮音フロントガラスの効果も手伝って、静粛性は先代モデルと比較にならないほど。ダウンサイジングユーザーにもすんなり受け入れられそうな、この走り出しからの数分でも分かる進化。軽快、だけど華奢…なイメージはかなり払拭されています。


さて、ここからは高速道路へ。とは言っても、土曜日の阪神高速、流れ自体はさほど良くなく、渋滞もところどころ発生しています。



まずは流れに沿って、左側で大人しく。一般道での印象の良さそのままに、奈良方向に向けて100kmほど走った時のメーター内の燃費表示がこちら。i-DMは5点満点で走りを評価してくれるのですが、この時は4.5。気温からも分かる通りエアコンはもちろんONで、のんびり程度に走っていきなりこの燃費。これから期待がもてます。




さてこの後は、アップダウン激しい名阪国道、伊勢湾岸での高速ハイペース巡航、表・裏六甲のワインディング全開走行などなど、エコカー的には厳しい場面が続きますが、楽しい走りを両立させるスカイアクティブをテストするフィールドには最適でしょう。様々な場面でのロングランテストの模様は、次回後編へ続きます。
Posted at 2011/08/27 20:52:24 | コメント(3) | トラックバック(0) | マツダ | 日記
2011年07月24日 イイね!

New!試乗記 新型デミオスカイアクティブ

New!試乗記 新型デミオスカイアクティブさて、Zであったりボクスターであったりリーフであったり…と、色々キワモノ!?な最近のネタでしたが、今回は久々の新車試乗記となります。

最近話題沸騰、個人的にも大注目な、マツダのスカイアクティブデミオの試乗レポートをお届けします。ちなみに、街中で軽く15分程度走っただけの簡易的なレポート。いずれ、ロングランを…したいところですが、レンタカーで配車してくれるかなぁ…(笑





スカイアクティブ技術について色々と詳しく書いていくと、とても1回では収まりきらないので、そこはあくまで走りの印象に絞って。むしろマイナーチェンジしたデミオがどう変わったか、その1グレードであるスカイアクティブがどうだったか、という観点でレポートしていきます。

ちなみに、今回のデミオに搭載されたスカイ技術はあくまでエンジンのみ。しかも当初から計画されていたわけではなく、この競争激しいクラスで強力な起爆剤となるべく、クルマの内容を見ていくと技術者の方々の苦労がにじみ出る「数字ありき」のスカイアクティブ第1弾がこのデミオ、と言えます。加えて言うと、CVT専用のこのデミオスカイアクティブは、日本市場専用モデル。いかにマツダが、今回このスカイアクティブで日本市場に勝負をかけているかが分かります。ある意味で、マツダの運命を左右する試金石でもあるのです。



さて、ハードルを上げ過ぎないところで、まずはマイナーチェンジでの変化を兼ねてのスタイリングチェック。一番目につくのはフロントフェイス。マツダのファミリーフェイス採用で、大きく口をあけニッコリとした豊かな表情になりました。ちなみに今回のマイナーチェンジで、以前は差別化されていたスポルトも同じバンパー形状になったのもポイント。サイド、リアからの変更点はなし。しかしもともと造形性の高いデミオのデザインは、今でも色褪せる事なく十分通用する、カッコいいスタイルですね。

さて、ベース車とスカイアクティブの見た目上の違いは、ヘッドライトにブルーのラインが入り、専用のアルミホイールとルーフスポイラー、そしてリアにエンブレムが装着される程度。ブレーキを踏むとテールライトがLED化されている事に気付きますが、見た目は同じデザインとなっています。またヘッドライトの装飾はアクセントになってていいですが、これを目立たせるためか、はたまたエンジン内のスペースの問題なのか、他グレードで選択できるHIDがなぜかオプションでも未設定なのが残念。スカイアクティブ専用の軽量14インチアルミは見た目もなかなかよくて○。スポークが細いので、リアのドラムブレーキが目立ってちょっと貧弱に見えるのが玉に傷かも。



見えないところで言うと、床下を覗きこむとベース車とは全く異なり、各部にアンダーパネルが装着されて相当に空力に関して工夫がなされている事が伺えます。ちなみにこの影響で、最低地上高はベース車比-15mm。Cd値は0.29とこのクラスではかなり優秀な方。

さて、ドアを開けて室内へ。インテリアの質感も現デミオの課題でしたが、モールやパネルの追加などで、色々とそのあたり手が加えられています。また。ハザードスイッチが赤色となって目立ちやすくなっているのは、細かいところながら気の効いている改良点。加えて、スカイアクティブ専用のブルーのメーターのおかげもあって、安っぽい印象はかなり抑えられています。



ただ、スカイアクティブの売りの1つ、アクセル&ブレーキだけでなく、ステアワークも含めてエコ運転を支援する、インテリジェントドライブマスター「i-DM」の表示がメーター左側にあるのですが、いかんせん表示が小さ過ぎて、これを気にしながら運転するのは正直危険。大人しく燃費計表示をさせておいたほうがよさそうです。繰り返しになりますが、メーター自体の質感は○。マイナーチェンジでできる範囲で最大限頑張って工夫しようとした努力は伺えます。



メーターを見ていると気付く事がまた1つ。タコメーターのレッドラインは、なんと5500回転とかなり低め。これは、マツダ技術陣が燃費目標達成をするため、最後の最後で犠牲にした部分だそうです。CVTとの組み合わせだからこそ割り切れた部分かもしれません。実際にこの1.3Lはタコ足4-2-1排気でなかったりと、制約上本来のスカイアクティブの技術を全て搭載できているわけではありません。

さて、色々確認したところで、試乗といきましょう。試乗車はラディアントエボニ―レッドマイカ。またパッケージオプションが2つ装備された豪華仕様。なぜかスカイアクティブ仕様のみ、運転席シートリフターがオプションとなっており、このあたりの装備の加減マジックは上手く騙されずに判断しなければいけません。



さぁエンジン始動。外からはエンジン音はいたって普通、マフラー付近の排気音は少し硬質感のある音ですが、安っぽい印象はありません。試乗当日の天候は晴れ、気温は34度。当然エアコンは全開状態でのスタートです。

ゆっくりと動き出して、歩道の段差を乗り越えて合流…この瞬間でもまず感じる事ができるのは、足回りの改良とボディ補強がとても良く効いているという事。現行デミオが大幅なシェイプアップをして登場した当初、その軽快で機敏な動きに驚いたと同時に、先代デミオがもっていた乗り心地の良さやスタビリティをある程度犠牲にしている感じは否めませんでした。端的に言えば、コンパクトカーらしい軽快感を手にいれたと同時に、このクラスらしい安っぽさも同時に露呈したというか…機敏だけど華奢、そんなイメージが個人的には強かったように思えます。そのあたりのバランスのまとめ方はスイフトの方がはるかに上手だった…

しかし、今回のマイナーチェンジで、リアサスブッシュの特性変更やダンパーのリファイン、鉄板肉厚化などによる念入りなボディ補強などの改良が行われたおかげで、この華奢で安っぽい乗り味はかなりの部分で改善されたように思えます。たとえば、段差を乗り越えた時であったり、ハーシュネスの遮断やダンピング性能の向上など、あくまでタウンユースでの試乗に限った印象ですが、この速度域でもその進化度合をはっきりと感じられただけに、これはワインディングや高速などでもきっと実感できるはず。シャシーの改良はスカイアクティブに限らず全グレード共通して行われているので、まずはこの素の基本性能の部分の進化を歓迎したいところです。

次に感じたのは、静粛性の良さ。デミオってこんなに静かだっけ!?っとちょっと驚いてしまったほど。これはスカイアクティブ専用の遮音性を高めたフロントガラスや吸音材などの新素材を取り入れた専用シートなども影響しているでしょう。個人的には、スイフトといい勝負。ダウンサイジングユーザーにとっては嬉しいポイントです。専用スペックのヨコハマアスペックの印象も、飛ばさない領域では上々のマッチング。

さて走り始めてもしばらくはエアコンON状態が続きますが、なんとこの灼熱の悪条件の中で、10分ほど走るとエンジンがストップ。以前アクセラに乗った時は、マツダのi-stopの作動条件はかなり限定されている印象があったのですが、アクセラやビアンテよりもはるかに積極的にアイドルストップをさせる制御へと変わったのは○。高価な専用タイプとはいえ、バッテリーが1個搭載に減ったのも歓迎したいところです。


さて、話は動力性能の方へ。まずはスペックをおさらいしておくと、スカイアクティブ1.3Lは84ps・11.4kgmと、出力の面では高回転分を犠牲にした分少し下がり、またトルクも少しダウンし最大発生回転数も上がっている…など、スペック上見る限り少し寂しい印象。しかしながら実際走ってみるとこれがゼロ発進から十分に活発でトルクフル。エコを意識し過ぎてドライバビリティが下がり、アクセルを逆に踏み気味になって本末転倒…なんて事はほとんど感じませんでした。むしろ従来の13C-Vよりも活発に感じるほど。

もちろん、幹線道路への合流など、少し瞬発力が問われるところでの加速はそれなり。CVTのセッティングもアクセル開度が少ない場面ではナチュラルでとってもいいのですが、踏み気味になると回転が先に上がってその後で速度が追い付いてくる…というような、ちょっとCVTの嫌な部分が目につく場面もありました。このあたり、街乗りでは反応が鈍くて少しかったるいけど、速度域が上がってくると俄然印象がよくなってくる…というスイフトの副変速機付CVTとちょうど印象が逆という感じです。1.2Lのスイフトとの動力性能で比較すると、街乗りではデミオSKY断然勝ち、速度域が上がってくると良い勝負…といったところでしょうか。


そういった点で少し不満がありつつも、実際エンジンの吹けはスムーズで、エンジンサウンドも軽やか…なのは、マツダのズームズーム魂の意地でしょうか。劇的な気持ち良さというものはありませんが、燃焼効率を追求した最新レシプロエンジン…という前置き云々はさておいて、普通のユーザーがなんら不満なく違和感なくサッと乗れてしまうという、いい意味での自然な仕上がりは、完成度の高さを感じさせます。「走りを犠牲にしながらこの目標をクリアするのであれば簡単だった。」という開発陣営の言葉に、走りとエコを両立すべく真っ正面から勝負をした、その意気込みを感じます。

というのも、実際SKYデミオに乗ってみて一番感じるのは、新しいエンジンの性能や燃費…云々ではなく、やはりその走りのフットワークの良さなのです。前述したように足やボディの改良の効果は走るほど実感でき、乗り味面での質感の向上っぷりは見事。少し挙動としてはマイルドに、落ち着いたような印象もありますが、だからといって退屈になったというわけではありません。ステアに対してフロントはリニアに反応し、直進性やリアのスタビリティは明確に向上。ちょうどプレマシーのモデルチェンジで走りの目指すテイストが大きく変わったように、今回のNewデミオも、スパンスパンとした分かりやすいスポーツテイストから、旋回Gの繋がりの良さを強調したような、そんなシャシーの懐の深さを感じる、オトナのズームズームへとステップアップしたような印象を持ちました。このあたり、また今後スカイアクティブ「ではない」普通の新型デミオで確認したいところです。

今回はあくまで限定的な条件の中での短い試乗だったので、印象としてお伝えできるのはこのあたり。試乗車は500kmほどしか走ってないド新車でしたが、この時の車載燃費は14.3km/L。状況としては一番悪い場面だと思えるので、このあたりが燃費の最低ラインだとすれば、フィットHVに追いつかないとしても、なかなか優秀なポテンシャルが期待できそうです。


さて、今回のスカイアクティブ第1弾のデミオ、「エコカー」という基準ではなく、マツダというスポーティな印象を背負いながらこの形でまとめあげた点については、拍手!久々にストーリー性のあるこれからのスカイアクティブの展開、フル搭載となるCX-5が実に楽しみ。競争激しいこのクラスですが、スカイアクティブという絶対的なイメージリーダーの登場はデミオのアピール度としては◎。それに加えて、スカイアクティブばかりが注目されがちなものの、「素」のデミオとしてのシャシー性能の向上っぷりが、個人的には地味ながらもとても嬉しいポイント。


…と、かなり絶賛気味になりましたが、最後に苦言も言っておきましょう。スカイアクティブ搭載によって1トンを若干オーバーしてしまったのは残念ですし、また排気系の取り回しの影響で、燃料タンクがなんと6Lも減っている事も忘れてはいけません。燃費は良くなっていても、その分航続距離は相殺されてしまうのがこのSkyデミオなのです。

加えて、140万円という価格を意識し過ぎてか、ところどころ装備のケチりが見えるのも事実。是非ともセットオプションのパッケージ1は装着しておきましょう。僅か5万円アップで、シートリフターに撥水ガラスにドアミラーウインカーに後席中央ヘッドレスト&3点ベルトにオートライトにレインセンサーワイパーにプライバシーガラスに…と、明らかにお買い得で盛りだくさんな内容なので。

また、DSC&TRCの標準化はエライ。…しかし、スカイアクティブ以外には、なんといまだオプション設定さえされず。これは大減点。とくに今回の改良で、普通の素のMTモデルや、スポルトなんかも商品力を大いに増しています。このあたりの商品企画での問題は色々難あり。初代デミオ後期型ですでにDSCを設定していたその先駆者ぶりはどこへ。是非、早急に改善を。自分が欲しいのも、スカイアクティブじゃなくて、スポルトの5速MTなんですから(笑)



という事で、激励と期待を込めて、試乗記を終わりにしたいと思います。
Posted at 2011/07/24 22:14:23 | コメント(4) | トラックバック(0) | マツダ | 日記
2010年11月18日 イイね!

〔過去試乗記〕 マツダNC2ロードスター RS・RHT(6MT)

〔過去試乗記〕 マツダNC2ロードスター RS・RHT(6MT)さて、前回予告していた
「国産車・右脳ベンチマーク」である
マツダロードスターの試乗記です。


とにかく良く出来ていて、最高…
と感じると同時に、
良いものを素直にいいモノとして受け入れられない葛藤…。


そのあたりが、このクルマへの思い入れの強さを表している、証拠なのかもしれません。
今から楽しみにしましょう。
おそらくスカイコンセプトをぎっしりつめこんだ
「原点回帰」した、NDロードスターを…。




さて今回のテスト車は幌仕様ではなくメタルトップのRHT仕様のRS・6MT。ボディーカラーはとてもシックで上品なカッパーレッドマイカ。マイナー前モデル(NC1)と実際に乗って比較すると、あらゆる面で熟成と改善が図られており、魅力度は想像以上にアップしていました。

スタイリングに関しては、野暮ったさがなくなり幾分スッキリとシャープにまとまった印象。個人的な事を言わせてもらうとNC1のスタイリングは登場当初から拒絶反応を示していただけに、このマイナーチェンジは個人的には○。温故知新には頼らない新鮮さが出たのも重要なポイントと言えるでしょう。



インテリアも細部に変更が。ドアトリムの変更で足元がスッキリとし、メーターのフォントも変更されてより視認性がアップ。ただ見た目の質感で言えば以前のデザインも捨て難い…?同じように、ピアノブラックからシルバーに変更を受けた装飾パネルも、ホコリが目立たなくなった利点はあるものの好みが分かれる変更かもしれません。シートヒーターが5段階の温度調節機能付になったのは大変嬉しいポイント。

さて、早速走り出してみましょう。シンクロ容量拡大やカーボンコーティングの施行などにより、6速MTのシフトフィールはまさに痛快。各ギアが吸いこまれるようにスコンスコンと気持ち良く入り、ストロークも適切。ガンガンに飛ばしながら素早いシフトをする時だけでなく、街中でゆっくりとしたペースで走っていてもシフト操作をするだけで気持ち良さが感じられる…6段となってATのポテンシャルもグッと向上していますが、やはりこの車は是非ともMTで乗りたいところ。

そしてNC1なら個人的には5速の標準モデル(現行はSグレード)がお気に入りでしたが、このNC2では是非ともこの6速MTモデルがおすすめ。その理由は、この6速MTのみに「インダクションサウンドエンハンサー」が装着されるため。これは登場時に話題を集めた装置の1つで、エンジンルーム内のシンセサイザーが、エンジン吸気状態時に空気の流動量を増幅させることで、よりドライバーに乾いたサウンドと鼓動を伝える…という地味ながら実にロードスターらしい装置。



その効果もあってか、今回NC2で一番良くなっていたと感じたのはエンジンフィールとそのサウンド。パワーこそ170psと変更を受けていませんが、クランクシャフトの鍛造化やピストンのフルフロート化、新設計のバルブスプリングなどの改良でエンジンには大幅に手が入っており、レブリミットも500回転上がって7500回転まで回るように。そのおかげでフィーリングはNC1のエンジンと比べると「激変」と言ってもいいほどで、いやはや失礼ながら、マツダのレシプロエンジンがここまで良く感じる事になるとは思っていませんでした。

いわゆるVTECのような可変リフト機能を持ち合わせていないので、トップエンド付近の弾けるような2段ロケット的な加速感は持ち合わせてはいませんが、こちらは3000~5000回転のいかにもNAらしい乾いたサウンドとレスポンスの良さ、吹け上がりのナチュラルなフィーリングが持ち味。ワインディングを走っているとちょうど一番気持ちよく感じるサウンド領域とドンピシャで、歴代ロードスターでもエンジンフィールに関してはどこか事務的な印象が強く最大の魅力ポイントとして挙げる人は少なかったでしょうが、今回のNC2に関しては、エンジンに惚れた!という人がいてもなんらおかしくはないでしょう。数値上には一切変更がないのにこの激変ぶり、マツダのエンジニアのクルマを愛するひたむきさがアクセルを踏み度に思い出されます。



そして足周りの改善も。ロールセンターを26mm下げたほか、それに合わせてサスペンションをリセッティング。その効果はターンイン時のフロントの接地性の向上とアペックス付近でのリアのスタビリティの良さに結びついています。NC1ではいわゆるNAで見られた「コーナーをヒラリヒラリと駆け抜けていく」という感覚を現代基準のボディサイズとサスペンション・タイヤキャパシティで演出しようとし、それが逆に初期ロールの大きさや唐突な挙動の変化を生む事になっていましたが、NC2ではFRスポーツの王道とも言えるよりナチュラルな挙動を手に入れました。タイアは205/45R17のBSポテンザRE050Aでややオーバークオリティ感もありますが、そこはRS専用のビルシュタインダンパーのおかげでバネ下のバタ付き感はさほどなく、乗り心地も十二分に快適と言えるレベルです。

こちらもRS専用の大径ブレーキは、車重が軽いこともあってそれこそ効き過ぎるくらいに感じるほどのストッピングパワーを発揮し、ステアリングフィールも素手で路面をなぞっているかのようにコンタクト性とダイレクトさにあふれています。またDSCが標準装備されているのも、いざという時にはとても心強し。もちろん制御はスイッチ1押しでギリギリの領域まで介入を我慢させるもよし(途中介入する仕組み)、7秒間スイッチ長押しの裏ワザモードを使って完全解除してFRらしく遊ぶのもよし。この状態だとRSのよく効くトルセン式LSDのおかげもあって、定常円旋回もいとも簡単にバッチリと決めることができます。

非日常的な事ではありますが、FRの醍醐味を味わえるクルマがどんどん減りつつある現在では、こういった遊び心もスポーツカーには大切な要素です。その点こういったユーザーに委ねる部分を残しつつ現代の時代の流れもしっかりと組みこんでいるあたりも、ロードスターというクルマの大きな美点の1つと言えるでしょう。

さらに注目したいのは、RHTの電動格納ルーフ。個人的にはオープンカーと言えば幌!とまだまだ思っているほうなのですが、このロードスターに関しては…クローズド時のスタイリングのまとまりの良さとラゲッジスペースを犠牲にしない実用性の両立、開閉時間の短さとその際の作動音の小ささ、またRHTのルーフオープン時が最も前後重量バランス的には50:50に一番近く、また重量物の移動差による挙動の変化も最小限。重量差は幌仕様と比べて50kgと決して小さくない数値ではありますが、クローズド時の遮音性もNC1のRHTよりさらに改善されていることもあって、さすがにここまで優位点があると幌よりもRHTの魅力度に軍配が上がります。単純にロードスターをFRクーペとして割り切って乗ってしまうのもそれはそれでアリ。



ここまで絶賛気味になってしまいましたが、最後の最後…このNCにはRHTがやはり似合ってるなぁ…と感じた時点で、個人的にはここで少し戸惑いを覚えてしまうのです。走りは最高に気持ち良く、質感も装備も快適性も◎。そう、もはや完成度が高くレベルが上がりすぎており、もはやこのクルマはロードスターであろうとしているけども、実際にはもっと格の全く違う別ジャンルの車に成長してしまっている事を痛感するのです。



例えば、それを象徴するのが価格。このRS・RHTの6速MT仕様で何もオプションがない状態で286万円。今回のテスト車のようにHDDナビを装着した状態での乗り出し価格は、350万円クラスになっているでしょう。もちろんベースモデルの価格はそれよりは下ですが、それでも幌仕様・Sの5速MTで233万円。内容を考えれば決してボッタクリ価格ではありませんし、クルマ業界全体のレベルアップと時代の流れを考えれば致し方ないのかもしれませんが、やはり今回改めてロードスターに乗りその魅力度に心底惚れ直しつつ、これ350万円か…と考えると、正直なところ高根の花という一言に尽きる、といったところです。

もちろん、それが悪いとは言いません。贅沢品とも言えるFR2シーターオープン、若者のクルマ離れが叫ばれる中、ユーザーの年齢層は自然と上がっていくでしょう。そうすればより速く、豪華に、快適に、という性能が求められるのは致し方ないことでしょうし、それが正常進化とも言えます。貴重なFRオープンスポーツが現時点で存在しているだけで幸せな事であり、今の自分のような貧乏学生な若造には無理だとしても、5年後中古車でもっと安くなっていれば、間違いなく欲しくなっているはず。

しかし、これはあくまでの「マツダロードスター」なのです。BMW・Z4を目指すクルマではありませんし、そうする必要も全くありません。アメリカでのマーケットを考えると必然的にこうなることは避けられなかったことでしょう。…しかし今、金融危機が襲い、環境問題が切実に叫ばれ、時代は劇的に変わりつつあります。この21世紀始めの10年で、成長こそ正義と信じられてきた20世紀の香りは、確実に薄まってきました。2Lハイオクで170ps、17インチの大きなタイア、軽量であろうとしつつ気がつけば1200kg近い車重、いまやゼロヨン14秒台で駆け抜ける俊足…果たしてここまでの性能が、今のロードスターが存在するがために本当に必要なものでしょうか?



実際に、日本の狭いワインディングを今回コペンと同行させた事で、それははっきりと実感できました。入門用にはバッチリと思っていたロードスターですが、いまやそのサイズ、重さ、速さは十二分に立派に成長しており、このNCでさえもう全開で飛ばせる場所は日本で確実に減ってきているのです。それを言えばGT-Rなんて…とも言えるかもしれませんが、あちらは日本が世界に誇れる最強のウェポンマシン。過剰性能があってナンボの世界…それはそれで相当に魅力的でありクルマ好きの心をくすぐってくれますが、ロードスターの世界には過剰性能はそのような似つかわしくはありません。



そんな素直にいい物をいいモノとして受け入れられない殺伐とした気持ちに対する答えを、マツダはすでに2008年のフランクフルトショーで提案していました。MX-5・スーパーライトバージョン。欧州に存在する126psの1.8Lユニットを搭載したこのモデルは、徹底的な軽量化により車重は1tを切る995kgを達成。もちろんコンセプトモデルとはいえ、ここまでのスパルタンさは逆にまた気軽なオープンスポーツを楽しめるロードスターの思想に照らし合わせると行きすぎの感もありますが、この1台には何かしらの今のマツダの叫び、そして次世代ロードスターへのなんらかの試金石となる気がしてなりません。

今の時流に乗っかって無理してエコを気張る必要はありませんし、その答えが燃費やハイブリッドだけだとは到底思ってもいませんが、人間も荷物もあまりたくさん乗せる必要もなく、軽ければ軽いほど喜ばれるライトウェイトスポーツは、もっともっとエコな存在であってもいいと個人的には思っています。別にエコを主張するからといって、それはスポーツやファン・トゥ・ドライブを犠牲にすることとイコールでは決してありません。つまりは、ロードスターというクルマは、実に未来へ向けても可能性の広さを感じさせてくれる1台。。。なのかもしれません。


Less is more.“失う事は、得る事である。”
自分が思うこれからの日本車の在り方を問う1つの考えが、この一言です。

この流れに、まだ見果てぬNDロードスターの姿が…あるのか。果たして。
Posted at 2010/11/18 23:27:40 | コメント(3) | トラックバック(0) | マツダ | 日記

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