さて、思うところがあって「マツダ・ビー・ア・ドライバー・エクスペリエンス・アット・ロッポンギ(Be a driver. Experience at Roppngi)」のアテンザ編に行ってみようかと思い立ち、応募したら見事に抽選に当たってしまったワケですが、その"思うところ"とはなんだったのか?(・・)b
あ、別に喧嘩を売りに行ったワケじゃありませんょ(苦笑)。
トピックとしては以下の四点。当日、確認出来た順に並べています。
実はもうちょっとあったのですが、流石に時間が足りませんでした(^^;)
①大幅改良版アテンザの足回りのセッティング意図
②SKYACTIV-DRIVEのメンテナンスについて
③i-DMのマツダ社内の位置付け
④アテンザ発売に先立つ"TAKERI"の製作意図
①大幅改良版アテンザの足回りのセッティング意図ですが、先日ブログでも書いた通りでマツダが「マツダらしい人馬一体の走りはそのままに、フラッグシップらしい上質さを加えた」という話は理解出来るものの、実際に足回りを組み込んで走らせている自分としては、違いは明らかに判るものの良し悪しが今一つピンと来ていません。というワケで、もうストレートに答えを聞いてしまおうというズルい考えですね(笑)。
問い掛けには松岡主査が自らがお答え下さいました。
GJアテンザの初期型がデビューした当時は新世代商品群はCX-5に続いて2台目ということもあり、マツダを代表するフラッグシップとして文字通りマツダの人馬一体を単独で背負って立つ必要があったということ。それ故に解り易いスポーティさも必要という背景の元でセッティングが煮詰められたとのことでした。その結果は乗り心地に関してやや厳しい評価という形で返ってきたと素直に認めておられましたね。一方で大幅改良版を出すに当っては、既に新世代商品群としてはアクセラもデミオも市場に出ており、アテンザが単独で「アレもコレも」と背負って立つ必要は無くなってきたという背景の変化があり、乗り心地の評価も踏まえて完成しつつあるラインナップの中で「フラッグシップらしさ」をより追求した(できた)とのことです。で、具体的にはダンパーの微低速域の減衰力の立上りをかなり高めて"重厚感"のある乗り味を目指したとのこと。なるほどボクが「固くなった」と感じたのはそういう意図か、と理解しました。
松岡主査は「スポーティをどう定義するか?にも寄りますが」という言葉も交えて説明されましたが、確かに新旧の乗り味を比較すると旧型の方が明らかに「軽快感」は上です。新型の足の方が狙い通りに確かに重厚で、姿勢変化がゆっくりして落ち着いているので、ボクなんかは「より高い速度でコーナーに飛び込める」とか「より早くアクセルを踏める」足と捉えて、新型の足の方がスポーティなんじゃないの?なーんて思ったんですが、ここはちょっと作り手の意図と、ボクの受け止め方にギャップがあったよーです(苦笑)。
松岡主査、丁寧にお答え頂いてありがとうございましたm(_"_)m
②SKYACTIV-DRIVEのメンテナンスについて、は実にラッキーなことにSKYACTIV-DRIVE(AT)のご担当が参加されたばかりか、ボクの同乗走行担当になって下さったため、同乗中にしっかり意見交換をすることが出来ました(^-^)。先ずはBLアクセラ、GJアテンザと2台のSKYACTIV-DRIVE搭載車を乗り継いでいることを語り、次はDCTと決めてトルコンATベースのマツダ車は当初眼中に無かったこと、DCTよりも性能は上という主張を聞いて試乗して気に入ってBLアクセラを買った事、4速が上とも下とも離れた特異なステップ比である点、BLアクセラとGJアテンザは当初ギヤ比が最適でなく、途中からファイナル比をイヂッたこと、などなどを話すと彼は「鋭いですね(((^^ )」を連発(笑)。『ボクはちょっと普通のオーナーとは毛色が違いますょ』と言う点を強烈にアピールすると、彼は作り手側の意図をかなり正確に細かく汲み取っていると感じたのか、とても嬉しそうに話を聞いてくれました。
参考①:
SKYACTIV-DRIVEの課題
参考②:
「SKYACTIV-DRIVEの課題」に関する補足
で、ここからが本題ですd(^.^)。
ボクはSKYACTIV-DRIVEが走行15,000kmを境にドライバビリティの劣化(悪化)が始まって20,000km程度になると許容し難いレベルになるものの、ATFを交換してやるとかなり新車に近い状態に戻る事。それ故にATFの寿命は20,000kmが目安と考えていると伝えました。
一方で彼は、SKYACTIV-DRIVEの制御系には学習機能が組み込まれていて、ATFの経年変化による粘度の低下などについては問題が出ないように制御される仕組みで、ATFは基本的に無交換(メンテナンスフリー)で問題無い筈と主張。
両者の言い分は
真っ向から対立しました(苦笑)。
あ、別に喧嘩になってませんから誤解のないよーに(^_^;)。
学習機能が組み込まれてATFのコンディション変化に適応するハズであるならば、ボクが感じるドライバビリティの変化はなんなんだ?という事になるワケですが、原因として考えられるのは二つ。ひとつはATFの劣化が学習機能の調整範囲を超えてしまって適応出来なくなる場合。もうひとつはATF劣化は想定内ながら学習機能が上手く機能せずドライバビリティの悪化を招いているというケース。症状はかなり具体的に伝えましたし彼をはじめマツダのエンジニアの方々は非常に真面目wに思えるので、この宿題をきっと広島に持ち帰って検証し、なんらかのアクションに繋げてくれるものと信じています。
一方でボクの宿題ですが、今後ドライバビリティの悪化を認識した際に、ATFを交換せずにディーラーでその学習機能とやらの「再学習」をやってもらって効果のほどを確認すること。これが文字通り機能すれば、ATFはまだ交換が必要なほどには劣化していない事と、その学習機能とやらが十分に機能していない事が明らかになるワケですが、であればディーラーで定期的に再学習をしてやることによって良好なコンディションを維持できることになります。勿論そうなれば作り手側としては「なんで上手く学習機能が補正出来ないのか?」という点について検証・改善の機会を得ることになるワケですが、いずれにせよ製品の品質向上やディーラーのサービスメニュー改善に繋がる話です。
担当の彼は「その辺は我々もまだまだ研究の余地があるなぁ」と仰ってましたので今後に期待していますが、ボクが何より意外に思ったのが、
彼の元にこのSKYACTIV-DRIVEのドライバビリティ低下の
問題が全く届いていなかった節があった点でした(^_^;)。
③i-DMのマツダ社内の位置付け、ですが実はコレがボクにとっては最も興味深い話題でした(^_^;)。
i-DMってオーナーに「アンタ運転ヘタね」なんて言い渡す非常に失礼なシステム(苦笑)ですが、それ故に自動車メーカーとしては自社製品に搭載するのにはとても勇気が要る類のシステムです。しかしマツダはそれを新世代商品群の全てに標準搭載しています。ただその一方で、このシステムの使い方であったり効能であったり、といったことはカタログに決まり文句が記載されるのみで、ディーラーでも満足な対応が出来ていないのが実情です。
マツダは一体どんな意図があってi-DMを自社製品に搭載し、それによってオーナーにどんな価値を提供しようとしているのか?
正直なところマツダの動きを見ていると、カタログの説明とは裏腹にこの辺りが全く読み取れなくって、そもそもマツダの社内に於いてi-DMって一体どういった位置付けなのか?先ず確認したかったのはココでした。
この質問をぶつける前に、松岡主査がプレゼンテーションの中で「マツダのSクラスドライバーと同じ運転が出来ると青ランプが点く」と説明してくれました。その後、ボクの同乗担当になったエンジニアにストレートに「i-DMってマツダの中でどう位置付けられているの?」と聞いてもみました。
今回のイベントに参加して判ったことですが、少なくともマツダ本社(つまり作り手)側ではi-DMは非常に重要な(大切な)システムであると認識されているということ。つまりこれはオーナーのためになるものだと信じて全車に標準装備しているようです。ただ一方で判ったことですが、世間の
i-DMに対する評価がけっして果々しくないことや、誤解が多い点などについては意外にも認識が薄いというか、あまり
問題意識を持っていないような印象を受けました。
先に紹介したSKYACTIV-DRIVEのメンテナンスに関する話題もそうですが、市場に出た製品の評価というフィードバックが作り手側に十分に伝わらなければ、課題認識を持つには至らず改善策が打たれないのも当然です。知らなければ何も出来ないのは当たり前ですょね(^_^;)。
なんとなく予想はしていたのですが、なるほどそういうことかということが判りました。
ただ少なくとも「評判の良く無いシステムだから将来的にどうしようか?」なんてことにはなっていないようで、その点については安堵しましたが(^_^;)。
④アテンザ発売に先立つ"TAKERI"の製作意図、については玉谷チーフデザイナーにお会いする機会があればちょっと意地悪wをして水を向けてみようかな?と思っていたんですが、たまたま機会に恵まれて
こちらのブログに書いた通りの言いっぷりで質問を投げ掛けたところ、ナント!
「私は多分
アナタが書かれたブログを読んでます。いつかお答えする機会がないものかと思っていました。」
と仰います(*_*)ヘッ?
しかも「いつもブログを楽しみに拝見しています」とまで云われてしまって、玉谷さんはボクのブログの隠れ読者であったことが発覚!
(滝汗
いつも遠慮のない内容でスミマセン(^_^;)>ポリポリ
で、玉谷さんの念願が叶ってw"TAKERI"の誕生秘話を語って頂いたのですが、それに先立つデザインの話で、"魂動"以前の"NAGARE(流れ)"時代に玉谷さんと前田さんが持っていたフラストレーションの根源に"生命力"の表現が欠けていたという話が凄く印象的でした。"NAGARE(流れ)"が自然の持つ美しさを表現していたもので、それは川を流れる水であったり、風が作り出す砂漠の紋様といった"無機物"が作り出す美しさであって、生命が持つ躍動感が生み出す美しさの表現から"魂動"が生まれたというお話は、やはりデザイナーご自身に語って頂くとグッと腹に落ちるモノですね(^^;)。
アテンザ(デザイン)誕生の苦労話はモーターファン別冊「新型アテンザのすべて」を読んで承知はしていましたが、改めて100%デザインコンセプトで絶対に市販が不可能な"SHINARI"のデザインを市販車に落とし込む苦労と、それが市場に受け入れられるのか?を問う目的で"TAKERI"が生まれたという経緯は良~く解りましたm(_"_)m
グラマラスなフェンダーアーチは承知してましたが、ノーズが低い、キャビンが小さいという話は初耳でしたし(^_^;)。
そもそも「アテンザで一番の不満はデザイン」と申したのはまぁ方便で(苦笑)、本音はデザインが一番気に入っています。何しろ製品コンセプトやスペックを重視してきたボクのクルマ選びの人生に於いて、初めてそれらを全て度外視しても欲しいと思ったアテンザの決め手は、そのデザインでしたからね。この点は改めて銘記させて頂きますm(_"_)m。玉谷さん、読んでますかぁ~?(笑)
それでもTAKERIのお陰で「TAKERIと違う」という不満が生じている事は変りませんが、、、(^^;)
以上のような感じでなかなか有意義な意見交換が出来たイベントだったんですが、全体を通して感じた(というか認識した)のが、マツダのエンジニアの方々と我々オーナーとの距離が、まだ意外に遠いんだなぁという事です。マツダは最近、こういったイベントを通じて積極的に市場と対話をしようとしているんですが、それはまだマツダ側から情報を発信することに目的の主眼が置かれているように思います。一方で市場からのフィードバックは「デザインがカッコイイ」「ディーゼルエンジンが素晴らしい」といったレベルにまだ留まっていて、今回ボクが投げ掛けたようなオーナーだからこそ分かるような深い情報にまでは到達していないということ。
もっとも今回のイベントの主旨がそれを埋める事を目的としているワケでは無いことは理解しているので、別にイベント自体を批判するつもりは全くありません。本来的にはそういった情報はディーラーなどの販売店(フロント)が収集して開発部門に上げていくべきでしょうし。逆に言えばボクが感じたオーナー(であるボク)と作り手であるメーカーとの隔絶感は、ディーラーをはじめとするフロントの弱さを浮き彫りにしたようなモノで、マツダ本社も"共創会"といった取り組みで努力しているのは知ってはいますが、これは次の段階というか、まだまだ時間は掛かりそうですね(^_^;)。
とりあえずi-DMに関しては現状のままではマツダに何らかのアクションを期待するのは難しそう(そもそも何らかのアクションの必要性をマツダが認識していない?)という事は判りましたが、SKYACTIV-DRIVEのメンテナンスに関しては、遠からず何らかの動きがあることを期待したいところですね。後は玉谷さんの次の作品にも大いに期待したいと思いました(笑)。