魔法使いは意地悪なものだ。
シンデレラという被害者の例を見ればよく分かる。
カボチャの馬車など,いろいろ用意し,舞踏会に参加させたまでは良いが,時間制限を設けその時間を少しでもオーバーすれば全て台無しにするという意地の悪さ。
しかもガラスの靴を履かせるという底意地の悪さはどうだ?
革靴は撓(しな)るから履いていられるのだ。ガラスは足の動きに協調せず,歩き方によっては割れて深い傷を負うかもしれないのだ。
魔法使いなら,フェラガモのパンプスくらい用意できるだろう?
シンデレラと言えば,『シンデレラ・リバティ』と言う映画があった。ジェームス・カーン主演の,海軍だか海兵隊だかの兵隊を描いた映画だ。
海軍と海兵隊は違うのだよ,諸君。
兵舎に入っている兵隊たちは,毎晩12時までには帰って来なければならない。
そんなところから,シンデレラ並みの自由と呼ばれた,兵隊たちの夜を描いた映画だった。
もちろん,この映画にはシンデレラも魔法使いも出てこない。
24時というのは,子供のころは越えられないハードルだった。
歳の離れた兄が,毎晩ラジオの深夜放送を聴いていて,兄のエピゴーネンだった私も一緒に聴きたかった。
何度かトライしたが,気を抜いて枕に顔を埋めた瞬間に眠りに落ちていた。(クロロホルムを盛られたか?)
中学に入り,中間試験とやらを初めて経験するとき,夜遅くまで勉強しようと決めてみた。
しかし「遅くまで起きているのだ!」という意気込みはいつしか睡魔にやられ,気が付くと涎まみれの朝を迎えているという体たらく。
コーヒーを飲んでも眠気覚ましにはならないと悟った13の春。
大人になって,眠れない夜を悶々とすることになろうとは思いもせず,くだらない夢を見ていた遠い日々。
もちろん,その夢にはシンデレラも魔法使いも出てこない。
Posted at 2006/09/28 20:05:23 | |
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