とある方から「TC1000において車重がタイムに及ぼす影響って,どれくらいですか?」「また,午前と午後の気温の違いもどれくらい影響しますか?」とご質問頂きました.
一般的に,ミニサーキットでは車重を100kg軽くすると1秒上がると言われています(0.01秒/kg).一方,気温の方は色々な部分に影響するので一概には言えませんが,感覚的には10℃で0.5秒程度かな?(0.05秒/℃)と思っています.
これを回答にしても良いかと思ったのですが,折角の機会なのでGPSロガーのデータで細かく解析してみる事にしました.
まずは,車重の影響.
なるべくコンディションが一緒で車重だけ違う状況・・・と思案したところ,
去年の春にプロに走って頂いたデータを思い出しました.この時は同一セッション中に,前半はプロが単独,後半はプロ+私の同乗というシチュエーションでしたので,クルマのコンディションは限りなく均一,おまけにプロのドライビングなので誤差も最小という事で,純粋に私の体重(56kg)分の影響を測れます.
早速データを比較してみましょう(緑:単独 青:同乗).
全体を俯瞰して見ると,ストレートスピードに大きく影響しているのが分かります.ホームストレートエンド(1つ目の赤丸)で2.3km/hダウン,1ヘア(2つ目の赤丸)で2.6km/hダウンです.この両者だけで0.25秒落ちています.
次にブレーキング.洗濯板(3つ目の赤丸)でほんの少しだけ手前でブレーキングを開始しており,トップスピードが1.3km/h低いです.また,車重が重いせいで「止まらず」「曲がらず」なのか,最終の複合(4つ目の赤丸)でブレーキングの時間が長いです.この両者を合わせて0.1秒落ちています.
最後に加速.3速領域に比べれば僅かな差ではありますが,同乗(青)の方が回転が伸びないので諦めて早々とシフトチェンジしていますね(0.05秒ダウン).
その他,細かな誤差を積み上げていくと,両者の差は,
単独 ・・・ 41.821
同乗 ・・・ 42.372 (+0.551)
私の体重が56kgですので,単位重量当たりの影響を求めると,
0.551[秒] / 56[kg] = 0.009[秒/kg] ≒ 0.01[秒/kg]
おおっ・・・これはびっくり.通説の通りですね!
続けて,気温の影響.
こちらは
今年9月の走行時に計測した結果から比較してみます.
同じ日の1本目(9時)の走行と3本目(11時)の走行を比較した結果が以下の通りです(緑:1本目 青:3本目).
トップスピードで比較すると,3本目の方がホームストレート(1つ目の赤丸),1ヘア進入(3つ目の赤丸)共に1km/hダウンしています.ただ,1コーナー(2つ目の赤丸)で大きくロスしているのが見て分かる通り,3本目の走行でタイヤがタレている可能性もあるので一概には言えないかもしれません.
ちなみに,タイム差は,
1本目 ・・・ 42.687
3本目 ・・・ 42.928 (+0.241)
温度の差は,
外気温
1本目 ・・・ 26.4℃
3本目 ・・・ 28.7℃ (+2.3℃)
単位温度当たりの影響を求めると,
0.241[秒] / 2.3[℃] = 0.10[秒/℃]
感覚的にはちょっと大きい気もしますが,まぁ,こんなモンかもしれません.
以上を纏めて,シミュレーションしてみるとこんな感じになります.
午前中に,体重50kgの人が同乗した状態でAというドライバーが出したタイムが45.197だったとします.
このAが単独で走った場合の想定タイムは,
45.197[秒] - 0.01[秒/kg] × 50[kg] = 44.697[秒]
次にドライバーをBに交代して,気温が上がった午後(24.6℃)に単独で走ったタイムが45.562だったとします.
このBが午前中の気温(20.5℃)で走った場合の想定タイムは,
45.561[秒] - 0.10[秒/℃] × (24.6[℃] - 20.5[℃]) = 45.151[秒]
つまり,当日はAの方が0.4秒くらい速かったというシミュレーション結果になります.
まぁ,これはあくまで車重と気温のみを考慮したシミュレーションなので,実際には路面温度によるタイヤの発熱量,周回数によるタイヤ摩耗の進み,ガソリンの残量による前後バランスの変化,コース上に堆積したタイヤカスの影響等々,色々な要素が絡み合ってタイムというのは決まるので,本当にこれだけの差があるのかは分かりません.
私の仲間内でも,本当に白黒つけたい時は,同じ日/同じセッションで一緒に走行してタイムを競いますので,あくまで参考程度に読んで頂ければと思います.
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筑波サーキット・コース1000 | 日記
Posted at
2018/11/21 22:19:55