
今回の富士では,車載カメラのトラブルで動画が撮れていなかったので,次回走る時のために,3年前の結果と比較しつつ,攻略のポイントを残しておこうと思います.
まず,公式記録の振返りから.
前回 ・・・ 2'15.240 (Sec1:29.939 Sec2:42.427 Sec3:62.874)
今回 ・・・ 2'16.896 (Sec1:34.507 Sec2:43.415 Sec3:58.974)
最高速は,前回:186.271km/h,今回:172.249km/hでした.
さて,そのセクターですが,今年1月のコース改修時に微妙に位置を変えたらしく,現状では以下のようです.
新旧の比較がないので,どれくらい変わったのか正確には分かりませんが,Sec1は約150m,Sec2は20mほど長くなったようです.比較がしやすいように,現在のセクターとの比率を求めてみると,Sec1は1.135倍,Sec2は1.015倍だったので,これを使って換算し直すと,
前回(換算) ・・・ 2'15.240 (Sec1:33.980 Sec2:43.063 Sec3:58.197)
今回 ・・・ 2'16.896 (Sec1:34.507 Sec2:43.415 Sec3:58.974)
つまり,今回の結果は,Sec1で0.5秒,Sec2で0.3秒,Sec3で0.8秒遅かったという事ですね.それぞれの原因としては,Sec1は最高速が14km/hも低いせい,Sec2は100Rの立ち上がりのエイペックスに砂を撒かれて最短ラインを取る事が出来なかったせい,Sec3に関してはGR Supraコーナー~最終コーナーにかけて前走車に引っ掛かってしまったせい,ではないかと思われます.
では続けて,LAP+で前回と比較しながら,細かく見てみましょう(緑:前回 青:今回).
富士はホームストレートがとにかく長いので,最終コーナーの立ち上がり方の影響が大きいです.このため,今回はここの部分から比較を始めます.
①最終コーナー立ち上がり(1つ目の赤丸)
とにかく立ち上がりの車速重視で,可能な限り大外から立ち上がります.アクセルを踏みながらエイペックスを抜ける(かつ外に膨らまない)ラインを意識した結果,1.6km/h車速を伸ばせています.
②ホームストレート
最終コーナーは3速で立ち上がったのですが,4速にシフトチェンジする手前(2つ目の赤丸)の辺りから徐々に今回(青)の方が遅れ始めます.4速に入れてからは如実に差が開き,スタートラインを横切った時点(3つ目の赤丸)では8.4km/hも車速が低いです.走行中も,なかなか回転数が上がらず,「5速へのシフトアップって,こんな位置だったっけ・・・?」と明らかに違和感を覚えるくらいでした.
そして,ホームストレートエンドの終端速度(4つ目の赤丸)では,その差が10.2km/hまで広がり,前回ですら「伸びないー!」と思っていたのに輪をかけて遅く感じました.全高28mmのビッグサイズとはいえ,ガーニーフラップの追加による空気抵抗が,まさかここまで響くとは・・・(スタートライン~1コーナーブレーキングまでの間で1秒の遅れ).
③TGRコーナー(5つ目の赤丸)
今回(青)は,150m看板の気持ち手前くらいからブレーキングを開始し,オーバースピードにならないように丁寧に車速を落しました.
TC1000での事前テストの反省からリアのスタビリティを重視して,弱く・長いブレーキングを心がけました.結果,減速GはMAXでも0.6Gと前回(0.9G)に比べると大分小さいです.
ただ,その分ターンイン時の姿勢は安定しているので,エイペックスの手前からアクセルを踏んでいく事ができ,ボトムを4.8km/h上げられました.この時のラインは以下のような感じになります(赤:前回 青:今回).
1コーナーはボトム重視のワイドラインになってますが,続く75Rは,きっちりインに寄せて距離を重視.これでコカ・コーラコーナーまでに0.5秒稼げてます.興味深いのは,このセクションは下り坂なので,重力加速度によるアシストでエンジンパワーに余裕があり,150km/h付近まで速度差が生じません(6つ目の赤丸).如何にドラッグが増えたといっても,エンジンパワーさえあれば打ち勝てるレベルという事ですね.
④コカ・コーラコーナー(7つ目の赤丸)
ここは前回の反省を踏まえてボトムを上げる走り方.目標は2km/h上げる事でしたが,結果は2.8km/hアップでした.なお,ライン取りは以下の通り(赤:前回 青:今回).
最初4速キープで進入を試みましたが,車速が高過ぎてオーバーランしそうになったので,前回同様4→3速にシフトダウンして進入する事にしました.また,ボトムを上げるために,なるべく手前から早めに切り込む事も試してみましたが,出口でコース幅が足りず,苦しくなったので,こちらも前回同様50m看板付近で強めのブレーキング→シフトダウン→アクセル踏みながらエイペックス通過~という走らせ方にしました.
⑤トヨペット100Rコーナー(8つ目の赤丸)
コカ・コーラコーナーの出口でアウトに寄せた事により,100Rはイン側から進入.本当はそこからイン→ミドル→インというTC2000の最終コーナーのような走らせ方をしたかったのですが,立ち上がりのインに寄せる部分に砂を撒かれてしまったので,それを避けるかのようなライン取りになってしまいました(赤:前回 青:今回).
これを見ると,ちょっと立ち上がりが苦しいですね・・・.それでもフロントディフューザーのおかげか,前回より細いタイヤを履いているにも関わらず,平均130km/hオーバーで旋回出来ました(これで0.17秒短縮).
⑥アドバンコーナー(9つ目の赤丸)
ここも立ち上がり重視.100Rの出口で外に膨らんでしまったので,それを取り戻すため,50m看板を目標に斜めに進入.アドバンコーナーの出口は広いので,ブレーキングは短く,向きを変える事だけに専念.向きが変わった後はエイペックスの手前からアクセルを踏んでいけます.なお,ライン取りは下図のような感じ(赤:前回 青:今回).
ボトムを6.3km/h上げる事ができ,これで0.3秒短縮.ここまでの各コーナーで稼いだ分で,ホームストレートで失った1秒を取り戻せています.
⑦300R(10個目の赤丸)
ライン的には前回と大差ありませんが,120R,230Rの2つエイペックスは,きっちりインに寄せる事を意識.ただ,ここではTGRコーナー~コカ・コーラコーナー間で得られたような下り坂アシストがなく,今回(青)の方は140km/hから先で全く車速が伸びません(8km/hダウン).これで再び0.5秒差.
⑧第13コーナー(11個目の赤丸)
ライン取り的には前回と大差がありませんが,ダンロップコーナー後の60Rを2速全開で踏み抜くようにしました.このおかげで第13コーナーの進入速度が4.2km/hアップし,0.6秒短縮.前回(緑)を逆転してリードする事が出来ました.
⑨GR Supraコーナー~パナソニックコーナー(12個目の赤丸)
折角逆転したので,このリードをキープしておきたかったのですが,ここで前走車に引っ掛かってしまい,0.6秒のロス.おまけに最終のパナソニックコーナーでアクセルを踏むタイミングも遅らせられたため,更に0.8秒ロス.ここから先は②と同様に差が開く一方なので,トータル1.6秒の遅れとなりました.
以上を纏めると,1.6秒の遅れは,ほぼ全てストレートが遅いせいでした.反対にコーナーでは全て前回よりも速く,合計1秒は稼ぎ出しています.このコーナーでのゲインは「フロントディフューザーのおかげ」というより,「コース攻略が進んだおかげ」で,
シミュレーション含めて色々準備した甲斐があったかな?と思っています.
その一方で,マシンのセットアップ的には,当たり前と言えば当たり前なのですが性能ダウンの方向で,「フロントディフューザー+ガーニーフラップによってダウンフォースを増やした結果,富士で1.6秒遅くなった」という結論になりました.まぁ,元々富士をターゲットに変更した訳ではないので,これはこれで別に構わないのですが,さすがにBB6に負けるのはくやしいので,次回までに,ダウンフォースレベルを維持したままドラッグを減らす策を考えたいですね.
また,富士特有の空力テストという意味では,
・140km/h以上の領域で大幅にドラッグが増えている.
・但し,下り坂アシスト分くらいのパワーアップが出来れば,このドラッグは打ち消せる.
・100Rのような"すり鉢"状だと,フロントディフューザーの効果は低い模様.
・
バイブレーションの問題含めて,空力の前後バランスは要改善.
といった情報が得られ,非常に有意義なテストとなりました.