ボンバー赤8さんから「TC2000のダメ出しをやって!」とデータが送られてきたので,分析してみる事になりました.
FRの,しかも比較対象なしでRX-8の分析なんてやった事ないので,どうしたもんかと困り果てましたが,当日,筑波のモツ定食を奢られて買収が成立してしまっているので断る事も出来ず(笑),YouTubeに上がっているRX-8の車載動画を見ながら色々勉強してみました.
ご期待に添えるかどうか分かりませんが,とにかく始めてみましょう.
まずは,車載動画から.
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最初に思ったのが,コーナーの進入時になかなかノーズが入らず,かなり舵角が多くなっているように見える点.エイペックス(クリップ)付近で舵角が多いのは別に良いと思うのですが,それより手前,ブレーキングから徐々にステアリングを切り込んでいくような場面でも,ステアリング操作に対してフロントタイヤが反応していないように見え,反応していないからこそ舵角が多くなってしまっているような印象です.
一方で,立ち上がりは,ステアリングを戻しつつアクセルを踏込もうとするとリアが出るような感じで,まるでロードスターの車載でも見ているような印象ですが,RX-8ってこういうクルマなのか?と思い,他の方々の車載も見たところ,皆さん進入はスッとノーズが入ってますし,舵角も少ないですし,立ち上がりも安定してトラクションが掛かっています.ボンバー赤8さんのクルマだけがピーキーな動きをしているように見えますね.
恐らくこの原因はタイヤで,ジムカーナスペックである「RE-05D TYPE-A」で10周も走ってしまっては,熱ダレが起きて全くグリップしないのではないかと思われます.その証拠に同じタイヤを履いている方々を見ると,
皆さん3~5周の間で決めているので,このタイヤを使い続けるなら1アタックで決める練習をしないと,好タイムは難しい気がします.
続けて,LAP+による解析ですが,筑波公式のセクタータイムだと伸び代が見えないので,LAP+オリジナルの6セクター(↓)でベストラップとセクターベストを比較してみます.
SCT.1(ホームストレート~第1コーナー)
ベストラップ ・・・ 12.178
セクターベスト ・・・ 12.009 (-0.169)
いきなり0.1秒稼ぎ代がありますね.両者のライン取りを見てみると(赤:ベストラップ 青:セクターベスト),
ベストラップ(赤)の方が大回りになっているのが分かります.この時の車速グラフを見るとベストラップ時は進入でやや突っ込み過ぎで,尚且つターンイン後も,エイペックス付近で加速→減速→加速と波打っています.
動画がないのであくまで推測になりますが,恐らくベストラップ時はクリップを奥にとるような回り込むアプローチを試みたのだと思われます.このため,ターンインを遅らせる分だけブレーキングも遅らせて突っ込み気味にし,その後,大舵角で一気に向きを変えて,全開で立ち上がろうとしたところ,オーバーが出てアクセルを戻さざるを得ず,ON→OFF→ONみたいな操作をしてしまったのではないかと思われます.
TC2000の1コーナーでクリップを奥にとろうとする事は間違っていないと思いますが,クリップを通過する際の大舵角にクルマのリアタイヤがついて来れないのであれば,舵角を減らして,アウト-イン-アウトで抜けた方が踏めるし,速いという事なのでしょうね.
SCT.2(S字コーナー)
ベストラップ ・・・ 05.556
セクターベスト ・・・ 05.498 (-0.058)
このロスは,2→3速へのシフトアップ時間した.ベストラップ時の方がほんの僅かな差なのですが,シフトアップに時間がかかっており,これが1ヘアのブレーキングまでずっと響いています.
SCT.3(第1ヘアピン)
ベストラップ ・・・ 08.687
セクターベスト ・・・ 08.525 (-0.162)
こちらもライン取りで見てみましょう(赤:ベストラップ 青:セクターベスト).
セクターベスト(青)の方が縁石にしっかりのって,小回りしているのが分かります.立ち上がりも外にはらんでいないので距離的にも有利ですし,ボトムスピードも4km/h近くセクターベスト(青)の方が高いので,0.1秒以上稼げているのも納得です.
ただ,この小回りの要因はドライビングの問題ではなく,タイヤのグリップの差ではないかと思われます.ベストラップ(赤)は11周目にマークしていますが,セクターベスト(青)の方は,まだ3周目なのでタイヤがタレておらず,グリップが十分にあったのでないか?と推測されます.
SCT.4(ダンロップコーナー~80Rコーナー)
ベストラップ ・・・ 11.506
セクターベスト ・・・ 11.506 (±0.000)
ここはベストラップ=セクターベストなので,省略します.
SCT.5(第2ヘアピン~バックストレート)
ベストラップ ・・・ 16.711
セクターベスト ・・・ 16.628 (-0.083)
こちらもライン取りで見てみましょう(赤:ベストラップ 青:セクターベスト).
セクターベスト時(青)の方が制動力が大きいため,早めにインにつく事ができ,クルマが曲がるのでドライバーもブレーキを早めにリリースし,結果ボトムスピードが4km/h近く上がっています.
一見するとドライビングの差かと思いますが,このセクターベスト(青)は,2本目のピットアウト後のラップ,すなわちタイヤを少し冷えた状態でマークしている事から,タイヤのグリップが回復した事による制動力の向上と思われます.
SCT.6(最終コーナー)
ベストラップ ・・・ 10.956
セクターベスト ・・・ 10.775 (-0.181)
これはボトムスピードの差でした.ベストラップ時のボトムは120km/hを切っていましたが,セクターベスト時は120km/h以上をキープ出来ていました.どうして120km/h以上をキープ出来たのか?はデータから分かりませんでしたが,進入のライン取りとフロント荷重のコントロールが上手くいった時だったのかもしれませんね.
以上を纏めると・・・,
ベストラップ セクターベスト
SCT.1 12.178 12.009
SCT,2 05.556 05.498
SCT.3 08.687 08.525
SCT.4 11.506 11.506
SCT.5 16.711 16.628
SCT.6 10.956 10.775
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TOTAL 65.594 64.995 (-0.599)
ギリギリ4秒台には届きそうです.ただ,これを実現するためには,タイヤが熱ダレを起こす前に1発で纏め上げるスキルが必要で,ドライバーの技量で何とかなる部分は最終コーナーくらいしかなさそうです.
ボンバー赤8さんが,1LAPに全てを賭けられるアタッカータイプ(予選重視)のドライバーなのか? コンディションが変わろうともコンスタントにラップを刻めるタイプ(決勝重視)のドライバーなのか?は分かりませんが,いずれにせよ,RE-05D TYPE-Aというタイヤを使い続けるのであれば,1LAPに全てを賭ける走らせ方が出来ないとOPEN-Rクラスで戦うのは厳しい気がします.
ちなみに,1分6秒台のSE3Pの車載と比べると,ボンバー赤8さんのSE3Pはボトムが4~5km/h高いのに,ストレートの終端速度がほぼ一緒なので,途中のシフトアップが遅いか(ギヤが入り辛いと仰ってましたが),絶対的なトラクションが不足している可能性があります(恐らくタイヤではなく,足回り or LSDの問題).また,ブレーキはロガーデータを見る限り十分な制動力があるように見え,ロックに悩まされている様子もありませんし,特に変更は必要ないんじゃないかと思いました.
クルマ側でもう少し乗りやすくする手はいくつかあると思いますが,あくまでドライバーの腕にこだわって走られるのであれば,もう少しタイヤのデータを集めて,使い方(活かし方)を考える必要があるように思えます.
エイトリアンカップのクラス分けは,来シーズン少し見直されるとの事ですが,ボンバー赤8さんの仕様だと有利になる可能性は低いでしょうから,この延長線上で詰めていって,来シーズン,更に活躍される事を祈ってます!
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