
RE-71RSの評価も徐々に出揃い,どうやらA052と互角の性能である事が見えてきました.
ただ,互角止まりだとすると,BSはお馴染みの「ピックアップ(タイヤカスを拾う量)の酷さ」に悩まされる可能性があり,この点はRE-12Dと同様のようですので,こうなるとサーキットでの使い易さという面ではA052の方が上かな?と思っています.
・・・という事で,当面A052を使い続ける事になりそうなのですが,そうなると足回りのセッティングをそろそろ見直す必要がありそうです.
ランニングコストを考えて,昨年から15インチに切り替えたのですが,やはり扁平率が大きいので,タイヤのヨレに悩まされます.
ホイールのリム幅を7.5へ拡大する事で大分緩和されましたが,それでもタイヤのショルダー摩耗は激しく,内圧も適正値まで下げる事が出来ません.
そもそもRE-71Rに比べてA052の方が横のグリップがある分,絶対的なロール量が増えるのは当然の話で,レートアップをそろそろ考えないとダメかな?と思い始めていました.ただ,
2年前にレートアップを試した際,フロントの突っ張り感が強くなってしまったので,単純に上げりゃ良いというものでもなく,どうしたものか思案していたところ,スタビライザーの存在が思い浮かびました.

(
CUSCO スタビライザーより)
「スタビライザー(stabilizer)」は左右のサスペンションを連結させて,その名の通り「stabilize(安定させる)」装置の事です.別名「アンチロールバー(anti-roll bar:ロールに反する棒)」とも言われ,こちらの方が機能をイメージし易いかもしれませんね.
さて,その「スタビライザー(以降スタビ)」ですが,これまで「スタビは素人が迂闊に手を出すな!」「スタビをイジり始めると迷路にハマるぞ!」と散々聞いていたので,触らない・考えないというスタンスだったのですが,いよいよそんな事も言ってられなくなってきたので,今回は頭の整理も兼ねて,スタビの動きについて考えてみます.
まずは,左右方向のスタビ強化について.
上の図は,平坦路を直進中のイメージ.真ん中の青い横棒がスタビ,オレンジの部分がスタビの固定点です.
これがコーナリングすると,こんなイメージになります.遠心力で図の右側に倒れ込むような感じですね.OUT側(図の右側)のサスペンションは縮まるので,スタビは上方向に捻られ,反対にIN側(図の左側)のサスペンションは伸びるので,スタビは下方向に捻られます.
ここで仮にOUT側(右)のスタビ剛性を強化した場合,スタビが上に捻られるのが抑制され,サスペンションが縮み辛くなります(OUT側に突っ張ったような状態).つまり,この突っ張り状態を作り出す事によってロール量が減少させる・・・というのがスタビ強化の狙い(メリット)ですね.
ところで,ここで仮にOUT側(右)ではなく,IN側(左)のスタビ剛性が強化されたとしたら一体どうなるのでしょうか? 通常であればOUT側のロールに合わせて,IN側のサスペンションが下に伸びるところ,スタビによって下側に捻られるのが抑制されるため,サスペンションが伸びません.つまり「インリフトする」という事ですね.これがスタビ強化のデメリットになります.
さて,上記ではOUT側・IN側のそれぞれピンポイントでスタビを強化した場合を模擬しましたが,実際のスタビは連結された1本の棒ですので,このメリット・デメリットが両方同時に発生します.つまり,最終的にメリットになるのか?デメリットになるのか?は,OUT側の捻れ反力とIN側の捻れ反力のどちらが強いか?の勝負の結果次第という事ですね.
じゃあ,この勝負の結果はどうやって決まるのか?を考えてみたところ,サスペンションのバネレートではないか?と思いました.
まず,OUT側とIN側で比較してみると,OUT側は地面からの反力との戦いになるのでかなり大きな力が必要です.一方,IN側はタイヤが空中に浮くので,単純にサスペンションに掛かっている力だけの勝負になります.つまり,単純な力勝負であればOUT側の勝ちって事です.
そこでOUT側に絞って考えてみると・・・,
スタビが上方向に捻れようとするのに抗えるのは,サスペンションのスプリングしかありません.つまり「スタビからの力を抑え込めるだけの強いスプリング(固いバネ)じゃないとロール量の低減は実現出来ない」という事ですね.これがスタビの難しさ.このスタビの反力とバネレートの因果関係をちゃんと掴めてないと「迷路にハマる」という事なんですかね.
ちなみに,バネレートを上げなくても,スタビの捻れる力を下げられれば(=スタビの径を太くする),OUT側においてスタビの上方向への捻れを抑え込めるようになるかもしれませんが,そうすると今度はIN側のスタビの捻れも低減され,インリフトが発生しやすくなりますね.
FFにおいて,フロントがインリフトするのはデメリットでしかない(トラクションが掛からない)ので,インリフトを許容出来るのはリア側のみとなります.つまり,フロントのスタビ強化の線はこれでなくなりました.
そこで,次に前後方向の強化について考えてみます.
まずは,何の捻れも生じていない直進状態がこんなイメージ(↓)です.
この状態からフロントのスタビだけ強化して,コーナリングさせると,
フロントのロール剛性に対して,リアが相対的に負けるのでインリフトします.3輪走行のようなリアを振り回すスタイルであれば,このセッティングはアリなんでしょうね.ただ,私の場合は
過去の日光の経験からフロントに対してリアのロール量が増えると動きが大きくなって,高速コーナーで踏めなくなるので,このセッティングは好みではありません.
では反対に,リアのスタビだけを強化してみると,
フロントがインリフトする傾向になります.当然ですがFFでこれはNGですね.ボディの剛性が高ければ,リアOUT側のロール減少によって,対角線上のフロントIN側のインリフトを抑制する効果があるはずなのですが,ロールゲージも組んでないEF8のボディで,それを期待するのは酷でしょう・・・.
つまり,コーナリングのバランスを崩さず,ロール量を低減するには「前後のスタビを同時に強化するしかない」という事ですね.ただ,1990年代ならいざ知らず,2020年代でEF8の強化スタビを前後同時に入手するなんて無理・・・.
他に何か手がないか?と考えたところ,「調整式スタビリンクによる取り付け位置の適正化」が思い浮かびました.

(
NAGISA AUTO スタビライザーリンクより)
じゃあ,現状の私のEF8のスタビはどうなっているんだ?と思い,覗いてみると・・・,
【フロント】
【リア】
リアはスタビリンクから水平にスタビが伸びているので「問題なし」ですね.フロントは若干スタビリンクが奥に倒れ込んでいるように見えるので,是正しても良い気がしますが,先程「フロントのスタビ強化の線はない」と結論を導き出したので,それほどやる意義はありませんね・・・.
以上,スタビ考察でした.
アレコレ考えてみましたが,スタビをイジっても私の場合は上手くハマらなそうですね.それよりもバネレートアップの方が単純で効果的っぽい.ただ,バネレートを上げると,ロール方向は良化傾向ですが,ピッチング方向は悪化しそうなので,その辺りのバランスをもう一度考え直す必要がありますね.
う~ん・・・やっぱり足回りは難しい.