
先日のTC1000で,orangeEP@ahirukantaiさんにトー角の重要性を教えて頂いたので,アップデート後の悩みである
ターンアウト時の踏ん張り不足をトー角の調整で対処出来ないか検討してみます.
トー角というのは,上からクルマを見た時に,進行方向に対してタイヤの前端の角度が真っ直ぐの場合は「トーゼロ」,閉じている場合は「トーイン」,開いている場合は「トーアウト」と言われます.
なので,基本的にトーの単位は「角度(度や分)」のはずなのですが,時々「長さ(mm)」で言われる事があり,「長さ」で言われると私さっぱり分かりません(苦笑).
さて,私のEF8の現在のトー角は,フロントがトーアウト(-10'),リアがトーゼロ(±00')です.
フロントをトーアウトにしている理由は2つあって,1つはキャンバー対策,もう1つはステアリングレスポンスの向上のためです.トーアウトにすると何でこれらが改善するのか?に関しては,こちらの動画(↓)や,
こちらのブログ(↓)なんかを見て頂くと分かるかと思います.
足回りのセットアップ13 <アライメント編③>
一方,リアをトーゼロにしている理由は,単純にストレートスピードを稼ぐためです(少しでも抵抗を減らしたい).私は最初トーインで走っていたのですが,
数年前の日光でトーゼロを試してみたところ,そんなにピーキーな動きが出ない事が分かったので,車高調整の度にトーイン~トーゼロの間を行ったり来たりしている感じです.トーアウトまでいくと,もっと動きが変わるのかもしれませんが,ショートホイールベースのEF8でそれを試す気になれず,現状はトーゼロまでに留めています.
・・・という事で,今回トーに関してアレコレ考えてみますが,基本的に調整対象はフロントのみです.
それではまず,基本的な特性のおさらい(以降の図は上がフロントだと思って下さい).
【トーゼロ】
最初は「トーゼロ」.ゼロなのでフロントタイヤは真っすぐ前を向いています.この状態で右にステアリングを切ると,当たり前ですが左右均等に舵角が出来ます.「これで何も問題ねぇじゃねぇか!」と思われるかもしれませんが,それは舵角が少ない時の話で,舵角が大きくなると,回転半径の違いからIN側(図の右側)が引っ掛かるようになるはずです.
【トーイン】
IN側の引っ掛かりの極端な例を「トーイン」で考えてみます.
「トーイン」はご覧の通り,上側が閉じたような形です(ハの字).この状態で先程と同様に右にステアリングを切ると,OUT側のタイヤは右側を向いて曲がろうとするのに対し,IN側のタイヤは真っすぐ前に進もうとするので,IN側とOUT側でケンカが始まります.
私のEF8の場合,アクセルOFFの時は(引っ掛かりを感じつつも)OUT側がケンカに勝つので一応曲がると思いますが,アクセルONした瞬間に,恐らく力関係が逆転してIN側が勝つはずです.IN側が勝つと曲がっていたクルマが急に真っ直ぐ進もうとするので,乗っているドライバーからするとIN側に急に「つっかえ棒」が出来たような感じで急にアンダーを感じると思われます.
何でこんな事が起きるのか?
それは,私のEF8のフロントに1wayの機械式LSDが入っているからです.以下のブログ(↓)の「LSDは負荷が低い方→高い方へトルクが流れる!」を読んで頂けると分かるかと思います.
田中ミノル式 FF 機械式 LSD 完全解説「曲げるための LSD 有効活用法」⑤
話が少し逸れますが,私は昔から「LSDはクルマを曲げるために使う」と言っているのですが,周りの方々からは「何言ってんだ? LSDは姿勢を安定させるためのモノだ.曲がるようになるはずがない」と言って相手にされませんでした.あんまりにも反対されるので「私が感じている事は間違っているのかなぁ~?」と当時は思っていたのですが,このブログを見て間違ってなかったと確信し,以降は周りのLSDのアドバイスを聞かなくなっちゃいました(苦笑).
【トーアウト】
話を戻して,上記のように「トーイン」だとIN側に問題を抱える事になるので,反対に「トーアウト」にしてみます.
「トーアウト」だとさっきとは逆(逆ハの字)になるので,OUT側は真っ直ぐ,IN側が右側を向きます.これだと左右別々の方法を向いているのでケンカが起きません.ただ,IN側は曲がろうとするのに対し,OUT側は真っ直ぐ走ろうとするので,「トーイン」の場合とは反対にOUT側が引きずるような形になると思われます.
ただ,OUT側であれば,先程の機械式LSDの効果が最大限に発揮出来るので,私のEF8では,それほど問題にならないです.
【更にトーアウト】
「トーイン」になるくらいなら「トーアウト」の方がマシ.だったら,ガッツリ「トーアウト」に振っておいた方が安牌なんじゃないか?という事で,ガッツリ「トーアウト」に振った場合も考えてみます.
IN側の切れ角が凄い事になってますが,確かにこれならIN側はよく曲がります.しかし,OUT側は真っ直ぐどころか,右側に行きたいのに左側を向いてしまっています.さすがにこれだと負荷が大き過ぎですね・・・.
つまり,「フロントのトーは,トーゼロ~更にトーアウトの間で最適な角度を求めなければならない」という事です.
ようやく,ここから本題.
では,私のEF8の最適なトー角とは一体いくつなのか?
これを求めるために,「
アッカーマン理論曲線」を引っ張り出してみます.
・・・.
・・・・・・.
・・・・・・・・・.
引っ張り出してみたのですが,難しくて分かりませんでした(苦笑).
分からないのでセッティングに必要な要素だけ抜き出して考えてみます.
アッカーマン理論曲線の数式は以下の通りです.
1/tanβ - 1/tanα = T/W
数式を見ると拒絶反応が出る人がいると思うので(笑),翻訳すると,上記の式は「OUT側の切れ角(β)とIN側の切れ角(α)はトレッド(T)とホイールベース(W)の影響を受ける」と言ってます.
今回のアップデートのケースで言うならば,フロントのトレッドが4mm拡大したので,上記の式において「T(トレッド)」が増えると「切れ角(αとβ)」はどうなるのか?がポイントになる,という事です.
そう,確かにポイントになる・・・のですが,三角関数を解くのは面倒ですし,トーをイン側・アウト側どちらに持って行けば良いか?というセッティングの方向性が分かれば良いので,今回は手っ取り早く図から読み取ります.

(
車の数学(2):アッカーマン理論曲線より)
考え方としては「このアッカーマン理論曲線に乗っかるようなトー角になれば良い」という事です.今回,「4mmトレッドを拡大した」という事なので「T(トレッド)の値が増える」.つまり,「T/Wの値が大きくなる」という事になるので,図で言うと「◇(0.45)」→「※(0.65)」に線が変わった時にどうなっているか?を見れば良いです.
図から読み取ってみると,IN側の切れ角(α)が同じであるならば,OUT側の切れ角(β)は小さくすべきのようです(上→下へ変化).反対にOUT側の切れ角(β)が同じであるならば,IN側の切れ角は大きくすべきのようです(左→右).大小反対なので混乱しますが,「IN側のトーは開け,OUT側のトーは閉じろ」と言っているので,ようは
「トレッド広げたならトーアウトにしろ!」
・・・って事のようです.
言われて見れば当たり前ですね.トレッドを広げた結果,コーナリングの限界は上がりますが,その分,切り始めの初期においては曲げづらくなる訳ですし,曲げづらくなる分だけ,トーをアウト側に振ってステアリングレスポンスを上げないと相殺出来ないですから.
じゃあ,「ここからいくつトーアウトにするか?」ですが,これが難しいですねぇ・・・.
いや,決して「三角関数を解く事(数学)」から目を背けているのではなくて(汗),最適なトー角を求めようとすると,「バンプステア」を考えなければならないからです.
「バンプステア」というのは,タイヤが上下に変化した時のトー角の変化の事で,EF8の場合,ハブの中心よりもタイロッドが後方にあるので,サスペンションがストロークすると(縮まると)トーアウトに変化します.

(
閑話休題その2 車高調やダウンサスを装着すると乗り心地が硬く感じられるのは何故?より)
1G状態でトー角をイジると,当然バンプステアの時のトー角も変化するので,「足りないなら倍で良いじゃん~」みたいな安直な考え方が出来ないです.私のEF8の正確なサスペンションジオメトリーが分かれば計算して求める事も出来るでしょうが,そんなの専用の機材を持っているレーシングチームとかじゃないと測れないので,トライ&エラーで試すしかありませんね・・・.
あと,注意しなければならないのは,このトー角の最適値は,舵角によっても異なる点で,高速コーナーなのか? ヘアピンなのか? 自分がどこのコーナーに合わせたいのか?も,はっきりさせないといけません.TC1000だと,現状不満を感じているのは2コーナー(高速コーナー)と最終コーナー(直角に近いタイトコーナー)で性格が真逆のコーナーなので,この辺は走り込んで考えるしかありませんね・・・.
以上,トー角で対処しようとすると,迷宮にハマりそうな考察結果でした.