
立ち上がりでのグリップ不足を
トーの調整で何とかならないか考えてみましたが,合わせ込むのが物凄く大変そうなので,目線を空力の方に戻してみます.
フロントのダウンフォース稼ぎと言えば,アンダーパネルですが,こちらは
既に投入済みなので,フロア下ではなくボディ上面で稼ぐ必要があり,真っ先に思い浮かぶのは「カナード」という事になります.
「カナード」というのは,フロントバンパーの両サイドに取り付けられるパーツで,車体前部から流れてきた空気を側面に押しやる際に角度を変えて,ダウンフォースを得るものです.
「ダウンフォースを得る」というと,GTウイングのようにカナード自体で下向きに押し付ける力を得ているかのようですが,実は違うカナードの形状によって違うそうです.
例えば,こんな感じ(↓)の形状であれば,
完全に「ウイング」なので,当然バンパー両端部で下に押し付ける力が得られます.ここまで行かなくても,カナードの両端がフェンスになっているような形状(↓)であれば,
確かに下向きに押し付ける力が得られるようです.しかし,平坦なリアに付けるGTウイングと異なり,カナードは曲面になっているバンパーの両端に沿って付けるため,翼断面形状にする長さもなく,幅自体も狭く,あまり効率が良くありません.このため,多くの場合はカナードの下にカナード(もしくはアンパネ)を重ねて,カナードの下面の流速を引き上げる事でダウンフォースを稼ぐそうです.

(
カナードの効果「ダウンフォース発生/整流によるリフト低減」を徹底解説より)
つまり,こういったフロントウイング型のカナードは「複数枚重ねて使う事が前提」なのですが,この重ね合わせの距離や角度の付け方が非常に難しいんです・・・.
上の動画の0:44辺りを見てもらうとよく分かりますが,角度をつけ過ぎると干渉して流れが淀んでいるのが分かると思います(=ドラッグが増える).このようにCFD(Computational Fluid Dynamics:数値流体力学)や風洞設備を使って,ちゃんと形状・角度・間隔を検証して取り付けないと,カナードは簡単に空気抵抗の塊になってしまいます.
さて,こんな事を言うと,「いやいや,そんな難しい事考えなくても,適当に付けたって,ちゃんとフロントのダウンフォースは増すから!」と言われそうですが,その感じているダウンフォース,実はカナード自体で発生しているものではないと思いますよ.
Super GTの車両なんかでよく見られるフェンスの付いていないカナード(整流型のカナード)は,それ自体でダウンフォースを発生させるのではありません.

(
カナードの効果「ダウンフォース発生/整流によるリフト低減」を徹底解説より)
車両前面に流れてきた空気を,カナードを使って斜め上に跳ね上げる事で,車体側面に縦渦を発生させ,その縦渦によって出来た負圧領域を使って,フロントのホイールハウス内の空気が吸い出し,抵抗を減らしている(=リフト量を減らしている)んです.つまり,整流型のカナードは「下に押し付けている」のではなく,「上に押し上げない」効果を得るためのモノという事ですね.
「ふむふむ,なるほど・・・.整流型のカナードは,
如何に縦渦を作るか? がポイントかぁ~」と理解を進めていると,こんな記事(↓)に出くわしました.

(
auto sport No.1525より)
「カナードありの場合は~(中略)~
リアのダウンフォースが増える」
「はい!?」
最初,何言っているのか全く理解出来ませんでしたが,読み進めるうちに「なるほど,そういう原理なのか・・・」と納得出来ました.
「いやいや,こんなの素人には無理だよ・・・」と整流型のカナードも難しい事を実感しつつ,更に調査を進めていると,今度は「フリックボックス」という単語に出くわしました.
「フリックボックス」というのは,下の写真の赤丸の部分です.
ええ,その名の通り「ボックス」ですね・・・.こちらの写真(↓)で見ても間違いなく「ボックス」です.

(
ムーンクラフト STAFF BLOGより)
「なんだ,この空気抵抗の塊みたいな代物は? 何でこんなモン付けるんだ・・・??」と思って調べてみると,なんとコレを付けると
「空気抵抗が減る」んだそうです.
こちらの方のブログの写真で確認してみると分かりますが,トヨタ・ニッサン・ホンダの3メーカー共,ロードラッグ仕様には「フリックボックス」が付いてます・・・.
「このボックスを付けると何が起こるのか?」は何となく想像は出来ますけど,CFDの解析結果でも見せて貰わないと納得なんて出来ない.
「やっぱりカナードって難しい!」
・・・と途方に暮れていた時に,この写真を眺めていてピン!と閃きました.
「アレッ? 整流型のカナードがリフト量の低減(フロントホイールハウス内の圧力低減)を狙っているなら,もしかして,こっちの方法でも同様の効果が得られるのでは・・・?」「これだったら,小難しい角度とか,縦渦とか,考えなくても大丈夫なのでは?」
・・・と思って,EF8のバンパーを見てみると,
どうやら大丈夫そうです.早速ショップに打診してみたところ「素材もあるので,すぐ作れる」との事でした.金銭的な問題で次の走行に間に合わせる事は出来ませんが,次のファミ走までには間に合わせられそうなので,今から楽しみです♪
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セッティング(空力) | 日記
Posted at
2020/03/17 00:38:00