2ヵ月我慢してテストしたブレーキパッドは,計測1周目からNGだという事が分かり,残念な結果に終わりました.
「じゃあ,次はどうするのか?」というと,現在使っているProject μから別の銘柄に変更してみるのが手っ取り早いですが,同一メーカーであればカタログスペックで比較出来るものの,別メーカーとなるとそうはいかないので,いったい何を基準にして探せば良いのか分かりません・・・.
「困ったなぁ~」と思いつつ,何か良い策がないかとアレコレ調べている中で,
このブログを思い出しました.
ホイールのインチアップの有効性の話なのですが,この中で触れられている「ブレーキのためにホイールのサイズを上げる」という話を読んで,自粛中に読み漁ったRacing onのバックナンバーに書かれていた記事を思い出しました.
なぜ,JTCCのアコードが19インチなんてとんでもないサイズの(とてつもなくタイヤのハイトが薄くなる)ホイールを履いているのか? それはブレーキ容量を拡大するためだったという話.
Racing on No.506 JTCC PARTⅢ 「未知なるハコ・スプリント、研鑽の実像」の中にこんな一文があります.
コーナリングを速くするため,ブレーキに求められる性能はどんどん高くなり,96年の段階でフロントブレーキの限界を感じたホンダが,ブレンボに400mm径のブレーキディスクを要求したところ「そんな径は(格上の)DTM(ドイツツーリングカー選手権)でもやってない」と相手にされなかったという.
ちなみに,鈴鹿を2分5秒台で周回するようなDTMマシン(450PS/1040kg)のフロントローター径は380mm.それよりもパワーが小さく・軽いはずのアコード(300PS/975kg)が,DTMを上回る400mmを欲しがったというのですからローターサイズの重要性がよく分かりますね・・・.
おっと,少し脱線しましたが,言いたかったのは,
そのホイールに入る最大サイズのローターを入れないと意味がない!
という事です.果たして,私のEF8はホイールに入る最大サイズのローターを使っているのか・・・?
早速,ホンダ車の15インチクラスのローター径を調べてみると以下の事が分かりました.
EG6 ・・・ 外径:262mm 厚み:21mm ※私のEF8はEG6と同等です.
EK9 ・・・ 外径:282mm 厚み:23mm
EK9の方が20mm大きい!
ローターのサイズを上げるという事は,制動力の絶対値以外にも,熱容量を増やして耐フェード性を上げるという効果もあります.そして,耐フェード性が上がるという事は,パッドを元の「RACING-N1」に戻す事が出来る!という可能性が浮上します.
しかし,ビッグローター化によって上がった制動力によって「RACING-N1」でもロックするようになってしまっては本末転倒です.そこで,ビッグローター×RACING-N1の組合せ時の制動力が,どんなイメージになるのかを試算してみる事にしました.
ブレーキの力学の本によると,制動力は以下のような式になるのだそうです.
[制動力] = [パッドの摩擦係数] × [パッドの押付力] × [ローター径] / [タイヤ径]
例えば,制動力を上げたい場合,この式に則ると以下が選択肢となります.
①パッドの摩擦係数を上げる.
②パッドの押付力(ブレーキ踏力)を上げる.
③ローター径を上げる.
④タイヤ径を下げる.
制動力を下げたい場合はこの逆ですね.ちなみに,この式を見ていて気付いたのですが,パッドの面積は制動力に影響しないんですね.ローター径を上げると必然的にキャリパーサイズ(=パッド面積)も大きくなるのですが,それで制動力が変わる事はないという事です.パッドの面積が広がったり,キャリパーのピストン数が増えたりすると,つい制動力が増えるようなイメージを持ちますが,それと制動力は無関係である事がこの式から読み取れます(まぁ,面圧で考えれば気づける事ではあるのですが).
話を戻して,今回の場合はタイヤ径は固定(15インチ)なので④は除外.ビッグローター化によって③が上がるので,その上がった分だけ①を下げてバランスを取ろうという事ですね.但し,もし制動力が上がった場合は,ロックすると困るので「RACING-N+」のケースを上限に設定したいと思います.
次に,各パッドの摩擦係数はカタログより以下の通り.
RACING-N1 ・・・ 0.33~0.44
RACING-N+ ・・・ 0.39~0.48
本当は,この係数変化のプロフィールが分かると良いのですが,Project μは公開していないので,ここでは「RACING-N1」と「RACING-N+」で同様の傾向があると仮定します.
そして,ビッグローター分の制動力増加量を係数化すると以下の通り.
282mm / 262mm = 1.07
これらの結果を図式化して纏めると以下のようなイメージ.
「RACING-N1(黒線)」をビッグローター化すると(青線),一律1.07倍の制動力になりますが,摩擦係数が小さくなる領域(≒温度が低い領域?)では「RACING-N+(赤線)」の値を下回るので問題なさそうです.一方で,摩擦係数が大きくなる領域(≒温度が高い領域?)では,「RACING-N+(赤線)」を超えてしまう可能性がありそうです.実際はこんな一律の線形ではないと思うので,「RACING-N1」をビッグローター化しても「RACING-N+」には届かない可能性がありますが,なかなか微妙な感じで,ブレーキロックの可能性を考えると悩ましいですね・・・.
ビッグローター化によるフェード対策が出来ないとなると,他に取れる策としてはスリットローターの採用でしょうか?
パッドの摩耗量は増えるものの,ガスが抜けるので効果はありそうですね.ただ,
DIXCELの謳い文句をそのまま信用すると,プレーンタイプより摩擦係数が20%も上がるそうです.20%(1.20)となるとビッグローター以上の効果になるので,ブレーキロックの確率が上がりそうですね・・・.
う~ん・・・難しい.
これはまず足回りの方で対策して,様子を見つつ,パッドの調査を進めていくしかないですかねぇ~?
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セッティング(ブレーキ) | 日記
Posted at
2020/06/26 02:47:43