
体温よりも高かった気温も少し和らぎ(?),何とか耐えられるレベルの暑さになってきたと思いたいところですが,依然としてサーキットを駆け回るには厳しい気温です.
こんな気温なので当然絶対的なタイムはアテにならず,走行中に感じた感覚を頼りに良し悪しを測るしかない訳なのですが,それだと0.1秒以下の細かな違いを識別するのは非常に難しいです.何とか今の状態を分析する手立てがないかなぁ~?とアレコレ考えたのですが,答えが出なかったので(笑),単純に1年前のデータと比較してみる事にしました.
タイヤはRE-71R(フロント:205/45R16 リア:195/55R15)で同じです.
まずは,単純なタイム比較から.セクターはLAP+のものを用います.
2019年 vs 2020年
SCT.1 ・・・ 12.897 vs 12.516 (-0.381)
SCT.2 ・・・ 07.538 vs 07.650 (+0.112)
SCT.3 ・・・ 10.921 vs 10.925 (+0.004)
SCT.4 ・・・ 11.671 vs 11.638 (-0.033)
LAP TIME ・・・ 43.026 vs 42.730 (-0.296)
単純にタイムを比較すると,2020年の方が0.3秒速いようです.
セクターのタイムを見ると,このタイムの縮め代はそっくりそのままSCT.1のようです.LAP+におけるSCT.1は,スタートライン~2コーナー出口(1ヘアブレーキングの手前)となりますので,タイムを縮めているポイントとしては・・・,
①ホームストレートのスピードが伸びている
②1コーナーのボトムスピードが高い
③2コーナーの旋回速度が高い
のいずれかとなります.
次に,いつもの車速のグラフを見てみます(青:2019年 緑:2020年).
1コーナー進入時点(1つ目の赤丸)で2020年(緑)の方が車速が4.4km/h高く,これで0.1秒稼いでいます.2019年(青)と比較すると両者の差は特に広がりも縮まりもしない点から推測すると,車速の伸びは変わらず,スタートライン時点の初速,つまり2→3速にシフトアップしてからの最初の一伸びが効いているようです.2速を8000rpmまで引っ張ってからシフトアップすると回転数は5600rpmまでドロップしますから,ここのトルクがポイントという事になりそうですね(ふむふむ・・・).
続く1コーナーのブレーキングでは,2020年(緑)の方が途中(2つ目の赤丸)から角度が緩くなっています.これは,ここからブレーキを緩めているという事を示しています.2019年(青)よりも4km/h以上高い進入速度だったのに,ブレーキを早く緩められている点から,ブレーキの効きが良くなっているのは間違いないようです(ドライバーとしては十分車速が落ちた or 向きが変わったと思ったからブレーキを緩めている,という意味です).この緩めのおかげで更に0.1秒稼いでいます.
「ブレーキを早く緩められる」という事は,「アクセルを早く踏める」という事なのでボトムスピードは2020年(緑)の方が2.2km/h高いのですが,その後のアクセルONのタイミング(3つ目の赤丸)では車速が伸びていません.これはタイヤが耐えきれず,横に滑って前に進んでいないのだと思われます.もはやRE-71Rを使う機会はないと思いますが,より上手く使うならアクセルONをもっと丁寧に行わないとダメという事ですね(A052だったら気にせず踏んじゃえば良いと思いますが).ちなみにこの横滑りでタイムロスしているかと思いきや,実は差はそれほど変わらず,0.25秒差で維持されています.
続く2コーナーの旋回途中(4つ目の赤丸)も興味深いですね.2019年(青)では途中でタイヤが耐えきれず,車速の伸びが鈍っているのに,2020年(緑)ではそのまま車速が伸びています.つまり,「旋回速度が上がっている」という事なのですが,同じタイヤでグリップに差がなく,ライン取りも大きな違いはないのに旋回速度が上がる要因としては,以下の3つが考えられます.
A.ストレーキ&フェンダーフラップによって空気抵抗が減っている
B.アンパネ(フロントディフューザー)によってダウンフォースが増えている
C.リアのバネレートを1キロ上げた事によって後傾姿勢が抑えられている
ステアを切っている状態なので「A」だと嬉しいところですが,恐らく「B」でしょうね.これは以前体感した点なのでこの可能性が高いと思われます.「C」だとセットアップを考える上では面白い結果なのですが,これを見分けるのは正直難しいですね・・・.
いずれにせよ,2コーナーの旋回速度が上がった恩恵によって,1ヘア手前の進入速度は2.6km/hアップしており,トータル0.35秒稼いでいます.これらの結果から全域で2020年(緑)の方が上回っている事が分かります.
以上の分析結果から,2020年のタイム短縮の要因を推測してみると,前述の①~③の全てが該当しているようです.コンディション的には,2020年のデータの方が吸気温が7℃高く,気圧が1kPa低い状況なので,エンジンパワー的には不利という点を踏まえると,空力のアップデートによる③の効果はもっと大きいのかもしれません.
次の冬に向けてのアップデートは現状ブレーキしか行っていませんが,これも一応は0.1秒のゲインに繋がってはいるようです.ただ・・・,
折角伸びた車速をブレーキング時の荷重移動で上手く扱い切れておらず,SCT.2およびSCT.3で0.1秒のロスを生んでいるようです.ここは現状ドライビングでカバーするしかないので,今はひたすらブレーキングの研鑽に励むしかありませんね.
ちなみに,ただ走り込んでも進歩がないと思ったので,より微妙な踏力コントロールが出来るよう
筋力アップのトレーニングを1ヵ月前から再開しているのですが,筋肉痛が抜けないのでまだまだですね(苦笑).
クルマを仕上げるのと並行して,人間の方も次の冬に向けて準備していきたいと思います.