
では,
続きです.
A052を前後に履いたらステアバランスがアンダー寄りに振れたので,リアをナロートレッド化して試してみよう!というのが前回のお話.
この日のTC1000は8時枠がある日だったので,C30枠あたりで走ろうかと思っていたのですが,路面は前日の雨でウェットコンディション.常連さんのタイムをドライと比較すると,A00枠で+2秒,B15枠で+1秒,C30枠で+0.5秒という感じで徐々に乾いてきてますが,まだセミウェット状態.
9時台ならまともに走れそうですが,皆考えている事は一緒なので,この枠に殺到するのは明らか.「こりゃ,午前中の走行は諦めるかなぁ・・・」とも思いましたが,何となくトラブルが起こるような予感がしたので,一先ずタイムは横に置いてG枠(11:00~)で出走しました.
・・・で,コースインしてみると,予感的中でエンジンの吹け上がりがおかしい.1周回ってホームストレートでアクセル全開にしてみても6000rpm以上吹けない.「急に寒くなったからなぁ・・・」と思いつつ,ピットに戻って,あ~だ,こ~だ,とやってたら何とか復調しました.「いやぁ~,2週間前の先輩との対決中にこれが起きなくて本当に良かった」と心底思いました.
そんな感じでトラブルを抱えつつ,コース上も大混雑でクリアをとるのに四苦八苦しつつ,まともにアタック出来たのはたったの2回.それもセッション終了間際のファイナルラップでした.
タイムは 41.739 で2週間前の0.05秒落ちでした・・・.
ナロートレッド化は失敗!?
いいえ,そんな事はありません.両者のライン取りを比較してみましょう(赤:前回 青:今回).
ご覧の通り,2コーナー,1ヘアの立ち上がり,最終コーナー立ち上がりと前回アンダーに苦しんでいた部分で全てイン側寄りのラインが取れています.特に一番顕著なのは2コーナーで,ブレーキリリース→アクセルONのタイミングで外側に引っ張られていたのが(アンダーが出ていたのが),クルマを楽にイン側へ寄せられるようになりました.乗っている時も前回(赤)は舵を入れっ放しで,ステアを戻す余裕が全くなかったのが,今回(青)は舵を戻さないとイン側の縁石に乗り上げてしまうくらい余力がありました.また,最終コーナーもアクセルのON/OFFにクルマが反応してくれて,進入角度の微調整が効き,まさしく狙った通りに曲がってくれる非常に良いステアバランスになりました.
ただ,「これだけ良いバランスなのだから,前回のタイムも楽に上回っただろう!」と思いきや,実際のタイムは0.05秒落ち・・・.フィーリングとタイムが直結しない点は不可解です.
LAP+で車速(上)・タイム差(下)を比較してみても(緑:前回 青:今回),
ブレーキング~コーナー進入の領域では今回(青)の方が速いのですが,コーナーの立ち上がり~加速の領域では前回(緑)の方が速い結果となっています.通常,リアをナロートレッド化すると,コーナーの進入で曲げづらくなり(遅くなり),立ち上がりでよく曲がる(速くなる)はずなのですが,理論と結果が一致しません.う~ん・・・不思議ですね.
そんな事を考えつつ,いつもの場所(↓)でデータをみていたら,

(ムサコー狂走会 会長さん,写真をお借りしました)
「ロガーですか?」と声を掛けられました.
この日は日曜日.そう,蘇武喜和サーキットアドバイザーがいらっしゃる日でした.
昔,EF7に乗られていたそうで,「ドアの横のロゴが剥がれてない!」とか,「リアシートが付いてる!」とか,さすが目の付け所が違います.べ卿さんのクルマをセットアップした話とか,EF9→EG6→EK4→EK9のステアリング特性の違いの話,それを踏まえたTCR仕様のFK8の意外な共通点等,貴重なお話をいくつもして頂きました.
そんな感じで話が広がってきたので,EF8の横へ移動してクルマを見ながら話を続けると,リアタイヤのサイズがおかしい事に気づかれ,「今回はナロートレッドを試しているんだ」とお話すると,「ナローにすると動きが違うでしょ!」と前のめりになり,更にリアを16インチ化したもう一つの理由を告げると,
「おもしろい事やってるね.うん.おもしろい!」
と興が乗ったご様子.そこからホイール剛性の話に移り,具体的な銘柄を挙げながら,「こういうシーンで,こういう挙動を作りたくて,アレとコレを比較してみたんだけど,○○は△△で,□□は××だったんだよ」とか,「剛性だけに目を向けちゃダメで,重量の違いがこうあって・・・」とか,「あとタイヤの角にも違いがあってですね・・・」と話が膨らみ,続けてトーに話が移ると「トーインのメリットって○○だけど,実はデメリットとして△△があって・・・」とか,「だから,なんでトーアウトにするかというと,□□の時に××だからで・・・」とかとか,目から鱗の話をいくつも教えて頂きました.
そんな感じで,大分マニアックな話になってきたので,これ幸いと先日のorangeEPさんに続き,この日はこもりん.さんの1コーナーの動きをチェックしていたので,そこで感じた疑問点を蘇武アドバイザーにぶつけてみると,
「結局,コーナーでどういう姿勢を作りたいか次第.〇〇の姿勢にしたいならトーを△△にして,そこから□□にして調整する.一方でキャンバーの効果はこうだから,合わせ込むポイントは××で・・・」とセッティングの仕方,合わせ込むシーンや状況の考え方,それによる効果をドライビング時の感覚踏まえて教えて頂きました.きっと,プロの世界でドライバーがエンジニアとセットアップを議論する時に,こんな感じで伝えるんでしょうね.新鮮で非常に面白かったです.
最後にTC1000での前後バランスの取り方についてもアドバイスを頂き,「どのコーナーに焦点を絞ってバランスを決めるかが大事.ドライバーが頑張るコーナーと,クルマに任せるコーナーを分けて考える.TC1000だったら,〇〇のコーナーはクルマの△△で合わせ込んで,□□のコーナーは××に頼るべきかな・・・」と仰るのを聞いて,「実は私もそう考えてセットアップを進めてました」と答えたら,「それで正解だよ!」と太鼓判を頂きました.
いやぁ~濃い.濃いですよ.サーキットアドバイザー.これだけの情報を無料で教えてもらえるなんて本当に有難いです.まんまと策略に乗って,色々リアのセッティングを試したくなってきちゃったじゃないですか(笑).
その後,もう1本走ってエンジンの不調が改善している事を確認し,変更後のステアバランスに合わせるドライビングを練習して,仕上げに仮想いつさんでポルシェ追い駆けて終わりました.
蘇武アドバイザー,お会いした皆さん,お疲れ様でした!