今年最後の走行会を終え,あとはホームコースでの自己ベスト更新に専念するのみとなりました.
それに向けてセットアップを詰めるべく,翌日ショップを訪れたわけなのですが,ちょうどタイミング良く,今回の走行会に参加されていたFN2乗りの方がゲストドライバーの車載映像を持って来られていたので,じっくりと見せて頂きました.
「あ~,やっぱりこういう走らせ方か・・・」と映し出される映像を見て,感想を述べたのですが,その場にいたオレさまFD2が突如噛みついてきて,あ~でもない,こ~でもない,と議論が始まりました(笑).
議論のポイントになったのは,TC2000のダンロップコーナーへの進入の部分.DVDのスロー再生機能を使いながら,ステアリングの切り込み方と,その後の操作の問題点を私が指摘すると,オレさまFD2は,
「だから,それはクルマが合ってないせいだろ.足回りのセッティングを変えるんだよ!」
と『クルマを直せ!』の主張.対して,私の方は,
「いや,クルマがこう反応するんだから,それにドライバーが合わせるんだろ!」
と『ドライバーが直せ!』の主張.そこから何度も映像を再生しつつ,10分以上議論しましたが,互いに譲らず,議論は平行線で終わりました(苦笑).
議論の最後,オレさまFD2が捨てセリフで「何か理屈があるのかもしんねーけど,お前の言ってる事は分かんねぇんだよ.オレに分かるように説明しろ!」と言われたので,今回は文献を引用してその説明をする事にします(笑).
引用する文献はコチラ(↓).
AUTOSPORT No.1376:トップドライバーの「仕事」を解剖する最新ドライビングテクニック特集より,「トシ新井のWRC最新ドライビング『FF走法』解説」です.
この記事の内容は「近年のWRCの勝者は,『北欧系』の滑らせて向きを変えるスタイルではなく,『FF系』の切り込んで向きを変えるスタイルだ」というお話です.いずれも4WDのクルマの話ではあるのですが,ライン取りや向きの作り方に共通する部分が多いので,これを用います.
(ちなみに,北欧系=オレさまの主張,FF系=私の主張 の図式です)
まず,『北欧系走法』と『FF系走法』の違いはこうです(↓).

(AUTOSPORT No.1369より)
新井敏弘氏の言葉を借りると,
「ターンインの姿勢作りは両者ともそれ程変わらない.みな,角度を結構付けてテールスライド気味に進入している.違いはそこから先.『FF系』はクリップ付近でヨーがなくなっており,少しステアリングをインに切り込みながら縦方向に立ち上がっていく.対して『北欧系』はクリップを過ぎても横方向への力が残ったまま.リアのスライドを維持して回し込もうとしたり,カウンターを当てたりするため,タイヤのグリップを縦方向に上手く使えない」

(AUTOSPORT No.1369より)
「『北欧系』はマシンの向きやトラクションよりも高い速度を維持するスタイル.マシンの向きをスパンと変え,テールスライドしてでも進入速度が高ければタイムロスにはならないと思っている.Rの大きい高速コーナーであれば,確かにこれは有効だ.しかし,このスタイルの場合,回り込んだコーナーで無駄なくじっくりトラクションをかけていくような繊細なドライビングが身につかない.一方,『FF系』はクリップ後に無駄なヨーが残らないよう,適切なスピードに進入速度を合わせていくスタイル.そのためには完璧なスピードコントロールが要求される」
「このスピードコントロールの要となるブレーキングも『北欧系』と『FF系』では異なる.『FF系』では基本的に直線で短時間にブレーキングを終わらせ,ブレーキペダルを離した状態でターンインする.対する『北欧系』は長めのブレーキングでターンイン時まで残し,姿勢コントロールに繋げる傾向が強い.ターンイン時までブレーキングが残っていると,タイヤの横方向のグリップを有効活用出来ない.効率的なのはやはり『FF系』で,路面のグリップが高くなる程,特に大きな差が出る」
上記を要約すると,
「テールスライドで向きを作る走らせ方(オレさまの走らせ方)
だと,コーナーの出口でトラクションが得られないので,スライドさせない走らせ方(私の走らせ方)
より遅い」という事です.
常時トラクションが掛かっているような高速コーナーであれば,確かにオレさまの方が速いのだと思いますが,TC2000のダンロップコーナーがそういった類のコーナーだとは,私は思いません.
(だって,ダンロップコーナーのRって,たったの「35」しかありませんよ?)
最終的に,オレさまの言い分は「トラクションが掛けられる姿勢をクルマ側が作れ!」という事なんだと思いますが,私は「どんな姿勢であれ,ドライバーが操作してトラクションを生み出すんだろ!」って思ってます.FFなんて,クルマの中で一番トラクションが掛かりにくい構造なんですから,タイヤと相談しながら,ドライバー側でアジャストしないでどうすんだ?と思うのですが,きっと,これだけ示しても納得はしないんだろうなぁ~(苦笑).
ちなみに,「オレはFFの話をしているんだよ! 4WDの話をしてんじゃねぇよ!!」と言われないために補足しておくと,この走らせ方はその名の通り,FFに起因しています.
90年代にシトロエンがFFのキットカーで,WRCの4WD勢を打ち負かした話は有名ですが,この時に前輪のトラクションを重視したハンドリング,強大なパワーを前輪だけで路面に伝える技術(ダンパーとタイヤ)をエンジニアが学び,4WDでも後輪の駆動は補助的にしか使わないという手法を取り入れた結果,上記のようなスタイルが評価されるようになったそうです.つまり,FFにおいても同じ走らせ方をする,という事ですね.
最後におまけで『左足ブレーキの話』.先述の新井氏はこんな事も仰っています.
「ブレーキングに関しては,『北欧系』は姿勢制御に左足ブレーキを多用している.しかし,左足ブレーキは修正操作であり,本来は無駄な入力.また,左足ブレーキの癖が染みつくと,特にターマックラリーではマイナスに作用する事が多い」
「ターマック(舗装路)では,加速状態から急激な減速操作を行うと,荷重が一気にフロントタイヤに掛かってロックしやすくなる.アクセルペダルを離して,荷重を後ろから少しだけ前に戻す『間』を取り,そこからブレーキングした方が前輪がロックしにくく,制動距離も縮まる.左足ブレーキだと踏み替えの操作がないため,『間』が一切なく,一瞬でフルブレーキングを行いがち.自分も基本は左足ブレーキだが,サーキットでは,あえて『間』を作るために右足で踏むようにしている」
そして,この記事の中では,この『北欧系』のドライバーとして以下を挙げていました.
・・・で,この中の一人,ミッコ・ヒルボネン氏がFFの走らせ方を解説している動画を見つけました(↓).
動画の2:20辺りから,コーナリングの実演が始まりますが,
見事に左足ブレーキですね.
そして,「オーバーステア状態になるのは好都合.そこからアクセルワークでコントロールするんだ~」と解説しています(ちなみに,このクルマはFFだそうです).3:30辺りからヒルボネン氏が逆同乗でコーナリングを指導しているのですが,こちらの方が足元がはっきり見えるので,左足ブレーキを学ぶには良い動画かもしれませんね.
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ドライビング理論 | 日記
Posted at
2020/12/15 00:46:42