
去年の春は緊急事態宣言でサーキットが閉鎖して走る事が出来ませんでしたが,今年の春は別な事情で走る事が出来ず,久方振りに1ヵ月以上サーキット未走行が続いています.
カートでも乗りに行こうかと思いましたが,このご時世なので今一つ気乗りせず,結局,家に籠って色々調べ物をする日々です.そんな中で,今シーズンのF1が開幕し,最終年となったホンダの新骨格エンジンの情報が色々と出てました.
シーズン開幕前に行われた
記者説明会では,先んじてホンダの方から「カムシャフトのレイアウトを変更して重心を下げた」「ボアピッチを縮めてコンパクト化した」といった情報を流していましたが,当時は開幕前(ホモロゲーション確定前)という事もあり,画像が公開されていなかったので,「ふ~ん・・・」くらいに思ってました.
その後,とある番組で画像が公開され,シリンダーヘッドの写真がネット上に流れていました.
「あ~,コレが〇〇〇さんが言っていたヘッドかぁ~」と思って何とはなしに眺めていると,「ん? なんだコレ??」と思う部分がありました.
それは,ヘッドカバーを跨ぐように付いている補強バーの位置(↓).
F1のようなフォーミュラカーの場合は,エンジンブロック自体がシャシーの一部となっていて,人が乗るモノコックと車体後部のギヤボックスを繋ぐ部材の役目も担っているのですが,V6になった辺りで全長が短過ぎて剛性不足となったのか,エンジンの前後を橋渡しするようなバーがヘッド上に付くようになりました.
前後を橋渡しするようなものなので,ヘッドに対して平行に配置されるのは当たり前だと思うのですが,この新骨格エンジンでは左右で角度がついたレイアウトになっています(↓).
そうすると,この下がっている側(画像左側)はバンクの上部なのか,下部なのか気になったので調べてみたところ,出っ張りがある方がバンクの下部のようです(↓).

(この写真↑は,2018年のRA618Hのものです)
とすると,下がっている方(画像左側)がエンジン下部にあたり,エンジンの下側がえぐれていて,エンジンの上側が張り出しているようなイメージのようです.
「ほうほう,ならば,この推測は合っているかな?」と思い,このエンジンが搭載されているレッドブルの写真を見てみると(↓),

(autosports Web:
【2021年F1新車技術解説】レッドブルRB16Bより)
旧骨格搭載車のRB16に対して新骨格のRB16Bは,確かに下部がえぐれて,上部がせり出しているので,推測は合っていそうです.
車体下部をえぐるのは,ディフューザー上面を流れる空気の通過量を増やしたいため(リアのダウンフォースを稼ぐため)でしょうから,特に疑問は生じないのですが,上部をせり出す理由が分かりません.写真を見る限り,エンジン上部側のバーの位置を横にスライドさせれば良いだけですから,技術的に出来ないようにも思えません.
・・・とすると,ここに何か秘密があるのか?と思い,
新骨格エンジンの分析記事を読んでみたのですが,ホンダが説明した部分に対して素直に見ているようで,バルブの挟み角やボアピッチの方に着目しており,ここに触れているものは見当たりませんでした.
エンジン上部をせり出すという事は,普通に考えると「V型のバンク角を広げる(=重心を下げる)」といった事が考えられるのですが,F1の場合,レギュレーションで「バンク角は90°」と定められているので,これは有り得ない.
バンク角を広げず,上部をせり出す(=バンクの間を広げる)メリットは何か?と更に考えてみると,「そこに置かれるモノのレイアウトが変わった」という可能性が思いつきました.
じゃあ,ここに置かれているモノって何なんだろう?と思い,調べてみると(↓),

(ホンダの記者説明会資料より)
どうやら,「MGU-H(Motor Generator Unit - Heat)」のようです.
「MGU-H」というのは,F1独自の技術で,ターボチャージャーのシャフトに連結されたモーターの事です.

(FORMULA1-DATA:
MGU-Hとは?より)
エネルギーを貯めたい時は,ターボチャージャー→モーターを駆動して発電し,逆にエネルギーを使いたい時は,モーター→ターボチャージャーを駆動してアシストする機構です.これにより,低回転時に起きるターボラグを解消する事が狙いです(詳しくはコチラ↓).
従って,このエンジン上部をせり出している理由は,このMGU-Hのサイズアップなのではないか?と思いました.そう言えば,昨年,ホンダがメルセデスより劣っている部分の1つに「デプロイメント(※)の時間が短い」という事が指摘されていたので,MGU-Hのサイズアップにより,それを解消してきた可能性がありそうです.
※:「デプロイメント」とは,モーターを使ってチャージしたエネルギーを使う事で,「デプロイメントの時間が短い」とは「モーターでアシストする時間が短い」という意味になります.
この推測の裏取りが出来ないかなぁ~?と思って,先述の記者発表会の記事を見返してみたところ,質疑応答にそれを匂わす部分がありました(↓).

(Car Watch:
ホンダ、F1最終シーズンに臨む意気込みを開発を率いる浅木泰昭氏が語るより)
これを見て・・・,
「おっ! 合ってそうだな」 ( ̄ー ̄)ニヤリ
以上,写真1枚でご飯が3杯いける,暇人のお話でした(笑).
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Posted at
2021/04/02 07:11:52