
(この記事は,
リベンジ成功(日光サーキット 18回目@FIT)について書いています)
先日,遂に日光で39秒台に入れたGK5乗りのtaka@黒インテ(元)さんから「ロガーデータを解析して欲しい」とご依頼頂きました.GK5×A052の組合せで一体どうやったらこんな驚異的なタイムが出るのか? 私も興味津々だったので喜んでお引き受けし,車載映像も見つつ,その速さの秘密を解き明かしてみようと思います.
まずは公式タイム.当日のベスト5のタイムを並べてみると,
1位(07周目) ・・・ 39.746 (S1:9.140 S2:17.644 S3:12.962)
2位(09周目) ・・・ 39.908 (S1:9.240 S2:17.583 S3:13.085)
3位(12周目) ・・・ 39.936 (S1:9.235 S2:17.558 S3:13.143)
4位(05周目) ・・・ 40.047 (S1:9.216 S2:17.641 S3:13.190)
5位(14周目) ・・・ 40.203 (S1:9.282 S2:17.745 S3:13.176)
周回的には全体のちょうど中間である7周目がベストラップとなっており,タイヤのピークがここだったのかな?とも思えますが,日光はラップタイムのバラつきが大きいコースなので,そうとも限りませんかね.ベスト5の平均値で見てみると,S1は平均9.2秒ですがベストラップのは突出して0.1秒速いですね.続くS2は平均17.6秒で,ベストラップではほんの僅かですがロスがあったようです.最後のS3は平均13.1秒,こちらもベストラップが突出して0.1秒速かったようです.
・・・という事で,注目すべきはベストラップでS1・S3で突出して速かった理由と,反対にベストラップでS2のセクターベストを獲れなかった理由といったところでしょうか.
次に車載映像の確認.
いやはや,凄いドライビングですね.この映像を見つつ順々に見ていきたいと思います.
1コーナー進入
赤がベストラップ,青がセカンドベストのラップですが,ベストラップ(赤)ではブレーキングを遅らせて進入速度を稼いでいたようです.セカンドベスト(青)との差は距離にして約9m,ほぼ2台分ですからかなり頑張ってますね.車載で見てみると,
【ベストラップ】
【セカンドベスト】
こんな感じです.左側のタイムボードを見れば一目瞭然ですね.
1~2コーナー間
ベストラップ(赤)は,先述の進入速度の高さを活かして1~2コーナー間のボトムを底上げしているようです(↓).
これでセカンドベスト(青)に対し0.11秒稼いでいるので,S1ベストで突出していた要因はこれでしょう.
ならば,ベストラップ時が1コーナーへの進入速度が一番高かったのか?と調べてみると,5周目(4thベスト:緑)の方が実はもっと高かったようです(↓).
5周目ではMAX:117km/hをマーク.117km/hって,もはやNA2.0Lクラスの速度域な気がするのですが,ホントにこのGK5はNA1.5Lなんでしょうか・・・(汗).
それはともかく,ベストラップより最高速が高かったのに5周目のタイムが伸びなかった理由は,1~2コーナー間で止め過ぎた事が原因のようです.ベストラップの方は116→100km/hまで落とすのに,距離にして約24mかけているのですが,5周目の方は117→100km/hまで落とすのが僅か9mしかかけていません.5周目の方は映像を見ていませんが,さすがに117km/hでの進入で「突っ込み過ぎた!」と思ってブレーキを強く踏んだのか? 5周目が行き過ぎだったのでバランスをとって次のアタック(これがベストラップ)で活かされたのか? 分かりませんが,ベストラップの方は「止める」と「曲げる」をギリギリのバランスで成立させたラップである事は間違いないようです.
(なお,ベストラップ以降は周回する毎に進入速度が下がっているようで,タイヤのタレもあるのかもしれません)
2~3コーナー
1~2コーナー間で「止める」と「曲げる」を高次元でバランスさせたベストラップ(赤)は,アクセルONのタイミングも早かったようです(↓).
ただ,ベストラップ(赤)は早く踏み始められているものの,その後,速度の伸びが停滞しています.アクセルコントロールしているのか? タイヤのグリップ限界なのか?は読み取れませんが,右に1.2G掛かっている点から推測すると後者でしょうか・・・.続く3コーナーでは右2輪で片輪走行してますし(↓),

(車体が右に傾いているのが映像からよく分かります)
目一杯限界の走りって感じです.これ以上は軽くするか,重心下げるかしないと無理な気がするのですが,(大)@みやう軍団さんは更にこの0.1秒先に居るんですよね・・・.
4コーナー
3コーナーで片輪走行になり,横転を回避するためにステアリングを早めに右に切った結果,3コーナー出口でアウト側に膨らんでいます.これによりセカンドベスト(青)に比べ,ベストラップ(赤)では4コーナーの進入角度が苦しくなっています(↓).
状況的に仕方のない事ですが,これによって車速の伸びが鈍り,6コーナーまでに0.04秒ロスしているようです.
6コーナー
そのほんの僅かな伸びの違いが,6コーナー進入のブレーキングポイントをズラしてしまっているようです.僅かに突っ込み過ぎでベストラップ(赤)の方がボトムスピードが2km/h低く(↓),
ラインもワイドになってしまっています(↓).
これにより更に0.05秒遅れているので,ベストラップ(赤)がS2でセクターベストを出せなかった理由は恐らくコレが原因でしょうね.ただ,ブレーキングポイントのズレといってもその差僅か4mですし,これをミスというのはシビア過ぎに思えます・・・.個人的には映像を見ていて,これだけ良く曲がるGK5でリアが出やすい6コーナーを滑らさないよう,前後・左右の車体バランスをギリギリで保ってコントロールしている点に驚嘆しました.6コーナー手前でレブに当たる事もあって進入がインベタのラインになっている事もあるでしょうが,本当に見事なコントロール技術です.
8~9コーナー
ここは特段ベスト5ラップで大きな違いはありませんでした.これだけのタイムを出す方なのでミスをする要素が何もない感じですね.ただ,凄いなぁ~と思ったのは8コーナー進入~出口にかけての速度低下量の少なさ(↓).
アクセルは戻しているそうですが,操舵抵抗も生じているはずなのに,ほとんど速度低下がないんですよね・・・(落ちは僅か3km/h).私もEF8で同じくらいの進入速度になるのですが(約107km/h),コーナリングの過程で5km/hくらいは落ちてしまいます.私がアクセルを戻し過ぎなのか? L15Bのトルクが太いのか? その辺りは分かりませんが見習うべき点だと思いました.
10~11~12コーナー
ベストラップ(赤)がS3で稼いだポイントですが,ここも1コーナー同様,ブレーキングを遅らせて稼いだようです(↓).
セカンドベスト(青)に比べて,最高速は1.5km/h増し,ブレーキング開始のピントは10m遅れ,タイヤのグリップを目一杯使ったコーナリング,これらにより瞬間最大0.19秒稼ぎ出しています.そして,ここでも驚嘆すべきはそのコントロール技術.セカンドベスト(青)の方が10コーナー進入が緩いはずなのにブレーキングでカウンターを当てなければならない状況だったようですし(↓),

(リアが出て左にカウンターを当てている)
前後・左右の車体バランスをギリギリで保って纏めたラップがベストラップだった・・・という事なのでしょうか.
以上,日光39秒台の走りでした.
車載を見ても,データを見ても,目一杯の走りって感じが伝わってきます.車体の動きを見ると,決してリアが安定するようなセッティングではなく,ドライバーがコントロールしてリアを接地させているのが伝わってきます.また,どのコーナーでもステアリングの舵角が少なく,クルマも進められるだけ前に進めているような気がします(各コーナーの進入速度が高いのはそれが理由でしょう).さすがにベストラップの最終セクターはタイヤが悲鳴を上げているので辛そうですが,それ以外はきっちりグリップの限界内で走らせているように見えました.どこかに伸び代がないか?というのが解析を依頼頂いた理由だと思いますが,あまりに非の打ち所がないドライビングで問題点が見つかりません.
A052とはいえハイグリップラジアルで出したこのGK5のタイムは,Sタイヤを履いた はやぶ@877作業員AさんのEF8と同レベルの速さな訳ですし,これ以上のタイムとなると,ちょっと想像が出来ませんね.唯一S1だけは(大)@みやう軍団さんのセクタータイムなんかを見ると,もう0.1秒くらいは削り代があるように思えますが,それこそZC32Sのロガーデータでも入手して比較しない限り,解き明かせそうにないですね・・・.