
桜色の季節が過ぎ,そろそろ半袖でも良いかと思うような暖かさになったと思ったら,一気に梅雨入りしたかのような雨模様が続いていますが,
こんな時期でも自己ベストを更新するいつ教授.
先日の教授回診では,
面倒そうなクランケの処置を押しつけたのに 苦もなく適切な処置を重症なクランケに行う等,コース外でもその博識さを見せつけていらっしゃいました.
(その博識さ故に走った5倍の時間を会話に費やしたに違いない・・・)
そんないつ教授に対し,恐れ多くも「ホイールスピンをさせたら加速が鈍るんじゃないのですか?」と上申してみたところ,「キミはゼロヨンマシンに乗った事がないのかね?」
┐(´∀`)┌ ヤレヤレ ソンナンジャ困ルヨ 君ィ…
と,ゼロヨンなんてチャリンコでしかした事がない私の経験不足を即座に見抜き,診断の過ちを指摘されてしまいました・・・.教授が仰られるには「軽くホイールスピンさせると,シュルシュルと凄い加速をさせる事が出来るのだよ」と.そうですか! 凄いんですか!! シュルシュルなんですか!?と認識を改めさせられ,最後は自分は専門外だから
( ゚д゚)ノシ アトハ自分デ調ベタマエ…
と去って行かれました.専門外なのにそんな事まで分かるんですか!? 流石は教授!!と驚嘆しつつ,そう言えば,昔,「ガッチリ食い付かせるより,少し滑らせた方が加速が良い」みたいな話を聞いた事があるなぁ~と思い出し,関連する文献を読み返してみる事にました.
まず,「少し滑らせた方が加速が良い」というのは事実なのか?とタイヤ関連の文献を見てみたところ,「μ-s特性」と呼ばれるものがこれに当たるようです.
「μ-s特性」とは,縦軸に「縦方向の摩擦係数(μ)」,横軸に「スリップ率(s)」をとった時のタイヤの特性で,一般的に「スリップ率(s)」が10~20%の時に「摩擦係数(μ)」が最大となる特性の事を指すようです.
ここで言う「スリップ率(s)」とは,
[スリップ率] = ([車体速度] - [タイヤ回転数])/ [車体速度]
で求められ,[車体速度]と[タイヤ回転数]の差がどれくらいか? つまり,タイヤがどれくらいスリップしているか?を示している値です.[スリップ率]が0%であれば完全に路面に喰らいついており,100%であればブレーキング時だとロックしている状態になります.
従って,「μ-s特性」によると「タイヤが20%くらい滑っている時が最も縦にグリップする」という事になります.ちなみに,これは論理的に導き出されたものではなく,実験的に導き出されたものだそうで,大抵のタイヤはこれに当てはまるようです.この特性を踏まえて,例えばABSの制御等はスリップ率が20%以内に収まるようにセッティングされているそうです.
なるほど,タイヤは完全に滑らないように使うより,少し滑らせるくらいで使った方がグリップは高いんだな~と分かったところで・・・,
φ(・ω・ )フムフム…ン!?
911みたく,ハイパワーで自力でホイールスピンを引き起こせるようなクルマであれば,この20%のスリップ領域を活かしたドライビングが出来ると思いますが,そもそもアンダーパワーなFFではホイールスピンなんて起きないし,起こせない.こういうクルマの場合はどう活かせばいいんだ・・・? 意図的にホイールスピンさせるんだったら,例えばLSDの効きを弱くすればいいのか?とも思いましたが,LSDは内輪の空転を防ぐのが主目的なので,そうではない.
ならばと,パワーを上げずにホイールスピンを引き起こすためには,タイヤに掛かっている荷重を抜けば良い訳だから,
こういう事なのか・・・?
加速する時に,20%のホイールスピンが起きるように,意図的にフロントをリフトさせて荷重を抜けばいいのかな?
でも,[駆動力] = [摩擦係数] × [荷重] なので,[摩擦係数]が増える分よりも[荷重]が抜ける量が増えたら,トータルでは[駆動力]が減ってしまうしなぁ~.20%の[スリップ率]を正しく計測出来ないとバランス点が見極められないかもしれない.
・・・と更に文献を読み漁ると,「ここで言う『スリップ率』は必ずしもタイヤと路面の間のスリップを指している訳ではない」との事.
(゚Д゚;)ナヌ!?

(浜名湖観光局:
ABSの働きより)
タイヤは路面とホイールの速度差によって引っ張られ,常に引き延ばされた状態で路面に接するため,タイヤが全く変形しない場合と比較すると1回転当たりに進む距離が長くなる.距離が長くなっているのに回転数が同じという事は速度が上がっている事になるので,タイヤが変形すればするほど[スリップ率]は下がる傾向となる,との事.
言われてみれば,そりゃそうか.F1のタイヤが長らく変形し易い13インチだったのは,これが理由でしたものね.
( ´・д・)ン?
という事は,トラクションを稼ぐ目的でタイヤのスリップ率を意図的に上げるためには,タイヤの変形を減らせば良いという事? つまり,
タイヤの扁平率を小さくすれば良い
・・・って事なのかな?
以上,低扁平率の恩恵にもう1つ気づけた「μ-s特性」のお勉強でした.

(Best MOTORing 1992年5月号より)
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セッティング検討(タイヤ) | 日記
Posted at
2022/05/02 03:12:33