
年明け早々ですが,TC1000のファミ走へ行ったらTC2000の走行会に参加されていた(大)@みやう軍団さんが来られて,「ロガー乗せて!乗せて!」と手招きされ,コース上で17周分のデータが記録されたものが返ってきた後,「ブログを書くまでが走行会です!」と纏められてしまったので,書いてみる事にします.
まずコンディションですが,気温:9.7℃,路面温度:17.4℃,気圧:1018.7hPaのP3枠(13:40~)で,途中で清掃が入ったとは言ってもタイヤカスはかなり多い条件でした.
比較材料が特になく,枠1本分のデータしかないので,今回はLAP+を使ってTC1000を4つのセクターに区切り,タラレバベストから削り代を見てみます.
SCT.1 ・・・ スタートライン~ヘアピンの手前
SCT.2 ・・・ ヘアピン
SCT.3 ・・・ インフィールド~バックストレッチ
SCT.4 ・・・ 左高速~最終複合~ゴールライン
ロガーデータ上では9周目の40.68秒がベストだったようです(↓).
そして,セクターベストを繋いだタラレバベストがコチラ(↓).
40.52秒ですから,削り代は0.15秒といったところでしょうか・・・.
じゃあ,その0.15秒はどこか?というと,まず0.1秒分がSCT.1(スタートライン~ヘアピンの手前).
更にSCT.1のどこか?というと,1コーナーの立ち上がりのようです(↓).
セクターベスト(緑)である7周目に対して,枠ベスト(青)の9周目はワンテンポ再加速が遅かったようです.
じゃあ,なぜワンテンポ遅れたのか?というと,それは・・・,
分からん ┐(´ー`)┌
さすがに車載映像がないと難しいです(苦笑).無理くりロガーデータから読み取ってみると,1コーナーへのアプローチの際,枠ベスト(青)の方はほんのちょっとですがブレーキを緩める量が多く(↓),

(青線の方が僅かに速度が高い↑)
それによって進入速度が上がり,ほんの僅かなんですがアンダーステア気味になって,1コーナーへの切込みがワンテンポ遅れたようです(↓).

(青線の方が緑線よりも外側にきている↑)
多分,この違いはドライバーが気づけるレベルの差ではなく,タイヤのほんの僅かなグリップ差や操舵抵抗の差といった感じじゃないでしょうか? Gの変化を見ると,ブレーキのリリースタイミングはほぼ一緒なのが読み取れるので,ドライバーは同じ操作をしているつもり.でも,横Gの掛かり方がセクターベスト(緑)の方がほんの僅かにキツく,タイヤの限界を超えかかったかのように波打っていました(枠ベストの青の方はタイヤの限界内で波形がキレイ).
セクターベスト(緑)が7周目,そこから1周のクーリングラップを挟んで,枠ベスト(青)が9周目だったと考えると,もしかしたら(大)@みやう軍団さんは,7周目(緑)の感触から「1コーナーを攻め過ぎた」と感じ,そこからほんのちょっとだけ引いてアタックしたのが9周目(青)だったが,実際は攻め過ぎくらいがギリギリちょうど良かった,という事なのかもしれません.
次に残りの0.05秒分ですが,こちらはSCT.3(インフィールド~バックストレッチ)のようです.
更にSCT.3のどこか?というと,立ち上がりですね(↓).
セクターベスト(緑)の方が枠ベスト(青)よりもスムースに加速出来ています.
この差は何か?というと,こちらは明白でライン取りだと思われます(↓).
インフィールドの立ち上がりで,枠ベスト(青)の方がセクターベスト(緑)よりもタイトに立ち上がっており,あまり外側に流れていないのが分かります.枠ベスト時(青)にドライバーが意図的に舵を入れて外側に流さないよう操作したのか? それとも,セクターベスト時(緑)は操舵抵抗を増やさないように意図的に外に流したのか?は車載映像がないので,これまた分かりません(苦笑).ただ,ここも無理くりロガーデータから読み取ってみると・・・,
立ち上がりの手前,インフィールドの進入で枠ベスト(青)の方が若干突っ込み気味になっています(進入速度が高い&ブレーキングの開始が遅い).これにより横Gは枠ベスト時(青)の方が高くなっているので,もしかしたらこのラップ,(大)@みやう軍団さんは「もうちょっとクルマの向きを早く変えよう」と若干突っ込み気味にしてフロントの荷重を増やしにいったのかもしれません.その結果,確かにクルマの向きは早く変わり,立ち上がりの角度も浅くなって一直線に立ち上がってバックストレッチのスピードも伸びる・・・という意図だったのだと想像しますが,実際は向きを変えるのにタイヤのグリップを使い過ぎてしまい,立ち上がりでクルマを前に進ませるだけの余力が残ってなかった,という感じなんじゃないでしょうか?
という事で,纏めると,
・1コーナーはもうちょっとだけ攻めれた(攻め過ぎたくらいが本当の限界だった)
・インフィールドは進入で向きを変えるよりも,立ち上がりで外に逃がす方が速かった
・・・という感じでしょうか.いずれにせよ,両者共に重箱の隅をつつくような差でしかなく,(大)@みやう軍団さんが非常に繊細で,ドライビングのバラつきが少なく,1周毎に細かな微調整を行ってドライビングをしているのが読み取れます.いやはや,毎度データを見る度に思いますが凄い方ですね.
さて,これで一応ノルマは達成したと思うので,最後におまけ的に個人的に気になったポイントを1つ.
今回のデータを計測する前に,(大)@みやう軍団さんの走りを外から見ていたのですが,ヘアピンの立ち上がりが外から見ていて分かるくらい異常に速いのに驚かされました.
進入は今までと同様か,更に鋭くなっているくらいのスピードで飛び込んでいたので,「あの突っ込みじゃ,立ち上がりはワンテンポ遅れるだろうなぁ~」と予想して見ていたのに,立ち上がりでは,まるでタイヤのグリップを無視したかのようにグングンとクルマが前に進んでいくので,「なんだ,ありゃぁー!?」とびっくりしました.
「あれがSタイヤの性能なのか?」「タイヤの剛性が高いから,あんな限界域でもクルマが前に進むのか??」と思い,気になったので
(大)@みやう軍団さんの3年前の走行データと比較してみました(↓).
赤枠の部分がちょうどヘアピンの立ち上がりの部分なのですが,3年前(青)に対して今回(緑)の方がボトムが2.7km/hも高いにも関わらず,より早く加速して,最終的に4km/h近くスピードが伸びているのが読み取れます.
3年前のフロントは
多分205/50R16のA052,対する今回は215/50R16のA050です.サイズを比較してみると,
A052 205/50R16 ・・・ 外径:612mm 幅:214mm
A050 215/50R16 ・・・ 外径:622mm 幅:226mm
幅は215/50R16の方が太いですが,外径は205/50R16の方が小さいのでヘアピン~インフィールド間の短時間の加速では205幅の方が有利なはずです.しかし,それをモノともしないくらいのコーナリングの限界の高さ・立ち上がりのグリップ力がA050にはあったようです.
「A052のグリップはA050のMコンと同じ」なんて話はよく聞きますが,一部の人は「いやいや,A050の方が全然上」とも言います.この意見の違いはなんなのかなー?と以前調べた事があるのですが,どうやらドライビングスタイルの違いに起因していそうでした.
これまた以前
両者の構造の違いを調べた事があるのですが,A052はA050と比べるとショルダー部分の剛性が低いようです.つまり,コーナリング中にタイヤが潰れてグニャグニャするという事で,このグニャグニャを「グリップしてる!」と感じるタイプのドライバーは「同じ!」という意見寄りになり,反対にこのグニャグニャを「気持ち悪い・・・」と感じるタイプのドライバーは「違う!」という意見寄りになるように見受けられました.
グニャグニャを「気持ち悪い・・・」と感じるタイプのドライバーは,タイヤを潰す能力に秀でており,タイヤからの反力を感じ取りながら走る傾向があるようで,(大)@みやう軍団さんは,あの固くて全く温まらないタイヤで有名なHANKOOK Ventus R-S4を,真冬のサーキットでも苦もなく使うような方ですから,A050の高剛性が合っている(上手く使いこなせている)んでしょうね.いやはや,ホント外から見ていて呆気に取られるくらいの凄い加速力でした.
余談ですが,このショルダー部分の剛性を求めて,最近A052→RE-71RSに流れる人が多いようです.A052とRE-71RSは同じくらいのグリップと言われていますが,BSの特性でRE-71RSはショルダー部分の剛性が高いので,「RE-71RSの方がA052よりも高いグリップを引き出せる!」として,選ぶ人が増えているようですね.個人的には「ショルダー部分のその弱さも踏まえて上手く使えば,A052の方がRE-71RSよりも0.2秒速い(@TC1000)」と思っているのですが,いつか比較してみたいところです.
以上,分析結果でした.
最後は個人的に気になった事をツラツラと書いてしまいましたが,相変わらず「(大)@みやう軍団さんの技量はホント高けぇな~」と思わせられるデータ分析でした.一体車内でどんな操作をしているのか? 車載映像で是非とも見てみたいですね.映像に残すのがダメなら横に乗っけて頂ければ.機会があれば是非ともお願いします!