
SNSを眺めていたらランチア・ストラトスと軽自動車のABC(AZ-1・Beat・Cappuccino)を並べた画像が流れてきて,ホイールベースが2180mmと同じミッドシップのBeat(2280mm)より100mmも短い事を初めて知りました.これに2.4L V6(190PS)を積むんですから,そりゃジャジャ馬だよなぁ~と思いつつ,Gr.4仕様はリアに305/35R15を履いたそうで,こんなサイズがある事もびっくりですが,フロントと70mm近い太さの差がある事にもびっくりしたOXです.
さて,失火の問題が解消して1週間.その後のテストでも問題なく,安心しているのですが,今回のショップで行ったLINK ECUの設定変更の中で1個,理解が及ばない点がありました.
それが「P/S(パワステ)オイルプレッシャスイッチ」の設定.
スイッチなので「デジタル入力(電圧をHigh⇔Lowの2段階で判断する回路)」なのですが,ご覧の通り,設定項目の中に「プルアップ抵抗」と「Onレベル」の2つがあります.それぞれの意味は以下の通り(↓)で,
「プルアップ抵抗」というのは,スイッチが切れている時に電圧をHigh(約12V)とするか? Low(0V)とするか?という設定で,これは回路によります.もう1つの「Onレベル」というのは,電圧がHighの時にONと見なすか? Lowの時にONと見なすか?という設定で,これはスイッチの仕様によります.ON/OFFの2種類×2で合計4種類の設定が選べる訳なのですが,EF8の場合,この中のどの設定が正しいのか?というのが最初よく分かりませんでした.
まず,そもそも「P/Sオイルプレッシャスイッチ」って何?という点から始めると,これは読んで字の如く「パワステの油圧を見ているスイッチ」の事です.パワステの油圧配管の途中に付いていて(↓),
ステアリングを切ってパワステが作動し,その油圧(オイルプレッシャ)が一定値を超えるとスイッチが切り替わるようになっています.ECUはこのスイッチのON/OFFによる「電圧の変化」を元にパワステのオイルポンプが作動しているか?していないか?を判断していて,オイルポンプが作動するとエンジンの負荷が増えるため,それを補うように出力を増やす制御を行っています.

(TechEyesOnline:
パワーステアリングの進化 ~自動運転に欠かせない電動パワーステアリングより)
実はエンスト症状で悩んでいた頃,車庫入れでステアリングの据え切りをするとエンストする事がよくありました.何となく「パワステの補正が作動するのが遅いなぁ~」と思い,それを工場長に伝えておいたのですが,失火対策の調査過程で「その原因はP/Sオイルプレッシャスイッチの反応が鈍くなっている事」も突き止めてくれたようです.
なので,現在はそれを踏まえたECUの設定にしてくれているのですが,折角の機会なのでちゃんと回路を理解しようと思い,サービスマニュアルをお借りして読み解いてみました.
回路図上,「P/Sオイルプレッシャスイッチ」はこういう絵になっています(↓).
ECUが繋がっているのはスイッチの上流側(High側)で,スイッチが繋がる(ONになる)とGNDに落ちて,電圧がLowになる事が読み取れます.つまり,「P/Sオイルプレッシャスイッチ」の入力回路は「プルアップ回路(↓)」のようです.
なるほど,なるほど,という事はLINK ECUの設定は「プルアップ抵抗」をONにしないといけない訳ですね.
・・・だとすると,ここで1つ疑問が.
「プルアップ回路」の場合,スイッチがOFFだと電圧レベルはHigh,スイッチがONだと電圧レベルはLowになります.
それなのにLINK ECUの「Onレベル」の設定は「High」となっています.アレ? 逆では・・・??
おかしいなぁ~?と思い,今度は「P/Sオイルプレッシャスイッチ」のトラブルシューティングを読んでみます(↓).
記載されている事を纏めると以下のようです(↓).
P/SオイルプレッシャスイッチOFF → パワステを使ってない時 → 電圧はLow(0V)
P/SオイルプレッシャスイッチON → パワステを使っている時 → 電圧はHigh(12V)
えっ!? アレッ? コレって「プルダウン回路」の考え方では・・・??
ん~? どういう事だぁ~? 回路図で示されている事と真逆だぞ~? どっちかが嘘ついてるのかぁ~?と考えて,考えて,考えた結果・・・,
(゚ロ゚) ハッ!!
このスイッチ,ノーマルクローズか!!
「ノーマルクローズ」というのは,通常状態(つまりパワステを使っていない時)でスイッチがクローズ(ON)となるタイプのスイッチの事です.
今回の回路で言うと,パワステを使っていない時は「P/Sオイルプレッシャスイッチ」はON(繋がっている)状態になっていて,回路的にはGNDに繋がるため電圧としてはLowになります.この状態からパワステを使うと「P/Sオイルプレッシャスイッチ」はOFF(切れた)状態になるので,プルアップ抵抗でHighレベルに引っ張られるこの回路は,電圧としてはHighとなります.つまり,一般的なスイッチで思いつくON/OFFの特性とは逆って事ですね.
(ちなみに,通常のON/OFFの特性は「ノーマルオープン」と言います)
LINK ECUとしては「パワステが作動したらON」と判定したいので,上記の理屈からすると「Onレベル」の設定は「High」にしないといけないという事ですね.あ~,スッキリした(笑).
以上,「P/Sオイルプレッシャスイッチ」のお勉強でした.
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セッティング検討(ECU) | 日記
Posted at
2023/03/31 12:30:36