
週末に「カーボンナノチューブ」の話題が出たので軽く調べていたのですが,銅よりも電流が多く流せるのはともかく,高温でも電導度が維持出来るのは面白い特性だなぁ~と思ったOXです.
さて,足回りの仕様が固まってきたので次にやる事を考えていたのですが,そんな折に「固有振動数」の話を目にしました.こういう考え方がある事は以前から知っていたものの,イマイチ使い方(どういうシーンで,この数値をどう使えば良いか?)が分からないので流していたのですが,一度真面目に計算してみようかなぁ~と思いました.
以降は単なる自己満足なので,数式アレルギーの方はココでそっと閉じて下さい(笑).
まず,ターゲットとする「固有振動数」ですが,以下のようなイメージだそうです(↓).

(アネブル:
ダンパー講習会2022 全日本学生フォーミュラ向け講座!より)
基本的には「履くタイヤ」でレンジを考えれば良さそうな雰囲気です.
エコタイヤ ・・・ 1.0~1.5Hz
一般的なラジアルタイヤ ・・・ 1.5~1.8Hz
ハイグリップラジアル ・・・ 1.8~2.5Hz
Sタイヤ ・・・ 2.5~3.2Hz
スリックタイヤ(ツーリングカーレベル) ・・・ 3.0~4.1Hz
スリックタイヤ(フォーミュラカーレベル) ・・・ 4.0~5.0Hz
「固有振動数」はスプリングの話なので,直接タイヤは関係がないのですが(タイヤの縦ばねは除く),タイヤのグリップ(含むダウンフォース)でイメージするとレンジが考え易いです.上記の「Sタイヤ」は恐らくG/Sコンパウンドレベルなので,A052を履く前提だと「ハイグリップラジアル」のレンジ.ここでは仮に「2.1Hz」としてみましょうか.
次に「固有振動数」を求める式は以下です(↓).
[固有振動数] = √([推奨ホイールレート] / [スプリング1本に掛かるバネ上重量])/ (2 × [円周率])
これを変形させて,推奨スプリングレートを基準にします.
[推奨ホイールレート] = [スプリング1本に掛かるバネ上重量] × 4 × [円周率]^2 × [固有振動数]^2
ここで,[バネ上重量]なんて普通分からないので[軸重]に置き替えます.[軸重]は当然バネ下の重量も含みますので本来の値よりも大きくなります.このため,計算し終えた後「実際の数値は推奨数値よりも低くする事」と覚えておきます.また,[軸重]は車検証から引っ張り出せるので,これを1輪分に換算するために÷2をします.
[推奨ホイールレート] = ( [軸重] / 2) × 4 × [円周率]^2 × [固有振動数]^2
[推奨ホイールレート] = 2 × [軸重] × [円周率]^2 × [固有振動数]^2
更に,[ホイールレート]を[スプリングレート]に変換するのに[レバー比]が必要なので,
[推奨スプリングレート] / [レバー比]^2 = 2 × [軸重] × [円周率]^2 × [固有振動数]^2
これを変形させて,
[推奨スプリングレート] = 2 × [軸重] × [円周率]^2 × [固有振動数]^2 × [レバー比]^2
この式の[スプリングレート]の単位は[N/m]なので,慣れた[kgf/mm]にするために単位変換をして,ついでに[円周率]も3.14で計算を済ませてしまうと,
[推奨スプリングレート] = 2 × [軸重] × [円周率]^2 × [固有振動数]^2 × [レバー比]^2 [N/m]
[推奨スプリングレート] = 0.002 × [軸重] × [固有振動数]^2 × [レバー比]^2 [kgf/mm]
これで計算の下地が出来上がりました.
試しに計算してみましょう.
私のEF8は構造変更申請をする際,エンプティランプが点いた軽タン状態で計測したので,車検証の記載値=下限値となっており,この際の[軸重]は,フロント:640kg,リア:320kgです.[レバー比]に関しては,ここでは
EG6相当と考えて,フロント:1.5,リア:1.2とします.この状態で[固有振動数]=2.1Hz を想定した際の[推奨スプリングレート]は・・・,
[フロントのレート] = 0.002 × 640 × 2.1^2 × 1.5^2 = 12.7 [kgf/mm]
[リアのレート] = 0.002 × 320 × 2.1^2 × 1.2^2 = 4.0 [kgf/mm]
今使っているスプリングは前後共に12キロですので,フロントはイイ感じですね.リアは全然柔らかくて良い事になりますが,この数値は単なる上下動の話をしているだけなので,コーナリング中の前後バランスはまた別の話です.
さてと,ではここから色々条件を変えて試算してみます.
1つ目は燃料搭載量.私はサーキット走行中はほぼフルタンク状態なので,前述の[軸重]でコース上に出る事はありません.つまり,重タンの時の推奨レートは異なる訳なのですが,これがいくつくらいなのか試算してみます.
2015年にフルタンクの状態で計測した時の軸重はフロント:644kg,リア:337kgでした(↓).
今はこの時からもっと重くなっている気もしますが,EF8のタンク容量が45Lですから軽タン⇔重タンで差は40Lくらい,ガソリンの比重を0.75kg/Lとすれば,両者の差は 29.6kg,大体合ってる感じかな?と思います.そして,これで推奨レートを求めてみるとこんな感じでした(↓).
[フロントのレート] = 0.002 × 644 × 2.1^2 × 1.5^2 = 12.7 [kgf/mm]
[リアのレート] = 0.002 × 337 × 2.1^2 × 1.2^2 = 4.2 [kgf/mm]
EF8の燃料タンクの位置はリア寄りですので,フロントの変化がないのは想像出来るとして,リアも0.2キロアップに留まりました.たったの0.2キロの差ですので,私のクルマレベルでは燃料搭載量なんてほとんど気にしなくて良いという事が分かります(あくまでスプリングレートとしては・・・という話ですよ?).
2つ目はレバー比.ざっくりアーム長を450mmだと仮定して,ホイールのINSETを5mm外に出したとしましょう.
この場合,レバー比は約1%大きくなるので,これで試算してみます(フロント:1.51,リア:1.21).
[フロントのレート] = 0.002 × 644 × 2.1^2 × 1.51^2 = 12.9 [kgf/mm]
[リアのレート] = 0.002 × 337 × 2.1^2 × 1.21^2 = 4.3 [kgf/mm]
フロントで0.2キロ,リアで0.1キロ上がりましたが,結局これも誤差範囲内ですね.ざっくり計算でINSETを25mm変えたら1キロ上げないといけない計算になりますが,25mmのホイール変更ってFF⇔FRくらいの差がありますね・・・.
3つ目は固有振動数.タイヤをSタイヤに変更した場合を計算してみましょう(要求値:2.5Hz).
[フロントのレート] = 0.002 × 644 × 2.5^2 × 1.5^2 = 18.1 [kgf/mm]
[リアのレート] = 0.002 × 337 × 2.5^2 × 1.2^2 = 6.0 [kgf/mm]
フロントで5キロ,リアで2キロのアップとなるようです.さすがにタイヤが変わると大きく上がりますね.
(それでも18キロくらいかぁ~という気もしますが)
以上,「固有振動数」のお勉強でした.
纏めると「固有振動数」を使ったスプリングレートは,車重の変化を考慮した指標ですが,私のEF8の場合・・・,
・燃料搭載量で,レートの変更は考えなくて良い
・ホイールのINSET変更で,レートの変更は考えなくて良い
・Sタイヤ履いたら,5キロ以上レートを上げろ!
という事の裏取りが出来ました.はい,満足です(笑).
最後にちょっとしたお遊びを.今EF8には前後10キロのスプリングレートが入っているのですが,ここから逆に私が求めている「固有振動数」はいくつか?を計算してみます.
[固有振動数] = √([スプリングレート] / (0.002 × [軸重] × [レバー比]^2))
[フロントの固有振動数] = √(10 / (0.002 × 644 × 1.5^2)) = 1.85Hz
[リアの固有振動数] = √(10 / (0.002 × 337 × 1.2^2)) = 3.20Hz
フロントはチューニングカーとしては標準的(但し下限寄り)ですが,リアはレースカー並みですね(汗).
「固有振動数」の高い・低いは以下のようなメリット・デメリットがあるそうで(↓),

(EmperorD:
セットアップ講座 サスペンション編①より)
フロントは垂直荷重の変動が少なく,ロール・ピッチが大きい事を私は好むみたいですね(多少レスポンスが不足していても受け入れる).一方でリアは垂直荷重の変動が大きくても良いから,ロール・ピッチ(リフト)の変化をなるべく小さく,かつ レスポンスも良い事を好むようです.ここ最近の
中反発 vs 高反発の結果と一致する点が多々あり,納得出来ますね.
もいっちょ,リアの[推奨スプリングレート]が低い点に関して.現在使っているものから6キロ近く低いものが推奨されると考えると,「ツインスプリングにして合成レートで下げても良いのでは?」とも思いました.
メインスプリングが10キロだとすると,使えるサブスプリングのレートはいくつなんだろ?と調べてみると,

(Swift:
合成ばね定数早見表より)
6キロでした.サブスプリングとしては結構固いですね.現状のストロークに不満がないのなら,これを試してもあんまり意味がなさそうですね・・・.