先月発生したHANKOOKタイヤの工場火災で21万本のタイヤが焼失し,その中にはレース用タイヤが含まれているという話でした.
そのレース用タイヤには日本向けのものもあり,富士24時間を控える(=タイヤをいっぱい使う)スーパー耐久(S耐)に影響が出るのではないか?と噂されていましたが,予想通りHANKOOK供給困難→サプライヤ変更→
BRIDGESTONE(BS)供給という流れになりました.
既に2024年からはBSがS耐にタイヤを供給する事は発表されていましたが,「これはきっと布石だろうなぁ~」と思っていたら案の定な結果となりました.
とはいえ,準備期間はたったの1ヵ月.この少ない時間でGT3車両~コンパクトカーまで履ける多種多様なスリックタイヤをBSはよくも揃えられたな・・・と思ったら,なんとST-4(排気量1501~2400ccの2輪駆動車クラス)・ST-5(排気量1500cc以下のクラス)は「(スリックタイヤの供給目途がつくまで)POTENZAの市販ラジアル(RE-12D or RE-71RS?)を使う」のだそうです(それ以外のクラスはスリックタイヤを供給).
つまり,「スリック前提のS耐車両がラジアルタイヤを履いて走る」という事で,これはちょっと面白そうな話です.
何が面白いか?というと,スリック⇔ラジアルでどれくらいのタイム差があるのか?という点と,RE-12DやRE-71RSが果たして国際サーキットの耐久レースでもつのか?という点が窺い知れるからです.
1点目の「タイム差」に関しては,例えば富士スピードウェイにおけるST5クラスのコースレコードはこれくらいで(↓),
いかにレース専用車両とはいえ,排気量1500ccのクルマが2分5秒切りってとんでもないタイムな訳ですが,これがスリックタイヤによるものなのか? クルマのポテンシャルによるものなのか?がラジアルタイヤを履く事で窺い知れそうです.
2点目の「耐久レースでもつのか?」に関しては,「RE-71RSは摩耗が半分を超えるとガクッとタイムが落ちる」というガケのあるタイヤだそうなので,その辺りが本当なのか?を窺い知れそうです(RE-12Dはスプリントレース用のタイヤであり,ST4クラスの主力はGR86であるものの,現在のGR86/BRZ Cupの指定タイヤからRE-12Dが外れている事もあって使わないんじゃないかなぁ~?と個人的には思っています).
さて,そのST-4・ST-5ですが,どんなクルマが出ているのか?と調べてみると,
【ST-4】
・GR86
・ロードスターRF
【ST-5】
・フィット
・デミオ
・ロードスター
・ヤリス
といった車種のようです.個人的にはEF8に近いのでST5車両がやはり気になりますが,これらの車種が履いているタイヤ&ホイールのサイズは?と調べてみると,
【ST-4】
タイヤ ・・・ 235/620-17
ホイール ・・・ 9.0J-17
【ST-5】
タイヤ ・・・ 190/570-15
ホイール ・・・ 7.0J-15
との事でした.スリックタイヤのサイズ表記は「タイヤ幅/直径-ホイールサイズ」なので,これに該当しそうなRE-71RSを調べてみると,
この2サイズですかね? 値上げ直後なのでオーダーは落ち着いているとは思いますが,恐らくこの2サイズは今BSが全国からタイヤを搔き集めている気がするので,このサイズを使われている方は急いで確保に動いた方が良いかもしれませんね(笑).
最後に,タイヤサイズを調べるのにS耐の技術規則を探したのですが公式のサイトでは見当たらず,
GAZOOのサイトから情報を得ました.ここでは丁寧に規則が纏められていたので,改めて読み返してみたのですが,へぇ~と思う部分があって新鮮でした.
例えば,車両重量は型式毎に定められていたり(↓),

(GAZOO:
スーパー耐久ルール解説Vol.3 レース車両のパーツや車体の規定、タイヤ、燃料、車検などを解説より)
マニュアルミッションを搭載するために、同一車種のオートマチック車両の車体を使用することが許され、当該車体を最小限の範囲で改造してもよい
→ 同一車種なら輸出設定のみのマニュアルミッションを持ってきても可なのかな?
燃料ポンプは電動への変更が可能。エンジン稼働中のみに作動すること
→ キーONでポンプ回して与圧掛けちゃダメって事?
ピットレーン制限速度を自動的かつ電気的に制御するリミッター機能を備えていなければならない
→ 市販車ベースでこれってなかなかハードル高くない?(クルーズコントロール使うの?)
ホイールのオフセットは自由。スペーサーは禁止
→ FF車は前後でオフセット変えてるのかな?
・・・等々,レギュレーションをどう解釈し,どう改造しているのか?が結構気になりました.
あと中でも,これどうやって車検すんだ?と思ったのが,この規定(↓).
最低地上高として、車両の前後、または左右 1つの側面のタイヤの空気が抜けた際にも、車両のいかなる部分も地表に接してはならない
耐久レースで起こり易いパンクを想定した規定なんでしょうが,何mmじゃなく,「1本パンクしても路面と擦れない事」という考え方が面白いですね.
以上,S耐車両がPOTENZAを履くと聞いて,ふと思った事でした.
【2023.04.27追記】
ST-Q/ST-4クラスには,235/40R17のRE-12Dが供給されたようです.
ブログ一覧 |
セッティング検討(タイヤ) | 日記
Posted at
2023/04/25 19:32:01