こもりん.さんがダクトのアップデート を行っているのを見て,「そういえばダクトって,凹型と凸型はどっちが性能良いんだろう・・・?」と気になりました.
気になったら調べずにいられないのが性分なので(笑),早速調べてみると,凹型の代表格としてやはり「NACAダクト」が出てきたのですが,これに対する凸型の代表格は何だろ?と思ったら,「エアスクープ」でした.
「NACAダクト」というのは,こういう形状(↓)のダクトで,
NASAの前身である「National Advisory Committee for Aeronautic(アメリカ航空諮問委員会)」で開発されたダクトだから「NACAダクト」なのだそうです(ちなみに,私はコレを「ナ・カ・ダクト」と読んでいたのですが,正しくは「エヌ・エー・シー・エー・ダクト」と読むのだそうです).
一方の「エアスクープ」は,こういうヤツ(↓)ですね.
両者の違いをざっくり言うと以下だそうです(↓).
NACAダクト ・・・ 空気抵抗(ドラッグ)が小さいが,流入量も少ない
エアスクープ ・・・ 空気抵抗(ドラッグ)が大きいが,流入量は多い
そして,もう1つこんな特長もあるのだそうです(↓).
NACAダクト ・・・ 低速域では機能しない
エアスクープ ・・・ 低速~高速まで安定して機能する
なので,低速域が中心で車速を問わず冷やしたいラリーカーでは「エアスクープ」,高速域が中心でドラッグを気にするル・マンカーでは「NACAダクト」を用いる事が多いのだそうです.
ふむふむ.なんとなくは分かりましたが,もう少し原理的な情報がないかなぁ~?と調べてみたところ,CFD(Computational Fluid Dynamics)で比較しているサイトを見つけました.これを意訳しつつ読み解いてみると,
(XPLR//CREATE:
NACA Duct vs. Scoop より)
「エアスクープ」は多かれ少なかれ空気を開口部に「押し込む」のに対し,「NACAダクト」は独特の形状によって低圧域を作り出し,空気を「吸い込む」という違いがある.両者の風量を比較すると「エアスクープ」の方が吸入量は多い.
(XPLR//CREATE:
NACA Duct vs. Scoop より)
つまり,「NACAダクト」は「エアスクープ」の約半分しか吸い込めないという事だが,これイコール「エアスクープが優れている」とはならない.「エアスクープ」はより多くの空気を押し込む事が出来るが,気流を乱し,ドラッグを発生させるからである.
(XPLR//CREATE:
NACA Duct vs. Scoop より)
なるほど,なるほど.これでメカニズムは大分理解が進みました.やはり「エアスクープ」の方が「流入量は多いが,ドラッグも大きい」で間違いないようですね.まぁ,形状から想像すれば当たり前と言えば当たり前な気もするので,もう少し「NACAダクト」の方の理解を深めみようと調べてみたところ,こんな解説を見つけました(↓).
VIDEO
「NACAダクト」は,元々「エアスクープのドラッグを減らしたい」というニーズから生まれたそうで,使いこなすには色々と制約条件があるそうです.
1つ目は,入口に段差を設けない事.
入口に段差があると,それで渦が出来てしまい,狙い通りに空気を吸いこめないのだそうです.
2つ目は,取り込み口の上部に丸みを持たせる事.
丸みをもたせず,単なる先の尖った開いたにすると,それで渦が出来てしまうのだそうです(↓).
3つ目は,取り込み始めのサイド形状は切り立った形にする事.
これによって,下に引き込む渦を作り,真ん中部分で吸い込む流れを作れるためだそうです.
4つ目は,取り込み口の周辺は逆に形状を滑らかにする事.
これによって,取り込み口周辺は渦をなくし,気流がなるべく中央に集まるようにするのだそうです.
こういった機能を確実に発揮させるために,寸法に対しては以下のような注意点があるそうです.
・ダクトの開始点は,ダクトの横幅の2倍の距離を取る
・取り込み口はなるべく深くし,剥離が起きないようになだらかにする
・ダクトの深さは,ダクトの横幅の1/5は必要
なお,「NACAダクト」は吸入口としての用途以外に,排出口としても使う事ができ,ディフューザー下面等に使うと効果的なんだそうです(↓).
以上,「NACAダクト」のお勉強でした.
昔のスポーツカーは「NACAダクト」をよく使っていましたが,最近は見ないなーと思ったら,こんな違いがあったのですね.きちんと使いこなすにはそれなりの知識が必要なようですが,上の画像のように現役のレーシングカーでも使われていますし,適材適所で使えば効果的なんでしょうね.
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セッティング(空力) | 日記
Posted at
2023/05/07 00:24:23