
最近,別々の人から「最初の計測1でタイムが出せない・・・」と相談を受けたのですが,私自身もここのところ計測2がベストタイムになっている事もあり,「別に気にしなくて良いんじゃないですか? 計測1の結果をフィードバックして,計測2,計測3・・・とタイムを徐々に縮められるなら,それで問題ないと思いますよ」と答えていました.
実際問題として,その日のタイヤのグリップが掴めていない状態でTC1000の1コーナーに飛び込むのは勇気がいりますし,もし失敗したらイリュージョン(↓)をかますリスクもありますからね・・・.

(フロントタイヤが温まっていない→ハイスピードブレーキング→ブレーキロック→コースアウト・・・)
ただ,計測1でタイムを出せた方がカッコイイのは間違いなく(笑),またも計測2がベストタイムとなった
今回の走行を振り返って,私は計測1のどこでビビっているのか?を確認しておこうと思います.
では早速,ロガーデータを比較(青:計測1 赤:計測2).
公式のタイムでは,計測1が41.819,計測2が41.516と0.3秒の差がありました.ロガーデータで差が開くポイントを見てみると,1コーナー・ヘアピン・インフィールドとそれぞれブレーキングするポイントで0.1秒ずつ遅れていました.その一方で,洗濯板~最終複合では遅れはないので,感触の分からない序盤のブレーキングでビビってる可能性が高そうです.
細かく見ていきます.まずは1コーナー.
進入のブレーキングの開始ポイントは両者変わらないのですが,その後の踏力コントロールで差が出ています.計測1(青)は同じ踏力でブレーキを踏み続けているのに対し,計測2(赤)は100km/hを切った辺りから踏力を弱めているようです.ボトムスピードは両者とも87km/hで大差ないので,この僅かな進入速度の違いが0.1秒の差を生んでいるようですね.
この時の車載を比較してみると(↓),
計測1(上)より計測2(下)の方が,思い切ってステアリングを切り込んでいるのが分かります(舵角が大きい).計測1は「リアが滑るかな? 滑らないかな?」と探っているせいで思い切って切り込めず(→結果,ブレーキが残る),フロントタイヤのグリップを若干余らせているという事なんでしょうかね?
最初ロガーデータを見た時はブレーキングでビビって突っ込めていないのかなぁ~?と思っていたのですが,ブレーキではなく,ステアリングを切る方でビビっているようですね・・・.ここはリアタイヤのグリップを信じてエイッ!とステアリングを切り込む勇気が大事って事のようです.
続けてヘアピン.
ここは計測1(青)の方がボトムが低いのが原因のようです.先程と同様に車載を確認してみると,最初の90°辺りまでは操作は変わらないのですが(↓),
そこから先の90°(90~180°)の切込み(↓)が,計測2(下)の方が早いようです.
ブレーキのリリースを完全に終えて,ちょうどブレーキもアクセルも踏んでいない状態の時(タイヤの横のグリップをMAXで使っている時)に,計測1は切り込むのを躊躇しているのに対し,計測2はスパッ!と切り込んでいるのが違いのようです.計測1は,切り込むのが遅れている→向きが変わるのも遅れる→切っている時間が長い→操舵抵抗が多い→失速・・・という図式なんでしょう.
となると気になるのがタイヤのグリップ.1コーナーと違い,ヘアピンは勇気をもって飛び込むコーナーではなく,タイヤのグリップと相談しながら切り込むコーナーなので,ここでドライバーがビビっている可能性は低いです.
だとすると,計測1の方はタイヤのグリップを探りながら切り込んだ結果,「まだ切り込めない!」と判断して切り込むのを止めた可能性が高く,それに対して計測2では「切れる!」と感じてスパッと切り込んでいるのかもしれません.だとすると,CR-Sの特性(ウォームアップが遅い)が影響している可能性がありそうです.
最後にインフィールド.
ここもボトムの差が大きいですね.同様に車載を確認してみると,ヘアピンの時と一緒で90°くらいまで(↓)は同じ舵角であるのに対し,
そこから先,90~180°の領域(↓)でやっぱり計測2(下)の方が早く切り込めています.
ここもフロントタイヤのグリップを感じながらステアリングを切り込む箇所なので,計測1の時点ではまだ完全にタイヤに熱が入っておらず,反応が鈍いという可能性がありそうです.
だとすると,最終コーナーの立ち上がりで実は計測1(青)の方が微妙に早くアクセルを開けられている事とも辻褄が合いそうで(↓),
つまりは,計測1の最終複合くらいでCR-Sがピークグリップを発揮する達する温度に達し,それを使って計測2の1コーナー~インフィールドまでは高いグリップを発揮出来るものの,計測2の最終複合辺りまで来ると逆に熱が入り過ぎて,グリップの低下が始まった・・・という事なのかもしれません(実際,計測3は41.7秒と0.2秒タイムが落ちてます).これらを踏まえると最近計測2がベストラップとなった原因は,「ドライバーのビビリ全て!」とは言い切れなさそうですね.
以上,計測1のどこでビビっているのか?でした.纏めると,
・計測1の1コーナーは確かにビビってる
・ビビるポイントはブレーキの突っ込みではなく,ステアリングの切り込み
・1コーナーを過ぎた後は,タイヤのグリップと相談しながら走っているのでビビりはない
・ヘアピン~インフィールドが遅いのはCR-Sのタイヤ特性のせい
という事のようです.これからの時期は路面温度は高くなる一方でしょうし,リアタイヤのウォームアップで苦しむ事もないでしょうから,1コーナーはタイヤを信じて勇気をもってステアリングを切り込むよう心掛けたいと思います.
一方,CR-Sの特性の方に関しては,計測1に入る直前の半周(1コーナー~インフィールドの区間)をそこそこのペースで飛ばしてタイヤに熱を入れ,バックストレッチ~洗濯板の区間はソォ~っと入って熱を入れ過ぎないようにした状態で計測1に入ると,タイヤのピークグリップに合わせ込めそうです.なお,このやり方は路面温度が27℃の時のやり方なので,これよりも路面温度が高ければ短めに(ヘアピン~インフィールドの区間だけ?),低ければ長く(1周丸々?)ウォームアップに使う等,条件に合わせて微調整する必要がありそうです.
いずれにせよ,CR-Sはコースインの翌周(1周目)にアタックに入るのではなく,コースインして1周ウォームアップラップを挟んだその翌周(2周目)にアタックに入るやり方が良さそうですね.ま,CR-Sを再び使う日はもう二度と来ない気もするのですが(笑),覚書としてこの情報を残しておこうと思います.