
JMSネタも終わったので,少し時間軸を戻して
ナリモネタで1つ触れていなかった話を.
先日のナリモはジムカーナ形式だったので,コースインから計測開始のラインまでの間を1速で引っ張って全開加速をしていました.通常のサーキットではピットからコース合流部に行く前に2速にシフトアップしてしまうので,これまで1速でアクセルを全開にする経験はなかったのですが,今回初めてやってみて1つ面白い体験をしました.
それは,ハイカムに入った瞬間にグイッ!と前に引っ張られる感覚です.
「VTECなんだからハイカムで加速感が増すのは当たり前じゃん!」と仰るかもしれませんが,2速で全開で踏んでる時には,VTECが切り替わっても加速感が変化するような事は感じませんでした.ここまで明確に違いを感じたのは今回が初めてです.
体感なので,厳密に何rpmから加速感が変わったのか?は分からなかったのですが,先日ロガーデータを見返していたところ,数字でもくっきりとその変化が現れていました(↓).
上が車速,下がLAP+の簡易計算機能(算出方法は下記を参照)で求めた出力です.赤丸で囲んだ箇所で急激に出力が増しているのが分かると思います.この時の回転数を車速から割り出したところ,やはりVTECの切替えポイントと一致していました.
【簡易的な出力計算方法】
[出力(PS)] = ([車速(m/s)] × [車重(kg)])× [加速度(m/s2)] / 735.5
加速感が増したポイントは,私のB16Aがちょうどトルクが盛り上がる辺り(↓).
ここで約2kgf・m近いトルク変化が生じる訳なのですが,「なるほど,これくらいトルクが変化すれば体感出来るんだなぁ~」と思いました.
この体感により,改めてトルクバンドの重要性を認識する事が出来たので,ここを外さない(この回転数以下にしない)車速レンジってどうなるんだろう?と気になったので調べてみました(↓).
縦軸がギヤ,横軸が車速.オレンジ色がサーキットで主に使っている各ギヤのレンジ,赤色は先程のトルク感が増した回転数領域を大まかに示したものです.
これを見ると各ギヤの最低速度(ボトムスピード)は結構引き上げないとダメなんだなぁ~と思いました.例えば,TC1000のヘアピンだと50km/hを下回ってしまうのですが,それだと立ち上がりでパワーバンドに入るまでに結構な時間(20km/h分の加速時間)が掛かるのが読み取れます.下手をすると1速に落とした方がパワーバンドから外れず,速くなる可能性すらありますね.同様に3速でも70km/h台まで落ちる場合は2速に落とした方が立ち上がりは速そうです.
無論,シフトチェンジによるタイムロス(大体0.1~0.15秒)があるので,パワーバンドを外さないからと言って,なんでもかんでも下のギヤで走れば良いってものでもありませんが,やっぱり現状よりもボトムスピードを引き上げる事を心掛けた方が良さそうだなぁ~と改めて思いました.
さて,ボトムスピードの重要性を感じたところで,現在の状態が気になったのでちょっと試算をしてみました.
題材にするのは,先程も出てきたTC1000のヘアピン(↓).
ここのボトムスピードが 47.8km/h なので,例えば,これを50km/hに引き上げるにはどうすれば良いのか?を考えてみます.
まずはデータの整理.

(自動車を物理する:
車重と荷重とグリップの関係より)
車重 ・・・ m = 980 + 60 = 1040 [kg]
車速 ・・・ v = 47.8 [km/h] ≒ 13.3 [m/s]
半径 ・・・ r = 16 [m]
上記からヘアピンで生じている遠心力を求めると,
F = 1040 × 13.3 × 13.3 / 16 = 11497 [N] ≒ 11.5 [kN]
車速50km/h未満の領域なので,ダウンフォースは全く発生していないと仮定すると,この遠心力 11.5kN に対して205/50R15のA052で出せるグリップ(向心力)の限界が,これくらいという事になるかと思われます.
では,このボトムスピードを50km/h(13.9m/s)まで引き上げるのに,何kg軽量化すれば良いのか?を求めてみると,
m = F × r / v^2 = 11500 × 16 /(13.9 × 13.9)= 952 [kg]
現状の車重(ドライバー込み)が1040kgなので,約90kg軽くしないとダメって事ですね(汗).遠いなぁ~.
じゃあ,別の見方として,ボトムスピードを50km/hで旋回するのに必要なグリップ(向心力)を求めてみると,
F = 1040 × 13.9 × 13.9 / 16 = 12558 [N] ≒ 12.6 [kN]
205/50R15が 11.5kN なので,約10%グリップを上げないといけない試算になりますね・・・.
仮にタイヤの幅の分だけ線形的にグリップが上がると仮定して,205/50R15の幅が214mm,225/50R15が233mmだから,
233 / 214 = 1.089 (約9%)
つまり,単純に225幅を履いたとしても届かない,という試算になるんですね・・・.
以上,1速での全開加速から学んだ改良点でした.
う~む,やっぱり根本的にOUT側のタイヤに掛かる負荷をもっと減らさないと,狙いのボトムスピードには到底達する事が出来ない事が良く分かりました.これ以上キャンバーを寝かせるのはブレーキングで苦しくなるので避けた方が良さそうですし,はてさてどうしたものか・・・.
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Posted at
2023/11/06 00:05:45