先週の日光で試してどうやら失敗に終わった感のある「
フロントアッパーアームブッシュのピロ化」.
とにかくクルマが曲がらなくなった印象で,ステアリングの舵角も大分増えてしまいました.走り始めは「これじゃタイムも出ないよー」と苦戦していたのですが,セットアップを微調整して,クルマの動きにドライビングを合わせ込んでいった結果,最終的にはS3以外は前回(10月)と同等のタイムに達する事が出来ました.
日光って,ホントこの辺りは「なんとかなるサーキット」なのですが,多分「なんともならないサーキット」の代表格であるTC1000では,きっとメタメタになるのと思われるので,ダメ出しをしに行きたいところなのですが,ボールジョイントが破損してしまったので当面走れないので,頭の中で対策を練ってみる事にします.
まず,ピロ化した狙いは「キャンバー角の安定化」でした.
コーナリング中,タイヤに力が加わると上図のようにアッパーアームに力が加わると思われ(赤矢印),アッパーアームの付け根にあるブッシュが引っ張られる事になります(青矢印).この際,いくら強化品とはいえ,ブッシュはブッシュなので伸び縮みしてしまう事から,コーナリング中にアッパーアームが動いてしまい,それに引きずられてキャンバー角も変化してしまうため,ピロ化して固定してみよう!という事になりました.
実際,ピロに交換してアライメントをとってみたら,フロントのキャンバー角が減った(立った)ので,ゴムによる撓みの量は大分あったようです.
そして,実際に走行してみると,とにかくフロントが入らない印象が強まりました.
特にブレーキングして入っていく低速コーナーでノーズの入りが悪く,ステアリングを更に切り足さないとクルマが曲がりませんでした.「これだと,さぞ遅いんだろう・・・」と思い,前回(10月)の走行時と比較してみたのですが,意外とそこまで遅くはなく,舵角が多い分だけ確かに車速の伸びは鈍ってますが,逆を言えば「車速を落として切り足せば,同じように曲がれている」事も分かりました.
この比較結果から,クルマの絶対的なコーナリング性能云々の話ではなく,実はステアリングレスポンスの問題なのでは?と思い,ブレーキングをしないで曲がれる高速コーナーを見てみたところ,
こちらの舵角は,ほとんど変わっていない事に気づきました.
これらの結果から,ブレーキングして前傾姿勢になった際に何か問題が起きているのでは?と思い,ショップに相談してみたところ,「ロアアーム側が動いているのでは?」という見解をもらいました.
アッパーアームのみピロ化した事で,アッパーアーム側は確かに動かなくなった(赤矢印の力に対して青矢印で対抗するようになった)が,ロアアーム側はゴムブッシュのままなので負けて動いてしまい(緑矢印の方向),結果,キャンバー角が減る(立つ)方向になって,このロアーアームが左右方向に動いている間はフロントが反応しないようになったのではないか?と.
このため,対策として「ロアーアームブッシュのピロ化」を提案されたのですが,そもそも今回上下セットでピロ化しなかった理由は「EF世代でフルピロ化するとボディがもたない」と言われたためで,「どこか1箇所ゴムの部分を残して,力を逃がせるようにした方が良い」とアドバイス頂いたため,アッパーだけピロ化しました.なので,「それを言うのはナシでしょ~」と即座に返しました(それだったら,アッパーをゴムブッシュに戻して,ピロは痛い勉強代だったと思った方がマシです).
なので,このアッパーアームの動きに合わせてセットアップをし直す事を相談したのですが,出てきた策は2つ.
①キャスターを立てる
②トーを閉じる
いずれもステアリングレスポンスの向上策としては納得なのですが,キャスターはこれまでイジった事がないので,どういう特性になるのかイマイチ想像出来ません・・・.

(キャスター単体の効果は理解していますよ.私が言っているのはキャンバー・トーへの影響の話です)
ショップ側も「ブレーキング時となると,一概にキャスターを立てるのが正解とも限らない(立て過ぎになる可能性もある).やっぱり現場で立てた場合・寝かせた場合の両方をテストしてみないと・・・」という返事でした.確かにピロ化によって,アッパーが前後方向に動かなくなった結果,キャスターの動きも変わっている可能性があるので,それも一理あります.
う~ん・・・困ったなぁ~という事で,一先ずトーの方からイジってみようと思い,過去のブログを読み返しています.
(
コチラと
コチラ)
さて,セットアップ変更を何かしら試してみるにしても,根本的にダメなものはどう誤魔化してもダメなので,アームに掛かる力を正しく理解すべく色々調べてみました.その結果,「実は全然違う動きをしているのかもしれない・・・」という話を見つけました.
コーナリング中,タイヤに対して横方向に力が加わる訳なのですが,素直に考えるとアッパー・ロアーの両アームにも同じ方向で力が加わりそうに思えます(↓).
ところが,その道のプロに言わせるとそうではなく,ダブルウィッシュボーンの場合,アッパーとロアーでアームに掛かる力の方向は逆なんだとか.最初言われた時は「???」と理解が出来なかったのですが,支点・力点・作用点で考えてみると,なるほど確かにそれは有り得そうです.
タイヤとロアーアームの位置関係は並行ではなく角度がついているので,コーナリング中タイヤが奥に押し込まれる方向に力が加わると,ロアーアームは逆に手前側に引っ張られるそうです.そして,ロアーアームとアッパーアームも並行関係ではなく角度がついているので,ロアーアームが手前に引っ張られると,アッパーアームは逆に押し込まれるのだそうです.
これを力学的に見ると,
[ロアーアームに掛かる力] = [タイヤに掛かる力] + [アッパーアームに掛かる力]
なんだとか.つまり,ロアーアームはタイヤとアッパーアーム両方分の力に耐えているのだと・・・.
( ・_・) ン?
という事は,「キャンバー角を維持するためにピロ化した方が良いのは,アッパーではなく,むしろロアーの方なのでは・・・? 」なんて思いました.
以上,アームに掛かる力を考えてみるでした.
ちなみに上記の力学を解いていくと,以下の事も分かるのだそうです.
①アッパーアームはロアーアームより力が掛からない(強度を落とせる)
②路面とロアーアームの付け根の距離を近づけるとロアーアームに加わる力は減る
③ロアーアームの付け根とアッパーアームの付け根の距離を広げる事でも②と同じ効果が得られる
故に,ダブルウィッシュボーンにおいては,ロアーアームはなるべく低い位置,アッパーアームはなるべく高い位置に取り付けるのが常識で,その常識を理解している人間ほど,近代のフォーミュラカーのロアーアームの位置の異常さ(↓)がよく分かる・・・との事でした.
サスペンションの動きを理解するのって,ホント難しいですね.