
タイムを出すのに苦労した事もあり,イマイチしっくり来なかった
先日のTC1000ですが,リアスプリングのレートアップ(12キロ→14キロ)で良くなっている部分もある事はあるので,一応ロガーデータで比較しておこうと思います.
まずはコンディションの確認.
前回 ・・・ 気圧:1014.5hPa 気温:20.8℃ 湿度:67%
今回 ・・・ 気圧:1004.8hPa 気温:27.8℃ 湿度:74%
今回の方が気圧が10hPa低く,気温も7℃高いため,大体2%(≒3.6PS)くらいパワーダウンしていたようです.懸念となっていた湿度に関してはお昼ごろだと74%程度まで下がっていたので,それほど差はなく,これが午前最後の枠で41秒台に入れられた理由なんじゃないかと思います.
続いて,サンプルとなるデータは以下の通り.
【前回(41.648)】
【今回(41.938)】
先月作った
TC1000のタイムマップ(↓)に当て嵌めてみると,
過去実績で0.6秒くらい落ちそうなところを,0.3秒落ちに留めているようなので少しは速くなっているのかも??
それでは材料が揃ったところで,ロガーデータを見てみましょう(緑:前回 青:今回).
上が車速,下がタイム差ですが,コースの前半部分(ヘアピンまで)はほぼ互角で,コースの後半部分(インフィールド立ち上がり以降)で一気に引き離されて0.3秒の差がついたようです.インフィールドの立ち上がり以降はこのコース一番のパワーセクションでもありますので,やはり2%のパワーダウンの影響が大きいのかな?と思いました.実際,各コーナーの終端速度を見ると,軒並み今回(青)の方が低いですし,それを裏付けているようにも思えるのですが,そんな中で唯一前回(緑)と同等の車速に達しているヘアピン進入が注目点となりそうです.
では,細かく見ていきます.
1~2コーナー
1コーナー進入(1つ目の赤丸)の速度は前回(緑)よりも3km/h低く,やはりコンディション差によるパワーダウンが顕著なようです.気になるのはその次の2つ目の赤丸の部分.今回(青)の方が僅かに速度低下が鈍っており(=ブレーキ踏力を緩めている),これはどこなのか?と車載で確認してみたところ1コーナーの縁石に入る手前でした(↓).
ステアリング操作を見ると,ここでほんの僅かながら舵角を戻している(カウンターを当てている)ので,リアが流れ過ぎたのを感じてブレーキの踏力を抜き,リアに荷重を戻そうとした結果だと分かります.つまり,進入速度が3km/hも低い状況でブレーキングしているにも関わらず,リアが出そうになっている(インリフトし掛けている)という事で,バネレートアップによってリバウンドストロークが減り,それが挙動に影響を及ぼしている事が確認出来ます.
ただ,そこから先,1コーナーのエイペックスを抜けて加速体勢に移ると,アクセル踏み始めの初期はクルマが多少暴れてはいますが(3つ目の赤丸),タイヤのグリップに余力が出てくると一直線に加速していくので(最後の赤丸),コーナリングスピードは確実に今回(青)の方が速そうです.これがこの先のヘアピンで前回(緑)と同等の速度を出せている要因と思われます.
ヘアピン
前回(緑)と同等の進入速度でブレーキングを開始し,ボトムスピードもラインも同等であるため,ロガーデータ上はヘアピンは何も変わっていないように思えるのですが,減速の過程を見てみると,僅かながら今回(青)の方が減速度が大きい事が確認出来ました(↓).
乗っている時も「ヘアピンで止まらないなー」という感覚があったので,ブレーキ踏力を緩められなかったのは事実で,実際に止まっていない事も確認出来ました.この要因として思いつくのは,レートアップによるリバウンドストロークの減少で,リアタイヤが浮き気味になって(↓),トータルの制動力が落ちているため止まらないんだろうと思います.
じゃあ,ヘアピンではリアのレートアップはデメリットなのか?というとそんな事はなく,立ち上がりで前回(赤)よりも小回り出来ています(↓).
先述の通り,進入のライン取りは同じ,ボトムスピードは同じであるのに,立ち上がりで小回り出来ている(アンダーステアが出ない)というのは,リアのレートアップによって後傾姿勢が抑えられているためと思われ(↓),
立ち上がりを重視するなら,やはりこちらの方向なんだろうと思います.
インフィールド
ここは今回の変更でとにかくよく曲がるようになりました.ロガーデータを見てみても,
進入速度が若干低いですが(左側の赤丸),ボトムスピードは2km/h上がっており(右側の赤丸),何よりアクセルを開け始めた初期でクルマが横に流れる事なく,しっかりとトラクションが掛かって前に進んでいる点が素晴らしいです.それなのに,この先のバックストレートで前回(緑)から遅れをとってしまっているのが悲しい点で,もうちょっと気圧の高い条件で再度確認してみたいところですね・・・.
ちなみに,前回のブログで「スピン覚悟の万歳アタック(気合と根性)」と言いましたがそれがちょうどこの部分を指していて,ボトムを2km/h上げるためには横Gが「1.1」を超える状態をずーっとキープしてコーナリングする必要がありました(↓).
正直これだけキープし続けるとあんまり生きた心地がしないので(苦笑),「もう一回やれ!」と言われても正直やりたくないコーナリングなのですが,このレートでタイムを出すためには,ここまで追い込まないとダメなんでしょうね.まぁ,確かに前後共にレートが上がったおかげで,過去にこのコーナリングにチャレンジした時よりはクルマの姿勢は安定していてコントロールし易かった(=ムリが効いた)のですが,それでもここぞの1発を狙う時以外はやりたくないなぁ・・・と内心では思います.
左高速コーナー
ここは先述の通り,パワーダウンで全然車速が伸びていない訳なのですが,左高速コーナーで横Gが前回(緑)よりも高い値を示しているのに(↓),
ライン的には,まるで切り遅れたのようにアンダーステアが出ているという(↓),
ちょっと不可解な現象が起きています.横Gが出ているという事は旋回速度が上がっていそうですが実際の車速は低く,車速が低いならアンダーステアも出ないだろうと思いきやラインは膨らんでいる・・・という,よく分からないデータです.考えられるのは横Gが大き過ぎてフロントタイヤが限界を超えてしまっている事くらいですが,この舵角(↓)でそれが起きるかなぁ~?
ここは,次回タイヤを新品にして再チェックですかね.
最終複合
ここはレートアップで姿勢変化が減少したので,アクセルOFFだけでクルマを曲げるのがより一層苦労するようになったのですが,その分より定常円旋回に近い状況となり,ボトムの位置を奥にする事が出来たようです(↓).
ただノーズのダイブ量が少ないので,最終コーナー立ち上がりでアンダーステアを出さないようにアクセルコントロールするのに,より神経を使うようになってしまったので,タイヤ任せに走らざるを得なくなっちゃったかなぁ~?とも思いました.
なお,今回のレートアップと因果関係があるのかよく分かりませんが,洗濯板手間で3→2速にヒール&トゥでシフトダウンして,クラッチを繋いだ瞬間の回転数がなぜか毎回ビシッ!と合うようになってしまいました(苦笑).
あまりにも回転数がピッタリ合い過ぎて,ショックも回転変動も一切感じないため,走行中は「アレッ? シフト抜けた?? ミスった???」と心配になってコーナリング中に左手でシフトの入り具合を確認してしまう程でした(笑).レートアップでロール量が減り,ミッションが動きづらくなって入りが良くなったのなら嬉しいですが,単にこの日のエンジンの吹け上がりの鈍さで,たまたま回転が合っただけの可能性もあるので,これも後日再チェックとしたいと思います.
以上,リアレートアップの効果確認でした.
纏めると,
・高速コーナー等の横Gがずっと掛かっている状態等で旋回速度が上がっている
・フロントのみレートアップした時の立ち上がり(Exit領域)で出るアンダーステアは消えた
・その反面,コーナー進入時(Entry領域)でリアがインリフトしやすくなり,オーバーステア傾向になっている
・コーナー中間域(Middle領域)の姿勢は安定しているのでコントロール性は良い
・但し,今現在のレート/エンジンパワーであれば~の話.この先は心配・・・
・冬場の冷えたリアタイヤだと,かなりピーキーで辛いかも?(→ウェット路面でテストしたい)
・リアタイヤの内圧調整でこのピーキーさを消せるか?が今後のカギとなりそう
・・・といった感じでしょうか.あと直接関係があるのか分かりませんが,ここのところ計測1ではなく計測2がベストラップになる事が多いので,もしかしたらレートアップによってフロントタイヤへの負荷が減って,少しウォームアップが悪くなっている可能性もありそうです.まぁ,単純にレートアップした事でコントロールの難易度が上がって,私の腕がそれについていけてないだけかもしれませんが(笑).
いずれにせよ,次回は新品タイヤなのでこれでバランスがどうなるか? クルマはより腕の差が出易い方向に進んだので,チャンスがあればまたプロに乗って頂いて感想を聞いてみたいところですね.