
では,静岡行って見て来た「
コミュニケーションプラザ」のお話です.
こちらの施設には,ヤマハ発動機グループが世に生み出したモーターサイクル,自転車,ボート,船外機用のマリン機器,発電機,四輪バギー等々の多種多様な製品を展示されています.中心となるのはやはりバイクとなりますが,数こそ少ないものの4輪も何台か展示されており,これらが非常に興味深いのですが,東京からだとクルマで数時間掛かるため,足が遠のいていてなかなか来れませんでした.
さて,では早速最初の1台は「OX99-11」.
ヤマハがF1参戦を通じて得た技術を投入して「ロードゴーイングF1」として市販を試みたクルマです.
車体後部には,F1用の3.5L V12「OX99」を公道向けにデチューンし,450PS程度に抑えたものを搭載しています.
2輪メーカーらしく(?),座席は前後にタンデムに座るようになっていて,片上げ式のキャノピーと相まっても戦闘機のコクピットを彷彿とさせますね.
「ロードゴーイングF1」の名の通り,前後サスペンションはダブルウィッシュボーンなのでノーズ周辺には何もなく,大きく開いた開口部となっています.左右のフェンダーを橋渡ししたようなボディーワークはフロントウイングのように見えなくもないですね.この辺りは近年のLMPマシンとは全く違うスタイルで新鮮です.
車体後方のガーニッシュ部分はメッシュ状になっており,冷却を考えたものになっています.
これを見て私は何となく日産の「
R390 GT1」を思い浮かべました.
そのまま車体後部を眺めていると,ディフューザー部分にひょこりパイプが顔を出していて,何だろう?と追ってみるとその先には,
窮屈そうに置かれたマフラーが.この当時はブロウンディフューザーなんて概念はなかったんでしょうが,こんな真下に向けて排気するのは勿体ない気がしてしまいますね.まぁ,もっともベースがF1用エンジンともなると爆音なのは間違いなく,もしかしたら音量的に下向きにする必要があったのかもしれませんが・・・.
お次は,1997年用のF1エンジン「OX11A」.
当時のF1は資金力の差による格差が広がりつつある時代で,大手メーカーのエンジンに対して真っ向からパワー勝負を挑んでも勝てないと判断したヤマハは,自社のDNAである「軽量・コンパクト」にコンセプトを振って作り上げたエンジンだそうです.このコンセプトに振った経緯としては,
・F1は1つのコースを1年に1回しか走らない
・1回しか走らないので,その日/その瞬間に合わせたセッティングが重要となる
・セッティングの自由度を広げるためには,エンジンは小さく軽い方が良い
・「パワー勝負で全戦勝つ!」ではなく,「セッティングがハマった時に勝つ!」を狙う!
ここで言うセッティングとは,例えばバラストの事を指していて,「車体重量が規定よりも軽ければ,バラストを積んで前後バランスを向上させる事が出来る」という意味合いだったようです(=ハンドリングマシンを狙った).そして,まさしくこの狙いがハマったのが,1997年のハンガリーGPで優勝まであと一歩と迫りました.
あと1周,いや半周,たった数百円の部品がもってくれさえすれば優勝出来たはずで,優勝していればヤマハも,チームも,ドライバーもその後の運命がガラリと変わっていたんだろうなぁ~と思うと本当に残念です(ファイナルラップでヴィルヌーブに抜かれる瞬間,最後の抵抗として幅寄せしたヒルの姿が今でも脳裏に焼き付いています).
そんな記憶に残るエンジンですが,
実物を見ると本当に
小さい! 100kgを切るというのも頷ける小ささです.
画像だとなかなか伝わらないと思いますが,例えば,このクランク位置の低さを見て下さい(↓).
フライホイール下部が覆われておらず,切り取られているレベルの低さです.オイルパンは一体どうなっているんだ?と思いたくなりました.この頃には全長を切り詰めるためにビッグボアではなくロングストローク化したためパワーが出ず,ドライバーのデーモン・ヒルからも「ラバーバンドフィール(アクセルペダルを踏んでも回転数だけが上がってなかなか加速しない現象)」なんて言われて苦労したそうですが,実物はヤマハの技術の粋が集められたというのがヒシヒシと伝わってきて,見れて本当に良かったです♪
以上,OXシリーズを見に行ったコミュニケーションプラザ見学の前編でした(
後編に続く).
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Posted at
2024/12/15 14:33:00