
年末の休みに入った土曜日,HKSから「SUPER FIRE RACING COIL PRO」のAP1用・AP2用・FD2用の販売が発表されました.
初報は自動車系のニュースサイトで知ったのですが,恐らく広報資料をそのまま転載していて詳細が分からなかったため,HKSのSNSを見に行ったのですが,この新製品の情報を上げておらず(既に年末休みに入っているであろうから当然),HKSのサイトに行ってリンクを辿って行き,
FD2用の製品ページに辿り着けました.
そこから得られた情報を纏めると以下の内容です.
・FD2専用設計となる強化イグニッションコイルキット
・高回転域での失火対策を狙った製品
・国内製イグニッションコイルを使用し,高性能で耐久性もある
・専用設計のカラー,ブラケット,ハーネスを付属したキット
・イグニッションコイルは,最大で純正比「1.6倍」の2次電圧を発揮

(HKS:
スーパーファイヤーレーシングコイル プロ シビックタイプRより)
・イグニッションコイルの搭載位置は,純正取付け位置よりも上部に移動
・熱源から遠ざけているため,イグニッションコイルの寿命も長い
・純正ECUのままでも動作可能
・フルコンを使用してドエルタイムを最適化すれば,更に性能を発揮
・装着後の純正プラグカバーは取付不可
・性能を最大限発揮するために,「HKS SUPER FIRE RACING」の使用を推奨
・価格は税込み173,800円
これを読んで,「ああ,なるほど,イグニッションコイル上部のイグナイタ部分をエンジン本体から離して熱害を低減し,それによってドエルタイム(コイルへの通電時間)の延長を実現しているのか」と理解する事ができ,「コイル上部が突き出るのでプラグカバーが付かず,専用のブラケット&ハーネスがセットで付くんだな~」と納得したのですが,驚いたのがその価格.
「え? イグニッションコイルだけで,じ,17万円!?」 Σ(´Д`;) ナン...ダト...
NGKの市販品コイル4本で3万円程度.チューニングパーツとして出回っている強化コイルでも6~7万円が相場なのに,そこから更に+10万の17万円ですと!? た,高けぇ・・・.この金額だったらECUまでセットじゃないと割が合わないように感じるのですが,それだけ高性能なコイルってコトなのか??
益々気になってきたので更に調べてみると,まずこの「SUPER FIRE RACING COIL PRO」というのは,HKSがここ数年で徐々に拡大していった製品である様子.
最初は2020年の8月.RB26DETT用として発表されています(↓).

(HKS:
スーパーファイヤーレーシングコイル プロ スカイラインGT-Rより)
こちらにはブラケット・コイルスペーサーに関する情報が載っていました(↓).
・ブラケット,コイルスペーサーにアルマイト処理を施し美観と耐久性を確保
・コイルスペーサーのエンジンヘッド側にOリングを入れる事で防塵と防水を実現
・コイルスペーサーのプレート側にOリングを入れる事で防音効果も実現
・キャップスパークゴムをスパークプラグに合わせて専用設計
・これによりフラッシュオーバー(頭部絶縁体火花リーク)を防止
FD2用がこのRB26DETT用と同じかどうかは分かりませんが,コイル以外もなかなか手が込んでいそうなのが読み取れます.
そこから1年経った2021年に2JZ-GTE用をリリース(↓).

(HKS:
スーパーファイヤーレーシングコイル プロ アリストより)
こちらでコイルの詳細に触れています.
・イグニッションコイルブーツ,イグニッションコイルスプリングに耐電圧,耐熱性の材料を使用
・高負荷時の火花が飛びづらい過酷な環境にも耐え,リークすることなく確実な点火をサポート
続く2022年にSR20DET用(↓),

(HKS:
スーパーファイヤーレーシングコイル プロ シルビアより)
2023年に4G63用(↓),

(HKS:
スーパーファイヤーレーシングコイル プロ ランサーエボリューションIXより)
と来て,FD2用に至っているようです.
なるほど,毎年1機種対応する形で開発を進めてきたのであれば,完成度はかなり高そうですし,コイル以外の周辺部品もかなり作り込まれているのが読み取れます.とはいえ,やはり17万円は・・・.これだけ年数が経っているのであれば,使っている人のレビューがないかな?と調べてみましたが情報は出て来ず.他の製品とかなりの価格差がありますから,そりゃなかなか選ばないよなぁ~と方々を当たってみたところ,「SUPER FIRE RACING COIL PRO」のSR20DET用の取扱説明書にドエルタイムが記載されている事に気づきました(↓).
おっ! ならばこれでコイルの性能が分かるのでは?と思い,純正コイルのドエルタイムを調べてみたところ,こんな感じ(↓).
1000rpm ・・・ 3.15ms (-0.85ms)
2000rpm ・・・ 2.40ms (-1.60ms)
4000rpm ・・・ 2.25ms (-1.35ms)
8000rpm ・・・ 2.20ms (-1.40ms)
ふむふむ.ノーマルより長く出来ているのは間違いですが,他の強化コイルよりも圧倒的に優れているのかどうか?はこれだけでは分からないので,何か参考になるものがないかな?と調べてみたところ,SR20DETの定番チューンだというR35(VR38DETT)用のIPコイルの数字を見つけたのでコレと比較してみると(↓),
1000rpm ・・・ 3.60ms (-0.40ms)
2000rpm ・・・ 3.55ms (-0.45ms)
4000rpm ・・・ 3.50ms (-0.10ms)
8000rpm ・・・ 3.40ms (-0.20ms)
ほぅ,名うて製品に対しても全域で上回っているというのはなかなか凄いですね.単純にドエルタイムを長く設定出来る事に加えて,2次電圧も高くなっているとなると,値段なりきの高性能ではあるようです.
しかし,とは言ってもなぁ・・・と,やはり+10万の差が気になるので流用チューンとして有名なAUDI R8用のイグニッションコイルが頭を過ぎり,調べていたら,こちらのサイトを見つけました(↓).

(IGNITION PROJECTS:
コイルエネルギーの比較より)
上記は,SR20DETに使われるコイルの比較を行ったものだそうです.単位はエネルギー(mJ)で,これを見るとS15用の純正コイルに対し,AUDI用(R8用かは不明)は1.58倍の点火エネルギーを持っている事が分かります.しかし,そのAUDI用を大幅に上回るのが,ガスコイル(CNG車用等に使われているコイル)とR35用の純正コイルであり,そのR35純正品を更に上回るのが先程出てきた「R35 IP」.となると,HKSの「SUPER FIRE RACING COIL PRO」はその「R35 IP」をも超える製品という事になるので,相当高性能である事が分かりました.
以上,HKSの「SUPER FIRE RACING COIL PRO」に関するお勉強でした.
価格的に物凄く高い製品である事は間違いないですが,高いなりに相当高性能である事も今回の調査で分かりました.私のB16Aはダイレクトイグニッション化してFD2用のイグニッションコイルを使用しているため,この製品も使う事が出来るはず.現状,優先順位として足回りの改善の方が高いですが,手っ取り早いパワーアップ策の1つとして本製品の事を頭の片隅に置いておこうと思います.