特別興味がある訳でもないのですが,SNSを眺めていたら,なぜかNASCARの情報が流れてきました.
「NASCAR」と言うのは「National Association for Stock Car Auto Racing」の略で,アメリカで行われているストックカーレースの事です.「ストックカー」というのは,市販車の部品を一切使わず,外観だけ市販車を模したレース専用車の事で,ようはタイトル画像のようなライトすらハリボテなクルマの事です.
一見するとなんだか物凄くローテクなクルマに見えますが,実はやっている事が滅茶苦茶ハイレベルで,マニアックな技術が使われている事で知られているクルマだったりもします.
近年,その中で有名になった技術としては「ボディ形状を左右で変える」というもので(↓),
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Why are NASCAR cars skewed? より)
右側を比較的真っ直ぐに,左側の前後を潰して全体的に凸型の形状にする事で,ボディの左右に流れる気流の速さを意図的に変えるのだそうです.左右で速さを変えて一体何をしたいのか?というと,
(
Why are NASCAR cars skewed? より)
ボディ全体をウイング形状に見立てて,クルマが自然と左側(Low Pressure側)に引き寄せられるようにしているのだそうです.NASCARは基本左周りのオーバルコースなので,こういったボディ横の空力を使って旋回性能を上げて,少しでもアドバンテージを得ようとしている訳です.
「こんな事まで考えてボディ形状を変えている」なんて聞くと,滅茶苦茶ハイテクじゃん!と思いたくなりますが,当然これを狙ってやったらレギュレーション違反になるので,レース前の車検ではボディの左右を均等にしておいて,レース中のピット作業時にクルーがクルマに体当たりし,「いやぁ~,不運にもボディが凹んでしまったよ・・・」と,さも偶然を装ってボディ形状を変えているのだとか(苦笑).いやはや,ハイテクなんだか,ローテクなんだか,ホント訳の分からんカテゴリーです.
そんなNASCARで今回知ったのが「サイドドラフト」というテクニック.これは前を走っている車を抜こうとした際に,自身のフロントバンパーを相手のリアタイヤ近辺にわざと寄せる事で(↓),
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Science behind Side Drafting - NBC NASCAR より)
前走車のボディ横を流れて来た気流を,相手のリアスポイラーに無理やり載っけて(↓),
(
Science behind Side Drafting - NBC NASCAR より)
相手のダウンフォースを勝手に増やし,失速させて追い抜くワザなのだそうです(↓).
(
Science behind Side Drafting - NBC NASCAR より)
私はコレ,てっきり相手にプレッシャーを掛ける為に寄せているのだと思っていたのですが,そんな精神的なものではなく,実際に効果のある物理的な攻撃だったのですね・・・.知りませんでした.
以下の動画(↓)を観ると,追いかけているクルマがフロントノーズを寄せた瞬間,前走車が失速して,いとも簡単に追い抜いているのがよく分かるので,観てみて下さい.
VIDEO
ちなみに,この「サイドドラフト(サイドスリップ)」というテクニック,NASCARの場合は前走車の左側から寄せるのではなく,右側から寄せる方が効果的なのだとか.
その理由がボディ左側に付いている「シャークフィン(↓)」.
この「シャークフィン」は,元々クルマがスピンして真横を向いた時に,横転しないように,空気の力で押さえつけるためのものなのですが(↓),
(
How a NASCAR Cup Series Race Car Works より)
これのせいで,前走車の左側から寄せた際に気流が「シャークフィン」で遮られて,上手くリアスポイラーに載せられないのだそうです(↓).
(
How a NASCAR Cup Series Race Car Works より)
確かに前述の動画でも,みなクルマを右側から寄せていますね.
こういう原理を知っているのと知らないのとではレースの見方も変わって,面白いです♪
以上,「サイドドラフト」によるオーバーテイクの小話でした.
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Posted at
2025/06/09 22:35:55