
引続きLSDに関するお勉強です.
CUSCOのType-RSの
「F」と「FG」の違いがスプリング本数である事が分かり,
スプリングの本数を変えるとどうなるか?も何となーく見えてきたので,お次はクラッチプレートに関して調べてみます.
まず,CUSCO LSDのクラッチプレートは「MZプレート」という商標のようなのですが,これには「内ヅメ」と「外ヅメ」の2種類があるようです(↓).
「内ヅメ」「外ヅメ」の由来は,その名の通りプレートに付いている爪の部分が内側を向いているか? 外側を向いているか?の違いで,「内ヅメ」はLSD内部のサイドギヤ側面に切られている溝(↓)に引っ掛かるようになっており,
一方,「外ヅメ」はLSD外部のケース内部に切られている溝(↓)に引っ掛かるようになっているようです.
この「内ヅメ」と「外ヅメ」は互い違いに組み合わされており,これが多板クラッチのような役目を果たしているようです.極端なイメージで言うと,LSDのアウターケース(≒外ヅメ)が右側のタイヤ,LSDのインナー(≒内ヅメ)が左側のタイヤに繋がっているような感じで(↓),
「内ヅメ」⇔「外ヅメ」間に力が加わっていなければ,まるでクラッチを切ったかのように「内ヅメ」「外ヅメ」はそれぞれ勝手に動くので,左右のタイヤで回転差が生じます.一方,「内ヅメ」⇔「外ヅメ」間に力が加わり,まるでクラッチが繋がったかのように両者が一体となって回転数するようになると,左右のタイヤが直結されたような形となり,LSDが作動する,というメカニズムのようです.
「内ヅメ」「外ヅメ」の役割が分かったところで,今度はCUSCOのLSDの取扱説明書を確認してみます(↓).
説明書によると,先述の「内ヅメ」「外ヅメ」は正式には以下の名称のようです(↓).
内ヅメ ・・・ フリクションディスク
外ヅメ ・・・ フリクションプレート
また,このディスク/プレートの組合せの方によって,両者の間に生じる摩擦力を変えられる事も記載されていました(↓).
DC2用のType-RSの場合,「フリクションディスク(内ヅメ)」と「フリクションプレート(外ヅメ)」は片側各4枚の合計8枚となっており,この両者を重ねる順番を変える事で接触面積が変わり,摩擦力(≒ロック率)も変えられるようです.例えばこんな感じですね(↓).
内 ⇔ 外 ⇔ 内 ⇔ 外 ⇔ 内 ⇔ 外 ⇔ 内 ⇔ 外 の組合せ ・・・ 接触面積:100%
内 - 内 ⇔ 外 - 外 ⇔ 内 ⇔ 外 ⇔ 内 ⇔ 外 の組合せ ・・・ 接触面積: 80%
内 - 内 ⇔ 外 - 外 ⇔ 内 - 内 ⇔ 外 - 外 の組合せ ・・・ 接触面積: 60%
内・外同じ方向の爪同士を重ねると,重ねた2枚は一緒に動く事になるため,その2枚の間では摩擦力が生じず,その結果,LSDをロックする力が弱まるという事のようです.
接触面積の話が出てきたので,ここでDC2用の「フリクションディスク」「フリクションプレート」のサイズを確認してみます.
サイズは「C」となっており(↓),
これは「6.7インチ」のようでした(↓).
ちなみに,以前EG6用も使っていたので,そちらのサイズも確認してみたところ(↓),
同じサイズ「C」でした.EG6用→DC2用で若干アウターケースのサイズが大きくなっていた印象だったのですが,違っていたのは外側だけで中身のディスク/プレートは同じサイズだったようですね.
(となると,やはりEDC2用への変更時に感じたフィーリングの違いはスプリングに起因しているのか・・・?)
ついでに,上記にはサイズと合わせてディスク/プレートの厚みに関する情報も出ていたのでそちらも見ておくと,「フリクションディスク(内ヅメ)」の方は「1.6mm」のみですが,「フリクションプレート(外ヅメ)」の方は「1.5mm」「1.6mm」「1.8mm」の3つの選択肢があるようです.
DC2用のオーバーホールキットを見てみると(↓),
「1.6mm」が主で,「1.5mm」or「1.8mm」で調整する感じでしょうか.限られたケースサイズの中に,厚めのプレートを入れれば摩擦力(=ロック率)が上がる訳で,やり過ぎると摩擦力が上がり過ぎてデフロック状態に陥るそうです.
ここまでで「フリクションプレート(外ヅメ)」がセッティング要素となっている事は理解出来ましたが,「フリクションプレート(内ヅメ)」の方にはそういった要素がないのか?と調べてみると,ありました(↓).
所謂ところの「Spec F」と呼ばれているもので,通常「フリクションプレート(内ヅメ)」には潤滑油が通る溝が切られているのですが,この溝がない真っ平らなプレート「FFD:Flat Friction Disk」を用いた製品だそうです.溝がないと接触面積が増えて,摩擦力が上がるようにも思えるのですが,謳い文句的には効き味を弱める方向の事が書かれているので,イニシャルトルクとしては下がる方向なんでしょうか・・・?
(溝がない分だけ油膜が厚くなって,潤滑性が増して,効きが弱まるのかなぁ~??)
なお,これと似たような効果を得る方法として,ディスク/プレートをWPC処理する,というものもあるそうです.

(不二製作所:
WPC処理より)
「WPC(Wide Peening and Cleaning)処理」とは,圧縮空気の力で極小の粒子を金属面に衝突させ,特性を変える表面処理の事です.LSDのディスク/プレートにおいては,粒子が衝突した際に出来る「ディンプル(窪み)」に潤滑油が溜まるようになるため,潤滑性が向上して摩擦力を下げられるそうです.消耗品であるLSDのディスク/プレートでこれをやるのはアマチュアにはハードルが高い気もしますが,「ディスク/プレート間の摩擦力の影響はそれほど大きい」という意味で頭の片隅に置いておきたいと思います.
以上,LSDクラッチプレートのお勉強でした.
スプリングの本数と合わせて,これでLSDのセッティング要素は大体掴めましたが,それぞれの要素をどう変えると,どんな違いが生まれるのか?はノウハウの部分なので,やってみないと分かりませんね.知見のある方に話を伺いつつセットアップの方向性を考えていこうと思います.
Posted at 2024/07/31 17:19:47 | |
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