先日のTC1000で足回りの仕様変更後のベストタイムも出たので,セットアップもそろそろ詰め切ったと見なして,ここらで仕様変更前との比較をしておきたいと思います.
比較対象は
6月のTC1000(走行会)時のデータ.こちらも足回りの仕様を変えた直後で,時間帯も同じ.気象条件は今回の方が良いですが,タイヤの状態は前回の方が良いです(前回は新品投入).
まずはモノの変更部分.色々変わってます.
①
ダンパー仕様変更 ・・・ 車高調整幅の拡大,減衰調整幅の拡大(12段→20段)
②
フロントレート変更 ・・・ 11.6キロ(HYPERCO)→14.3キロ(HYPERCO)へアップ
③フロントストローク変更 ・・・ スプリング長を6インチ(152.4mm)→7インチ(177.8mm)へ拡大
④リアレート変更 ・・・ 8.0キロ(Swift)→9.8キロ(HYPERCO)へアップ
⑤リアスプリング長変更 ・・・ 7インチ(178.0mm)→6インチ(152.4mm)へ縮小
⑥リア
ヘルパー追加 ・・・ ストローク長維持(レート:0.21~0.26キロ)
アライメントの変更は以下の通り.
⑦
リア車高5mmダウン
右フロント ・・・ 125mm → 125mm
左フロント ・・・ 130mm → 128mm
右リア ・・・ 140mm → 132mm
左リア ・・・ 137mm → 133mm
⑧フロントトーゼロ化
フロント ・・・ OUT 10' → OUT 00'
リア ・・・ OUT 00' → OUT 00'
ちなみにキャンバーは不変です(フロント:4°30' リア:2°30').
当日の気象条件は以下の通り.若干,今回の方が条件が良かったようです.
前回 ・・・ 気圧:100.7kPa 気温:22.9℃ 風速:2.4m/s(東南東) 日照時間:4分
今回 ・・・ 気圧:101.3kPa 気温:22.2℃ 風速:1.9m/s(北) 日照時間:5分
そして,比較するラップはこちら(↓).
【前回:41.719】
【今回:41.599】
では,いつものLAP+による比較です(青:前回 緑:今回).
総じて見ると,今回(緑)は1コーナー・1ヘアでタイムを稼いだようですね.ただ,折角稼いだタイムをインフィールドで全て吐き出してしまっているので(実際ブレーキングミスってますし・・・),この点は残念です.なお,最終複合でのシフトミス(2速に入れられず)は見た目上,そんなに大きな被害にはなっていないようです.
では,細かく見ていきましょう.
ホームストレートエンド
今回(緑)の方の車速が3km/h伸びており,これによって0.1秒稼いでいます.この130.3km/hは当日1日を通しての最高速なので,気圧の影響が大きかったのかもしれません.
車載の方を見ると,アタックラインの加速タイミングをミスっているので(後ろのクルマが気になって早めに加速してしまい,最終コーナーでタイヤをコジって失速している),実際はもうちょっと伸ばせた可能性があります.レートアップの影響か,アタックラインで左リアタイヤを白線の外に落とすと,姿勢変化が大きくなり,右フロントのトラクションを少し失っている感があるので,どこから踏み始めるのがベストなのか? もうちょっと探る必要がありますね.ただ,レートアップの効果はこのアタックラインからの加速でも感じ取れ,立ち上がりでは以前よりも外側に流れにくくなっているので,クルマがしっかりと前に進んでいる感があります.
1~2コーナー
数値上は今回(緑)の方がボトムが2.8km/h高いですが,波形を見る限り,ほぼ同等ですね.車載を見ると,1コーナー進入時のブレーキングでリアが流れた際のコントロールは今回(緑)の方がロスが少なかったようにも見えます.これは減衰が復活してコントロール性が上がった効果だと思われます.
ただ,ライン取りを見てみると(前回:青 今回:赤),
今回(赤)の方が減速時間が長いにも関わらず,外側に膨らんでしまっているので,前後2キロレートアップして踏ん張りが効くようになったとしても,新品タイヤのグリップには敵わない,という事が読み取れます.
1ヘア
進入速度はほぼ一緒(上段の赤丸),ブレーキングの開始タイミングも一緒ですが,ブレーキの抜き方は異なりますね(下段の赤丸).ライン取りの方を見ると理由は一目瞭然なのですが,
今回(赤)の方が小回り出来ています.前回(青)よりもブレーキを緩めているのに小回りが出来ているという事は,今回(赤)の方がブレーキがよく効いているという事です.確かにフロントのレートが上がり,減衰も強くなっているので,全体的にダイブしにくくなってブレーキング時の姿勢も良くなっている(=リアのブレーキがちゃんと効くようになった)ためと思います.実際,乗ってると顕著に差が分かりますし,この効きの良さのおかげで苦戦していた1ヘアのミドルエリアも誤魔化せるようにもなってきました.そういう意味でも恩恵はかなり大きいです(瞬間最大0.3秒まで差を広げられているのがその証拠).
また,小回りして,ブレーキも奥まで残っているのに,立ち上がりの加速が前回(青)と互角という点も素晴らしいですね.デメリットが全くない事になります.見方を変えれば,如何に今までフロントタイヤに荷重をのっけ過ぎていたか?という事にもなるので,そういう意味では更にフロントのレートを上げるのも手かもしれません.
インフィールド
ここまでで今回(緑)の方が0.25秒速いのですが,波形を見ても明らかな通り,インフィールド進入のブレーキングでミスってます(上段の赤丸).右フロントのサスペンションを縮める前に強めのブレーキングをして,姿勢を作る前に,一気にタイヤに荷重が乗っかってしまい,タイヤが音を上げてしまいました.
この結果,クルマは曲がらず,今回(赤)の方がオーバーシュートしているのがライン取りにもはっきりと表れています.幸いにして,色々練習したおかげで立ち上がりの帳尻合わせは上手くなっていますが,ボトムが4.6km/h低いですし,これは完全なドライビングミスですね.このミスがなければ,新品タイヤ相手に0.2秒はリードを保てたはずなので,このミスは少々悔やまれます・・・.
バックストレッチ~高速左コーナー
インフィールド進入で失敗したにも関わらず,その後の加速は今回(緑)の方が上回っているのが分かります.これも気圧の影響かもしれませんが,コーナリング中でも車速が伸び続けている点からすると,レートアップによるトラクション向上が表れているんじゃないかと思います.
最終複合
前述の通り,洗濯板通過後にシフトミスしてしまっているので,最終コーナーで今回(緑)の方に車速の停滞が見られます.しかし,それでもなお,最終的に今回(緑)の方が車速が伸びており,やはり全体的にトラクションが良くなっているのだと思われます.この車速の伸びの差が最終的な0.1秒差に繋がっているので,やはりレートアップの効果は大きいようですね.
以上,アップデートの比較結果でした.
結論として,今回のアップデートは成功と言えると思います.レートアップの効果なのか,フロントのストローク量アップの効果なのか,減衰力復活の効果なのか,切り分けは難しいですが,どのコーナーで見ても立ち上がりの車速の伸びが良くなっているので恩恵は大きいです.
また,姿勢変化量が相対的に小さくなった事により,コントロールの幅が広がり,特に強めのブレーキング時における限界域付近での微細なコントロールもクルマが受けつけるようになりました.その分,ドライバー操作の成功/失敗がはっきりと挙動に表れるようにもなったので,フロントタイヤに荷重を掛け過ぎないよう,より一層神経を使わないとダメですね.カメラが変わったせいか,車載を見返していると「全体的に操作が雑だなぁ~」と感じるようにもなりましたし,細かな部分でより一層,丁寧かつ正確な操作を出来るようにならないとマズイな・・・と思うようにもなりました.
今回の比較結果から,まだまだ詰め代が残っている事が分かりましたし,EF8のポテンシャルを100%引き出せるよう,今後も鍛錬に励みたいと思います.