●心不全：最近は心不全による死亡例が増加している。
◎心臓には４つの部屋があり、左心房（さしんぼう）と左心室（さしんしつ）は血液を全身に送り出し(左心系)、右心房（うしんぼう）と右心室（うしんしつ）は全身から戻ってくる血液を受け取る(右心系)。
肺で酸素を取り込んだ血液（動脈血）は、左心房→左心室→全身に送り出される。
全身から戻ってくる血液（静脈血）は、酸素を消費して二酸化炭素を多く含んでおり、右心房→右心室→肺へ送り出される。肺では血液中の二酸化炭素が酸素に置き換えられ、また左心房に戻ってくる。
◎心不全は、なんらかの原因で充分な血液が送り出せなくなる疾患。
① 「左心不全」は、左心室から大動脈に充分な血液（動脈血）が送り出せなくなることで生じ、全身の臓器に充分な血液が行き渡らなくなるだけではなく、左心室より上流の左心房や肺静脈、肺でも血流が滞り、肺がうっ血(肺うっ血)したり、肺に水が溜まる（肺水腫）。
「肺循環系のうっ血」
②「右心不全」は、右心室から肺に血液を送り出せなくなることで生じ、肺に送れなかった血液が右心系に滞り、全身から心臓に戻る静脈血も滞り、肝臓が腫れたり（肝腫大）、腹水が溜まったり、頸静脈が怒張したり、手足がむくんだりする。
「体循環系のうっ血」
③ 左心不全の状態が続いていると、右心不全も引き起こされる。左心不全によって肺への負荷が増大、肺動脈圧も上昇し（肺高血圧症）、右心系にかかる圧を増大させ、右心不全が引き起こされる。
「両心不全」
◎心不全の原因疾患
① 虚血性（きょけつせい）心疾患
心臓の表面を走る冠（かん）動脈が、糖尿病や高血圧、脂質異常症、肥満などによって動脈硬化を起こし、狭まったり（狭心症）、詰まったり（心筋梗塞）すると、心筋に血液が届かなくなり、心筋が弱ったり壊死（えし）したりして、心臓の機能が低下する。
② 高血圧性心疾患
高血圧の人の血管は、高い血圧に耐えるために血管の壁が厚く硬くなり、血管の抵抗性が増す。
心臓は血液をより強い力で押し出そうとして心筋が厚くなり、伸び縮みしづらくなる。
血液を送り出す能力が低下し、全身から心臓に戻る血液も、心臓から全身へ送り出す血液も少なくなって心不全を発症する。
③ 弁膜（べんまく）症
心臓には血液の出入りを調節する弁があり、その弁が損なわれると血流のコントロールが難しくなり、心臓に負担がかかるようになって、心不全を発症する。
大動脈弁（左心室と大動脈の間の弁）や僧帽（そうぼう）弁（左心房と左心室の間の弁）が、きちんと閉じなくなると血液の逆流が生じ（閉鎖不全症）、きちんと開かなくなると血液が流れにくくなって（狭窄症）、心臓にダメージを与える。
④ 心筋症
心筋の異常で心筋が拡大したり、肥大したり、硬くなったりする。
拡張型心筋症（左心室が拡大し、心室の容量が増大する）や肥大型心筋症（左心室の心筋が肥大する）がある。
⑤ 心筋炎
ウイルスなどが心臓の中に侵入し、心筋が炎症を起こして心不全に繋がる。
⑥ 先天性心疾患
先天性（生まれつきの）の心臓の疾患で、心房中隔（ちゅうかく）欠損症（左右の心房を隔てる壁に穴が空いている状態）では、心房間に血液の逆流が生じ、心機能を低下させる。
⑦ 不整脈
規則的でない脈は心不全の危険因子。
頻脈（ひんみゃく）発作を起こすような不整脈では心筋が常に活発に働かざるをえなくなり、やがて心筋が疲労して心不全を発症する。
⑧ 肺疾患
肺高血圧症、肺血栓塞栓（そくせん）症（血栓が肺動脈を塞ぎ、肺循環を阻害する）、肺性心（肺でのガス交換が阻害され肺高血圧になる）などで心不全を起こす。
◎心不全の原因として多いもの
最も多いのは虚血性心疾患、次いで高血圧、弁膜症の順。
また、従来の動脈硬化による狭心症は減少傾向にある中、冠動脈の痙攣による狭心症が増加している。
原因は不明であるが、微小血管の内皮障害が関与していると考えられ、従来の薬剤（血圧、コレステロール、不整脈などの薬）では治療が困難な事例も多い。
＊ここからの注意事項
今回の研修の協力企業はアスタリール株式会社です。
アスタキサンチンというサプリメントを販売している会社です。
サプリメントの効果を実証するエビデンス（科学的根拠）は、乏しいのが現状です。
理由は試験にお金がかかるから。
信じる者は救われるかも？的なものだと思ってお読みください。
僕個人の意見としては「効果があるなら医薬品になっている」です。
●治療困難事例に有用かもしれない薬品やサプリメント
① ノイキノン（ユビテカレノン）（医薬品）
2001年に食薬区分が変わり、健康食品としても製造販売が可能となった「コエンザイムQ10」と同じもの。
副作用がないかわりに効果がいま一つで、人での臨床研究から心不全に対する効果は疑問視されており、アメリカなどでは推奨されていない。
日本でも、昔ほどは使われなくなっている。
がん治療における有用性は認められていないが、がん化学療法薬によって引き起こされる心疾患のリスクを減少させる。
心疾患予防に役立つかどうかを検証したのは数件の研究のみであり、その結果は暫定的なもの。
心臓手術のいくつかの合併症のリスクを軽減することを示す科学的根拠（エビデンス）がある。
スタチン（コレステロール降下薬）による筋肉痛を軽減する効果や高血圧への効果は認められない。
片頭痛予防には有効かもしれない。
また高用量で投与しても初期のパーキンソン病患者の症状を改善しない。
② シトルリン（サプリメント）
遊離アミノ酸のひとつで、ウリ科の植物に多く含まれており、血管拡張作用がある。スイカ、メロン、冬瓜、キュウリ、ニガウリ、ヘチマなど、ウリ科の植物に比較的多く含まれている。
1日の摂取目安量は800mg程度、スイカ1/7個、メロン1.3個、冬瓜3.8個、キュウリ56.5本という量を摂取する必要があるため、サプリメントが便利。
③ アスタキサンチン
自然界に広く分布している天然の赤い色素で、サケやエビ、カニなどに多く含まれており、活性酸素を消去する「抗酸化作用」をもつ。
産卵のために川を遡るサケは、たくさんの酸素を取り込むので体内で絶えず活性酸素が発生し、筋肉に大きな負担がかかっているが、その活性酸素を消去するために筋肉中にたくさんのアスタキサンチンを備えている。
さらに産卵の準備が始まると、メスは卵（イクラ）へアスタキサンチンを移行させ、紫外線の影響を受けやすい浅瀬に産み付けられる卵のDNAを守っている。
◎人間は生命を維持するために必要なエネルギーを得るため、絶えず酸素を消費しているが、酸素の一部は体内で代謝される過程で活性酸素に変換され、細胞を酸化させて損傷を与える。
がんや生活習慣病、老化や認知症など、あらゆる病気の発生に活性酸素が深く関わっている。
食事でとった糖や脂肪を原料にエネルギーを生み出す際に、いわば産業廃棄物として発生する。
また、細菌やウイルスなどの異物を排除する時や、紫外線や排気ガス、タバコ、化学物質、食品添加物、ストレスも活性酸素を増やす原因となる。
体内には活性酸素を除去し、無害化する抗酸化酵素と呼ばれる物質もあるが、活性酸素の原因物質や要因が増加している現代社会では、細胞内の酵素だけでは大量に発生した活性酸素を分解しきれなくなっている。
また抗酸化酵素は加齢とともに減っていく。
歳をとると病気になりやすくなるのはこのため。
活性酸素の除去がいつまでも若々しく、健康でいるためのポイント。
体内で最も活性酸素の標的になりやすいのは細胞膜。
活性酸素の攻撃を受けると膜が変性して細胞の機能が衰え、活性酸素が細胞内の遺伝子に直接作用すると細胞ががん化する危険性もある。
ビタミンEは細胞膜の内側で、β-カロテンは細胞膜の中心部で抗酸化力を発揮することで、細胞膜を活性酸素から守っている。
アスタキサンチンは細胞膜に貫通した形で取り込まれ、細胞膜の中心部と表面の両方で抗酸化力を発揮し、細胞膜全体を酸化から守っている。その効果はビタミンEの550倍、β-カロテンの40倍、コエンザイムQ10の1,000倍。
◎アスタキサンチンは、細胞内のミトコンドリアに取り込まれ酵素利用率を上げることにより心臓の機能を改善し、抗アルドステロン作用や抗酸化作用（抗加齢作用）を持つと言われている。
赤血球の変型能を維持し、毛細血管への循環も改善するとの報告もある。
●心不全：最近は心不全による死亡例が増加している。
