
これまでのざっくりしたあらすじ
若者のクルマ離れを危惧する昨今、ホンダ・ビートに乗る普通の女子高生の「本田美都」と
スズキ・カプチーノを買った同級生の「鈴木千野」が
二人でなかば強引に学校で軽四輪自動車をこよなく愛し、研究する「けいよん!」部を設立した。
その「けいよん!」部の顧問は「ひよこ」と「人間」のハイブリッドで何故かいつもランドセルを背負っているロン毛のぴよ八先生である。
彼女たちはいつも走っている峠で最速の女「ローズ・ゴースト」と呼ばれるS660乗りの「恵州むつみ」と出会いライバル心や憧憬が芽生える。
本田美都はオールペンしてチャラチャラしたローズピンクにしてる「ローズ・ゴースト」が気にいらない。
そして季節がひとつ過ぎ去り秋になるとイギリスからケータハムセブン160に乗ってる帰国子女「香鈴NANA」が転校してきた。
好き嫌いの激しい本田美都は何故か香鈴NANAも気にいらない。
これはそんな女子高生たちの物語で、
けいよん!09:Corner 坂道のアドバンの承前である。
鈴木千野はローズ・ゴーストと一緒に大河内峠を走って「この人に追いつき、出来れば追い越したい!」という内なる闘争本能に否応無く気付かされる事になる。
本田美都に比べてローズ・ゴーストを倒す理由や動機が薄かった千野はようやく本腰が入る。
放課後は真面目にけいよん部の教室に寄りぴよ八先生のクルマの講義を聞き、その後は本田美都の自動車工場でティータイムをした後にそこの女整備士の松田AZUに特訓してもらう。
運転が上手になる為にはただひたすら練習あるのみだ!
最近は鈴木千野と本田美都は松田AZUにクルマのダッシュボードにプリンを乗せて走らされる。
「このプリンが崩れないように走るんだ。スムーズで繊細にクルマと呼吸を合わせる流麗なドライビング、それが理想だ。常にクルマが路面に対して平行になっていることが大切なのよ」
きっと何かの漫画を読んで影響を受けているに違いない。
水がなみなみに入ったコップを乗せて走るよりマシなような気がするが、世の中も慣性もそんなに甘くはない。
プリンをプルプル揺らしながら峠を全開走行するが、当然阿鼻叫喚の地獄画図のようになる。
しかし、AZUは諦めない。
「プリンなんか必要ねえ!アンタたちの胸に立派なプリンが二つもついているじゃない!そのプリンに神経を研ぎ澄ませて横Gを感じるのよ‼︎ まず、二人ともブラジャーを外して(自主規制で中略)……………………………………………………………………………………………………しかもノーブラ走行は軽量化にも貢献して、胸がGセンサーと化し一石二鳥だわ‼︎!」
だいたい松田AZUの考えるアイデアなんか「逆ウォッシャー攻撃」(失敗済)とか大体ロクなものではない。
「そんなバカな話は聞いた事ありません!
AZU先輩はただふざけているだけなんでしょ!?
大体ノーブラで運転なんて恥ずかし過ぎます‼︎」
二人は全力で猛抗議した。
「アンタたち、ローズ・ゴーストに勝ちたくないの?アンタらは運転もド素人だが人間としてもビギナーなんだよ!知識や経験がまだ浅いからこそアンタ達には可能性があるのよ。見込みの無えヤツらにはこんな事言わねえよ……」
なんだか二人とも解せない気がするがそんな辱しめを受けるような特訓でも全ては「ローズ・ゴースト」に勝つ為だし、AZUさんが自分達の事を「見込みのあるヤツら』と思ってくれてるのだから言うことを聞くしかないと自分で自分自身を説得いや自己欺瞞するしかない。
「もちろんフルオープンで走りなさいよ!」
もはや羞恥プレイを楽しむドSな女王様のような様相を呈してきたAZUの言葉は絶対だ。
仕方がないので二人はノーブラ走行を試してみる事にする。
「な、何だか、みんなに視られているような気がするわ……」
天気の良い日はいつも気分よくフルオープンで走っている二人だが、今日は他人の視線が通常の三倍カラダにまとわりついてくる様な気がする。
いつもの三叉路で本田美都は鈴木千野と別れて、いつものコンビニでお気に入りのジュースを買おうと思ったが、ダイエット中なのでウーロン茶にしなければならない。
「何だかすごくスースーするし、たかがコンビニ入るだけでもドキドキする………。目立たないように早く買って帰ろうっと」
と美都がコンビニに入ろうとしたら、気にいらない転校生の香鈴NANAが歩いてくる。
「ヤバい、こんなところをアイツに視られたら…………」
と思った時はいつだって遅すぎるのだ。
香鈴NANAはニッコリ笑い美都に話しかけてくる。
「あっ、本田さん、こんにちは〜。お買い物にきたの?あっ、私の家、この裏なの!」と、不必要に大きな声を掛けられました。
こ、この女、間が悪すぎる!こんな時に限って出会うんだから‼︎やっぱり好きになれない…………………………………。
「あっ、買い物をもう終わったから」と美都はほぼ聞き取る事が出来ないような声を振り絞り、顔を真っ赤にしてクルマに乗ろうと早足でクルマに乗り込んで立ち去ろうとしたその刹那………。
そこに「ローズ・ゴースト」が現れた。
「あひぃ!?」
もはや声なのか擬音なのかよく解らない言葉が美都の口から漏れる。
ヤバい!
最悪だ‼︎
「ローズ・ゴースト」にノーブラだとバレたら取り返しのつかない事になる……。
動揺したら負けだ、平常心を装って切り抜けるしかないわ!
と、その時、枯れ葉を舞い踊らせながら風が「ローズ・ゴースト」の制服のスカートがひらりとひるがえす。
「????????????????????????????????????? こ、こいつ、ノ、ノ、ノ、ノ、ノ、ノーパン?し、下着、履いてない……………。露出趣味なの?裸族なの?? 変態なの???……………………………………………………………………………………………………ま、まさか、履き忘れたの????」
色々とパニックになった美都はとにかくクルマに乗り込んで走り去って行った。
その頃NANAは「ローズ・ゴースト」に話しかけていた。
「これ、あなたのS660ですか?オールペンしたの??素敵な色ですね〜!」
「クルマ、好きなの?」とローズ・ゴーストこと恵州むつみは見知らぬ金髪の女子高生に質問で返す。
「うん、大好き!160は命の次に大切‼︎」
「160ってケータハム?ケータハムに乗ってるの!? 良いわね!私もこのS660とケータハム、どっち買おうか迷ったくらいなの。でも知り合いの自動車屋さんがケータハムを売ってなかったからS660にしたのよ」
「えっ、そうなの?今度ケータハムに乗ってみます?ていうか、今から乗る??ところでオープンカーでタイツ履かなかったら寒くないですか?」
「履かない主義なの。軽量化になるでしょ?」
「おお〜、なるほど〜!今度私もやってみよ!!」
と、本田美都の気持ちなど全く知らず二人は楽しくクルマ談義を夢中でしていた。
つづく