
上原氏追悼ブログ第4弾は1968年にウルトラセブンの23話として制作されるはずだった
幻の脚本「300年間の復讐」を紹介します。
幻ということからもわかるように、この話は永久欠番の12話とは違い、放送どころか制作すらされずに終わってしまいました。しかし上原氏が書き上げた「300年間の復讐」の脚本は存在しています。結局上原氏は「明日を捜せ」という別の脚本を書き直し、実際はそちらが制作されることにはなりましたが、この幻の脚本こそ上原氏が本来世に送り出したかった作品なのです。自分も見てみたかった内容ですし、ファンの間でもその脚本は非常に高く評価され知る人ぞ知る脚本として語られています。この「300年間の復讐」は薩摩藩による琉球の侵略がモチーフになっていて、上原氏が戦時中に虐げられた沖縄の人間としての怒りが込められています。しかし「300年間の復讐」は撮影直前のところで予算の関係や野長瀬監督との意見の食い違いによって制作が中止、世に出ることなく幻のものとなってしまいました。もし実際に作られていたらウルトラセブンの作品の中でも最大のインパクトを残したのは間違いありません。残念ながら幻の作品となってしまった「300年間の復讐」ですが、メッセージ性が強く非常に良いストーリーですので上原氏追悼のこの機会にその内容を紹介したいと思います。なお不採用脚本ということで、完全映像化はされていませんが、1993年2月13日放送のNHK土曜ドラマ「私が愛したウルトラセブン」で脚本の一部が映像化されているのでそちらの映像のスクリーンショットを使用してストーリーを紹介していきます。
「300年間の復讐」/悪鬼・トーク星人・シシー・甲冑人間 登場
ある冬の日、野戦訓練中にアンヌ隊員は濃霧で遭難してしまう。
さらに追い打ちをかけるかのようにアンヌ隊員は山の中で幽鬼兵甲冑人間に遭遇し追いかけられてしまう。
アンヌ隊員は山の中で見つけた不思議な洋館に辿り着く。
そこには赤い髪の人間に扮した幽鬼宇宙人トーク星人がいた。
トーク星人は疲労熱で倒れてしまったアンヌ隊員を徹夜で看病した。アンヌ隊員は死んだトーク星人の妹シシーにそっくりだった。眠りについたアンヌ隊員は夜中に地下室から聞こえてきた機械音で目が覚めた。アンヌ隊員はいつの間にかパジャマに着替えさせられていた。音が気になったアンヌ隊員は音のする方へと様子を見に行くと、地下室でトーク星人が不思議なものを組み立てていた。しかしそのトーク星人の陰は鬼のような形をしていた。驚いたアンヌ隊員の背後に甲冑人間が現れ、アンヌ隊員の首をしめるが、それに気付いたトーク星人は甲冑人間を制止し、アンヌ隊員を元の部屋へと追い返した。翌朝、トーク星人は猟銃を持って狩りへと出掛けていった。その隙にアンヌ隊員は箪笥の中にあったドレスに着替え、甲冑人間に気付かれぬよう窓から洋館を脱出した。しかしアンヌ隊員が逃げ出したことを察知したトーク星人はアンヌ隊員を追いかけ、洋館に戻るよう命令した。トーク星人はアンヌ隊員を死んだ妹のシシーだと思い込んでいた。猟銃を持ったトーク星人に抵抗できずアンヌ隊員は洋館へと戻るが、その途中、髪留めに仕込まれていた信号機を密かに渓流に投げ落とした。その信号機が手がかりとなり、ダンとフルハシ隊員が洋館へと助けにやってくる。するとアンヌ隊員がトーク星人と不思議な形の笛を奏でているのを発見する。
そしてアンヌ隊員はトーク星人に妹シシーの話しを向ける。するとトーク星人は自分たちが住む村を地球人に焼き払われシシーを亡くしてしまった過去を話す。そして怒りにふるえながらアンヌ隊員に「シシー、2人で復讐しよう。私たちの両親と仲間たちを皆殺しにした地球人んを火の海に葬るのだ。」と告げた。
そこにフルハシ隊員が囮として洋館に走り出す。それに気付いたトーク星人は猟銃を手にフルハシ隊員を追いかけ始める。その隙にダンは洋館に突入しアンヌ隊員を救出する。しかしそこに甲冑人間が現れダンを絞めあげる。ダンはウルトラガンをアンヌに投げ渡すと、受け取ったアンヌ隊員はそれで甲冑人間を撃退した。甲冑人間はその場に崩れ落ちるが、その中身は空っぽだった。その後ダンとアンヌ隊員は地下室にあった謎の文字が書かれたノートを発見、それを持って洋館から脱出した。しかし背後からシシーの名を叫びながらトーク星人が追いかけてくる。ダンはトーク星人にウルトラガンを発射するが、ウルトラガンはトーク星人の体をすり抜けてしまう。そしてトーク星人はダンとアンヌ隊員に向かって猟銃を構えるが、照準器にアンヌ隊員が写ると撃つのを辞めた。その後ダンとアンヌ隊員はノートを持って基地へと戻り、そのノートが解析された。解析によると、ノートにはトーク星人の過去が書かれていた。トーク星人は300年前に地球人と交流を図るため地球に来訪、しかし地球では人間同士が武器で殺し合いをしていた。驚いたトーク星人たちは山にひっそりと自分たちの住処を作りそこに住みついていたのだった。しかしその住処が地球人に見つかり、髪が赤いことを理由にその住処を焼き払われてしまった。武器を持たないトーク星人たちは地球人に一方的にやられシシーも殺されてしまった。一方基地に戻ったアンヌ隊員の前に人影が現れる。それはトーク星人の影だった。しかし防衛隊員に気付かれたトーク星人は銃撃戦となり逃亡する。それにより殉職した防衛隊員の近くには不思議な形の笛が残されていた。そしてアンヌ隊員の首にも同じ笛が下げられていた。その笛を見たキリヤマ隊長はアンヌ隊員に笛を吹かせ、トーク星人を洋館近くの谷に誘い出したところを超兵器エイトで倒す作戦に出た。しかしいざ作戦がはじまるとアンヌ隊員は笛を吹くことをためらってしまう。それを見たダンは笛を吹くようアンヌ隊員に強く言った。アンヌ隊員が笛を吹くとそこにトーク星人が現れる。
ダンは急いでアンヌ隊員を連れ戻しポインターに乗り込むと、ホバー噴射で浮上、谷に残されたトーク星人は超兵器エイトの集中砲火に遭い、シシーの名を叫びながら絶命した。するとその直後、トークの死体からトーク星人の怨念が実体となった悪鬼が出現する。悪鬼は超兵器エイトを叩き潰すと、ダンとアンヌ隊員の乗ったポインターを鷲掴みにする。ダンとアンヌ隊員は間一髪ポインターから脱出するが、谷の断崖に追い詰められたダンは転落してしまう。落下しながらダンはウルトラセブンへと変身、悪鬼に立ち向かう。悪鬼は辺り一帯に霧を吐くと、その霧が燃え上がり火の海と化する。ウルトラセブンはアイスラッガーを放つも、悪鬼はそれをかわすと、全身から伸びた布でウルトラセブンを縛り上げる。身動きが取れなくなったウルトラセブンに悪鬼が巨大な槌を振り下ろそうとした瞬間、アンヌ隊員がトークと叫ぶ。そして復讐なんてしてはいけないと悪鬼を諭す。それにより一瞬の隙ができ、その隙にウルトラセブンは絡まった布から脱する。すると悪鬼は再びウルトラセブンを槌で襲おうとするが、ウルトラセブンはエメリウム光線を悪鬼の眉間に撃ち込むと悪鬼は倒された。その後アンヌ隊員は涙を流しながら笛を吹いた。すると悪鬼の死体はトーク星人へと戻り、風化していった。
今となっては「もし」という過程の話ししかできませんが、この脚本が制作されていればアンヌ隊員のメイン回であり、内容的にも当時は批判されたかもしれませんが、時間とともに評価されていった作品になったのではないかと思います。隊員たちも歳を重ね、キリヤマ隊長とソガ隊員ももういなくなってしまった今、もう絶対に制作することはできなくなってしまいました。それでもこの脚本とその脚本の裏に隠された上原氏の思いはファンの記憶に残していってほしいと思います。ちなみにこの「300年間の復讐」の他にもウルトラセブンでは同じく上原氏が脚本を作りながら制作されなかったものがあります。それが第43話になるはずだった「宇宙人15+怪獣35」です。あの名監督である実相寺昭雄監督とのタッグで制作される予定だったこの話はタイトルの通り、バルタン星人を含む宇宙人15人と怪獣35体が登場するという壮大なスケールで書かれたものでした。これは低下していた視聴率を回復させるために思い切って宇宙人と怪獣を大量投入しようという意図で作られたものでしたが、予算の関係で没となり、その代わりに作られたのが全く着ぐるみによる怪獣や宇宙人が登場しないという真逆の「第四惑星の悪夢」で、これはこれで名作となりました。とはいえ、バルタン星人と戦うウルトラセブンもファンなら見てみたかった構図の一つかもしれませんね。次回はこの「300年間の復讐」の制作中止により急遽上原氏が新たに脚本を書き上げ放送されることとなった第23話「明日を捜せ」を紹介します。
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Posted at
2020/01/23 20:12:49