
上原氏追悼企画第7弾は前回に引き続き、ウルトラセブンの「着ぐるみの出ない3部作」から1968年7月28日放送の第43話「第四惑星の悪夢」を紹介します。
この回は、脚本上原正三、監督実相寺昭雄というファンにとっては奇跡の組み合わせのようなタッグで制作されました。このコンビはこの回の他にはウルトラセブン45話の「円盤が来た」の2話しかありません。ただ、「円盤が来た」は共同脚本になってはいるものの、実相寺監督が川崎高のペンネームで殆ど書き上げたという話があるので、実際はこの「第四惑星の悪夢」が唯一のコンビ作なのかもしれません。そのことは抜きにしても、どちらも名作で、近年においては「円盤が来た」はマツコデラックスが称賛した回として再び注目されるなど、今でも高い評価を得ている作品です。
今回紹介する「第四惑星の悪夢」は1968年に作られた作品ですが、そこに描かれた第四惑星はまさにこれからの21世紀を危惧するかのような内容になっています。人間そっくりの第四惑星人が作り出した高度なロボットが次第に第四惑星人よりも優れた能力を持つようになり、逆に退化した第四惑星人がロボットに侵略されてしまうという内容です。今後、AIの発展によっては地球も第四惑星のようになる可能性もゼロではなさそうです。実際にそのような可能性が指摘されたり話題になることが最近多いような気がします。この「第四惑星の悪夢」が放送された52年も前に、AIなどという高度なコンピュータが生み出されるなんて思っていた人は殆どいなかったのではないでしょうか。この作品は今の時代に生きる地球人に警鐘を鳴らす作品と言えるかもしれませんね。それではそのストーリーを紹介していきます。
地球防衛軍は長距離用宇宙ロケットスコーピオン号を完成させた。そのテスト飛行をするため、ウルトラ警備隊のダンとソガ隊員がそのテストパイロットに任命された。出発前、作戦室ではソガ隊員は真剣な表情で星占いをしていた。ソガ隊員はさそり座と冥王星と火星が重なると死神の座と呼ばれ災難が起こると星占いを信じて恐れていた。しかし他の隊員たちはたかが星占いと不安がるソガ隊員を馬鹿にしていた。キリヤマ隊長もスコーピオン号は自動操縦だから寝ていても問題無いとダンとソガ隊員に笑いながら話した。
そしてついにテスト飛行が開始された。スコーピオン号は大気圏を越え、予定のコースに乗った。
予定通りの軌道に乗ったダンとソガ隊員にキリヤマ隊長は自動操縦に切り替え眠るように指示した。睡眠テストもテストの一環だった。しかしその後、アマギ隊員がレーダーでスコーピオン号の軌道を見守っていると、突然予定のコースから外れていってしまう。アマギ隊員はスコーピオン号の軌道制御装置を確認するものの、装置に異常は認められなかった。キリヤマ隊長はダンとソガ隊員に連絡を取るようアマギ隊員に告げるが、睡眠テスト中のダンとソガ隊員は20日間は目を覚まさないようになっていた。不安になったアンヌ隊員はダンはきっと今頃夢を見てるわと自分に言い聞かせていた。
そして発進から20日後、ダンとソガ隊員は自動着陸した見知らぬ土地で目を覚ました。しかし眠っている間に着陸したため、そこが地球なのかどうかもわからなくなってしまった2人は本部に応答を呼びかけるが、通信ができなくなっていた。
一方の作戦室もダンとソガ隊員との通信が途絶えてから全く手がかりがつかめず嫌な空気が流れていた。ダンとソガ隊員はスコーピオン号から外に出て、周囲を歩き回ると日本語表記のガソリンスタンドを見つけ、自分たちがいる場所が日本だと安堵する。そして近くにいた男に声を掛けるが、男は何故かダンとソガ隊員を避けるようにどこかへと行ってしまった。
ダンとソガ隊員は再び歩き出すと、今度は年配の女性と出くわすが、ダンが声をかけるとその女性も逃げるように走り去ってしまった。その近くで赤い公衆電話を見つけたダンは本部に電話をかけようとするが、「只今の電話番号は廃盤になりました。おかけ直しください。」というメッセージが流れてしまう。その時、ダンとソガ隊員の近くを自転車で走っていた少年が猛スピードで来たダンプカーに煽られて転倒してしまった。ダンとソガ隊員は少年のところに駆け寄るが、幸いにも少年に怪我はなかった。ダンとソガ隊員は少年からどこから来たのと尋ねられ、地球防衛軍だと答え胸のエンブレムを見せるが、少年は地球防衛軍の存在を知らなかった。ソガ隊員はここは日本のどの辺りなのかと少年に聞くが、少年は日本という国すらも知らなかった。そこに1台のジープが停車し、中から軍服の男が降りてきた。ダンとソガ隊員はトラックの悪質ドライバーのせいで少年が転倒してしまったと説明し、運転手を逮捕すべきだと軍服の男に詰め寄るが、逆によけない人間が悪いとダンとソガ隊員をまくし立てた。少年はダンとソガ隊員に逃げるよう言うが、それを見た軍服の男は少年をムチで殴打するとダンとソガ隊員を拘束して大きなビルへと連行した。
軍服の男に連れられダンとソガ隊員はそのビルの中へと入った。軍服の男は司法や行政、学校や病院、テレビなど全ての機関がこのビルに集約されているとダンとソガ隊員に説明した。そして軍服の男はテレビスタジオの撮影セットの前にダンとソガ隊員を案内した。そこではドラマと思われる作品の撮影がされていて、機関銃で人々が撃たれるシーンを撮影していた。その後ダンとソガ隊員は長官室へと通された。長官と呼ばれる男はダンとソガ隊員に首を長くして待っていたと告げ、わざわざスコーピオン号を誘導して着陸させたことを伝えた。そしてこの地が地球から約120万億km離れた第四惑星であると話しながら目の周りの皮膚を自ら剥がした。長官は人間ではなく第四惑星アンドロイドのロボット長官だった。軍服を着た男も同じアンドロイドのロボット署長だった。
ロボット長官は秘書である人間のアリーを呼び頭頂部の歯車に油をささせると再び話しはじめた。ロボット長官によると、第四惑星は元々人間が支配していたが、人間がロボットを生み出して以降、すっかり怠け者になり、次第にロボットと人間の立場が逆転してしまったという過去をダンとソガ隊員に説明した。
ロボット長官はアリーが淹れたコーヒーを一口飲むと「ぬるい。砂糖が多い。」と激怒しアリーに平手打ちを連打した。アリーは謝りながら長官室を出て行った。ロボット長官は人間は物覚えが悪く、コーヒーの味が毎日違うと嘆いた。その後ロボット長官に連れられダンとソガ隊員は長官室から出るが、一瞬の隙を見たアリーは長官室を出たダンにメモを渡す。そこには「あなたたちも殺される。地球が危ない。」と書かれていた。ダンはそのメモをそっとソガ隊員に見せた。
ダンとソガ隊員はロボット長官とロボット署長に連れられ体育館のような場所へと案内された。そこでは人間が一列に整列させられ、アンドロイドの軍によって射殺されていた。そこでは死刑執行の真っ最中だった。ソガ隊員はロボット長官に何の罪を犯したのかと尋ねると、ロボット長官は人間もロボットらしく生きるべきだ、と主張していたA級政治犯だと答えた。
そしてダンとソガ隊員はコンピュータールームへと連れて行かれた。そこのコンピューターでは向こう500年間のあらゆるデータがはじき出されていた。そこでダンはロボット長官に自分たちを誘導した目的を尋ねる。するとロボット長官は現在第四惑星に残っている人間はデータによると今後500年のうちに滅亡してしまう運命で、エネルギー源として人間が必要だと告げた。そして地球を植民地にすれば30億の人間を確保できると告げた。そして間もなくそのための戦略部隊が地球に向け出発することになっていると説明した。そしてダンとソガ隊員は最初に見せられたドラマの撮影現場へと連れてこられた。すると機関銃で撃たれた人間が倒れたままだった。ロボット長官はドラマは常に真実を要求されていると悪気もなくダンに話した。機関銃で殺されるシーンは実弾を使って撮影されていたのだった。その直後、ダンとソガ隊員はロボット長官とロボット署長が目を離した隙にその場から逃げ出した。その途中ダンとソガ隊員を見つけたアリーは広い倉庫へと案内した。倉庫裏には人間の死体を積んだトラックが停まっていた。アリーはそのトラックの荷台で死体に紛れればゲートを出られるとアドバイスした。ダンとソガ隊員はアリーの言葉通り死体に紛れビルの敷地内から脱出することに成功、そして途中で荷台から飛び降りると先回りしていたアリーの車に乗り込んだ。そこには自転車の少年もいた。少年はアリーの弟だった。
アリーはダンとソガ隊員を人間の居住区へと連れて行き、かくまってほしいと住民たちに頼み込む。しかしそんなことをすれば全員死刑になってしまうと住民たちに拒まれてしまう。そこにジープであとを追ってきたロボット長官とロボット署長が現れる。
アリーはダンとソガ隊員の脱走を手伝った罪で死刑を言い渡されてしまう。近くにいたアリーの恋人はアリーをロボット長官たちから引き離そうとすると、ロボット長官はアリーの恋人にも死刑と言い渡した。ダンとソガ隊員は何とか逃げ切るが、アリーとその恋人は死刑場へと連行され、銃を向けられ執行寸前のところまで追い詰められてしまった。そこにダンとソガ隊員が駆けつけ、ウルトラガンで執行人を狙撃した。ロボット長官はダンとソガ隊員を捕まえるよう部下たちに命令する。その直後、地球に向けた侵略部隊が第四惑星から発進した。勝ち誇るロボット長官にソガ隊員が襲いかかろうとするが、ロボット署長に脚を撃たれ負傷してしまう。ロボット署長はすかさずダンにも発砲するが、ダンは間一髪避けながらウルトラセブンに変身した。ウルトラセブンはビル本体を破壊すると、その後も敷地内の戦力部隊施設や兵器をラピッド光線とダブルビームで徹底的に破壊していく。
さらに地球に向かって出撃した侵略部隊も全てワイドショットで撃ち落とした。その後ダンとソガ隊員はスコーピオン号で無事地球へと帰還した。基地へと戻ったダンとソガ隊員は隊員たちに第四惑星のことを話した。それを聞いたアンヌ隊員は眠っている間に見た夢か幻じゃないのかと聞き返した。それに対しダンは夢じゃないと反論した。するとキリヤマ隊長はいいじゃないかとなだめ、「スコーピオン号のテスト成功を機会に、地球防衛軍は全機関を電子計算機システムに切り替えるつもりだ、みんな楽になるぞ。」と話した。それを聞いたソガ隊員は「そんなことしたら第四惑星みたいに・・・俺は見たんだ、ロボット長官、処刑される人間・・・。」とムキになって言葉を返した。
キリヤマ隊長は疲れていそうなダンとソガ隊員に時間を与え、静養してくるようにと告げ、2人は一時の休息をとった。
コンピュータが自ら意思や目的を持ち始めると恐ろしいということを感じさせるストーリーでした。最もまだAIが暴走するところまでは来ていない今、地球で一番恐ろしい生物は人間なのかもしれませんけどね。次回はウルトラセブンの上原作品から「ダン対セブンの決闘」を取り上げたいと思います。
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Posted at
2020/01/28 19:51:15